科目 | (款)鉄道事業営業収益 (項)運輸附帯収入 | ||
部局等の名称 | (1) 北海道旅客鉄道株式会社本社ほか3支社 | ||
(2) 東日本旅客鉄道株式会社東京圏運行本部ほか8支社等 | |||
(3) 東海旅客鉄道株式会社東海鉄道事業本部ほか4支社等 | |||
(4) 西日本旅客鉄道株式会社鉄道本部ほか7支社 | |||
(5) 四国旅客鉄道株式会社 | |||
(6) 九州旅客鉄道株式会社開発事業本部ほか4支店 | |||
構内旅客営業の概要 | 駅構内において主として旅客を対象として行う営業で、店舗を設置して新聞・雑貨等を販売する店舗営業、自動販売機を設置して飲料等を販売する自動販売機業、委託公衆電話を設置して行う貸電話業などの営業種目(種類)がある。 | ||
営業承認の相手方(営業者) | (1) 北海道キヨスク株式会社ほか35会社等 | ||
(2) 東日本キヨスク株式会社ほか147会社等 | |||
(3) 東海キヨスク株式会社ほか54会社等 | |||
(4) 西日本キヨスク株式会社ほか120会社等 | |||
(5) 四国キヨスク株式会社ほか12会社等 | |||
(6) 九州キヨスク株式会社ほか48会社等 | |||
営業承認種目 | 店舗営業、自動販売機業及び雑営業(貸電話業) | ||
営業料金収受額 (昭和63年度) |
(1) | 60,886,000円 | |
(2) | 1,111,045,000円 | ||
(3) | 155,669,000円 | ||
(4) | 422,843,000円 | ||
(5) | 19,801,000円 | ||
(6) | 79,186,000円 | ||
計 | 1,849,430,000円 |
上記の旅客鉄道株式会社において、旅客等の利便を図るため、各会社から営業の承認を受けた営業者が駅構内に自動販売機を設置して営業する自動販売機業及び委託公衆電話を設置して行う貸電話業について、営業料金算定の基礎となる営業料率が低率となっていたなどのため、これらに係る営業料金が(1)において約4650万円、(2)において約3億8780万円、(3)において約1億9760万円、(4)において約2億2380万円、(5)において約2430万円、(6)において約8360万円、計約9億6360万円低額となっていた。
このような事態を生じているのは、自動販売機及び委託公衆電話の設置台数の増加に伴ってその管理方法や管理経費が変化しているのに、各会社において営業者の管理運営についての実態を十分把握していなかったため、営業料金算定の基礎となる営業料率について抜本的な見直しが行われていなかったことや店舗に併設している自動販売機や委託公衆電話について店舗営業として営業承認していたことによるもので、管理運営の実態等を踏まえ営業料率について見直しを行うとともに、店舗に併設している自動販売機や委託公衆電話についても自動販売機業又は貸電話業としてそれぞれ一括承認することにより、営業料金を適切なものにする要があると認められた。
上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。
(説明)
各旅客鉄道株式会社(以下「各会社」という。)では、駅構内において、店舗、自動販売機(以下「自販機」という。)、委託公衆電話(以下「公衆電話」という。)等を設置するなどして構内営業を行う営業者に対して、各会社がそれぞれ制定した構内営業規程に基づき、構内営業の営業種目等及び箇所ごとに営業の承認をし営業料金を収受することになっている。この営業承認に当たっては、店舗を設置し新聞等雑貨類を販売する場合は店舗営業として店舗ごとに、また、自販機を設置して飲料等を販売する場合は自動販売機業(以下「自販機業」という。)、公衆電話を設置して一般の利用に供する場合は雑営業のうちの貸電話業としてそれぞれ駅ごとに承認しているが、自販機や公衆電話が店舗に併設されている場合は店舗営業に含めて承認している。
また、営業料金は、上記の営業承認ごとに、年間売上総収入額(注)
に所定の営業料率をそれぞれ乗ずるなどして算定することとなっており、昭和63年度に自販機12,152台及び公衆電話7,645台に係る営業料金として計1,849,430,000円を収受していた。
