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  • 昭和61年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第4 文部省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

地域改善対策高等学校等進学奨励費補助金の経理の適正化を図るよう改善させたもの


(1) 地域改善対策高等学校等進学奨励費補助金の経理の適正化を図るよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)文部本省 (項)学校教育振興費
部局等の名称 文部本省
補助の根拠 予算補助
事業主体 府県18、指定都市6、計24事業主体
補助事業 地域改善対策として実施する進学奨励事業
上記に対する国庫補助金交付額の合計 29,434,249,920円(昭和57年度〜61年度)

 文部省では、地域改善対策事業として高等学校等生徒等に奨学金等の給付又は貸与を行う都道府県及び指定都市に対して地域改善対策高等学校等進学奨励費補助金を交付しているが、受給の条件を欠いている者に対する奨学金等の給付又は貸与が補助事業として取り扱われ補助金算定の基礎となっていたため、国庫補助金1億3725万余円が過大に交付されていると認められた。
 このような事態を生じたのは、本件補助事業を実施する府県及び指定都市に対する指導監督が十分でなかったことなどによるもので、奨学金等受給の条件の審査確認を十分に行わせるなど所要の措置を講じ、本件補助金の経理の適正化を図る要があると認められた。

 上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)
 文部省では、地域改善対策特別措置法(昭和57年法律第16号)に基づく地域改善対策事業として、高等学校等に在学する者に対する奨学金及び通学用品等助成金(以下「奨学資金」という。)の給付又は貸与の事業を行う都道府県又は指定都市に対し、これに必要な経費の一部を補助しており、昭和57年度から61年度までの間における国庫補助金の交付額は36府県及び7指定都市に対し総額353億5189万余円となっている。

 この補助金は、地域改善対策対象地域に居住する同和関係者の子弟で、高等学校若しくは高等専門学校又は短期大学若しくは大学に進学する能力をもちながら、経済的な理由によって進学後修学が困難な者に奨学資金を給付(高等学校等の場合)又は貸与(大学等の場合、ただし57年の本法改正前に採用された者については給付。以下同じ。)する事業を行う場合に、これらの事業を実施するために必要な経費のうち文部大臣が認める経費の一部を補助するもので、補助事業の要件等については、奨学資金の給付又は貸与を受ける者は、日本育英会法(昭和19年法律第30号。昭和59年法律第64号にて全部改正)による育英資金(以下「育英資金」という。)又は母子及び寡婦福祉法(昭和39年法律第129号)による修学資金(以下「修学資金」という。)の貸与を受けない者であることなどの条件(以下「受給条件」という。)のすべてに該当するものであること、奨学資金の給付又は貸与を受ける者が受給条件の一部又は全部を欠くに至ったときは、当該奨学資金の給付又は貸与については補助事業として取り扱わないことなどとなっている。

 しかしながら、本院が62年1月から8月までの間に、京都府ほか24府県及び名古屋市ほか6指定都市(注1) について本件補助事業における奨学資金の給付又は貸与の実施状況等を調査したところ、京都府ほか17府県及び京都市ほか5指定都市(注2) において、次のとおり適切でない事態が見受けられた。

 すなわち、〔1〕 育英資金の貸与を受けている高等学校等生徒に更に奨学資金を給付しているものが57年度から61年度までの各年度の実人員の合計で595人(奨学金延べ7,012人、通学用品等助成金111人(注3) )、〔2〕 修学資金の貸与を受けている高等学校等生徒に更に奨学資金を給付しているものが同155人(同延べ1,785人、同62人)、〔3〕 育英資金の貸与を受けている大学等学生に更に奨学資金を貸与しているものが同53人(同延べ599人、同11人)、〔4〕 修学資金の貸与を受けている大学等学生に更に奨学資金を貸与しているものが同33人(同延べ377人、同9人)、〔5〕 対象地域に居住する同和関係者の子弟とは認められない高等学校等生徒に奨学資金を給付しているものが同7人(同延べ76人、同3人)となっていて、受給条件を欠いている者に対する奨学資金の給付又は貸与が補助事業として取り扱われ補助金算定の基礎となっているのは適切でないと認められた。

 いま、仮に育英資金又は修学資金の貸与を受けている者等受給条件を欠いていて補助金算定の基礎とすることが適切でない者に係る分を除外して修正計算すると、前記の京都府ほか17府県及び京都市ほか5指定都市に対する57年度から61年度までの間の国庫補助金総額294億3424万余円は292億9699万余円となり、1億3725万余円の開差を生じることとなる。

 このような事態を生じたのは、前記の府県及び指定都市において、奨学資金の受給条件について十分な審査確認を行わなかったことなどにもよるが、文部省において、受給条件の周知徹底を図るよう十分に指導していなかったこと、奨学資金の給付又は貸与の申請書の様式、記載事項等及び受給条件の審査確認の方法等具体的な事務取扱いについてほとんど指導していなかったこと、また、審査確認が適切に行われているかどうかについて監督が十分でなかったことなどによると認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、文部省では、日本育英会等関係機関に関係都道府県及び指定都市の審査確認に対する協力方を要請するとともに、62年11月、関係都道府県及び指定都市に通達を発して、奨学資金の受給条件を貸与(62年度からは高等学校等生徒に対する奨学資金も給付から貸与に切り替えられている。)希望者等にパンフレット等により周知徹底させ、奨学資金の貸与申請書等に育英資金又は修学資金を受給しているか否かを記載する欄等を設けさせ、受給条件を審査確認するための関係資料及び方法を具体的に示して審査確認を十分に行わせることとするなど本件補助事業を適切に執行するための処置を講じた。

(注1)  京都府ほか24府県及び名古屋市ほか6指定都市 京都、大阪両府、栃木、埼玉、千葉、神奈川、新潟、福井、山梨、静岡、愛知、三重、滋賀、兵庫、奈良、鳥取、岡山、広島、山口、徳島、香川、高知、福岡、大分、鹿児島各県、名古屋、京都、大阪、神戸、広島、北九州、福岡各市

(注2)  京都府ほか17府県及び京都市ほか5指定都市 京都、大阪両府、新潟、福井、静岡、三重、滋賀、兵庫、奈良、鳥取、岡山、広島、山口、徳島、高知、福岡、大分、鹿児島各県、京都、大阪、神戸、広島、北九州、福岡各市

(注3)  奨学金の延べ人数は実人数各人の給付又は貸与の月数を合計したものである。また、通学用品等助成金の人数は奨学金のほかに通学用品等助成金も給付又は貸与した人数である。