会計名及び科目 | 一般会計 (組織)文部本省 (項)公立文教施設整備費 |
部局等の名称 | 文部本省、京都府、秋田、石川、三重、滋賀、兵庫、鳥取、岡山、広島、福岡各県 |
補助の根拠 | 義務教育諸学校施設費国庫負担法(昭和33年法律第81号)等 |
事業主体 | 府県3、市13、町43、村2、一部事務組合1、計62事業主体 |
補助事業 | 公立の小中学校等の校舎等整備事業 |
上記に対する国庫補助金交付額の合計 | 5,717,232,000円(昭和58年度〜60年度) |
上記の補助事業では、積雪寒冷地域に所在する公立の小中学校等に係る必要面積の算出に当たっては所定の補正を行うこととされているが、積雪寒冷地域として指定された地域について積雪寒冷度が指定の基準に適合していないため積雪寒冷地域に該当しないものがあったり、積雪寒冷地域の指定後指定区分が変更され、積雪寒冷度に応じた指定区分になっていないものがあったりしていて、国庫補助金9億9750万円が過大に交付されていたと認められる。
このような事態を生じているのは、積雪寒冷地域を指定する際に実施した積雪寒冷度の調査において、都道府県が使用した資料及び算出した数値に根拠の明確でないものがあったこと、補助金交付申請書等についての文部省及び県の審査が十分でなかったことなどによるもので、積雪寒冷度の詳細な調査を行って積雪寒冷地域の指定を適切なものに改めるなどの要があると認められた。
上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。
(説明)
文部省では、義務教育諸学校施設費国庫負担法等の規定に基づき、公立の小学校、中学校、高等学校その他の学校の校舎等の施設の整備を行う地方公共団体に対し、校舎等の建物の新増築又は既存の危険建物等を取り壊して行う改築について、これらに要する経費の一部を負担することとし、公立学校施設整備費補助金を交付している。その交付額は補助対象事業費に所定の補助率を乗じて算定することとしており、補助対象事業費は、公立の小中学校における校舎等の新築又は増築の場合には、事業実施年度の5月1日現在の当該学校の学級数に応ずる建物の必要面積から同日現在における保有面積を控除した面積に、また、改築の場合には、必要面積又は保有面積のいずれか少ない面積から保有面積のうち構造上危険でない建物の面積を控除した面積に、建物の区分、構造等に応じた建築単価を乗じるなどして算定することとしている。そして、積雪寒冷地域に所在する小中学校に係る必要面積については、冬期における良好な教育環境を保つためには屋内の遊び場等の面積も考慮することが必要であることから、積雪寒冷度に応じて所定の補正を行って算出することとしている。
そして、文部省では、積雪寒冷地域を積雪寒冷度に応じて1級積雪寒冷地域(以下「1級地域」という。)及び2級積雪寒冷地域(以下「2級地域」という。)に区分している。これらのうち、1級地域は冬期平均気温(12月〜2月の各日の平均気温の平均)零下5度以下か又は積雪量(1月〜12月の各月の1日当たり平均積雪量の合計)300月cm以上の地域とし、2級地域は冬期平均気温が零度以下零下5度に達しないか又は積雪量100月cm以上300月cm未満の地域としている。そして、必要面積の算定に当たっては、校舎については、1級地域では1学級当たり32m2 を、2級地域では1学級当たり16m2 を学級数に応じて加算することとし、また、屋内運動場については、1級地域、2級地域とも学級数に応じて14m2 から583m2 の範囲で加算することとしている。このような補正は、積雪寒冷地域に所在する公立高等学校等の校舎改築等の場合における生徒1人当たりの基準面積の算出に当たっても行うこととしている。
この積雪寒冷地域の指定に当たっては、文部省管理局長通達(昭和28年文施助194号)により都道府県に依頼して、各地方の気象官署の気象記録により過去の観測値から算出した最も気象条件の厳しい連続する5年間の冬期平均気温及び積雪量を調査して、昭和31年に前記の基準に該当する地域をそれぞれ1級地域又は2級地域として指定を行っていた。
しかして、北海道ほか18府県(注1) (管内の積雪寒冷地域において58年度から60年度までに479事業主体が実施した公立の小中学校等の校舎等整備事業2,605事業、国庫補助金交付額1768億4222万余円のうち積雪寒冷地加算面積に係る国庫補助金交付額176億8038万余円)について、積雪寒冷地域の積雪寒冷度を調査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
1 積雪寒冷地域として指定された地域の積雪寒冷度が指定の基準に適合していないもの
三重県ほか7府県(注2) について各地方気象台に保存されている明治30年代以降現在までの気象記録等によると、三重、福岡の両県では管内の積雪寒冷地域に指定されている全地域の積雪寒冷度が指定の基準に達してなく、また、京都府ほか5県では大部分の積雪寒冷地域の積雪寒冷度が指定の基準に達してなく、したがって、これらの地域は積雪寒冷地域に該当しないことになり、積雪寒冷地域に指定されている190市町村に所在する小中学校等1,478校のうち、914校(128市町村所在)は積雪寒冷地域以外の地域(以下「その他地域」という。)に所在することになる。そして、上記により積雪寒冷地域に該当しないことになる地域において補正を行って必要面積を算出して校舎等整備事業を実施しているものが、昭和58年度から60年度までに57事業主体の115事業で見受けられた。
いま、仮に上記115事業について積雪寒冷地域による補正を行わないこととして修正計算すると、補助対象事業費106億6060万余円は88億0274万円となり、これに対する国庫補助金交付額51億6161万余円は42億5233万余円となり、9億0928万余円が過大に交付されていたと認められる。
2 積雪寒冷地域の指定後指定区分が変更され積雪寒冷度に応じた指定区分になっていないもの
31年の指定後、気温、積雪量に格別の変動は見受けられないのに積雪寒冷地域の指定区分を、三重県においては36年にその他地域から2級地域に、また、秋田、石川両県においては46年に2級地域から1級地域に変更しているものがあり、変更後の指定区分に従い補正を行って必要面積を算出して小中学校の校舎等整備事業を実施しているものが、58年度から60年度までに5事業主体の7事業で見受けられた。
いま、仮に上記7事業について本来の指定区分によることとして修正計算すると、補助対象事業費10億7997万余円は9億0823万余円となり、これに対する国庫補助金交付額5億5561万余円は4億6740万余円となり、8821万余円が過大に交付されていたと認められる。
このような事態を生じているのは、1項については、文部省が都道府県に依頼して実施した気象状況の調査結果の中には、地方気象官署の気象記録以外の資料を使用したり、文部省で定めた算出方法以外の方法により数値を算出したりしていたものがあったこと、また、2項については、文部省及び前記3県において、補助金交付申請書等の審査に当たり指定区分に関する確認が十分でなかったこと、指定区分の変更手続が明確に定められていなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、文部省では、62年9月に「積雪寒冷補正に係る地域指定について」の通達を発し、積雪寒冷地域の指定区分の変更、取消し等所要の改訂を行って、指定を適切なものに改めるとともに、補助金交付申請書等の審査に当たっては積雪寒冷地域及び指定区分の確認を十分に行うこととし、また、都道府県等に対して指導し、周知徹底を図るなどの処置を講じた。
(注1) 北海道ほか18府県 北海道、京都府、青森、秋田、茨城、群馬、埼玉、富山、石川、長野、岐阜、三重、滋賀、兵庫、奈良、鳥取、岡山、広島、福岡各県
(注2) 三重県ほか7府県 京都府、三重、滋賀、兵庫、鳥取、岡山、広島、福岡各県