科目 | 貸付金 |
部局等の名称 | 盛岡、関東、近畿、岡山、宮崎各支店 |
受託金融機関 | 株式会社常陽銀行ほか3金融機関 |
貸付けの根拠 | 農林漁業金融公庫法(昭和27年法律第355号) |
貸付金の種類 | 農業基盤整備資金、総合施設資金、漁船資金、農林漁業構造改善事業推進資金、農林漁業施設資金 |
貸付けの内容 | 農林漁業者に対する農業基盤整備資金等の貸付け |
貸付件数 | 7件 |
貸付金の合計額 | 237,126,524円 |
上記の貸付けは、貸付けの目的に沿わない結果になっていて、貸付金63,166,883円が不当と認められる。これを貸付先別に掲げると別表 のとおりである。
(説明)
農林漁業金融公庫(以下「公庫」という。)では、農林漁業者に対して、農林漁業の生産力の維持増進に必要な長期かつ低利の資金で、一般の金融機関から融通を受けることが困難な資金を直接又は金融機関に委託して貸し付けている。
このうち、公庫が直接貸付けを行う場合は、公庫が借入申込書類を審査して、所定の条件を満たしていると認めたものに対して貸し付け、完成状況、事業費の支払状況等によって貸付金の使途などを確認することとしており、また、金融機関に委託して貸付けを行う場合は、受託金融機関が借入申込書類の審査を行い、一部の資金については公庫が貸付決定を行うこととしているが、そのほかは受託金融機関が公庫の直接貸付けの場合に準じて上記の貸付け等の事務を行うこととしている。
しかして、上記の貸付け7件についてみると、借入者から事実と相違した内容の借入申込みや報告がなされていたり、借入者から貸付対象施設の処分についての申出がなされていたりしているにもかかわらず、これに対する審査及び確認が適切でなかったなどのため、貸付金額を過大に算定していたり、貸付対象施設の処分に伴う貸付金の繰上償還の措置を執っていなかったりしていて貸付けが不当と認められるものが63,116,883円見受けられた。
支店名 (受託金融機関名) |
貸付先 (所在地) |
貸付対象 | 貸付 昭和年月 (貸付利率) |
貸付対象事業費 | 左に対する貸付金額 | 貸付金額のうち不当と認めた額 | 摘要 | |
千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(農業基盤整備資金) | ||||||||
(148) | 近畿支店 | 農業協同組合 | スプリンクラーの設置 | 62.5 (年3.5%) |
10,866 | 9,600 | 3,669 | 低額実施 |
和歌山県信用農業協同組合連合会 | 転貸先農業者転貸先所在地和歌山県有田郡広川町 | |||||||
この貸付けは、みかん畑地の灌(かん)水及び薬剤散布に使用するスプリンクラーの設置に必要な資金10,866,000円の一部として貸し付けたもので、転借者は貸付対象事業費どおりの額で実施したとしていたが、実際は、資材を購入し、設置工事を細分して多数の知り合いの個人を作業員として雇い、自ら施工管理を行うなどして、これより低額な6,162,889円で実施しており、これにより適正な貸付金額を計算すると5,930,311円となるので、本件貸付金額9,600,000円との差額3,669,689円が過大な貸付けとなっている。 なお、本件の不当貸付金額については、平成元年6月に繰上償還された。 |
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(総合施設資金) | ||||||||
(149) | 関東支店 | 農業者 | 畜舎の新築 | 62.12 (年4.05%) |
37,666 | 33,890 | 11,249 | 低額実施 |
株式会社常陽銀行 | 茨城県鹿島郡旭村 | |||||||
この貸付けは、肥育豚舎1棟596m2
及び育成豚舎1棟291m2
の新築に必要な資金37,666,000円の一部として貸し付けたもので、借入者は貸付対象事業費どおりの額で実施したとしていたが、実際は、工事を細分して多数の業者に請け負わせ自ら施工管理を行うなどして、これより低額な25,155,877円で実施しており、これにより適正な貸付金額を計算すると22,640,289円となるので、本件貸付金額33,890,000円との差額11,249,711円が過大な貸付けとなっている。 なお、本件の不当貸付金額については、平成元年8月に繰上償還された。 |
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(150) | 関東支店 | 農業者 | 畜舎の増改築等 | 63.3 (年4.05%) |
19,235 | 17,260 | 4,829 | 低額実施 |
株式会社常陽銀行 | 茨城県鹿島郡旭村 | |||||||
この貸付けは、離乳豚舎1棟63m2
、種豚舎1棟130m2
及び種母豚舎1棟180.12m2
の増改築並びに種豚40頭の購入に必要な資金19,235,000円の一部として貸し付けたもので、借入者は貸付対象事業費どおりの額で実施したとしていたが、実際は、工事を細分して多数の業者に請け負わせ自ら施工管理を行うなどして、これより低額な13,812,135円で実施しており、これにより適正な貸付金額を計算すると12,430,921円となるので、本件貸付金額17,260,000円との差額4,829,079円が過大な貸付けとなっている。 なお、本件の不当貸付金額については、平成元年8月に繰上償還された。 |
