ページトップ
  • 昭和61年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第3 農林漁業金融公庫|
  • 不当事項|
  • 貸付金

農業基盤整備資金等の貸付けが不当と認められるもの


(108)−(116) 農業基盤整備資金等の貸付けが不当と認められるもの

科目 貸付金
部局等の名称 秋田、東京、長野、新潟、東海、熊本各支店
受託金融機関 秋田県信用農業協同組合連合会ほか4金融機関
貸付けの根拠 農林漁業金融公庫法(昭和27年法律第355号)
貸付金の種類 農業基盤整備資金、総合施設資金、林業経営育成資金、漁船資金、農林漁業構造改善事業推進資金、沿岸漁業構造改善事業推進資金、農林漁業施設資金
貸付けの内容 農林漁業者に対する農業基盤整備資金等の貸付け
貸付件数 9件
貸付金の合計額 129,366,279円

 上記の貸付けは、貸付けの目的に沿わない結果になっていて、貸付金62,198,637円が不当と認められる。これを貸付先別に掲げると別表 のとおりである。

(説明)
 農林漁業金融公庫(以下「公庫」という。)では、農林漁業者に対して、農林漁業の生産力の維持増進に必要な長期かつ低利の資金で、一般の金融機関から融通を受けることが困難な資金を直接又は金融機関に委託して貸し付けている。

 このうち、公庫が直接貸付けを行う場合は、公庫が借入申込書類を審査して、所定の条件を満たしていると認めたものについて貸し付け、完成状況、事業費の支払状況等によって貸付金の使途などを確認することとしており、また、金融機関に委託して貸付けを行う場合は、受託金融機関が借入申込書類の審査を行い、一部の資金については公庫が貸付決定を行うこととしているが、そのほかは受託金融機関が公庫の直接貸付けの場合に準じて上記の貸付け等の事務を行うこととしている。

 しかして、上記の貸付け9件についてみると、借入者から事実と相違した内容の借入申込みや報告がなされていたり、借入者から貸付対象施設の処分についての申出がなされていたりしているにもかかわらず、これに対する審査及び確認が適切でなかったなどのため、貸付対象とならない事業に対して貸し付けていたり、貸付金額を過大に算定していたり、貸付対象施設の処分に伴う貸付金の繰上償還の措置を執っていなかったりしていて貸付けが不当と認められるものが62,198,637円見受けられた。

(別表)

支店名
(受託金融機関名)
貸付先
(所在地)
貸付対象 貸付
昭和年月
(貸付利率)
貸付対象事業費 左に対する貸付金額 貸付金額のうち不当と認めた額 摘要
千円 千円 千円
 (農業基盤整備資金)
(108) 新潟支店 農業協同組合 ほ場整備 61.12
(年3.5%)
15,250 15,250 6,833 低額実施
新潟県信用農業協同組合連合会 転貸先
農業者
転貸先所在地両津市
 この貸付けは、ほ場2.1haの整備に必要な資金として15,250,000円を貸し付けたもので、転借者は貸付対象事業費どおりの額で実施したとしていたが、実際は、これより低額な8,417,000円で実施しており、これにより適正な貸付金額を計算すると8,417,000円となるので、本件貸付金額との差額6,833,000円が過大な貸付けとなっている。
 なお、本件の不当貸付金額については、本院の注意により、昭和62年9月に繰上償還の措置が執られた。
 (総合施設資金)
(109) 秋田支店 農業者 畜舎の新築等 60.9 28,748 23,000 3,697 低額実施
秋田県信用農業協同組合連合会 (湯沢市在住) (年5.0%)
 この貸付けは、用地712.72m2 の造成、肥育豚舎1棟575.48m2 の新築及び付帯設備一式の設置に必要な資金28,748,000円の一部として23,000,000円を貸し付けたもので、借入者は貸付対象事業費どおりの額で実施したとしていたが、実際は、これより低額な24,127,900円で実施しており、これにより適正な貸付金額を計算すると19,302,320円となるので、本件貸付金額との差額3,697,680円が過大な貸付けとなっている。
 なお、本件の不当貸付金額については、本院の注意により、昭和62年7月に繰上償還の措置が執られた。
 (林業経営育成資金)
(110) 秋田支店 森林組合 森林の取得 60.11
(年3.5%)
15,000 12,000 10,726 貸付対象外
(農林中央金庫) 転貸先
林業者
転貸先所在地秋田県河辺郡河辺町

 この貸付けは、転借者による森林17.43ha(林齢15年以下の人工林15.17ha及び造林のための土地2.26ha)の取得に必要な資金15,000,000円の一部として12,000,000円を貸し付けたもので、この森林の取得が林齢15年以下の人工林及び造林のための土地の取得に該当するとしていたが、実際は、17.43haのうち、0.93haが林齢22年以上の人工林であり、14.65haが沢地、急傾斜地等の造林不適地であるため、これらの合計15.58haは貸付けの対象にならないものであり、これにより適正な貸付金額を計算すると1,273,666円となるので、本件貸付金額との差額10,726,334円が過大な貸付けとなっている。
 なお、本件の不当貸付金額については、本院の注意により、昭和62年6月に繰上償還の措置が執られた。

