ページトップ
  • 昭和63年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第5 住宅・都市整備公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

宅地造成工事等における土砂の埋戻し費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの


宅地造成工事等における土砂の埋戻し費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの

科目 (住宅・都市整備勘定) (款)住宅等建設費 (項)住宅建設費
(項)住宅等用地費
(款)宅地造成費 (項)土地区画整理事業費
(項)造成工事費
(項)関連公共施設等整備費
部局等の名称 東京、関東、関西、九州各支社、首都圏都市開発本部、つくば、南多摩、港北各開発局
工事名 多摩ニュータウン11住区(11-3-3その2、11-4-1ブロック)土木その他工事ほか81工事
工事の概要 住宅建設の用に供する宅地造成等のため、鉄筋コンクリート擁壁、コンクリートブロック積み擁壁等を施工するなどの工事
工事費 19,929,585,000円
請負人 高畠建設工業株式会社ほか50会社、奈良・日新建設工事共同企業体ほか24共同企業体
契約 昭和61年12月〜平成元年3月 指名競争契約、随意契約

 上記の各工事において、鉄筋コンクリート擁壁等を築造する際の土砂の埋戻し費の積算(積算額4億0766万余円)が適切でなかったため、積算額が約1億2400万円過大になっていた。
 このように積算額が過大になっているのは、鉄筋コンクリート擁壁等を築造する際の土砂の埋戻し費の積算方法が積算の基準に明確に定められていなかったため、施工の実態が積算に反映されていなかったことによるもので、施工の実態に即した積算をする要があると認められた。

 上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)
  住宅・都市整備公団(以下「公団」という。)では、住宅建設の用に供する宅地造成等の工事を毎年多数実施しているが、このうち、東京支社ほか7支社等(注) が昭和63事業年度に施行している82工事(工事費総額199億2958万余円)について検査したところ、次のとおり、鉄筋コンクリート擁壁(参考図参照) 及びコンクリートブロック積み擁壁等(以下「擁壁等」という。)を築造する際の土砂の埋戻し費の積算について、適切でないと認められる点が見受けられた。
 すなわち、上記の各工事は、宅地造成等の工事を施工するとともに、施工した盛土等の安定を図るため擁壁等を築造する工事で、これらの擁壁等を築造する際の土砂の埋戻し費の積算についてみると、その積算方法が公団が制定している土木工事積算要領(以下 「積算要領」という。)に明確に定められていないことなどから、積算要領に定められている排水工として施工する管渠(きょ)等(以下「管渠等」という。)の土砂の埋戻しの施工方法等を採用して積算し、上記82工事における総土量243,385m3 の埋戻し費を総額4億0766万余円と算定していた。

 しかして、管渠等の布設工事(参考図参照) は、開削した布設溝に鉄筋コンクリート管等を布設するものであるが、その埋戻しに当たっては、管渠等に強い衝撃を与えると亀裂・横ずれが発生しやすいことから、これを防止するために、埋戻し土砂の投入は機械施工によることなく人力により施工することとし、また、締固めは小型の振動式締固め機械であるタンパを使用して施工することとしている。そして、埋戻し作業において管渠等への損傷等のおそれがない場合には、土砂の投入はブルドーザを使用して、また、締固めはタンパ又はブルドーザを使用して施工することとしているところである。

 しかしながら、本件各工事のように擁壁等を築造する際の土砂の埋戻し作業は、主に、安定した強固な構造物である擁壁等の背後を埋め戻すものであり、管渠等を埋め戻す場合と異なり、土砂投入や締固め作業による擁壁等への損傷等のおそれはないことから、現場の作業幅が確保されれば、土砂の投入作業は、当局の積算で想定している人力及びブルドーザだけでなく、一般的に使用されているバックホウを使用して施工することが可能であり、また、締固め作業も同様にタンパ及びブルドーザだけでなく、振動ローラを使用して施工することが可能であり、このようにバツクホウ及び振動ローラを使用した機械施工が行える場合には人力施工等に比べ経済的であると認められた。
 現に、本院が会計実地検査の際、擁壁等の埋戻し作業の実態について調査したところ、実際は、ブルドーザ、タンパのほかにバックホウ、振動ローラを使用して施工している状況であった。

 したがって、擁壁等の埋戻し費の積算については、管渠等の埋戻し作業の施工方法等を採用して積算することなく、これらの建設機械を、現場の状況に応じてそれぞれ適切に使い分けるなど施工の実態に即して行うのが適切であったと認められ、これにより積算したとすれば、積算額を約1億2400万円低減できたと認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、住宅・都市整備公団では、平成元年11月に擁壁等を築造する際の土砂の埋戻し費について施工の実態に即した積算となるよう積算要領を整備して、2年1月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。

(注)  東京支社ほか7支社等 東京、関東、関西、九州各支社、首都圏都市開発本部、つくば、南多摩、港北各開発局

(参考図)

(参考図)