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  • 昭和61年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第6 農林水産省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

畜産振興事業団の補助による畜産特別資金利子補給事業を適切に行うよう改善させたもの


(3) 畜産振興事業団の補助による畜産特別資金利子補給事業を適切に行うよう改善させたもの

科目 畜産振興事業団
(助成勘定) (款)助成事業費 (項)指定助成対象事業費
部局等の名称 農林水産省
畜産振興事業団
助成の根拠 畜産物の価格安定等に関する法律(昭和36年法律第183号)
事業の概要 畜産経営の改善安定等のために必要な低利資金を農業協同組合その他の融資機関が畜産経営者に融通した場合、畜産振興事業団の補助金によって、社団法人中央畜産会が当該融資機関に利子補給を行う事業
融資機関 農業協同組合等 352
利子補給対象者 畜産経営者 5,419人
上記に対する利子補給金交付額の合計 9,455,181,470円

 上記の利子補給金の交付に当たり、利子補給の対象となっている畜産経営者が経営を中止しているのに、その後も利子補給金1億9179万余円が交付されていて不適切となっており、ひいては畜産振興事業団の補助の目的に沿わない結果になっていると認められた。

 このような事態を生じているのは、農林水産省において、利子補給の対象となっている畜産経営者が経営を中止した場合の取扱いについて明確な方針を示していなかったことなどによるもので、取扱いを明確に定める要があると認められた。

 上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)
 農林水産省では、畜産物の価格安定等に関する法律(昭和36年法律第183号)に基づき、家畜等の生産の合理化及び振興を図るための指定助成対象事業の一環として農業協同組合その他の融資機関(以下「農協等」という。)が畜産経営の改善安定等のために必要な低利資金を畜産経営者に融通した場合、畜産振興事業団(以下「事業団」という。)に社団法人中央畜産会(以下「中央畜産会」という。)が行う当該農協等への利子補給に必要な資金の全額を補助させている。

 そして、農協等は、昭和56年度から60年度までの間に、上記利子補給の対象となっている酪農経営負債整理資金(貸付期間56年から80年まで)及び肉畜経営改善資金(同57年から64年まで。以下、これら資金を「畜産特別資金」という。)を、畜産経営者延べ19,634人に対し、1247億4976万余円貸し付けており、これに係る61年度までの中央畜産会の利子補給金交付額は162億5994万余円に上っている。

 この畜産特別資金に係る利子補給金は、農林水産省の事業実施要綱等に基づき、事業団が定めた事業助成実施要綱及び中央畜産会が定めた事業実施要領等により、事業主体の中央畜産会が事業団からの補助金(56年度から61年度までの交付額の累計271億9769万余円)により造成した基金を財源として農協等に対し交付されているものである。

 そして、この利子補給に係る貸付対象者は、上記要綱等において貸付けの対象となるものとされている家畜(以下「対象家畜」という。)を現に飼養する畜産経営者であって、当該経営を長期に継続する意欲を有する者などであるとされている。

 しかして、北海道ほか23府県(注) における352農協等では、56年度から60年度までの間に畜産特別資金を、畜産経営者5,419人に対し、709億7437万余円貸し付けており、これに対し、61年度までに中央畜産会では利子補給金94億5518万余円を交付しているが、これら畜産経営者を対象とした貸付けに係る利子補給金の交付状況について調査したところ、61年度末現在で、既に対象家畜の飼養をやめていて、当該対象家畜に係る畜産経営を中止していると認められるのに、その後においても、利子補給が行われているものが381人分あり、これらの者に対する貸付金に係る経営中止後の利子補給金交付額は1億9179万余円となっていた。

 このように、当該畜産経営が中止された後においても、継続して利子補給金が交付されていることは、本件利子補給が畜産経営の改善安定と体質強化を目的として実施されており、貸付対象となる畜産経営者は畜産経営を将来とも継続して行うことが前提となっていることなどからみて、本件利子補給ひいては事業団の補助の目的に反していて適切とは認められない。

 このような事態を生じているのは、農林水産省が事業団及び中央畜産会に対し、利子補給に係る貸付けの対象となっている畜産経営者が経営を中止した場合には、利子補給金の交付を停止する旨の明確な方針を示していなかったこと、経営中止者について、農協等から中央畜産会等に通知するようになっていなかったことなどによるものと認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、農林水産省では、62年10月に、同省が定めた事業実施要綱等において、経営中止者については利子補給金の交付を行わないようにする旨の改正を行い、この改正に基づき、事業団が定めた事業助成実施要綱においても上記同様の改正を行うとともに、農協等は経営中止者について中央畜産会等に通知するよう改定するなどして、利子補給金交付の適正化を図る処置を講じた。

(注)  北海道ほか23府県 北海道、京都府、青森、岩手、宮城、山形、茨城、神奈川、新潟、福井、長野、岐阜、滋賀、島根、広島、山口、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄各県