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  • 昭和63年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第7 日本原子力研究所|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

建築工事における鉄筋の加工組立費の積算を適切なものに改善させたもの


建築工事における鉄筋の加工組立費の積算を適切なものに改善させたもの

科目 (款)原子炉費 (項)研究炉維持費
(款)原子力研究費 (項)安全性研究費
(項)放射線利用研究費
(款)共通費 (項)研究支援費
(款)原子力船開発事業費 (項)原子力船付帯施設費
部局等の名称 日本原子力研究所本部
工事名 60東海(研)JRR-3改造に伴う原子炉制御棟その他工事ほか7工事
工事の概要 原子力の開発に関する研究等を行うための施設を建築する工事
工事費 9,711,155,000円(当初契約額9,709,300,000円)
請負人 株式会社竹中工務店ほか2会社、竹中・大林・清水建設共同企業体ほか4共同企業体
契約 昭和61年3月〜平成元年3月 指名競争契約、指名競争後の随意契約

 上記の各工事において、鉄筋の加工組立費の積算(積算額3億4598万余円)が適切でなかったため、積算額が約5600万円過大になっていた。
 このように積算額が過大になっているのは、上記の各工事で建築される施設が構造上いずれも高い強度を要求され、使用される鉄筋の径が一般の建築物に比べてより太いことから、単位重量当たりの鉄筋の加工組立歩掛かりが低下するのに、一般の建築物に適用される歩掛かりにより積算したことによるもので、鉄筋の径別重量構成比の実態に適合した積算をする要があると認められた。

 上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)
 日本原子力研究所(以下「研究所」という。)では、研究用施設等の建築工事を毎年実施しているが、このうち、東海研究所ほか2研究所(注) 及びむつ事業所において昭和63事業年度に施行している研究用原子炉制御棟等の原子力関連施設の建築工事8工事(工事費総額97億1115万余円)について検査したところ、次のとおり、鉄筋の加工組立費の積算について適切でないと認められる点が見受けられた。
 すなわち、上記の各工事は、原子力の開発に関する研究等を行うための施設を建築する工事で、この施設は、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」(昭和32年法律第166号)などの規制の対象となり、耐震性、遮へい性の面で高い安全性が要求されるため、事務庁舎等の一般の建築物と比べて構造上強度が高いものとなっていて、使用される鉄筋の径が一般の建築物に比べてより太いものとなっている。そして、研究所では、上記の各工事の予定価格の積算に当たっては、研究所が定めた「建設工事積算基準」、及び建設省制定の「建設省建築工事積算基準」(以下「建設省基準」という。)に準拠して定めた「建築工事積算要領」)(以下「積算要領」という。)に基づくなどして、鉄筋の加工組立費を、次のとおり、総額3億4598万余円と算定していた。

ア 東海研究所ほか2研究所の6工事では、精算要領により、鉄筋を、径10mm、径13mmの細物と径16mm以上の太物との2つに区分し、この区分ごとの1t当たりの鉄筋の加工組立歩掛かりに労務単価を乗ずるなどして得た加工組立単価、細物で1t当たり63,400円から72,900円、太物で1t当たり19,800円から26,000円に細物の鉄筋総重量1,844.53t、太物の鉄筋総重量6,827.20tをそれぞれ乗じて、計2億9663万余円と算定していた。

イ むつ事業所の2工事では、建設省基準の解説書を参考として細物、太物ごとの歩掛かりを60%と40%の割合で加重平均した歩掛かりに労務単価を乗ずるなどして得た 加工組立単価を1t当たり40,800円と算出し、これに鉄筋総重量1,209.64tを乗じて、計4935万余円と算定していた。

 しかして、上記の細物及び太物の歩掛かりは、各径ごとの歩掛かりを一般の建築物における鉄筋の標準的な径別重量構成比(以下「標準構成比」という。)で加重平均して設定されており、鉄筋コンクリート造りの場合における標準構成比は、細物について径10mmが70%、径13mmが30%と、太物について径16mmが0.4%、径19mmが2.9%、径22mmが16.5%、径25mmが80.2%となっている。
 しかしながら、前記の各工事において使用されている鉄筋の径別重量構成比の実態について調査したところ、次のとおり、標準構成比とは大きく異なっている状況であった。

ア 東海研究所ほか2研究所の6工事では、細物の径10mmの重量構成比が標準構成比70%に対し平均で21.4%、径13mmの重量構成比が標準構成比30%に対し平均で78.6%となっていたり、太物については標準構成比で想定されていない径29mm以上の太い鉄筋が使用されていたりなどしていて、標準構成比と比べて大きく異なっていた。

イ むつ事業所の2工事では、鉄筋の細物、太物の重量構成比は平均で、細物が21.6%、太物が78.4%となっていて、積算時に想定した細物、太物の構成比60%、40%に比べて大きく異なっているうえ、径別重量構成比も、細物の径13mmの重量構成比が標準構成比30%に対し平均で96.8%となっていたり、太物については標準構成比で想定されていない径29mm以上の太い鉄筋が使用されていたりなどしていて、標準構成比と比べて大きく異なっていた。

 このように原子力関連施設の建築工事において使用される鉄筋は一般の建築物の工事に比べてより太い径の鉄筋の構成比が高くなっており、加えて、鉄筋の径が太くなるほど単位重量当たりの鉄筋本数が少なくなり、加工組立歩掛かりが低下するため、鉄筋の径別重量構成比の実態に基づいて積算すると、鉄筋加工組立費は相当程度低減されることになる。
 したがって、本件のような原子力関連施設の建築工事における鉄筋の加工組立費の積算に当たっては、鉄筋の径別重量構成比の実態に適合した積算をする要があると認められた。
 いま、仮に、上記の径別重量構成比の実態にあわせて本件各工事の鉄筋の加工組立費を積算したとすれば、積算額を約5600万円低減できたと認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、日本原子力研究所では、平成元年10月に積算要領を改正し、鉄筋の加工組立費を鉄筋の径別重量構成比の実態にあわせて積算するよう改め、同年11月から適用することとする処置を講じた。

(注)  東海研究所ほか2研究所 東海、高崎、大洗各研究所