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  • 昭和63年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第4 首都高速道路公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

地中連続壁の施工に使用する建設機械の機械損料の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの


地中連続壁の施工に使用する建設機械の機械損料の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの

科目 (款)業務費 (項)高速道路建設費
(項)負担金等受入建設費
部局等の名称 首都高速道路公団
工事名 BY511工区(その1)トンネル構造及び半地下構造新設工事ほか4工事
工事の概要 高速道路建設事業の一環として、開削トンネル構造等の道路を建設するに当たり、地中連続壁工法によって地中連続壁を築造するなどの工事
工事費 11,841,475,000円(当初契約額11,534,000,000円)
請負人 青木・日産・徳倉BY511(1)トンネル及半地下建設工事共同企業体ほか3共同企業体
契約 昭和63年3月〜平成元年3月 指名競争契約、随意契約

 上記の各工事において、地中連続壁の施工に使用する建設機械の機械損料の積算(積算額2億5827万余円)が適切でなかったため、積算額が約3500万円過大になっていた。
 このように積算額が過大になっているのは、地中連続壁の施工の実態が積算の基準に反映されていなかったことによるもので、施工の実態に即した積算をする要があると認められた。

 上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)
 首都高速道路公団(以下「公団」という。)では、高速道路等の建設工事を毎年多数実施しているが、このうち、昭和63事業年度に施行している開削トンネル構造(参考図参照) 等の道路の新設工事5工事(工事費総額118億4147万余円)について検査したところ、次のとおり、地中連続壁(注) の施工に使用する建設機械の機械損料の積算について、適切でないと認められる点が見受けられた。
 すなわち、上記の各工事は、高速道路建設事業の一環として、開削トンネル構造等の道路(幅員18.2mから38.2m)を建設するのに当たり、地中連続壁工法によって地中連続壁を築造し、これを土留壁としながら道路となる部分を開削するなどの工事である。そして地中連続壁工法は、施工延長を所定の長さの区画(以下「エレメント」という。)に分割し、各エレメントごとに掘削、鉄筋かご建込み、コンクリート打設等の作業工程により、鉄筋コンクリートの壁を築造し、これを繰り返すことにより地中連続壁を築造するものであり、上記の各工事においては、1エレメントの長さを4.5mから8mとして合計277のエレメントに分割し、地中連続壁(壁厚0.8mから1.95m、高さ20mから39m、延長53mから221.8m)総延長1.567mを施工することとしていた。

 しかして、地中連続壁の施工に使用する建設機械の機械損料の積算についてみると、公団が制定している「地中連続壁剛体基礎工(暫定)」(以下「積算基準」という。)に基づき、建設機械の作業編成は、50tのクローラクレーン及び油圧式クラムシェル等の掘削機械1組と100t又は150tのクローラクレーン等の築造機械1組とを合わせて1編成とし、この1編成で1番目のエレメントを掘削し鉄筋コンクリートの側壁の築造まで完了した後初めて、2番目に施工するエレメントの掘削を開始するというように、1エレメントずつ順次施工することとしており、このため築造機械は、掘削機械により掘削を行っている間、待機していることになっている。したがって、これらの作業形態は図〔1〕 のとおりとなることから、掘削機械の供用日数はその据付け及び掘削等の掘削工の作業日数の合計とし、また、築造機械の供用日数はこの掘削工の作業日数に鉄筋かご建込み及びコンクリート打設等の築造工の作業日数を加えた合計として、上記277エレメントについての建設機械の機械損料を総額2億5827万余円と積算していた。

地中連続壁の施工に使用する建設機械の機械損料の積算を施工の実態に適合するよう改善させたものの図1

 しかしながら、積算基準において1編成の建設機械で1エレメントごとに掘削工と築造工とを順次施工していくこととしているのは、橋脚の基礎を地中連続壁工法で施工するときのように、十分な作業スペースがとれない場合を想定して定めたためであるが、これに対し、本件各工事は、いずれも施工延長の長い地中連続壁を直線的に施工するものであり、十分な作業スペースが確保されることから、1エレメントの掘削工が完了すれば、そのエレメントの築造工と次に施工するエレメントの掘削工とを同時に施工することが可能であり、このように築造工と掘削工とを同時に施工する場合、築造機械の供用日数は、順次施工する場合と比べ、次のとおり少ない日数で足りることとなり、ひいては建設機械の機械損料が低減するものと認められた。

(1) 掘削工の作業日数が築造工の作業日数より長い場合(該当するエレメント数128)には、図〔2〕 のとおりの作業形態となることから、築造機械の供用日数は、2番目以降のエレメントの掘削工の作業日数の合計に最終エレメントの築造工の作業日数を加えた日数として積算すべきと認められる。

地中連続壁の施工に使用する建設機械の機械損料の積算を施工の実態に適合するよう改善させたものの図2

(2) 掘削する地層が軟弱であるなどのため掘削工の作業日数が築造工の作業日数より短い場合(該当するエレメント数65)には、図〔3〕 のとおりの作業形態となることから、築造機械の供用日数は、築造工の作業日数を合計した日数として積算すべきと認められる。

地中連続壁の施工に使用する建設機械の機械損料の積算を施工の実態に適合するよう改善させたものの図3

(3) 掘削工の作業日数が築造工の作業日数の2倍以上である場合(該当するエレメント数84)には、掘削機械が1つのエレメントの掘削工を施工している間に、築造機械は2つのエレメントの築造工を施工できるものであるから、例えば道路の両側のエレメントを並行して施工するとすれば、それぞれに建設機械1編成とすることなく掘削機械2組に築造機械1組を対応させる作業として積算すべきと認められる。

 なお、上記(1)から(3)の各作業形態で施工する場合には、各種の補助作業を行うクローラクレーンが別途必要となる。
 現に、本院が前記各工事の作業実態について調査したところ、地中連続壁の施工は上記のいずれかの作業形態で行われていた状況であった。
 いま、仮に上記により地中連続壁の施工に使用する建設機械の機械損料を修正計算すると、新たに必要となるクローラクレーンの機械損料を考慮しても、当局積算額を約3500万円低減できたと認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、首都高速道路公団では、平成元年10月に積算基準を改正し、地中連続壁の施工に使用する建設機械の機械損料の積算方法を施工の実態に即したものとし、同年11月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。

(注)  地中連続壁 連続した地下部分を所定の長さの区画に分割し、各区画ごとに地盤安定液を注入しながら掘削し、鉄筋かごを建て込んでコンクリートを打設するなどの作業工程により、地中に鉄筋コンクリートの壁を築造し、この工程を繰り返すことによってできる連続した壁

(参考図 )

(参考図)