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  • 昭和63年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第3 日本道路公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

高速道路等の管理に要する業務に係る委託料の支払を適切な時期に行うよう改善させたもの


(2) 高速道路等の管理に要する業務に係る委託料の支払を適切な時期に行うよう改善させたもの

科目 (款)高速道路管理費 (項)業務管理費
(款)一般有料道路管理費 (項)業務管理費
部局等の名称 札幌、高松両建設局、仙台、東京第一、東京第二、東京第三、名古屋、大阪、広島、福岡各管理局
委託契約の件名 道央自動車道(登別室蘭I・C〜滝川I・C)及び札樽自動車道料金収受業務ほか69件
委託業務の概要 高速道路等の通行料金の収受等及び道路の巡回、事故の処理等を行うもの
支払額の合計 53,691,556,240円
契約の相手方 北海道ハイウェイ・サービス株式会社ほか39会社等
契約 昭和63年4月〜同年8月 随意契約
支払 昭和63年4月〜平成元年3月

 日本道路公団では、高速道路等の建設、管理等に伴い必要となる支払資金の不足について道路債券を発行して資金を調達しているが、上記各業務に係る各月分の委託料の支払時期が適切でなかったため、委託料の支払額相当額の道路債券に係る利息等の経費約1億7900万円が不経済になっていた。
 このように不経済な事態を生じたのは、各月分の委託料を同公団が定めた業務委託の実施基準に基づき締結した契約に従って前月の上旬に支払っていたことによるもので、同基準を改め委託料の支払を適切な時期に行う要があると認められた。

 上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)
 日本道路公団(以下「公団」という。)では、高速道路及び一般有料道路の建設及びこれらの道路の管理等の業務を行っているが、これら業務執行に伴い必要となる支払資金につき料金収入等の自己資金を充当してもなお生ずる不足について、毎月、その資金収支計画に基づき、道路債券を発行して資金を調達している。

 しかして、公団が高速道路等の管理のため行っている各種の業務委託のうち、札幌建設局ほか1建設局及び仙台管理局ほか7管理局が昭和63事業年度に行った道央自動車道(登別室蘭I・C〜滝川I・C)及び札樽自動車道料金収受業務ほか69件の業務委託(委託料支払総額536億9155万余円)について調査したところ、次のとおり、委託料の支払時期が適切でなく、その結果道路債券の発行による資金調達が効率的に行われていないと認められる点が見受けられた。
 すなわち、上記各業務委託に係る業務は、〔1〕 料金所で通行券の交付、回収、料金の収受等を行うものと、〔2〕 巡回車による道路の巡回、交通事故等についての通報、応急措置、交通整理等を行うものであり、その委託料は、公団本社制定の業務委託実施基準に基づき、人件費(基本給、諸手当、福利厚生費)、事務費(光熱水費、被服費等)、物件費(巡回車に係る経費等)等について積算された額となっている。

 しかして、その支払については、前記の各建設局及び管理局では、上記の基準において契約締結に当たり準拠するよう示されている標準委託契約書に基づき、契約において〔1〕 受託者は、毎月の初めに翌月分の委託料を公団側に請求すること(ただし、4月分の委託料については、5月分と併せて4月初めに請求すること)、〔2〕 公団側は、この請求書を受理した日の翌日から起算して10日以内に支払うこととしており、この支払条件に従って、5月分から翌年の3月分のほとんどについてはそれぞれその前月に支払っているところである。

 しかしながら、前記各業務委託の委託料は、人件費がその79.3%から95.7%(平均81.6%)を占めており、人件費の受託者における各月分の支払は、基本給、諸手当等については当月又は翌月の給与支払日に、福利厚生費の大半を占める厚生年金保険料等については翌月末日までにそれぞれ行われるものであること、また、人件費以外の事務費や物件費等についても、受託者における支払が毎月定期的に当月以降に行われるものが大半であることから、各月分の委託料の支払は当月に行えば足りると認められる。そして、これによれば、毎月、委託料の支払額相当額の道路債券の発行を1箇月繰り延べることができ効率的な資金調達が図れるのに、前記のように各月分の委託料をその前月に支払っているのは適切でないと認められた。
 いま、仮に各月分の委託料の支払を公団の給与支払日(毎月16日)に合わせるなどして行うこととすれば、前記委託料支払総額のうち431億9217万余円については1箇月程度その支払時期が遅くなり、これに伴いその支払額相当額の道路債券の発行を1箇月繰り延べることができるため、その分の利息等の経費(63事業年度における道路債券(政府引受債)の調達コストは年4.874%から5.254%となっている。)約1億7900万円を節減できると認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、日本道路公団では、平成元年10月に業務委託実施基準の標準委託契約書を改正して各月分の委託料の支払は当月に行うよう改め、同年12月から適用することとする処置を講じた。