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医療費に係る国の負担が不当と認められるもの


(53)−(85) 医療費に係る国の負担が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)厚生本省 (項)老人福祉費
(項)国民健康保険助成費
厚生保険特別会計(健康勘定) (項)保険給付費 (項)老人保健拠出金
(項)退職者給付拠出金
船員保険特別会計 (項)保険給付費 (項)老人保健拠出金
(項)退職者給付拠出金
部局等の名称 社会保険庁、北海道ほか18都府県
国庫負担の根拠 老人保健法(昭和57年法律第80号)、健康保険法(大正11年法律第70号)、船員保険法(昭和14年法律第73号)、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)
事業の種類 老人保健法に基づく医療の実施、医療保険各法に基づく療養の給付
事業主体 国、市158、特別区23、町160、村41、組合10、計393事業主体
医療機関 公立3、法人18、個人13、計34医療機関

 上記の事業主体において、看護料、注射料、処置料等の診療報酬の支払が適切でなかったため医療費315,273,232円(国庫負担の額170,162,988円)が不当と認められる。これを都道府県別に掲げると別表 のとおりである。

(説明)
 厚生省所管の医療に係る事業は、市町村(特別区を含む。以下同じ。)が健康保険法等の医療保険各法に定める被保険者(被扶養者を含む。以下同じ。)のうち老人保健法の規定に基づき、当該市町村の区域内に居住する老人(70歳以上の者及び65歳以上70歳未満の者で一定の障害の状態にある者をいう。)に対して老人保健事業の一部として実施するものと、医療保険各法に定める保険者が上記の者以外の被保険者に対して行う療養の給付等である。医療機関は医療に要する費用から患者負担分を控除した額を各保険者及び市町村に請求し、この請求を受けた各保険者、市町村及びこれらから委託を受けた国民健康保険団体連合会等は請求の内容の審査等を行ったうえで支払うことになっており、この支払額に対し、国は相当程度を負担(注) している。
 しかして、これらの国の負担の対象となる医療費の支払について調査したところ、前記の393事業主体が行った老人保健法に基づく医療の実施及び医療保険各法に基づく療養の給付において、医療機関から不適正な診療報酬の請求があったのに、これに対する審査等が十分でなかったことなどのため、診療報酬の支払が不適切なものがあった。
 いま、これらについて診療報酬別に示すと次のとおりである。

看護料等の支払が不適切なもの
180事業 (11医療機関) 不当と認めた国庫負担の額 47,528,770円
注射料等の支払が不適切なもの
33事業 (6医療機関) 不当と認めた国庫負担の額 47,203,175円
処置料等の支払が不適切なもの
102事業 (4医療機関) 不当と認めた国庫負担の額 32,566,207円
検査料等の支払が不適切なもの
73事業 (6医療機関) 不当と認めた国庫負担の額 27,150,104円
入院時医学管理料等の支払が不適切なもの
61事業 (5医療機関) 不当と認めた国庫負担の額 10,189,880円
上記以外の支払が不適切なもの
19事業 (2医療機関) 不当と認めた国庫負担の額 5,524,852円

(注)  国は、老人医療については、市町村が支払った費用の一部を負担しているほか、市町村等が国民健康保険の保険者として拠出する資金の一部を負担するとともに、国が行う健康保険等の保険者として資金を拠出している。また、医療保険各法に基づく療養の給付等については、国が行う健康保険等の被保険者に係るものは療養に要する費用の額から患者負担分を控除した額を、市町村等が行う国民健康保険の被保険者に係るものは市町村等が支払った額等に所定の率を乗じて得た額を、それぞれ負担している。

(別表)

所在都道府県名 事業主体 不当と認めた医療費の支払件数 不当と認めた医療費 不当と認めた国庫負担の額 摘要
千円 千円
(看護料等)
(53) 千葉県 茂原市ほか18市町村等 955 31,432 11,878 看護料等の支払不適切
(54)  同 印旛郡富里町ほか32市町 210 6,846 3,240 看護料の支払不適切
(55) 東京都 秋川市ほか21市区町等 66 1,497 656
(56)  同 八王子市ほか39市区町等 293 10,707 5,177
(57) 島根県 松江市ほか5町村 87 3,113 2,030
(58) 沖縄県 那覇市ほか47市町村等 2,859 28,855 18,261
小計 4,470 82,452 41,245
 看護料は、都道府県知事から基準看護(注) の承認を得ていない保険医療機関においては「その他の看護料」を算定するが、基準看護の承認を得た保険医療機関においては、それぞれの基準による看護料を算定できることになっている。このうち、看護婦等の数が所定の基準を満たしていることなどから基本看護の承認を得た保険医療機関においては、基本看護料を算定でき、さらに、入院患者の平均在院日数が20日以内となっていることなどから特3類看護の承認を得た保険医療機関は基本看護料に特3類看護料を加算して算定できることになっている。また、1類看護、老人特例1類看護等の承認を得た保険医療機関においては、その他の看護料にそれぞれ1類看護料、老人特例1類看護料等を加算して算定できることになっている。

