会計名及び科目 | 国立学校特別会計 (項)国立学校 (項)研究所 (項)施設整備費 |
部局等の名称 | 山形、富山医科薬科、信州、浜松医科、名古屋、岡山、広島、香川医科、高知医科、九州、熊本各大学 |
購入物品 | 外国製のX線診断装置5台及びたん白質構造解析装置6台 |
購入額 | 966,044,778円 |
契約期間 | 昭和60年9月〜61年10月 |
契約の種類 | 一般競争契約 |
上記の外国製医療機器の購入に当たって予定価格の算定方法が適切でなかったなどのため、購入額が約1億5700万円割高になっていた。
このように購入額が割高になったのは、外国為替相場の変動及び関税率の改定があった場合、これを予定価格に反映させる方策の検討が十分でなかったことなどによるもので、外国為替相場の変動等を考慮した適正な予定価格の算定方法に改善する要があると認められた。
上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。
(説明)
各国立大学等(以下「大学等」という。)では、医学部及び附属病院等において医学等の教育研究の用に供するためX線診断装置、たん白質構造解析装置等各種の外国製医療機器(以下「輸入機器」という。)を使用していて、その購入額は毎年度多額(うち1件1000万円以上の装置に係る輸入機器の購入状況は、昭和60年度132件48億1893万余円、61年度170件67億7794万余円、合計302件115億9687万余円)に上っている。
これら輸入機器の購入契約に当たっては、原則として、輸入機器を取り扱う代理店等から海外メーカーのプロフォーマインボイス(試算用送り状)等の書類の提出を求め輸入原価(注1) を把握し、これに国内輸送費、輸入取扱手数料等の諸経費を加えるなどして予定価格を算定することになっているが、代理店等からこれら書類を徴取できないときは、定価証明書(輸入原価、代理店経費等価格構成の内容表示のない装置一式価格で表示されたもの。)の提示を受け、これに記載された価格(以下「業者公表価格」という。)を基礎とし、他の大学等における同種機器の購入の際の値引率等を参考にするなどして予定価格を算定することとしている。
しかして、山形大学ほか10大学(注2) が60、61両年度中に購入契約を締結したX線診断装置(5台計774,116,000円)及びたん白質構造解析装置(6台計221,928,778円)について、購入契約に当たっての予定価格の算定方法について調査したところ、次のとおり近年の円の対米ドル為替相場の大幅な変動や政府の輸入促進政策による関税率の改定があるにもかかわらず、大学等においてはこれらを考慮することなく、57年又は58年以降ほとんど改定されていない業者公表価格を基礎とし、これに他の大学が同種機器を購入した際の値引率等を参考にして予定価格を算定し、毎年ほぼ同程度の価格で購入していて適切とは認められない事態が見受けられた。
1 X線診断装置について
信州大学ほか4大学(注3) では、60、61両年度中にX線診断装置(周辺機器を含む。)5基を輸入機器を取り扱う代理店から購入しているが、この装置のうち本体の予定価格の算定についてみると、業者公表価格(1台当たり380,000,000円(57年9月設定))を基礎とし、これに他の大学が同種機器を購入した際の値引率等を参考にして算出した額を予定価格とし、1台当たり168,872,000円から131,252,000円、計5合を744,116,000円で購入していた。
しかしながら、本院において、58、59両年度及び60、61両年度購入の上記機器についての輸入原価を調査したところ、同機器1台当たりの輸入原価のうちドル建てCIF価格(注4) は同一価格であるが、為替相場は、58、59両年度購入の機器の場合は245.10円/ドルから236.70円/ドルであったのに対し、60、61両年度購入の機器の場合は179.93円/ドルから152.59円/ドルとなっており、また、関税率については、58、59両年度購入の機器の場合は5.8%であったのに対し、60、61両年度購入の機器の場合は5台のうち2台は4.6%、その後購入した3台は免除になっていた。この結果、同機器1台当たりの輸入原価は、58、59両年度購入のものに対し、60、61両年度購入のものは72%から47%と著しく低価となっていると認められた。
いま、仮に上記に基づき同機器の価格を修正計算すると、上記輸入原価と58、59両年度購入時における輸入原価以外の価格要素に人件費等の上昇分を考慮した費用を加えたとしても、1台当たり129,340,015円から114,484,834円、5台では604,844,948円となり、購入額744,116,000円は約1億3900万円割高になっていたと認められた。
2 たん白質構造解析装置について
山形大学ほか5大学(注5) では、60、61両年度中にたん白質構造解析装置6基を輸入機器を取り扱う代理店等から購入しているが、この装置のうち本体の予定価格の算定についてみると、業者公表価格(1台当たり43,000,000円(58年2月価格設定)から39,500,000円(61年6月価格改定))を基礎とし、これに他の大学が同種機器を購入した際の値引率等を参考にして算出した額を予定価格とし、1台当たり40,000,000円から35,158,268円、計6台を221,928,778円で購入していた。
しかしながら、本院において、58、59両年度及び60、61両年度購入の上記機器についての輸入原価を調査したところ、前項1と同様な事態が認められた。この結果、同機器1台当たりの輸入原価は、58、59両年度購入のものに対し、60、61両年度購入のものは87%から59%と著しく低価となっていると認められた。
いま、仮に上記に基づき同機器の価格を前項1と同様修正計算すると、1台当たり37,838,121円から32,116,659円、6台では204,120,629円となり、購入額221,928,778円は約1700万円割高になっていたと認められた。
このような事態を生じているのは、大学等の担当者が予定価格の算定に当たり、代理店等からプロフォーマインボイス等の書類を求めるなどして輸入原価の把握に努めるようされているにもかかわらずこれにより難いとして業者公表価格を使用していたこと、外国為替相場の変動及び関税率の改定状況を予定価格の算定に反映させる方策の検討が十分でなかったこと、また、これらに対する文部省の指導が十分でなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、文部省では大学等に対し、62年11月に「外国製医療機器等の契約に係る予定価格について」の通知を発し、同月以降、購入契約を行う際の予定価格の算定に当たっては、原則としてプロフォーマインボイス等の書類に基づいて輸入原価の把握に努めることとし、これらの書類の入手が困難な場合においても他の適宜の方策を講じることとし、外国為替相場の変動及び関税率の改定を予定価格の算定に反映するための処置を講じた。
(注1) 輸入原価 CIF価格に関税を加算したもの
(注2) 山形大学ほか10大学 山形、富山医科薬科、信州、浜松医科、名古屋、岡山、広島、香川医科、高知医科、九州、熊本各大学
(注3) 信州大学ほか4大学 信州、浜松医科、岡山、広島、熊本各大学
(注4) CIF価格 船積港(空港)における輸出原価に仕向港(空港)までの運賃と保険料を加算したもの
(注5) 山形大学ほか5大学 山形、富山医科薬科、名古屋、香川医科、高知医科、九州各大学