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(漁船資金) | ||||||||
(151) | 盛岡支店 | 漁業者 (宮古市) |
さんま棒受網漁船の建造 | 62.4 (年5.2%) |
196,800 | 157,000 | 8,376 | 債権管理不適切 |
うち指摘対象上記漁船に搭載するカラースキャニングソナーの設置 | うち指摘対象分 | うち指摘対象分 | ||||||
10,500 | 8,376 | |||||||
この貸付けは、さんま棒受網漁船の建造に必要な資金196,800,000円の一部として貸し付けたもので、このうちには同船が搭載するカラースキャニングソナー(注)
の設置費(10,500,000円)に係る貸付金相当額8,376,524円が含まれているが、その後、借入者は、漁獲量の増大を図るため、このカラースキャニングソナーを新型カラースキャニングソナーに取り替える要があるとして資金の借入れを申し込み、公庫では昭和63年12月にその資金を貸し付けている。 しかして、借入者は既設のカラースキャニングソナーを同年8月に売却のため上記の漁船から撤去しているので、その設置費に係る貸付金の残高相当額8,376,524円は貸付けの目的を失っており、このことは、新型カラースキャニングソナー設置資金の借入申込みの際の既設カラースキャニングソナーの処分の申出により明らかであったのに、公庫では繰上償還の措置を執っていない。 なお、本件の不当貸付金残高相当額7,309,452円については、平成元年8月に繰上償還の措置が執られ、うち3,000,000円については同年10月に繰上償還された。 (注) カラースキャニングソナー 魚群の探査に用いる水中音波探知機で、捕えた魚群をカラーで画面表示する機器 |
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(農林漁業構造改善事業推進資金) | ||||||||
(152) | 岡山支店 | 漁業協同組合 | 海苔加工施設の取得 | 62.11 (年3.5%) |
24,000 | 18,000 | 3,600 | 低額実施 |
農林中央金庫 | 転貸先漁業者転貸先所在地岡山県和気郡日生町 | |||||||
この貸付けは、海苔加工施設(全自動乾海苔製造装置)の取得に必要な資金24,000,000円の一部として貸し付けたもので、転借者は貸付対象事業費どおりの額で実施したとしていたが、実際は、値引きを受けて18,000,000円で実施しており、これにより適正な貸付金額を計算すると14,400,000円となるので、本件貸付金額18,000,000円との差額3,600,000円が過大な貸付けとなっている。 なお、本件の不当貸付金残高2,160,000円については、平成元年8月に繰上償還された。 |
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(農林漁業施設資金) | ||||||||
(153) | 盛岡支店 | 漁業協同組合 (陸前高田市) |
番屋の新築及びトラック等の購入 | 62.7 (年4.85%) |
39,095 | 30,000 | 7,441 | 低額実施 |
この貸付けは、定置網漁業のための番屋(倉庫部分を含む。)1棟327m2
の新築及びトラック等3台の購入に必要な資金39,095,650円の一部として貸し付けたもので、借入者は貸付対象事業費どおりの額で実施したとしていたが、実際は、値引きを受けて28,197,650円で実施しており、これにより適正な貸付金額を計算すると22,558,120円となるので、本件貸付金額30,000,000円との差7,441,880円が過大な貸付けとなっている。 なお、本件の不当貸付金残高4,465,128円については、平成元年8月に繰上償還された。 |
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(154) | 宮崎支店 | 農業者 | 畜舎の新築等 | 62.11 (年4.05%) |
150,000 | 120,000 | 24,000 | 低額実施 |
株式会社宮崎銀行 | 宮崎県児湯郡川南町 | |||||||
この貸付けは、豚舎5棟3,860.1m2
、堆肥舎1棟27m2
及び管理舎1棟38.88m2
の新築に必要な資金150,000,000円の一部として貸し付けたもので、借入者は追加工事を含め152,300,000円で実施したとしていたが、この額は契約額を水増ししたもので、実際は120,000,000円で実施しており、これにより適正な貸付金額を計算すると96,000,000円となるので、本件貸付金額120,000,000円との差額24,000,000円が過大な貸付けとなっている。 なお、本件の不当貸付金額については、平成元年9月に繰上償還された。 |
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計 | 291,362 | 237,126 | 63,166 |