 しかし、上記の請求に当たり、茂原市ほか5市町に所在する6医療機関では、基本看護の承認を得ていないのに基本看護料を算定していたり、老人特例1類看護等の承認を得ていないのに老人特例1類看護料等を加算して算定していたり、入院患者の平均在院日数が20日を上回っていた病棟について特3類看護料を加算して算定していたりなどしており、これらの4,470件の請求に係る茂原市ほか145市区町村等の医療費82,452,110円の支払は適切でなく、これに対する国庫負担の額41,245,536円は負担の要がなかったものである。

 (注) 基準看護 都道府県知事の承認を得て、厚生大臣が定める基準による看護を行うことで、基準の種類としては、看護婦等の数が入院患者数に対してそれぞれ所定の基準を満たしていることなどにより、基本看護、特3類看護、特1類看護、1類看護、老人特例1類看護等がある。

医療費に係る国の負担が不当と認められるものの図1

(59) 東京都 板橋区ほか15区 969 2,677 1,740 看護料の支払不適切
(60) 兵庫県 川西市ほか12市町 959 2,784 1,266
(61) 福岡県 粕屋郡須恵町ほか18市町 1,092 3,264 1,886
(62) 沖縄県 浦添市ほか15市町村 805 2,368 1,389
小計 3,825 11,094 6,283
 看護料は、1類看護の承認を得た保険医療機関においては、その他の看護料に1類看護料を加算して算定できることになっており、その患者の入院期間が6月を超える場合には、その超える期間に係る点数は、6月以内の期間に係る点数よりも低く定められている。また、一般病棟について特1類看護の承認を得た保険医療機関においては、基本看護料に特1類看護料を加算して算定できることになっており、この点数は、精神病棟の場合のその他の看護料に特1類看護料を加算した点数より低くなっている。

 しかし、上記の請求に当たり、板橋区ほか3市町に所在する5医療機関では、患者の入院期間が6月を超えるのに6月以内の点数で算定していたり、患者が特1類看護の一般病棟に入院しているのに精神病棟に係る特1類看護の看護料で算定していたりしており、これらの3,825件の請求に係る板橋区ほか63市区町村の医療費11,094,620円の支払は適切でなく、これに対する国庫負担の額6,283,234円は負担の要がなかったものである。

(注射料等)
(63) 宮城県 仙台市 253 6,653 3,416 注射料及び投薬料の支払不適切
(64) 秋田県 秋田市ほか5町 140 3,890 2,128 注射料の支払不適切
(65) 岐阜県 岐阜市 59 2,032 1,430
(66) 京都府 京都市 492 7,091 3,863 注射料、入院時医学管理料等の支払不適切
(67) 大阪府 枚方市ほか21市町 1,422 30,028 17,447 注射料、検査料及び画像診断料の支払不適切
(68) 長崎県 長崎市ほか1町 426 30,797 18,916 注射料、投薬料等の支払不適切
小計 2,792 80,493 47,203
 注射料は、注射に係る技術料の点数に注射に使用した薬剤の価格相当の点数を加算して算定するものであり、この注射に使用する薬剤については厚生大臣が承認した用法、用量等によることを標準とし、かつ患者個々の症状に応じて使用することになっている。また、特例許可外老人病院(注) においては、入院期間が1年を超える患者に対して同一月に行った注射及び投薬に係る薬剤料については、入院日数に応じて点数の上限が定められており、この点数の範囲内で算定することになっている。

 しかし、秋田市ほか3市に所在する4医療機関では、標準とされる用法、用量によることなく画一的に薬剤を使用し、これにより注射料を算定していたため、当局の協力を得て調査したところ、上記の使用方法によることなく薬剤を使用していると認められるものが1,741件あり、このほか検査料、画像診断料、入院時医学管理料等の算定も誤っていた。また、仙台市ほか1市に所在する特例許可外老人病院である2医療機関では、入院期間が1年を超える患者に対する注射及び投薬に係る薬剤料を上記の上限の点数を超えてそのまま算定するなどしていた。したがって、これらの2,792件の請求に係る仙台市ほか32市町の医療費80,493,460円の支払は適切でなく、これに対する国庫負担の額47,203,175円は負担の要がなかったものである。

