会計名及び科目 | 一般会計 (組織)建設本省 (項)住宅対策諸費 |
部局等の名称 | 建設本省、千葉県ほか8県 |
補助の根拠 | 農地所有者等賃貸住宅建設融資利子補給臨時措置法(昭和46年法律第32号) |
事業名 | 農地所有者等賃貸住宅建設融資利子補給事業 |
事業の内容 | 農業協同組合等の融資機関が農地所有者等に融通した特定賃貸住宅(2,997戸)の建設資金について国が行う利子補給 |
利子補給金の交付先 | 千葉県木更津市農業協同組合ほか53融資機関 |
上記に対する利子補給金交付額の合計 | 3,369,007,290円(昭和47年度〜61年度) |
上記の事業において、利子補給に係る融資金の融通を受けた農地所有者等が策定した計画が適切でなかったなどのため融資の対象となる賃貸住宅に係る団地の要件が未充足となっているものが124団地(利子補給契約額4,095,675,198円、昭和61年度までの交付済額3,369,007,290円)あり、事業の目的を十分達していない事態となっていると認められた。
このような事態を生じているのは、賃貸住宅を建設する農地所有者等において、計画の策定に当たり、賃貸住宅に対する需要動向の把握や関係者との合意形成が十分でなかったこと、県において計画に対する審査が十分行われていなかったり、団地建設着手後の指導監督が十分でなかったことなどによると認められ、事業実施の改善を図り、もって利子補給の目的の達成を期する要があると認められた。
上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。
(説明)
建設省では、農地所有者等賃貸住宅建設融資利子補給臨時措置法(昭和46年法律第32号。以下「法」という。)等の規定に基づき、住宅不足の著しい地域において、農地の所有者がその農地を転用して行う賃貸住宅の建設等に要する資金の融通について国が利子補給金を支給することにより、居住環境が良好で家賃が適正な賃貸住宅の供給を促進するとともに、市街化区域内の水田の宅地化に資することを目的として、所定の要件を満たす賃貸住宅(以下「特定賃貸住宅」という。)を建設する農地所有者等にその建設に要する資金を貸し付ける農業協同組合等の融資機関に対し農地所有者等賃貸住宅建設融資利子補給金を交付しており、その昭和61年度の交付額は25億0565万余円(47年度から61年度までの交付済額は209億1646万余円、特定賃貸住宅の建設済総戸数は25,972戸)に上っている。
この特定賃貸住宅は、大都市等の政令で定める都市計画区域に係る市街化区域において建設される賃貸住宅で、次の(1)〜(3)に掲げる条件(以下「団地要件」という。)のいずれにも該当する1団地の住宅の全部又は一部をなすと認められるものとされている。
(1) 1団地の面積が1ヘクタール以上であること又は1団地の住宅の戸数が50戸以上であること
(2) 1団地の面積に対する賃貸住宅の敷地の面積の割合が1団地の面積に対する住宅の敷地の面積の割合の2分の1以上であること又は住宅の戸数に対する賃貸住宅の戸数の割合が2分の1以上であること
(3) 1団地の面積の2分の1以上の面積又は0.5ヘクタール以上の水田の宅地化を伴うと認められること
この場合、団地要件の適用に当たっては、数年にわたり建設を行う計画については後年度計画を含めた全体の計画で要件を満たせば利子補給契約の対象とすることができるとされている。
そして、特定賃貸住宅の建設を行おうとする者は、農住利子補給契約締結申請書に、特定賃貸住宅が所在することとなる団地について、その賃貸住宅戸数、その他の住宅戸数、これらの所要敷地面積、水田の宅地化面積等団地要件が確保されるとする計画(以下「団地計画」という。)等を記載した団地計画概要書等を添付して都道府県に提出すること、一方、その者に対し融資を行おうとする融資機関は融資の相手方、融資額等を記載した農住利子補給契約締結申込書等を都道府県に提出すること、これらの提出を受けた都道府県は、その内容を審査し、法令等に適合していると認めたときは建設省に進達することとなっており、これを受けた建設省は審査のうえ、適当と認めたときは融資機関と利子補給契約(利子補給期間10年)を締結することとなっている。また、都道府県は、以上のほか、特定賃貸住宅の建設計画の策定、建設事業の施行管理等について積極的に指導を行うとともに、制度の円滑な運用に必要な指導監督を行うこととなっている。
