会計名及び科目 | 一般会計 (組織)厚生本省 | (項)老人福祉費 (項)国民健康保健助成費 |
厚生保険特別会計(健康勘定) | (項)保険給付費 (項)老人保険拠出金 (項)退職者給付拠出金 | |
船員保険特別会計 | (項)保険給付費 (項)老人保健拠出金 (項)退職者給付拠出金 | |
部局等の名称 | 社会保険庁、北海道ほか5府県 | |
国庫負担の根拠 | 老人保健法(昭和57年法律第80号)、健康保険法(大正11年法律第70号)、船員保険法(昭和14年法律第73号)、国民健康保険法(昭和33年法律第192号) | |
事業の種類 | 老人保健法に基づく医療の実施、医療保険各法に基づく療養の給付 | |
事業主体 | 国、市8、町5、村2、組合1、計17事業主体 | |
医療機関 | 公立1、法人3、個人3、計7医療機関 |
上記の事業主体において、医療費の支払に当たり、架空の診療に基づく請求に対して支払っていたり、誤った診療報酬の請求に基づいて支払っていたりなどしていて医療費25,620,073円(国庫負担の額(注) 14,128,000円)が不当と認められる。これを道府県別に掲げると別表 のとおりである。
(説明)
厚生省所管の医療に係る事業は、市町村が健康保険法等の医療保険各法に定める被保険者(被扶養者を含む。以下同じ。)のうち老人保健法の規定に基づき、当該市町村の区域内に居住する70歳以上の者(65歳以上70歳未満の寝たきり老人等を含む。)に対して老人保健事業の一部として実施するものと、医療保険各法に定める保険者が上記の者以外の被保険者に対して行う療養の給付等とがある。同省では、医療に係る老人保健事業については、市町村が医療機関からの診療報酬の請求に基づいて支弁した医療に要する費用の一部を負担しているほか、市町村等が国民健康保険の保険者として拠出した資金の一部を負担するとともに、政府が行う健康保険等の保険者として資金を拠出することとなっている。また、医療保険各法に基づく療養の給付等については、政府が行う健康保険等の被保険者に係るものは療養に要する費用の額から一部負担金に相当する額を控除した額を、市町村等が行う国民健康保険の被保険者に係るものは療養に要する費用の額から一部負担金に相当する額を控除した額等に所定の率を乗じて得た額を、それぞれ負担することとなっている。
しかして、これらの国の負担の対象となる医療費の支払について調査したところ、前記17事業主体が行った老人保健法に基づく医療の実施及び医療保険各法に基づく療養の給付において、医療機関からの架空の診療に基づく請求に対して支払っているもの、誤った診療報酬の請求に基づいて支払っているものなどがあった。
いま、これらについて不当の態様別に示すと次のとおりである。
架空の診療に基づく請求に対して支払っているもの | |||
2事業 |
不当と認めた国庫負担の額 |
6,145,198円 |
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誤った診療報酬の請求等に基づいて支払っているもの |
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14事業 |
不当と認めた国庫負担の額 |
5,161,713円 |
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保険診療として適切でない行為に基づく請求に対して支払っているもの | |||
1事業 |
不当と認めた国庫負担の額 |
2,821,089円 |
(注) 本件不当額分の精算は、市町村の加入者調整率(医療保険の加入者総数に対する70歳以上の者等の加入者総数の割合とこれを各保険者ごとに算出した割合との比率)が確定した後の昭和63年度において行われる。そこで、本件不当額の計算に当たっては、61年度粗確定加入者調整率を用い、また、国民健康保険の保険者(3,436)については、当該市町村とそれ以外の市町村及び国民健康保険組合の3種に分け、それぞれが支弁した医療費を基に算出した。
道府県名 | 事業主体 | 不当と認めた医療費の支払件数 | 不当と認めた医療費 | 不当と認めた国庫負担の額 | 摘要 |
件 | 千円 | 千円 | |||
(老人保健事業) | |||||
(34)北海道 | 村 | 71 | 7,560 | 4,125 | 架空の診療に基づく請求に対する支払 |
この事業主体では、公立の某医療機関が、22名の者について、この医療機関に入院しているとした診療報酬の請求に基づき、入院料等の医療費を支払っていた。 しかし、この中には近隣の特別養護老人ホームに入所していて、この医療機関には入院していなかった者について請求したり、入院はしていたものの入院期間を水増しした入院料等の医療費を請求したりしているものが延べ71件あり、これに係る医療費7,560,440円の支払は適切を欠き、これに対する国庫負担4,125,270円は負担の要がなかったものである。 |
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(35)大阪府 | 市 | 1,020 | 5,005 | 2,821 | 保険診療として適切でない行為に基づく請求に対する支払 |
