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  • 昭和63年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第8 日本私学振興財団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

医学部を設置する私立大学における補助対象となる専任職員の数の算定を適切なものに改善させたもの


医学部を設置する私立大学における補助対象となる専任職員の数の算定を適切なものに改善させたもの

科目 (補助金勘定) (款)補助金 (項)補助金
部局等の名称 日本私学振興財団
補助の対象 私立大学等における専任教職員等の給与その他教育又は研究に要する経常的経費
補助の根拠 私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)
事業主体 学校法人岩手医科大学ほか9学校法人
上記に対する財団の補助金交付額の合計 昭和61年度 16,881,106,000円
昭和62年度 17,732,660,000円
  計 34,613,766,000円

 上記の補助金の額の算定に当たり、医学部を設置する私立大学において、補助対象となる専任職員の数の算定が適切でなかったため、昭和61年度及び62年度において補助金約11億7710万円が適切に交付されていなかったと認められる。
 このような事態を生じたのは、医学部を設置する私立大学の専任職員のうちには、附属病院において、教員や学生の教育又は研究とは直接かかわりのない診療業務に付随する事務に主として従事している者もいるのに、補助対象となる専任職員の数を算定する際に、これらの者を適切に控除して算定していなかったことによるもので、補助対象となる専任職員の数の算定を適切なものにするよう改める要があると認められた。

 上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)
 日本私学振興財団では、私立学校振興助成法及び日本私学振興財団法(昭和45年法律第69号)の規定に基づき、私立の大学、短期大学及び高等専門学校(以下「私立大学等」という。)を設置する学校法人に対し、当該私立大学等における教育又は研究に係る経常的経費に充てるため、私立大学等経常費補助金(以下「補助金」という。)を交付しており、補助金の額の算定に当たっては、私立大学等経常費補助金交付要綱(昭和52年11月30日文部大臣裁定)及び私立大学等経常費補助金配分基準(昭和58年9月16日財団理事長裁定。以下「配分基準」という。)に基づき、教育又は研究に係る経常的経費を専任教員等給与費、専任職員給与費、教育研究経常費等の経費に区分し、それぞれの経費ごとに、専任教員等の数、専任職員数又は学生数等に所定の補助単価等を乗じて得た額を補助金の基準額とし、さらに、これらの基準額に学生総定員に対する在籍学生数の割合等に基づいて算出した調整係数を乗ずるなどして得た金額を合計して算定することとしている。
 そして、補助金の額の算定に当たって専任職員の範囲については、配分基準において、

(1) 当該私立大学等の専任の職員(学校法人の専任の職員を含む。)として発令されていること、

(2) 当該学校法人から主たる給与の支給を受けていること、

(3) 当該学校法人本部又は当該学校法人の設置する私立大学等に常時勤務していることの3要件のすべてに該当し、かつ、事務、教務、厚生補導及び技術技能に従事している者とされているが、大学の附属病院に勤務する者のうち、教員や学生の教育又は研究とは直接かかわりのない診療業務に従事している者、例えば、診療医、看護婦、薬剤師、栄養士、調理士等については専任職員から除外することとされている。 しかして、医学部を有する大学を設置している28学校法人のうち学校法人岩手医科大学ほか9学校法人(注1) について、上記の専任職員の職務内容を調査したところ、次のような事態が見受けられた。

 すなわち、これら10学校法人が設置する大学の附属病院に勤務する専任職員のうちには、教員や学生の教育又は研究とは直接かかわりのない診療業務に付随する事務、例えば、医事課に所属して、〔1〕 外来及び入院患者の受付に関すること、〔2〕 外来及び入院患者の診療費の算定、請求に関すること、〔3〕 入退院手続に関すること、〔4〕 医事に係る諸証明書の発行に関すること、〔5〕 医療相談に関すること、〔6〕 カルテの整理、保管に関すること、〔7〕 医事に関する調査、統計、報告に関することなどの事務に主として従事している者が61年度10学校法人で757人、62年度9学校法人(注2) で687人、両年度で合計1,444人見受けられた。
 しかしながら、本件補助金は私立大学等における教育又は研究に係る経常的経費に対して交付されるものであり、上記のような診療業務に付随する事務に主として従事している職員については、前記の診療医等と同様、教員や学生の教育又は研究とは直接かかわりがないと認められること、さらに、大学の附属病院は、外来及び入院患者に対する診療行為に伴う医療収入があり、一般の病院では、病院の収入に寄与している診療業務及びこれに付随する事務に従事する病院の職員に係る人件費等の経費もこの医療収入で賄われていることなどからみて、補助対象となる専任職員の数を算定する際にこれらの者を適切に控除して算定することとしていないのは、当を得ないと認められた。
 いま、仮に、前記の28学校法人のうちの10学校法人の設置する大学の医学部の専任職員数から診療業務に付随する事務に主として従事する職員数を控除した数を補助対象とすべき専任職員数とするなどして、10学校法人に対する補助金の額を計算すると、61年度の16,881,106,000円は16,278,580,000円、62年度の17,732,660,000円は17,158,068,000円となり、その開差額は、61年度約6億0250万円、62年度約5億7450万円、計約11億7710万円となる。

 上記についての本院の指摘に基づき、日本私学振興財団では、平成元年1月に配分基準を改正し、医学部を設置する私立大学における補助対象となる専任職員の数を算定する際に診療業務に付随する事務に主として従事する職員を適切に控除して算定する処置を講じた。

(注1)  学校法人岩手医科大学ほか9学校法人 岩手医科大学、北里学園、東邦大学、獨協学園、聖マリアンナ医科大学、金沢医科大学、愛知医科大学、大阪医科大学、川崎学園、久留米大学

(注2)  9学校法人 上記(注1) のうち東邦大学を除いた9学校法人