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  • 昭和63年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第10 建設省|
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  • 補助金

補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの


(142)−(147) 補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの

会計名及び科目 道路整備特別会計 (項)道路事業
(項)地方道路整備臨時交付金
治水特別会計(治水勘定) (項)河川事業費
部局等の名称 福島県ほか3府県
補助の根拠 道路法(昭和27年法律第180号)、道路整備緊急措置法(昭和33年法律第34号)等
事業主体 府1、県2、市1、町1、計5事業主体
補助事業 田村郡都路村一般国道399号道路改良等6事業
上記に対する国庫補助金交付額の合計 126,566,375円

 上記の6補助事業において、工事の設計が適切でなかったり、工事の施工が設計と相違していたりしていて、国庫補助金42,597,383円(道路整備特別会計の分38,464,050円、治水特別会計の分4,133,333円)が不当と認められる。これを府県別に掲げると別表 のとおりである。

(説明)
 建設省所管の補助事業は、地方公共団体等が事業主体となって実施するもので、同省では、これらの事業主体に対して事業に要する費用について補助金を交付している。
 しかして、これらの補助事業の実施及び経理について検査したところ、前記の5事業主体が実施した道路事業、河川事業の6事業において、工事の設計が適切でなかったり、工事の施工が設計と相違していたりしていた。
 いま、これらについて不当の態様別に示すと次のとおりである。

工事の設計が適切でないもの
4事業 不当と認めた国庫補助金

38,464,050円

工事の施工が設計と相違しているもの
2事業 不当と認めた国庫補助金

4,133,333円

(別表)  

  府県名 事業 事業主体 事業費 左に対する国庫補助金 不当と認めた事業費 不当と認めた国庫補助金 摘要

(142)

福島県

田村郡都路村一般国道399号道路改良

福島県
千円
62,851
千円
36,139
千円
28,030
千円
16,117

工事の設計不適切
     この工事は、一般国道399号の道路改良の一環として、昭和62年度に都路村大字古道地内の南川にプレストレストコンクリート橋りょう(橋長11.9m、幅員10.1m)を新設するため、橋台2基の築造、プレストレストコンクリート桁の製作、架設等を、また、道路改良に伴い河川を付け替えるため護岸工等を施工したもので、このうち橋台2基(高さ左岸側橋台8.5m、右岸側橋台8.2m、底版幅5m)は逆T式橋台(参考図参照) とし、両橋台のかかと版に配置する主鉄筋については、設計書及び配筋図によれば、上面側に径25mmの鉄筋を25cm間隔で橋軸方向に配置することとして設計し、これにより施工していた。

しかして、上記橋台の設計の基礎となっている設計計算書によると、かかと版の主鉄筋については、上面側に径32mmの鉄筋を25cm間隔に配置することとして計算した引張応力度(地震時)(注) が許容引張応力度(注) を下回っていることなどから、本件橋台が安定計算上安全であるとしていた。しかるに、設計書及び配筋図を作成する際、かかと版の主鉄筋は、設計計算書どおり径32mmの鉄筋とすべきところを、誤って上記のとおり径25mmの鉄筋としていた。このため、かかと版の主鉄筋に生ずる引張応力度は、上記の設計計算書で計上されていないかかと版に作用する土圧の一部を加えて計算すると、左岸側橋台では4,355kg/cm2 、右岸側橋台では4,465kg/cm2 となり、いずれも許容引張応力度2,700kg/cm2 を大幅に上回っていて、本件両橋台は地震時においてはその安定が確保できず不安定なものとなっており、したがって、同橋台に架設されたプレストレストコンクリート桁等も不安定な状態になっていると認められる。

(注)  引張応力度・許容引張応力度 「引張応力度」とは、材に外から引張力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいい、その設計上許される限度を「許容引張応力度」という。

(参考図)

(参考図)

(143) 福島県 会津若松市市道幹1−20号線橋りょう整備 会津若松市 40,775 22,426 2,698 1,483 工事の設計不適切
     この工事は、市道幹1−20号線の道路改良の一環として、昭和61、62両年度に会津若松市神指町大字南四合地内の湯川新水路に橋りょう(橋長651m、幅員12.5m)を新設するため、橋台2基の築造等を施工したもので、このうち橋台の胸壁(高さ左岸側橋台1.92m、右岸側橋台1.95m、厚さ50cm)の垂直方向に配置する鉄筋については、設計書及び配筋図によれば、前面側には径19mmの鉄筋を12.5cm間隔に、背面側には径13mmの鉄筋を25cm間隔に配置することとして設計し、これにより施工していた。

 しかして、上記橋台の設計の基礎となっている設計計算書によると、胸壁の主鉄筋については、引張力が作用する背面側に径19mmの鉄筋を12.5cm間隔に配置することとして計算した引張応力度(常時)が許容引張応力度を下回っていることから、本件胸壁が応力計算上安全であるとしていた。しかるに、設計書及び配筋図を作成する際、胸壁の背面側の鉄筋は、設計計算書どおりとすべきところを、誤って上記のとおり径13mmの鉄筋を25cm間隔に配置することとしていた。このため、胸壁の主鉄筋として働くこととなる径13mmの鉄筋に生ずる引張応力度は、左岸側橋台では2,676kg/cm2 、右岸側橋台では2,728kg/cm2 となり、いずれも許容引張応力度1,800kg/cm2 を大幅に上回っており、本件両橋台の胸壁は不安定なものとなっている。

(参考図)

(参考図)