 (注) 特例許可外老人病院 特例許可老人病院(参照) 及び基準看護の承認病院等以外の病院であって、老人収容比率が著しく高い病院
(処置料等)
(69) 東京都 板橋区ほか48市区町村等 2,950 44,140 19,932 処置料の支払不適切
(70) 愛知県 豊橋市ほか51市町村等 461 19,510 9,885
(71) 長崎県 長崎市 480 2,546 1,619 処置料等の支払不適切
(72)  同 佐世保市 349 1,806 1,128 処置料の支払不適切
小計 4,240 68,004 32,566
 処置料は、酸素吸入等による処置を行った場合には使用した酸素の購入価格に基づき算出した額を加算して算定することになっており、また、特例許可老人病院(注) において、入院期間が1年を超える患者に対してじょく瘡(そう)処置等を行った場合には種類又は回数にかかわらず特例許可老人病院等処置料(I)により算定し、入院患者に湿布処置、眼処置等を行った場合には種類又は回数にかかわらず特例許可老人病院等処置料(II)により算定することになっている。また、診療報酬点数表(甲)により診療報酬を算定する医療機関においては、消炎鎮痛を目的とする外用薬を用いた処置の費用については基本診療料に含まれるため別に算定することはできないことになっている。

 しかし、板橋区ほか1市に所在する2医療機関では、処置に使用した酸素の購入価格が1リットル当たり0.15円又は0.25円などであるのに1円又は3円として算出した額により処置料を算定しているものが3,159件あり、長崎市に所在する1医療機関では、特例許可老人病院等処置料(I)を算定しているのにこれとは別にじょく瘡処置として老人処置料(I)も算定していたり、特例許可老人病院等処置料(II)を算定しているのにこれとは別に眼処置料も算定したりしているものなどが480件あった。また、佐世保市に所在する1医療機関では消炎鎮痛を目的とする外用薬を用いた処置について、基本診療料を算定しているのに、これとは別に皮膚科軟膏処置料又は特例許可老人病院等処置料も算定しているものが349件あった。したがって、これらの4,240件の請求に係る板橋区ほか101市町村等の医療費68,004,311円の支払は適切でなく、これに対する国庫負担の額32,566,207円は負担の要がなかったものである。

 (注) 特例許可老人病院 主として老人慢性疾患の患者を収容する病院であって、医師、看護婦等の配置について、医療法(昭和23年法律第205号)上の特例として同法第21条第1項のただし書により一般病院より緩和された基準により知事の許可を受けた病棟を有するもの
(検査料等)
(73) 北海道 函館市 1,017 3,644 2,107 検査料の支払不適切
(74) 京都府 京都市 4,008 2,805 1,652
(75) 大阪府 大阪市ほか4市 1,054 23,371 14,659 検査料、注射料、処置料及び特定患者収容管理料の支払不適切
(76)  同 堺市ほか9市町 710 8,769 4,886 検査料及び処置料の支払不適切
小計 6,789 38,590 23,306
 検査料は、診療報酬点数表の検体検査料又は生体検査料の項に掲げる所定の点数により算定することとされており、また、各種の検査は、治療方針の決定に必要な限度で行うこととなっており、診療上必要があると認められる範囲において選択して行うこと、同一の検査はみだりに反復してはならないこととされている。そして、検体検査料のうち所定の血液化学検査料については、検査を一括して行った場合は分割して行った場合より低く算定されることになっている。また、生体検査料のうち知能検査料は、個人検査用として確立されている検査方法により、医師が自ら検査及び結果の処理を行い、これにおおむね40分以上要するものについて算定することになっている。

 しかし、上記の請求に当たり、大阪市ほか1市に所在する2医療機関では、毎月画一的に検体検査料や生体検査料を多数の項目にわたって繰り返し算定しており、函館市に所在する1医療機関では、ほとんどの患者につき、所定の血液検査を2回から4回に分けて実施し、検査のつど血液化学検査料を算定したため割高なものになっていた。また、京都市に所在する1医療機関では、ほとんどの入院患者につき知能検査料を算定していた。このため、当局の協力を得て調査したところ、検体検査料等については、患者個々の症状からみて保険診療として適切でないと認められるものが1,750件、血液化学検査料については、検査を分割して行う要がないと認められるものが1,017件、知能検査料については、看護婦が患者に簡単な質問を発して、この結果を記録しているだけでこれに要する時間もごく短いことから、算定の対象とは認められないものが4,008件あった。このほか、処置料及び注射料の算定を誤っているものや、既に廃止になった診療報酬を請求しているものがあり、これらの6,789件の請求に係る函館市ほか11市町の医療費38,590,250円の支払は適切でなく、これに対する国庫負担の額23,306,130円は負担の要がなかったものである。

