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  • 昭和63年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第1 総理府|
  • (防衛庁)|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

防衛大学校を卒業した幹部候補者に対する退職手当の支給を合理的なものとするよう意見を表示したもの


防衛大学校を卒業した幹部候補者に対する退職手当の支給を合理的なものとするよう意見を表示したもの

会計名及び科目 一般会計(組織)防衛本庁(項)防衛本庁
部局等の名称 陸上自衛隊幹部候補生学校
海上自衛隊幹部候補生学校(支払部局 同第1術科学校)
航空自衛隊幹部候補生学校
概要 退職者に対して国家公務員退職手当法(昭和28年法律第182号)の規定により支給される退職手当
支給の相手方及び金額 昭和63年卒業生 29人 5,493,120円
平成元年卒業生 24人 4,559,040円
合計 53人 10,052,160円

 防衛大学校を卒業して自衛官に任用された幹部候補者は、上記の各学校において初級幹部としての職務を遂行するのに必要な教育訓練を受けている。そして、防衛大学校を卒業した者で自衛官に任用されることを辞退した者等(以下「非任官者」という。)に対しては退職手当が支給されていないが、いったん自衛官に任用された者に対しては、任用後6月未満の短期間で退職しても、上記の各学校において退職手当が支給されている。
 しかしながら、このように短期間で退職した者は、将来の幹部自衛官となるべき者として防衛大学校で修得した知識、技能等を自衛官としての職務にほとんど生かしていないという点で非任官者と同様と認められることから、これらの者に対する退職手当の支給は合理性を欠く事態と認められる。
 このような事態は、防衛庁職員給与法(昭和27年法律第266号)において、防衛大学校を卒業した自衛官に対する退職手当の算定上、学生としての在職期間を通算する場合の要件を引き続いて自衛官に任用されたこととしているだけで、自衛官としての在職期間を考慮していないことによるものであると認められる。
 したがって、防衛庁において、早期退職者に対する退職手当の支給を合理的なものとするよう適切な処置を講ずる要がある。

 上記に関し、平成元年11月17日に防衛庁長官に対して意見を表示したが、その全文及びこれに対する防衛庁の処置状況は以下のとおりである。

 防衛大学校を卒業した幹部候補者に対する退職手当の支給について

 貴庁では、防衛庁設置法(昭和29年法律第164号)第17条に基づき防衛大学校(以下「防大」という。)を設置し、将来、陸上、海上及び航空自衛隊の幹部自衛官となるべき者に対し、必要な知識、技能等を与えることを目的として教育訓練を行っている。
 そして、この防大を卒業した者は、卒業の日に、陸上、海上又は航空自衛隊の自衛官に任用され、さらに半年から1年の間、幹部自衛官の候補者(以下「幹部候補者」という。)として、各自衛隊に設置されている幹部候補生学校において、初級幹部としての職務を遂行するのに必要な知識及び技能を修得するための教育訓練を受けることとされている。
 しかして、本院において、これら防大を卒業した幹部候補者について調査したところ、次のような事態が見受けられた。

 すなわち、防大を卒業した者の中には、自衛官に任用されることを辞退し又は身体的な理由などにより他に転身することを承認された者(以下「非任官者」という。)が昭和63年の卒業者404人中40人、平成元年の卒業者447人中58人おり、これらの者に対しては、防衛庁職員給与法(昭和27年法律第266号。以下「給与法」という。)第28条の2第4項本文に「学生に対する国家公務員退職手当法の規定の適用については、学生としての在職期間は、同法第7条の勤続期間から除算する。」と規定されていることにより、退職手当が支給されないこととなっている。一方、防大を卒業し自衛官に任用された幹部候補者の中には、任用後6月未満の短期間のうちに退職した者(以下「早期退職者」という。)がおり、これらの早期退職者に対しては、給与法第28条の2第4項ただし書に「ただし、その者が学生としての正規の課程を終了し、引き続いて自衛官に任用された場合に限り、学生としての在職期間の2分の1に相当する期間は、自衛官としての在職期間に通算する。」と規定されていることにより、国家公務員退職手当法(昭和28年法律第182号)に基づく退職手当が支給されていて、その退職者数及び退職手当の支給額は、昭和63年において29人5,493,120円、平成元年において24人4,559,040円、計53人10,052,160円となっていた。

 しかるに、上記の早期退職者53人は、自衛官に任用されながら幹部候補生学校に入校することなく退職していたり、入校はしたものの短期間のうちに退職していたりした者であって、将来の幹部自衛官となるべき者として防大で修得した知識、技能等を自衛官としての職務にほとんど生かしていないという点で非任官者と同様と認められるものであり、これらの者に対して退職手当が支給されていることは、早期退職者が、防大を卒業後、自衛官に任用されているという点で上記の非任官者とは身分を異にしていることを考慮してもなお、合理性を欠く事態となっていると認められる。そして、このような事態は、給与法において、防大を卒業した自衛官に対する退職手当の算定に当たり、引き続いて自衛官に任用されたことのみを在職期間に通算する要件とし、自衛官としての在職期間を考慮していないことによるものであるが、早期退職者の数が、昭和63年の任官者では29人、平成元年の任官者では24人と、近年、多数に上っていて、看過できない状況にあると認められる。
 ついては、上記の事態にかんがみ、貴庁において、これら早期退職者に対する退職手当の支給を合理的なものとするよう適切な処置を講ずる要があると認められる。

よって、会計検査院法第36条の規定により、上記の意見を表示する。

 上記のとおり意見を表示したところ、防衛庁では、防衛大学校を卒業した自衛官に対する退職手当の算定に当たり、学生としての在職期間を通算する場合の要件を自衛官としての在職期間が原則として6月以上となった場合とすることなどを内容とする防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案を作成した。同法律案は、平成元年11月28日に閣議決定され、第116回国会に提出された。