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  • 昭和61年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第9 中小企業事業団|
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  • 貸付金

中小企業高度化資金の貸付けが不当と認められるもの


(117)−(122) 中小企業高度化資金の貸付けが不当と認められるもの

科目 貸付金
部局等の名称 中小企業事業団(昭和55年10月1日以前は「中小企業振興事業団」)
貸付けの根拠 中小企業事業団法(昭和55年法律第53号)等
貸付けの内容 中小企業者に対し中小企業高度化資金の貸付けを行う都道府県に対する資金の貸付け
貸付先 福島県ほか4県
貸付金額 2,651,700,000円
県の貸付先及び貸付金額 8中小企業者 3,611,372,000円

 上記の8中小企業者に対する3,611,372,000円の貸付けにおいて、371,284,785円の貸付けが不当と認められ、ひいては中小企業事業団の貸付金相当額276,410,507円が貸付けの目的に沿わない結果になっていると認められるものが、別表 のとおりある。

(説明)
 中小企業事業団(以下「事業団」という。)では、中小企業者が企業規模の適正化、事業の共同化、工場・店舗等の集団化等を図るための事業の用に供する土地、建物その他の施設の取得等を行う場合に、これに必要な資金として中小企業高度化資金の貸付けを行う都道府県に対して、その財源の一部を貸し付けており、その貸付条件は、貸付利率を無利子から年4.1%、償還期限を16年以内とし、都道府県はこの借入金に自己資金を合わせて中小企業者に貸し付けていて、その貸付条件は、貸付利率を無利子又は年2.7%、償還期限を上記と同様16年以内としていて、極めて低利かつ長期のものとなっている。そして、事業団が都道府県に貸し付ける場合は、あらかじめ都道府県において借入申込者の事業計画に対する診断を実施し、事業団で当該事業計画の内容を審査したうえ妥当と認めたものについて貸し付けることとしている。

 しかして、上記の貸付けについて調査したところ、事業団及び福島県ほか4県において、貸付けに当たっての審査を的確に行っていなかったり、貸付け後の管理が適切を欠いたりしていたなどのため、貸付けの対象とならないものに対して貸し付けていたり、貸付対象施設が貸付けの目的外に使用されていたりなどしていて、371,284,785円の貸付けが不当と認められ、ひいては事業団の貸付金相当額276,410,507円が貸付けの目的に沿わない結果になっていると認められる。

(別表)

県名 県の貸付先
(所在地)
貸付対象 貸付
昭和年月
(貸付利率)
償還期限昭和年月 貸付金額
左のうち不当と認めた貸付金相当額 貸付けの目的に沿わない結果になった事業団の貸付金相当額 摘要
同上に対する事業団の貸付金相当額
千円 千円 千円
 (店舗等集団化事業)
(117) 福島県 協同組合卸センター
(須賀川市)
土地 53.12
(年2.7%)
68.12 414,210
(267,643)
21,242 13,725 目的外使用
組合会館等 55.2
(年2.7%)
69.12 73,650
(47,587)
卸売業者
(同)
店舗等 55.2
(年2.7%)
69.12 59,420
(38,394)
48,810 31,538
小計 547,280
(353,624)
70,052 45,264
 この貸付けは、協同組合に対し、土地39,600.6m2 の取得及び共同施設(組合会館及び倉庫330.3m2 等)の設置に必要な資金811,366,000円(うち貸付対象事業費分750,605,000円)の一部として、また、組合員である卸売業者に対し、上記土地の一部2,475.2m2 に店舗及び倉庫延べ1,440.4m2 等を設置するために必要な資金91,580,000円(うち貸付対象事業費分91,428,000円)の一部として、それぞれ貸し付けたものであるが、当該組合員は、昭和60年10月から貸付対象の店舗、倉庫等を組合員以外の者に賃貸していた。

 したがって、当該店舗、倉庫等及びその敷地(賃貸開始時の貸付金残高相当額70,052,490円、うち事業団の貸付金相当額45,264,234円)は、貸付けの目的外に使用されていたものである。
 なお、本件の不当貸付金残高55,571,271円(事業団の貸付金相当額35,907,229円)については、本院の注意により、繰上償還の措置を執ることになった。