(77) 北海道 札幌市ほか35市町村 886 3,649 2,082 検査料の支払不適切
(78) 広島県 広島市ほか24市町村 1,767 3,413 1,761
小計 2,653 7,063 3,843
 特例許可老人病院等入院時基本検査料は、特例許可老人病院等の入院患者に対して蛋白定量、末梢血液一般検査等の検査を行った場合、その種類又は回数にかかわらず、1月につき100点を算定することとされている。また、腫瘍マーカー検査料は、特例許可老人病院等の入院患者で入院期間が1年を超えるものに対して行う場合、原則として、その種類又は回数にかかわらず3月に1回を限度として算定することとされている。 しかし、上記の請求に当たり、札幌市ほか1市に所在する2医療機関では、特例許可老人病院等入院時基本検査料を算定しているのにこれとは別に蛋白定量、末梢血液一般検査等の検査料も算定していたり、腫瘍マーカー検査料を上記の限度を超えて算定していたりなどしており、これらの2,653件の請求に係る札幌市ほか60市町村の医療費7,063,520円の支払は適切でなく、これに対する国庫負担の額3,843,974円は負担の要がなかったものである。
(入院時医学管理料等)
(79) 北海道 石狩郡石狩町ほか3市町村 147 1,152 778 入院時医学管理料、検査料、注射料及び処置料の支払不適切
(80) 山梨県 塩山市ほか25市町村等 294 1,036 708 入院時医学管理料の支払不適切
(81) 島根県 江津市ほか4町等 170 2,544 1,627
(82) 大分県 別府市ほか3市町 476 7,490 4,126
(83) 沖縄県 島尻郡佐敷町ほか22市町村 1,659 5,127 2,949 入院時医学管理料、検査料及び処置料の支払不適切
小計 2,746 17,351 10,189
 入院時医学管理料は、特例許可老人病院が患者を特例許可病棟に収容している場合には老人診療報酬点数表のうち特例許可老人病院について定められている点数によって算定し、患者を一般病棟に収容している場合には、特例許可病棟について適用される点数よりも割高な点数によって算定することになっている。そして、この入院時医学管理料は、入院期間に応じて点数が逓減されるものであり、いったん退院した患者が同一疾病で同一病院に再入院した場合の入院期間については初回の入院の日を起算日として算定することになっている。 また、病院における医師の員数が標準員数に100分の70を乗じて得た数以下であり、かつ、看護婦及び准看護婦の員数が標準員数に100分の70を乗じて得た数以下である場合は、その翌月からの入院時医学管理料の請求に当たっては、診療報酬点数表の点数に100分の90を乗じて算定することになっている。

 しかし、上記の請求に当たり、石狩郡石狩町ほか1町に所在する2医療機関では、患者を特例許可病棟に収容しているのに一般病棟に収容している場合に適用される点数によって入院時医学管理料を算定しており、江津市ほか1市に所在する2医療機関では、いったん退院した患者の再入院した日を起算日として入院時医学管理料を算定しており、また、東山梨郡春日居町に所在する1医療機関では、医師及び看護婦等の員数が上記の要件に該当しているのに翌月からの入院時医学管理料について100分の90を乗じることなく算定していた。このほか、これらの医療機関では検査料、注射料及び処置料の算定を誤っているものがあり、これらの2,746件の請求に係る石狩郡石狩町ほか61市町村等の医療費17,351,481円の支払は適切でなく、これに対する国庫負担の額10,189,880円は負担の要がなかったものである。

(その他)
(84) 山形県 鶴岡市ほか17市町村等 930 9,086 4,801 運動療法料の支払不適切
(85) 岐阜県 岐阜市及び国 4,367 1,137 722 栄養食事指導料の支払不適切
小計 5,297 10,223 5,524
 運動療法料は、専従する理学療法士が勤務することなどの施設基準に適合していて都道府県知事から承認を受けた医療機関において運動機能回復訓練を行った場合には通常より高い点数によって算定することになっており、また、栄養食事指導料は、慢性疾患指導等を行っている患者のうち別に厚生大臣が定める特別食を必要とする者に対して、医師の指示に基づき栄養士が具体的な献立によって指導を行った場合に算定することになっている。

 しかし、上記の請求に当たり、鶴岡市に所在する1医療機関では、運動療法料を請求したもののうち930件については、専従する理学療法士が退職により皆無となって上記の施設基準に適合していないのに承認を受けた場合の高い点数によって算定しており、また、岐阜市に所在する1医療機関では、栄養食事指導料を請求したもののうち4,367件については、いずれも栄養士が医師の指示に基づいた具体的な指導を行っておらず、これらの5,297件の請求に係る鶴岡市ほか18市町村等の医療費10,223,480円の支払は適切でなく、これに対する国庫負担の額5,524,852円は負担の要がなかったものである。

32,813 315,273 170,162