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  • 昭和63年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第9 日本電信電話株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

第三者の車両事故等により折損したコンクリート製電柱に係る損害賠償請求を適切に行うよう改善させたもの


(2) 第三者の車両事故等により折損したコンクリート製電柱に係る損害賠償請求を適切に行うよう改善させたもの

科目 営業外収益
部局等の名称 東京、関東、信越、関西、四国、九州各地域事業本部
損害賠償請求の対象としなかった費用 第三者の車両事故等により折損したコンクリート製電柱を産業廃棄物として適正に処理するために要した費用
損害賠償を請求していなかった折損コンクリート製電柱に係る処理費相当額
(対象本数)
昭和60年度 16,868,341円 (2,475本分)
昭和61年度 19,589,347円 (2,868本分)
昭和62年度 21,833,858円 (3,134本分)
昭和63年度 24,902,220円 (3,478本分)

83,193,766円 (11,955本分)

 上記の各部局では、第三者の車両事故等により折損したコンクリート製電柱(以下「折損コンクリート柱」という。)を産業廃棄物として処理するための運搬及び破砕などに係る費用(以下「処理費」という。)相当額を損害額に含めて算定し加害者に請求すべきであるのに、これを行っていなかったため、損害賠償請求額が約8310万円低額になっていた。
 このような事態を生じたのは、本社において、折損コンクリート柱に係る処理費相当額を損害額に含めて算定するよう規定していなかったことなどによるもので、これを具体的に規定して当該処理費相当額を損害額に含めて算定することとし、もって、折損コンクリート柱に係る損害賠償請求を適切に行う要があると認められた。

 上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)
 日本電信電話株式会社では、同会社所有の電話線等を添架する電柱が第三者の車両事故等により損害を受けた場合には、本社が定めた「争訟・賠償事務規程」(昭和60年社長達第8号)及びこれを受けて各地域事業本部(旧総支社)が定めた賠償関係事務処理要領等に基づき、原則として事業所(旧電話局等)が、原状回復を図るための費用を基礎として損害額を算定し、加害者に対し損害賠償の請求を行うこととなっている。

 しかして、東京地域事業本部ほか5地域事業本部(注) において、昭和60年度から63年度までの間に、第三者の車両事故等により発生した折損コンクリート柱13,980本のうち、加害者が不明などの理由により損害賠償の請求ができない1,725本を除いた12,255本を対象として、損害額の算定及び加害者に対する損害賠償の請求状況について本院が調査したところ、次のとおり、適切でないと認められる事態が見受けられた。
 すなわち、事業所では、折損コンクリート柱が発生した場合には、その取替工事等を行っているほか、折損コンクリート柱は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)に定めるところにより、産業廃棄物として適正に処理しなければならないことから、折損コンクリート柱の回収を行い電柱の移転等通常の工事により撤去したもののうち不用となったコンクリート製電柱とあわせて一定量を事業所に集積する。そして、事業所が直営により又は地域事業部(旧支社)が運送契約を締結して地域事業本部の指定した集積場に運搬している。また、地域事業本部の資材部門等では、産業廃棄物処理業者(以下「処理業者」という。)との間で産業廃棄物の処理を行わせる基本契約を締結しており、この基本契約に基づき地域事業部は、処理業者と個別契約を締結し、処理業者に集積場から中間処理を行う施設までの運搬、ここでの破砕及び最終処分場までの運搬などを行わせている。

 そして、事業所では、上記のとおり、地域事業部等が処理費を実際に負担していることから、これを損害額に含めて算定し加害者に請求する要があったと認められるのに、加害者に請求していたものは前記12,255本のうち300本分にすぎず、残りの11,955本に係る処理費相当額約8310万円(60年度分2,475本、約1680万円、61年度分2,868本、約1950万円、62年度分3,134本、約2180万円、63年度分3,478本、約2490万円)については加害者に請求を行っていなかった。
 このような事態を生じたのは、本社において、「争訟・賠償事務規程」等に折損コンクリート柱に係る処理費相当額を損害額に含めて算定するよう規定していなかったこと、また、地域事業本部においても、折損コンクリート柱に係る損害額の算定を行う線路部門及び加害者に対し損害賠償の請求を行う総務部門と、産業廃棄物の処理に関する契約等を行う資材部門等との連携が十分でなかったため、線路部門及び総務部門で折損コンクリート柱に係る処理の実態及び処理費について十分把握していなかったことなどによると認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、日本電信電話株式会社では、平成元年8月に「当社の設備等が損害を受けた場合の損害額の算定方法(標準)の制定について」の通達を発するなどし、地域事業本部において折損コンクリート柱に係る損害賠償請求を適切に行うための処置を講じた。

 (注)  東京地域事業本部ほか5地域事業本部 東京、関東、信越、関西、四国、九州各地域事業本部