(144) 山梨県 西八代郡市川大門町準用河川梅沢川改修(第1工区) 市川大門町 11,100 3,700 6,376 2,125 工事の施工不良
(145)  同 同(第2工区) 17,555 5,695 6,024 2,008
うち国庫補助対象額
17,085
    小計   28,655 9,395 12,400 4,133  
うち国庫補助対象額
28,185
     これらの工事は、準用河川梅沢川改修工事の一環として、昭和62年度に市川大門町大字下大鳥居地内の梅沢川に鉄筋コンクリートU型水路(以下「水路」という。)延長87.5m(第1工区42.5m、第2工区45m)、コンクリート床版橋等を施工したもので、このうち水路(側壁高さ1.5mから1.85m、外幅5.1mから6.5m)に使用する鉄筋については、設計書及び図面によれば、水路横断方向に配置する主鉄筋として径13mmの鉄筋を、水路縦断方向に配置する配力鉄筋として径9mmの鉄筋をそれぞれ30cm間隔で使用することとして設計しており、径9mmの鉄筋については、市販されていないため、これに代えて径10mmのもので施工していた。そして、上記水路の設計の基礎となっている設計計算書によると、側壁高さ1.5mの区間(延長57.5m)で主鉄筋に生ずる引張応力度が許容引張応力度を下回っていることから、本件水路が鉄筋の応力計算上安全であるとしていた。

 しかるに、施工に当たっては、水路全延長にわたって主鉄筋と配力鉄筋とを取り違え、水路横断方向には径10mmの鉄筋を、水路縦断方向には径13mmの鉄筋を配置していた。このため、主鉄筋として働くこととなる径10mmの鉄筋に生ずる引張応力度は、側壁高さ1.5mの区間で2,247kg/cm2 となり、許容引張応力度1,600kg/cm2 を大幅に上回っており、本件水路延長87.5mは、その施工が設計と相違し、その強度が設計に比べて著しく低くなっていて不安定なものとなっている。

(146) 京都府 福知山市府道上小田成松中線特殊改良一種 京都府 50,644 25,322 4,053 2,026 工事の設計不適切
     この工事は、府道上小田成松中線の特殊改良一種事業の一環として、昭和62年度に福知山市奥榎原地内の延長620mの道路を新設するため、ボックスカルバート(以下「カルバート」という。)、擁壁等を施工したもので、このうち排水施設として設置したカルバート(内空断面の幅4.1m・高さ1.8m、延長11m)の底版に配置する主鉄筋については、設計書及び配筋図によれば、上面側には径13mmの鉄筋を、下面側には径19mmの鉄筋をそれぞれ15cm間隔に配置することとして設計し、これにより施工していた。

 しかして、上記カルバートの設計の基礎となっている設計計算書によると、底版の主鉄筋については、下面側に比べてより大きな引張力が作用する上面側は径19mmとし、下面側は径13mmとして計算した引張応力度(常時)が許容引張応力度を下回っていることなどから、本件カルバートが応力計算上安全であるとしていた。しかるに、設計書及び配筋図を作成する際、底版の主鉄筋は、誤って設計計算書とは逆に上面側に径13mm、下面側に径19mmの鉄筋としていた。 このため、底版の上面側の主鉄筋に生ずる引張応力度は、2,682kg/cm2 (土被り厚20cmの箇所)から3,003kg/cm2 (同45cmの箇所)となり、許容引張応力度1,600kg/cm2 を大幅に上回っており、本件カルバートは不安定なものとなっている。

(147) 岡山県 浅口郡金光町主要地方道倉敷金光線道路改良 岡山県 60,516 33,283 34,248 18,836 工事の設計不適切
     この工事は、主要地方道倉敷金光線の道路改良の一環として、昭和61年度から63年度までの間に金光町下竹地内にプレストレストコンクリート道路橋(橋長14.3m、幅員17m)等を新設するため、橋台2基の築造、プレストレストコンクリート桁の製作、架設等を施工したもので、このうち橋台2基の基礎杭については、設計書及び図面によれば、それぞれ外径600mm、杭長10mのPC杭(A種)14本を使用することとして設計し、施工に当たってこれと同等の強度を有するPHC杭(注1) (A種)を使用していた。

 しかして、上記橋台の設計の基礎となっている設計計算書によると、両橋台の基礎杭にはそれぞれ外径600mm、厚さ9mm、杭長10mの鋼管杭14本を使用することとした場合、常時及び地震時において、杭に生ずる曲げ引張応力度(注2) が鋼管杭の許容曲げ引張応力度(注2) を下回っていることなどから、本件橋台が安定計算上安全であるとしていた。しかるに、設計書及び図面を作成する際、橋台の基礎杭については、設計計算書に基づき鋼管杭とすべきところを、誤って、鋼管杭に比べ曲げ引張力に対する抵抗力の劣るPC杭(A種)として設計し、上記のとおりPHC杭(A種)により施工していた。このため、橋台の基礎杭に生ずる曲げ引張応力度は、地震時においては、起点側橋台では63.7kg/cm2 、終点側橋台では55.5kg/cm2 となり、PHC杭(A種)の許容曲げ引張応力度30kg/cm2 をいずれも大幅に上回っていて、また、常時においても、起点側橋台では5.8kg/cm2 となり、許容曲げ引張応力度0kg/cm2 を上回っていて、本件両橋台はその安定が確保できず不安定なものとなっており、したがって、同橋台に架設されたプレストレストコンクリート桁等も不安定な状態になっていると認められる。

(注1)  PHC杭 PC杭(プレストレストコンクリート杭)に比ベコンクリートの圧縮強度は上回るが、引張強度については同等の高強度プレストレストコンクリート杭

(注2)  杭に生ずる曲げ引張応力度・許容曲げ引張応力度 「杭に生ずる曲げ引張応力度」とは、杭に作用する軸方向力及び曲げモーメントにより杭に引張力がかかったとき、そのために杭の内部に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいい、その設計上許される限度を「許容曲げ引張応力度」という。

      243,441 126,566 81,429 42,597  
うち国庫補助対象額
242,971