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  • 昭和63年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第9 日本電信電話株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

新ガス圧遠隔監視システムの設計を経済的、効率的なものとするよう改善させたもの


(3) 新ガス圧遠隔監視システムの設計を経済的、効率的なものとするよう改善させたもの

科目 建設投資勘定
部局等の名称 神奈川支社ほか14支社、金沢支店ほか2支店(購入要求部局)
  本社(契約部局)
購入物品 通信用地下ケーブルの障害の予防保全を図るため、ケーブル内にガス(乾燥空気又は窒素ガス)を供給し、各ケーブル内の ガスの圧力等を常時監視・測定することにより、ケーブルが損傷したなどの場合に、これを検知し、警報を発するとともに損傷箇所の自動推定などを行う新ガス圧遠隔監視システムを構成する遠隔監視ユニット97台、監視装置25台、インタフェース装置7台等の機器
購入価額 607,993,950円
契約の相手方 アンリツ株式会社ほか3会社、全国通信線路用機器材工業協同組合
契約 昭和60年3月 基本契約
昭和62年11月〜平成元年3月 個別契約

 上記の各支社等では、新ガス圧遠隔監視システムの構成機器の機能を十分に活用した設計を行わなかったなどのため、約2620万円相当の機器の購入が過大になっていた。
 このような事態を生じているのは、システムを構成する機器の機能等に応じて、経済的、効率的な設計を行う必要があるのに、これについて具体的な方法を示していなかったことなどによるもので、これを示して経済的、効率的な設計を行う要があると認められた。

 上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)
 日本電信電話株式会社では、通信用地下ケーブルの障害の予防保全を図るため、従前から、支店等からケーブル内にガスを供給し、各ケーブル内のガスの圧力等を常時監視・測定し、異常時に警報を発するなどの機能を有するガス圧遠隔監視システムを運用している。そして、昭和62年度からは、通信用地下ケーブルの保守作業の効率化を図るため、従来のガス圧遠隔監視システム(以下「旧システム」という。)に代えて、ケーブル損傷箇所の推定を自動化するなどの機能を付加したシステム(以下「新システム」という。参考図 参照)を導入している。

 この新システムは、〔1〕 ケーブルの接続部等に設置され、ケーブル内のガスの圧力等を測定し、その測定データを監視装置に転送する発信器、〔2〕 主として無人の電話交換センタ等(以下「無人局等」という。)に設置され、発信器の測定データの収集等を行う遠隔監視ユニット、〔3〕 支店等に設置され、発信器から直接又は遠隔監視ユニットを経由して転送された測定データを自動的に処理し警報の種類の判定等を行う監視装置、〔4〕 新システムと旧システムの接続等を行うインタフェース装置等の機器から構成されている。そして、本社が制定した「電気通信技術標準実施方法(ガス施設設計編)」(以下「標準実施方法」という。)によれば、上記発信器の測定データは、最大23個の発信器を1単位とするブロックごとに転送されることになっており、その転送を受ける機器のうち遠隔監視ユニットは、最大10ブロックの発信器を接続でき、監視装置は、最大30ブロックの発信器を直接接続できるほか、最大20台の遠隔監視ユニットを接続できるとされている(ただし、監視装置に発信器を直接接続し、併せて遠隔監視ユニットを接続する場合には、データ処理等の能力から接続できる発信器は100ブロックが限度となっている。)。各支社等は、この標準実施方法に基づき、通信用地下ケーブルの保守を担当する支店等ごとに、保守地域内の無人局等の数、旧システムとの接続の有無等の条件を考慮して、新システムの設計を行い、各構成機器の必要数を算定することとなっている。
 しかして、本院において、62、63両年度に神奈川支社ほか14支社(注1) 及び金沢支店ほか2支店(注2) で購入要求を行い、秦野支店ほか24支店等に設置した遠隔監視ユニット97台、監視装置25台、インタフェース装置7台等(購入価額607,993,950円)から構成される新システムについて、各機器の構成及び発信器の監視装置への接続状況等を調査したところ、次のとおり、適切でないと認められる事態が見受けられた。
 すなわち、上記の18支社等で設計し設置した新システムの構成機器のうちには、

(1) 遠隔監視ユニットを経由して発信器を監視装置に接続しているが、監視装置に直接接続できる発信器のブロック数及びガスの圧力等の測定データを転送する回線(以下「転送回線」という。)の余裕を活用すれば、遠隔監視ユニットに接続した各発信器を監視装置に直接接続することができ、これにより設置する要がなくなる遠隔監視ユニット

秦野支店ほか17支店等で26台

(2) 新、旧システムを接続するためにインタフェース装置を設置しているが、
 ア 新システムの監視装置に直接接続できる発信器のブロック数及び転送回線の余裕を活用すれば、旧システムの監視装置に接続している発信器を新システムの監視装置に直接接続することができ、これにより設置する要がなくなるインタフェース装置1台
 イ インタフェース装置より低価な遠隔監視ユニットを新たに3台設置して、これに旧システムの監視装置に接続している発信器を接続することとすれば、設置する要がなくなるインタフェース装置2台

計 大月支店ほか2支店で3台

(3) 所属する事業部門が異なるとして、同一建物内に監視装置を1台ずつ設置しているが、1台の監視装置で十分監視できるので監視装置を共用すれば、設置する要がなくなる監視装置

山形支店で1台

(4) 監視装置2台、遠隔監視ユニット1台を設置しているが、監視装置には前記のとおり最大20台の遠隔監視ユニットを接続でき、また、監視装置は遠隔監視ユニットより高価であるので、遠隔監視ユニットを新たに3台設置して、監視装置1台、遠隔監視ユニット4台の組合せにすれば、設置する要がなくなる監視装置 東濃支店で1台などが見受けられた。
 いま、仮に、前記の各支社等における新システムの設計を適切なものに改めたうえで、各構成機器の必要数及び購入価額を算定すれば、前記遠隔監視ユニット97台、監視装置25台、インタフェース装置7台等607,993,950円は、遠隔監視ユニット77台、監視装置23台、インタフェース装置4台等581,726,280円で足りたこととなり、約2620万円相当の機器の購入が過大であったことになる。
 このような事態を生じているのは、前記の各支社等において、新システムの経済的、効率的な設計を行うための検討が十分でなかったことにもよるが、本社において、経済的、効率的な設計方法を具体的に示していなかったことによると認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、日本電信電話株式会社では、平成元年11月に新システムの経済的、効率的な設計を行うための具体的な方法を示した「新ガス圧遠隔監視システムの設計について」の通知を各地域事業本部に発するなど、新システムの経済的、効率的な設計を図るための処置を講じた。

 (注1)  神奈川支社ほか14支社 神奈川、埼玉、山梨、東海、静岡、岐阜、三重、京都、九州、福岡、長崎、大分、宮崎、鹿児島、山形各支社

 (注2)  金沢支店ほか2支店 金沢、福井、津山各支店

(参考図)

(参考図)

 (注)  ワークステーション 監視装置又はインタフェース装置に接続し、これらの装置から転送された情報に基づき各種警報の出力、ケーブル損傷箇所の自動推定等の処理を行うもの