(118) 山口県 卸団地協同組合
(下関市)
店舗等 57.12から
60.10まで
(年2.7%)
72.12から
75.10まで
1,100,156
(864,405)
11,009 8,650 低額設置
 この貸付けは、組合会館、店舗及び倉庫延べ21,707.15m2 等の設置に必要な資金1,614,018,700円(うち貸付対象事業費分1,571,658,000円)の一部として6回にわたり貸し付けたもので、借入者は、1,614,018,700円で設置したとしているが、実際は、割戻しを受けて1,597,900,883円(うち貸付対象事業費分1,555,930,073円)で設置していた。
 したがって、適切な貸付金額は1,089,146,499円となり、本件貸付金額1,100,156,000円との差額11,009,501円が過大な貸付けとなっている。
 なお、本件の不当貸付金残高10,408,329円(事業団の貸付金相当額8,177,940円)については、本院の注意により、繰上償還の措置を執ることになった。
 (貨物自動車ターミナル等集団化事業)
(119) 岩手県 流通輸送センター協同組合
(紫波郡矢巾町)
土地 55.3
(年2.7%)
69.9 401,100
(315,150)
87,042 68,390 貸付対象外
運送業者
(盛岡市)
事務所等 56.9
(年2.7%)
71.6 78,500
(61,670)
78,500 61,670
小計 479,600
(376,820)
165,542 130,060
 この貸付けは、協同組合に対し、土地33,164.74m2 の取得に必要な資金574,413,296円(うち貸付対象事業費分574,413,000円)の一部として、また、組合員である運送業者に対し、上記土地の一部7,197.08m2 に事務所及び車庫延べ994.25m2 等を設置するために必要な資金114,057,800円(うち貸付対象事業費分112,280,000円)の一部として、それぞれ貸し付けたものであるが、当該組合員は、大企業から資本金の50%以上の出資を受けていて、貸付対象とはならない者であった。 したがって、当該事務所、車庫等及びその敷地(貸付金相当額165,542,456円、うち事業団の貸付金相当額130,060,501円)は、貸付けの対象とならないものである。
 なお、本件の不当貸付金残高109,637,227円(事業団の貸付金相当額86,140,321円)については、本院の注意により、繰上償還の措置を執ることになった。
(120) 岩手県 トラック事業協同組合
(北上市)
土地 55.3
(年2.7%)
69.9 332,100
(260,930)
41,456 32,572 貸付対象外
運送業者
(盛岡市)
事務所等 56.3
(年2.7%)
70.9 15,400
(12,100)
15,400 12,100
小計 347,500
(273,030)
56,856 44,672
 この貸付けは、協同組合に対し、土地26,595.20m2 の取得に必要な資金476,830,000円(うち貸付対象事業費分474,457,000円)の一部として、また、組合員である運送業者に対し、上記土地の一部3,319.91m2 に事務所及び車庫延べ225.96m2 等を設置するために必要な資金22,030,000円(貸付対象事業費同額)の一部として、それぞれ貸し付けたものであるが、当該組合員は、大企業から資本金の50%以上の出資を受けていて、貸付対象とはならない者であった。 したがって、当該事務所、車庫等及びその敷地(貸付金相当額56,856,529円、うち事業団の貸付金相当額44,672,273円)は、貸付けの対象とならないものである。
 なお、本件の不当貸付金残高34,446,975円(事業団の貸付金相当額27,064,492円)については、本院の注意により、繰上償還の措置を執ることになった。
(121) 兵庫県 運輸事業協同組合
(西宮市)
土地 51.12
(年2.7%)
66.11 676,514
(437,132)
34,531 22,312 目的外使用
保管庫、事務所、構築物等 53.5
(年2.7%)
67.11 352,902
(277,280)
28,221 22,174 目的外使用及び無断処分
小計 1,029,416
(714,412)
62,753 44,487
 この貸付けは、土地37,393.65m2 の取得及び保管庫、事務所等の建物延べ4,457.83m2 等の設置に必要な資金1,672,181,914円(うち貸付対象事業費分1,544,939,000円)の一部として貸し付けたものである。 しかし、

(1) 借入者は、土地986.80m2 (貸付対象事業費29,843,689円)、保管庫(鉄骨造り平屋建て)及び事務所(鉄骨造り2階建て)延べ321.84m2 等(貸付対象事業費22,526,075円)を組合員1名に使用させていたが、同組合員は、昭和60年2月から保管庫、事務所等を組合員以外の者に賃貸するなどしていた。

(2) 借入者は、土地997.91m2 (貸付対象事業費30,179,687円)、保管庫(鉄骨造り平屋建て)及び事務所(鉄骨造り2階建て)延べ321.22m2 等(貸付対象事業費22,515,185円)を組合員1名に使用させていたが、同組合員は、57年1月から保管庫、事務所等を組合員以外の者に賃貸するなどしていた。

(3) 借入者は、土地698.86m2 (貸付対象事業費21,135,550円)、事務所(鉄骨造り2階建て)延べ51.84m2 等(貸付対象事業費7,180,460円)を組合員1名に使用させていたが、同組合員は、60年10月、同事務所を無断で取り壊し、上記土地に自己資金で保管庫(鉄骨造り2階建て)延べ1,233.16m2 を設置し、61年1月からその保管庫を組合員以外の者に賃貸するなどしていた。

 したがって、上記(1)、(2)、(3)に係る保管庫、事務所等及びその敷地(賃貸開始時又は取壊し時の貸付金残高相当額計62,753,854円、うち事業団の貸付金相当額計44,487,281円)は、貸付けの目的外に使用されていたなどのものである。
 なお、本件の不当貸付金残高40,238,432円(事業団の貸付金相当額28,548,282円)については、本院の注意により、繰上償還の措置を執ることなった。

 (共同施設事業)
(122) 福岡県 運輸事業協同組合
(福岡市)
車両位置等自動表示センター装置等 59.11
(年2.7%)
71.8 107,420
(69,409)
5,069 3,275 事業の一部不実施
 この貸付けは、車両位置等自動表示センター装置一式、前進受信局5基、予備品のレピータ基板5枚等の設置に必要な資金187,763,000円(うち貸付対象事業費分165,263,000円)の一部として貸し付けたもので、借入者は、前進受信局については5基(貸付対象事業費17,500,000円)、レピータ基板については5枚(貸付対象事業費2,000,000円)を設置したとしていたが、実際は、前進受信局については3基が設置されただけで残余の2基は設置されておらず、また、これに伴い、設置されていなかった前進受信局に係るレピータ基板2枚についても貸付けの要はなかったものである。

 したがって、適切な貸付金額は102,350,045円となり、本件貸付金額107,420,000円との差額5,069,955円が過大な貸付けとなっている。
 なお、本件の不当貸付金残高5,069,954円(事業団の貸付金相当額3,275,930円)については、本院の注意により、昭和62年7月、繰上償還の措置が執られた。

3,611,372
(2,651,700)
371,284 276,410