しかして、各会社が駅構内において設置していた自販機及び公衆電話を店舗営業、自販機業又は貸電話業として営業承認しているものについて、営業者における管理運営の実態について本院で調査したところ、次のとおり、適切でないと認められる事態が見受けられた。
1 自販機業及び貸電話業に係る営業料率の設定について
各会社は、店舗営業、自販機業及び貸電話業の営業者から、営業承認ごとの年間売上総収入額に自社の構内営業規程に定める次表の営業料率を乗じた額を営業料金として収受しており、自販機業及び貸電話業の営業料率は一部を除き店舗営業のそれとほぼ同程度又はそれより低く設定されている。
会社名 |
営業料率(%) |
料率設定年月又は経緯 | ||
店舗営業 |
自販機業 | 貸電話業 | ||
北海道 | 年間売上総収入額に応じて | 同左 | 同左 | 63年9月まで適用 |
2.2〜5.4 | 2.5〜6.5 | 1.3〜4.6 | ||
年間売上総収入額に応じて | 同左 | 同左 | 63年10月から適用 | |
2.4〜5.9 | 3.3〜8.5 | 1.4〜5.1 | ||
東日本 | 年間売上総収入額に応じて | 同左 | 同左 | 63年4月から適用 |
2.6〜6.5 | 6.0〜11.0 | 3.0〜6.0 | ||
東海・四国・九州 | 年間売上総収入額に応じて | 同左 | 同左 | 日本国有鉄道が57年度に設定したものをそのまま踏襲 |
2.2〜5.4 | 2.5〜6.5 | 1.3〜4.6 | ||
西日本 | 一律4.5 | 一律4.5 | 一律2.5 | 63年4月から適用 |
しかし、自販機業及び貸電話業においては、営業者は設備費等をほとんど負担しておらず、また、自販機又は公衆電話の管理作業も極めて簡易なものであって、店舗を設置し従業員を配置して商品の販売を行う店舗営業に比べて、設備関係費及び人件費等の管理経費の負担は著しく軽微であり、これら管理運営の実態を反映してその収益性が店舗営業に比べ大幅に上回っていると認められるのにもかかわらず、店舗営業の営業料率とほぼ同程度又はそれより低い料率を設定していて、適切を欠いていると認められた。
すなわち、
(1) 自販機業の営業者は、自販機の大半を占める飲料自販機を飲料業者から無償で借り受け、その保守も飲料業者が行っているため、営業者が負担する設備関係の費用は自販機の消費する電気料金程度となっており、また、自販機に係る日常的な管理作業も商品の補充、釣銭の補給、売上金の回収、売上日報の作成等いずれも短時間で処理可能なもので、特に、売上げの多い駅に設置されている自販機については、商品の補充等の作業について全面的に飲料業者の巡回サービスを受けている状況であった。
(2) 貸電話業の営業者が管理する公衆電話は、日本電信電話株式会社の負担で設置工事及び保守等を行っており、営業者はその電源を提供している程度にすぎず、また、公衆電話に係る日常的な管理作業も売上金の回収、電話機の清掃等、自販機の場合よりも更に簡易なものとなっており、本院の調査によっても営業者は1回1台当たり数分程度で処理している状況であった。
(3) また、自販機業における商品の仕入代金の支払及び貸電話業における電話料の売上金の支払は、いずれも1箇月から2箇月後程度までに行っている状況であった。
このように、自販機業及び貸電話業における設備関係費及び人件費等の管理経費は、店舗営業のそれに比べて著しく軽微なものであり、しかも、本院において店舗営業及び自販機業について利益率を試算してみたところ、いずれも自販機業の利益率が店舗営業のそれを大幅に上回っている状況であり、また、自販機業よりも管理経費が軽微な貸電話業の収益性は少なくとも自販機業と同程度になっているものと思料された。