この事業主体では、社会福祉法人である某医療機関が、併設する特別養護老人ホームに入所しているほぼ全員に対して、血液検査を実施したとする診療報酬の請求に基づき、検査料等の医療費を支払っていた。 しかし、これらの者に対する診療行為について当局の協力を得て調査したところ、毎月、多項目にわたって画一的な血液検査を反復していて保険診療として適切でないと認められる検査が入所者116名に係る延べ1,020件あり、これに係る医療費5,005,750円の支払は適切を欠き、これに対する国庫負担2,821,089円は負担の要がなかったものである。 |
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(36)同 | 市 | 363 | 4,533 | 2,427 | 誤った診療報酬の請求等に基づく支払 |
この事業主体では、社会福祉法人である某医療機関が、併設する特別養護老人ホームに入所している33名について、医師による診察及び理学療法士による運動療法を毎月25回行ったとした診療報酬の請求に基づき、再診料、理学療法料等の医療費を支払っていた。 しかし、同医療機関の医師が実際に診察した回数は毎月12回であり、また、運動療法は医師の指導監督のもとに行ったものでなければならないことになっており、この指導監督の回数も毎月12回となるから、これを超える請求はできないものであり、これに係る医療費4,533,100円の支払は適切を欠き、これに対する国庫負担2,427,187円は負担の要がなかったものである。 |
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(37)兵庫県 | 市 | 566 | 1,415 | 722 | 誤った診療報酬の請求に基づく支払 |
この事業主体では、某医療機関が、近隣の特別養護老人ホームに入所している32名について、往診を行いその回数を診察した者の数を基に729回とした診療報酬の請求に基づき、往診料等の医療費を支払っていた。 しかし、往診料の請求は往診として当該施設に赴いた回数163回を基に算出すべきであって、上記往診回数のうち566回の往診料は診療報酬として算定できないものであり、これに係る医療費1,415,000円の支払は適切を欠き、これに対する国庫負担722,637円は負担の要がなかったものである。 |
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(38)岡山県 | 市 | 2,232 | 1,112 | 667 | 誤った診療報酬の請求等に基づく支払 |
この事業主体では、社会福祉法人である某医療機関が、近隣の特別養護老人ホームに入所している者で湿疹、褥創等の皮膚系疾患を有している20名について、医師による診察の回数を延べ2,474回(月平均1人当たり22回)及び軟膏の塗布等の処置の回数を延べ2,173回(同20回)とした診療報酬の請求に基づき、再診時基本診療料、処置料等の医療費を支払っていた。 しかし、同医療機関の医師の行った診察の回数は延べ1,339回(同12回)であり、また、医師の行った処置の回数は延べ1,076回(同10回)であり、この実際の診療回数を超える回数に係る医療費1,112,540円の支払は適切を欠き、これに対する国庫負担667,125円は負担の要がなかったものである。 |
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(39)福岡県 | 市 | 208 | 3,762 | 2,019 | 架空の診療に基づく請求に対する支払 |
この事業主体では、某医療機関が、近隣の特別養護老人ホームに入所している者のうち約180名について、毎月診療をしているとした診療報酬の請求に基づき、医療費を支払っていた。 しかし、このうち27名に関する延べ208件については、この医療機関は診療を行っておらず、これに係る医療費3,762,900円の支払は適切を欠き、これに対する国庫負担2,019,928円は負担の要がなかったものである。 |
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(療養の給付等) | |||||
(40)大分県 | 町等 | 116 | 2,230 | 1,344 | 誤った診療報酬の請求に基づく支払 |
これらの事業主体では、某医療機関が、昭和61年7月における入院料等の診療報酬の算定に当たり、入院患者数が定数を超過していないとして健康保険法及び老人保健法に定める診療報酬点数表の点数によって算出した診療報酬の請求に基づき、入院料等の医療費を支払っていた。 しかし、同医療機関の同年6月における実際の入院患者数は定数を超過しているので、同年7月の室料、看護料及び入院時医学管理料の請求は、上記点数に100分の80を乗じて算定すべきであり、これを超えた請求に係る医療費2,230,343円の支払は適切を欠き、これに対する国庫負担1,344,764円は負担の要がなかったものである。 |
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計 | 4,576 | 25,620 | 14,128 |