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  • 昭和63年度|
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国民年金の母子年金の支給が適正でなかったもの


(20) 国民年金の母子年金の支給が適正でなかったもの

会計名及び科目 国民年金特別会計(国民年金勘定)(項)国民年金給付費
部局等の名称 北海道ほか9府県(29社会保険事務所)、社会保険庁
支給の相手方 52人
母子年金の支給額の合計 205,280,583円

 上記の52人に母子年金205,280,583円を支給しているが、年金の裁定請求等に対する調査確認が十分でなかったため、83,793,153円が不適正に支給されていた。これらについては、本院の注意により、すべて返還の処置が執られた。
 これは、北海道ほか12府県の62社会保険事務所及び社会保険庁において受給権者7,685人について本院が調査した結果である。

(説明)

 国民年金は、日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者等を被保険者として、老齢、障害又は死亡に関し年金等の給付を行う制度である。
 国民年金において行う給付のうち、母子年金は、夫が死亡した場合に被保険者であった妻(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあるものを含む。)に支給するもので、その支給要件は、妻が〔1〕 夫の死亡の当時夫によって生計を維持されていたこと、〔2〕 夫又は妻の子であって、夫の死亡の当時、夫によって生計を維持されていた18歳未満の者又は20歳未満で一定の障害の状態にある者(以下「子」という。)と生計を同じくしていること、〔3〕 夫の死亡日の前日において、保険料を納付した被保険者期間が所定の期間以上あることなどとなっている。また、その給付額は、所定の基本額と、生計を同じくする子が2人以上の場合に2人目以降の子の数に応じて加算される額と、夫の死亡を支給事由とする一定の公的年金を受給できる者がないときに加算される額(以下「母子加算額」という。)との合計額となっている。
 しかして、母子年金の支給に当たっては、

(1) 夫の死亡を支給事由とする他の公的年金を受給できる者があるときは、母子年金の額の5分の2(昭和55年10月31日前に受給権が発生したものについては3分の1)に相当する部分(当該公的年金の額がこの額に満たないときは、当該公的年金の額に相当する部分)、

(2) 母子加算額が加算される場合にあって、受給権者が老齢、退職又は障害を支給事由とする一定の公的年金を受給できるときは、母子加算額に相当する部分について支給を停止することになっている。
 そして、その停止の手続についてみると、受給権者は、母子年金を受けようとするときは母子年金裁定請求書を、また、裁定後、支給停止の事由が生じた場合には速やかにその事由等を記載した届け書を、住所地の市町村(特別区を含む。)を経由して都道府県の社会保険事務所へ提出し、母子年金裁定請求書については同事務所が、また、届け書については同事務所からその提出を受けて社会保険庁が、それぞれその内容を調査確認のうえ、支給停止の処理を行うこととなっている(63年9月以前は、裁定後の支給停止の処理についても社会保険事務所が行うこととなっていた。)。しかして、母子年金の支給の適否について検査したところ、北海道ほか9府県の29社会保険事務所(注) 及び社会保険庁では、受給権者が制度の理解が十分でなく、夫の死亡を支給事由として他の公的年金を受給できるのに母子年金裁定請求書にその旨の表示をしていなかったり、支給停止の事由が生じているのにその届出を怠っていたりなどしていたものがあったにもかかわらず、これに対する調査確認が十分でなかったため、受給権者52人について年金の一部の支給停止をすることなく205,280,583円を支給し、このうち83,793,153円が不適正に支給されていた。

(注)  北海道ほか9府県の29社会保険事務所 (北海道)札幌東、札幌北、岩見沢各社会保険事務所、(栃木県)大田原、栃木、今市各社会保険事務所、(山梨県)甲府社会保険事務所、(愛知県)大曽根、中村、名古屋北、岡崎、一宮、瀬戸、刈谷各社会保険事務所、(京都府)上京、下京、京都南、京都西各社会保険事務所、(兵庫県)須磨、姫路、尼崎、明石、西宮各社会保険事務所、(奈良県)奈良、大和高田両社会保険事務所、(広島県)広島東、広島西両社会保険事務所、(高知県)南国社会保険事務所、(大分県)日田社会保険事務所