(111) 東京支店 森林組合 森林の取得 60.8
(年3.5%)
13,800 11,000 11,000 貸付対象外
(農林中央金庫) 転貸先
林業者
転貸先所在地山梨県南巨摩郡鰍沢町
 この貸付けは、転借者による森林4.2ha(すべて林齢15年の人工林)の取得に必要な資金13,800,000円の一部として11,000,000円を貸し付けたもので、この森林の取得が林齢15年以下の人工林の取得に該当するとしていたが、実際は、この森林は全面積が林齢21年以上の人工林であるので、本件事業は貸付けの対象にならない。
 なお、本件の不当貸付金額については、本院の注意により、昭和62年10月に繰上償還の措置が執られた。
(112) 熊本支店 森林組合 森林の取得 61.11
(年3.5%)
13,000 9,000 4,192 貸付対象外
(農林中央金庫) 転貸先
林業者
転貸先所在地熊本県上益城郡御船町
 この貸付けは、転借者による森林6.75ha(すべて林齢15年の人工林)の取得に必要な資金13,000,000円の一部として9,000,000円を貸し付けたもので、この森林の取得が林齢15年以下の人工林の取得に該当するとしていたが、実際は、このうち3.63haは林齢26年以上の人工林であるため貸付けの対象にならないものであり、これにより適正な貸付金額を計算すると4,807,111円となるので、本件貸付金額との差額4,192,889円が過大な貸付けとなっている。
 なお、本件の不当貸付金額については、本院の注意により、昭和62年10月に繰上償還の措置が執られた。
 (漁船資金)
(113) 東京支店 漁業者
(焼津市)
海外まき網漁船の建造 57.3
(年8.0%)
860,000 600,000 13,698 債権管理不適切
うち指摘対象上記漁船に搭載するスキフボートの建造

うち指摘対象分 うち指摘対象分
23,100 16,116
 この貸付けは、海外まき網漁船の建造に必要な資金860,000,000円の一部として600,000,000円を貸し付けたもので、このうちには同船が搭載する鋼製スキフボート1隻の建造に係る貸付金相当額16,116,279円が含まれているが、その後、借入者は、このスキフボートの性能が低下したため、新スキフボートに取り替える必要があるとして資金の借入れを申し込み、公庫では昭和60年10月にその建造資金を貸し付けている。
 しかして、借入者は本件スキフボートを同年10月に処分しているので、これに係る貸付金残高相当額13,698,838円は貸付けの目的を失っており、このことは、新スキフボート建造資金の借入申込みにおける本件スキフボートの処分の申出により明らかであったのに、公庫では繰上償還の措置を執っていない。
 なお、本件の不当貸付金残高相当額12,033,488円については、本院の注意により、62年10月に繰上償還を請求し、うち3,000,000円については同月に繰上償還された。
 (農林漁業構造改善事業推進資金)
(114) 長野支店 農業協同組合 花き温室の新築 60.12
(年3.5%)
30,500 22,000 4,457 低額実施
野県信用農業協同組合連合会 転貸先
農業者
転貸先所在地塩尻市
 この貸付けは、花き温室1棟1,123.2m2 の新築に必要な資金30,500,000円の一部として22,000,000円を貸し付けたもので、転借者は貸付対象事業費どおりの額で実施したとしていたが、実際は、割戻しを受けるなどして21,927,630円で実施しており、これにより適正な貸付金額を計算すると17,542,104円となるので、本件貸付金額との差額4,457,896円が過大な貸付けとなっている。
 なお、本件の不当貸付金額については、本院の注意により、昭和62年8月に繰上償還の措置が執られた。
 (沿岸漁業構造改善事業推進資金)
(115) 東海支店 漁業協同組合 海苔乾燥機の取得 58.11
(年3.5%)
6,400 5,000 4,200 債権管理不適切
三重県信用漁業協同組合連合会 転貸先
漁業者
転貸先所在地鳥羽市
 この貸付けは、半自動海苔乾燥機の取得に必要な資金6,400,000円の一部として5,000,000円を貸し付けたものであるが、その後、転借者は経営の効率化を図るため、この乾燥機を全自動海苔乾燥機に取り替える必要があるとして資金の借入れを申し込み、公庫では昭和61年10月にその取得資金を貸し付けている。
 しかして、転借者は半自動海苔乾燥機を同年9月に処分しているので、これに係る貸付金残高4,200,000円は貸付けの目的を失っており、このことは、全自動海苔乾燥機取得資金の借入申込みにおける半自動海苔乾燥機の処分の申出により明らかであったのに、公庫では繰上償還の措置を執っていない。
 なお、本件の不当貸付金残高4,200,000円については、本院の注意により、62年2月に繰上償還の措置が執られた。

 (農林漁業施設資金)

(116) 長野支店 農業協同組合 養魚池等の新設 61.5
(年4.85%)
21,460 16,000 3,392 低額実施
長野県信用農業協同組合連合会 転貸先
漁業者
転貸先所在地上田市
 この貸付けは、鮎の養魚池272m2 等の新設に必要な資金21,460,000円の一部として16,000,000円を貸し付けたもので、転借者は貸付対象事業費どおりの額で実施したとしていたが、実際は、これより低額な15,760,000円で実施しており、これにより適正な貸付金額を計算すると12,608,000円となるので、本件貸付金額との差額3,392,000円が過大な貸付けとなっている。
 なお、本件の不当貸付金額については、本院の注意により、昭和62年11月に繰上償還の措置が執られた。
167,258 129,366 62,198