しかして、前掲営業料率表のとおり、東日本旅客鉄道株式会社(以下、旅客鉄道株式会社を「会社」という。)では、自販機業の営業料率について、自販機の管理運営の実態や私鉄における構内営業の実態調査等を参考にして、店舗営業の営業料率を大幅に上回る6%〜11%の営業料率を設定しているが、貸電話業については、依然として店舗営業の場合とほぼ同程度の営業料率としており、また、他の5会社では、自販機業及び貸電話業の営業料率について店舗営業の場合と同程度又はそれより低い営業料率を設定しているばかりでなく、自販機業と貸電話業との間においても貸電話業の営業料率の方を低率に設定しているのは、自販機業及び貸電話業における管理運営の実態に照らし適切でなく、したがって、自販機業及び貸電話業の営業料率については、店舗営業のそれを大幅に上回る料率に改定する要があると認められ、特に、貸電話業については少なくとも自販機業の営業料率を下回らない料率に設定する要があると認められた。
2 店舗に併設している自販機及び公衆電話に係る営業承認の取扱いについて
各会社では、店舗に併設されている自販機及び公衆電話については、前記のとおり、自販機業又は貸電話業としてではなく、店舗営業として営業承認をすることとしており、この承認を受けて設置されているものが各会社合わせて自販機3,505台、公衆電話3,654台ある。
この店舗併設の自販機及び公衆電話について、営業者における管理運営の実態を調査したところ、管理作業の内容、管理経費及び収益性は、上記1に述べた自販機業及び貸電話業の場合と何ら異なっていないと認められ、したがって、店舗併設の自販機及び公衆電話についても管理運営の実態が異なる店舗営業に含めて承認するのは適切ではなく、駅ごとに一括して自販機業又は貸電話業として承認する取扱いに改め、上記1において適切なものに改定した営業料率を適用する要があると認められた。このような事態を生じているのは、自販機及び公衆電話の設置台数及び利用の増加に伴って、営業者における管理運営の方法が変化し、管理運営経費が減少していると思料されるのに、各会社においてその実態を十分把握することなく、〔1〕 これら各会社の前身である日本国有鉄道当時の営業料率をそのまま踏襲していたり(東海、四国、九州各会社)、〔2〕 店舗営業の営業料率の改定は行っているものの自販機及び公衆電話については、その管理運営の実態を十分調査することなく、店舗営業の営業料率の引上げに準じた程度の引上げしか行っていなかったり(北海道、西日本両会社)、〔3〕 自販機業については前記のとおり実態調査等を参考にして適切な営業料率を設定しているのにこれと同種の貸電話業については十分な見直しを行っていなかったり、店舗併設の自販機についての営業承認の取扱いを改めていなかったり(東日本会社)していることによると認められた。
いま、仮に上記1、2により、自販機業及び貸電話業の営業料率を、本院の調査によっても適切と認められる東日本会社における自販機業の営業料率(6%〜11%)によることとするとともに、自販機、公衆電話は店舗に併設されているものを含め、それぞれ自販機業又は貸電話業として一括して営業承認することとして営業料金を算定したとすれば、営業料金は(1)において約4650万円、(2)において約3億8780万円、(3)において約1億9760万円、(4)において約2億2380万円、(5)において約2430万円、(6)において約8360万円、計約9億6360万円の増収を図ることができた計算となる。
上記についての本院の指摘に基づき、四国旅客鉄道株式会社では平成元年9月、北海道旅客鉄道株式会社では同年9月及び11月、他の4旅客鉄道株式会社では同年11月、それぞれ自販機及び公衆電話の取扱いについて構内営業規程等を改正するなどして、自販機業及び貸電話業の営業料率を適切なものに改定するとともに、店舗営業として承認した併設の自販機及び公衆電話を自販機業又は貸電話業としてそれぞれ一括承認する取扱いに改めることとし、これを、東日本、九州両旅客鉄道株式会社では元年4月に遡及して、北海道、東海、四国各旅客鉄道株式会社では同年10月から、西日本旅客鉄道株式会社では2年4月から、それぞれ適用することとする措置を講じた。
(注) 年間売上総収入額 各会社では、たばこ及び委託公衆電話以外の商品について年間売上高と同額としているが、たばこについては年間売上高の40%相当額、電話料金については年間売上高の70%相当額を年間売上総収入額とすることとしている。