科目 | (款)業務費 | (項)高速道路建設費 | (項)受託業務費 |
(項)負担金等受入建設費 | |||
部局等の名称 | 阪神高速道路公団本社、大阪第二建設部 | ||
工事名 | 大浜出入路(その1)鋼桁工事ほか46工事 | ||
工事の概要 | 高速道路建設事業の一環として、高架橋の鋼製桁及び鋼製門型橋脚等を製作、架設する工事 | ||
工事費 | 77,943,280,000円(当初契約額72,809,063,000円) | ||
請負人 | 横河・高田建設工事共同企業体ほか27共同企業体及び松尾橋梁株式会社ほか14会社 | ||
契約 | 昭和57年9月〜61年12月 指名競争契約又は随意契約 |
上記の各工事において、鋼製桁等の部材接合に用いる高力ボルト(注) の締付け費等の積算が適切でなかったため、積算額が約7100万円過大になっていた。
このように積算額が過大になっているのは、高力ボルトの締付け作業に当たり、近年、作業能率の高いトルシア形高力ボルト(以下「トルシアボルト」という。)の使用割合が増加するなどしていたり、鋼製門型橋脚の脚柱間に架設する横梁(以下「中間横梁」という。)の架設に当たり、ベント(鋼製の支保工。図−1参照 )を使用しないで中間横梁を架設しているものが増加していたりしているのに、これらを積算の基準に反映させていなかったことによるもので、施工の実態に即した積算をする要があると認められた。
上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。
(説明)
阪神高速道路公団(以下「公団」という。)では、高速道路等の建設工事を毎年多数実施しているが、このうち、昭和61事業年度に施行している高架橋の鋼製桁及び鋼製門型橋脚等の製作、架設工事47工事(工事費総額779億4328万円)について検査したところ、次のとおり、鋼製桁等の部材接合に用いる高力ボルトの締付け費及び鋼製門型橋脚の中間横梁架設用のベント費の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。
(1) 高力ボルトの締付け費について
上記47工事の高力ボルトの締付け費の積算は、公団が制定した土木工事設計積算基準及び標準歩掛(以下「積算基準」という。)に基づき、高力ボルトの締付けに要する1日当たりの労務費及び機械損料の合計額を、1日当たりの高力ボルトの締付け本数1,600本で除したものに工事規模による補正を行って、1本当たりの高力ボルトの締付け費を80円から101円と算出し、この単価に各工事における高力ボルトの締付け本数を乗じ、47工事における総本数4,936,021本で総額4億4621万余円と算定していた。
しかして、上記積算基準において、その締付け本数を1日当たり1,600本としているのは、公団において、55、56両事業年度に施工中の工事について施工状況を調査したところ、高力ボルトは、高力六角ボルト(以下「六角ボルト」という。)とトルシアボルトの2種類が使用されていて、1日当たりの締付け本数は、六角ボルトにあっては1,066本、トルシアボルトにあっては1,777本となっており、その使用割合は、六角ボルト24%に対し、トルシアボルト76%であったので、この割合により1日当たりの締付け本数を加重平均して定めたものであるとしている。
しかしながら、上記2種類の高力ボルトの締付け作業内容等を対比してみると、六角ボルトは、電動締付け機又は人力により施工するが、電動締付け機の場合であってもボルトの締付け後にその締付け力の検査を要するなどのため、締付け作業能率が低いのに比べ、トルシアボルトは、電動締付け機による締付け作業時に所定の締付け力が得られればボルトのピンテールが切断される構造になっていこるとから、締付け力の検査はピンテールの切断を目視により確認すれば足りるなどのため、締付け作業能率が高いこと、近年、生産量が増加していて1本当たりの価格も六角ボルトに比べ廉価となっていることから、トルシアボルトを使用できない場合に限って六角ボルトを使用することとするのが経済的であると認められた。
現に、施工の実態を調査したところ、六角ボルトは、主としてボルトの締付け箇所に障害物が多く、電動締付け機による施工が困難な箇所に使用されているだけで、その他の箇所にはすべてトルシアボルトが使用されていて、その使用割合は、六角ボルト8%に対しトルシアボルトが92%と著しく増加していた。 そして、1日当たりの締付け本数は六角ボルトにあっては1,001本、トルシアボルトにあっては1,800本となっていたので、これらを両者の使用割合により加重平均すると高力ボルト1日当たりの締付け本数は1,700本となり、これにより高力ボルトの締付け費を算出したとすれば1本当たり73円から92円となる。
(2) 鋼製門型橋脚のベント費について
前記47工事のうち、浜寺工区鋼製橋脚工事ほか12工事の鋼製門型橋脚の中間横梁架設用のベント費の積算は、前記積算基準に基づき、中間横梁をトラッククレーンで吊り上げベントで支える方法で施工することとし、そのベント費を鋼製門型橋脚の架設重量1t当たり2,868円から5,193円と算出し、この単価に各工事における鋼製門型橋脚の架設重量を乗じ、鋼製門型橋脚39基分の架設重量12,997.275tで総額4739万余円と算定していた。
しかして、従来、鋼製門型橋脚は、交差点をまたぐなど脚柱の間隔が広い場合に採用されていて、中間横梁の架設については、前記積算基準において、すべてベントで支えて架設することとしていたが、これは脚柱の間隔が広いことから、中間横梁は二つの部材を連結する構造となっていて、架設方法としては、中間横梁の部材の一つをトラッククレーンで吊り上げてその一端を脚柱に接合し、これを下からベントで支えながら、もう一つの部材をトラッククレーンで吊り上げたままでもう一方の脚柱に接合することとしたことによるものである(図−1参照) 。
しかしながら、近年、脚柱の間隔が狭い場合でも、く体重量を軽減するなどの目的から、鉄筋コンクリート橋脚に代え鋼製橋脚が採用されてきており、この場合、中間横梁は短くなることから、一つの部材で設計する場合がほとんどで、特にベントの支えがなくてもこれをトラッククレーンで吊り上げたままで架設する(図−2参照) ことが可能となっているのに、積算基準にこのような架設方法による場合の定めがなかったため、前記39基のうち、脚柱の間隔が狭い場合の橋脚29基分について、ベントを使用するものとしてそのベント費を3433万余円と積算していたのは適切とは認められない。
現に、鋼製門型橋脚の架設方法について施工の実態を調査したところ、脚柱の内側の間隔が20m以下のものについては、現場条件等が特殊なものを除き中間横梁は一つの部材で設計、施工されていて、いずれもベントを使用しないでトラッククレーンのみで架設している状況であり、また、これと同種の鋼製門型橋脚工事を多数施行している他団体の積算基準においては、架設費はベント費を計上することとなっていない状況である。
いま、仮に上記各工事の高力ボルトの締付け費及び鋼製門型橋脚のベント費の積算について施工の実態に即して積算したとすれば、積算額を高力ボルトの締付け費において約3700万円、鋼製門型橋脚のベント費において約3400万円、計約7100万円低減できたと認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、阪神高速道路公団では、62年10月に高力ボルト締付け歩掛かり及び鋼製門型橋脚のベントの使用に関する積算基準の内容を施工の実態に適合したものに改め、同年11月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。
(注) 高力ボルト 接合する材と材とを強く締め付け、接合面の摩擦力によって両者を固定する高張力鋼製のボルトであり、ボルト頭部が円形でボルト尾部につかみ部(ピンテール)を有し、所定の締付け力に達するとピンテールが切断するようになっているトルシア形高力ボルトと、ボルト頭部が六角になっていて、ボルトを固定しながら締め付ける高力六角ボルトがある。