しかして、本院において、埼玉県ほか13都県管内(注1) で、46年度から61年度までに本件利子補給に係る融資を受けて建設された特定賃貸住宅が、団地の住宅の全部又は一部をなしている563団地のうち、61年度末現在で利子補給契約締結後(当該団地に係る利子補給契約が複数締結されている場合は、最初の契約の締結後)5年以上経過している305団地(利子補給契約の相手方94融資機関、件数606件、契約額167億7601万余円、61年度までの交付済額143億3573万余円、特定賃貸住宅の建設済戸数12,645戸)について、前記団地要件の充足状況を調査したところ、団地要件のいずれか又は複数につき未充足となっている団地が、千葉県ほか8県(注2) で、次表のとおり、124団地(利子補給契約の相手方54融資機関、件数186件、契約額40億9567万余円、61年度までの交付済額33億6900万余円、特定賃貸住宅の建設済戸数2,997戸)見受けられた。
事態 |
団地数 | 特定賃貸住宅の建設済戸数 | 利子補給契約額 (うち61年度までの交付済金) |
(1) 1団地の面積が1ヘクタール未満で、住宅の戸数が50戸に達していないもの |
|
戸 |
円 |
(2) 1団地の面積に対する賃貸住宅の敷地の面積の割合が1団地の面積に対する住宅の敷地の面積の割合の2分の1に達せず、かつ、住宅の戸数に対する賃貸住宅の戸数の割合が2分の1に達していないもの | 14 | 612 | 840,805,839 (398,913,072) |
(3) 水田の宅地化された面積が1団地の面積の2分の1に達せず、かつ、0.5ヘクタール未満のもの | 48 | 1,042 | 1,541,041,526 (1,389,358,557) |
計 | 147 | 3,357 | 4,626,767,837 (3,813,908,536) |
純計 | 124 | 2,997 | 4,095,675,198 (3,369,007,290) |
そして、このうち、69団地(利子補給契約の相手方35融資機関、件数89件、交付済額20億1787万余円、特定賃貸住宅の建設済戸数1,595戸)は、団地要件のいずれか又は複数が未充足のまま利子補給期間(10年間)が終了してしまっており、また、83団地は、団地計画の初年度分1,379戸の建設が行われただけで、後年度分2,648戸が全く建設されていない状況となっていた。
しかして、上記124団地においては、利子補給に係る融資の対象となった住宅は建設されており、その面での効果があがってはいるものの、長期にわたりこれら要件が充足されないままとなっていることは、本事業の目的が居住環境が良好で家賃が適正な賃貸住宅の供給の促進及び水田の宅地化を計画的に形成される団地内で実現しようとするものであることからみて、利子補給の目的が十分達成されないこととなり、法の趣旨に照らし適切を欠くと認められた。
このような事態を生じているのは、農地所有者等の個人的事情の変化や社会経済情勢の変動にもよるが、農地所有者等において、団地計画の策定に当たり、団地の立地条件、周辺の賃貸住宅の需要動向等の調査が十分行われていなかったり、申請者以外の賃貸住宅建設予定者など関係者の意思が必ずしも明確でないまま計画が作成されたりしていること、県において、計画の審査、特に後年度にわたる計画の確実性についての検討が十分行われていないこと、団地建設着手後の団地形成状況の調査が不十分で実情に応じた指導監督が十分に行われていないことなどによると認められ、建設省において、団地計画の確実な実施を図るための方途を講じるなどして、事業実施の改善を図り、もって利子補給の目的の達成を期する要があると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、建設省では、62年11月に、都道府県に対し「農地所有者等賃貸住宅建設融資利子補給事業の適切な実施について」の通達を発するなどして、都道府県において、申請者が適切な計画を策定するよう指導を強化するとともに、農業協同組合等の融資機関から意見書を徴するなどして審査を充実することとし、また、団地建設着手後の現況等に即し、農地所有者等に対し適切な指導を行うよう指導するとともに、都道府県からの進達の際その審査意見書を徴して利子補給契約の締結時の審査を強化する処置を講じた。
(注1) 埼玉県ほか13都県 東京都、埼玉、千葉、神奈川、石川、長野、岐阜、静岡、愛知、滋賀、兵庫、奈良、山口、徳島各県
(注2) 千葉県ほか8県 千葉、神奈川、石川、長野、岐阜、静岡、愛知、兵庫、徳島各県