科目 | (款)鉄道事業営業費 | (項)運転費 |
部局等の名称 | (1) 東日本旅客鉄道株式会社東北地域本社ほか3支社等 | |
(2) 東海旅客鉄道株式会社東海鉄道事業本部ほか3支社等 | ||
(3) 西日本旅客鉄道株式会社鉄道本部ほか1支社 | ||
契約名 | 休養管理業務等作業請負契約 | |
契約の概要 | 運転等の乗務に備え運転区等の休養室で休養する乗務員を、所定の時刻に起床させるなどの業務を行わせるもの | |
契約の相手方 | (1) 東北鉄道整備株式会社ほか4会社 | |
(2) 名古屋整備株式会社ほか6会社 | ||
(3) 関西弘済整備株式会社ほか5会社 | ||
契約 | 昭和63年4月 随意契約 | |
支払額 | (1) 310,133,400円 | |
(2) 315,881,397円 | ||
(3) 508,470,900円 | ||
計 1,134,485,697円 |
上記の各契約において、所定の時刻に就寝中の者を起床させる装置(以下「起床装置」という。)の導入等によって、運転区、車掌区等の区所内にある乗務員休養室(以下「休養室」という。)で休養する乗務員を起床させるなどの休養管理業務の請負を廃止することにより、休養管理業務に係る経費を(1)において約9040万円、(2)において約6350万円、(3)において約1億5850万円、計約3億1240万円節減できると認められた。
このような事態を生じたのは、起床装置の新規導入、既設起床装置の集中制御盤の移設等について十分に検討しないまま休養管理業務を請け負わせていたことによるもので、休養管理業務の実態を把握のうえ、起床装置の導入等によって、請負を廃止し、もって、経費の節減を図る要があると認められた。
上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。
(説明)
東日本、東海、西日本各旅客鉄道株式会社では、昭和63年度に、次表のとおり、18会社に清掃業務、休養管理業務等を請け負わせ、合計1,134,485,697円を支払っており、このうち休養管理業務は79区所で実施していて、その請負費支払相当額は合計450,822,671円となっている。
請負会社 | 請負費支払額 | 休養管理業務実施区所数 | 休養管理業務請負費支払相当額 | |
東日本旅客鉄道株式会社 東北地域本社ほか3支社等(注1) |
5会社 | 310,133,400円 | 32区所 | 178,061,138円 |
東海旅客鉄道株式会社 東海鉄道事業本部ほか3支社等(注2) |
7会社 | 315,881,397円 | 16区所 | 78,303,733円 |
西日本旅客鉄道株式会社 鉄道本部ほか1支社(注3) |
6会社 | 508,470,900円 | 31区所 | 194,457,800円 |
計 |
18会社 | 1,134,485,697円 | 79区所 | 450,822,671円 |
上記の休養管理業務は、運転等の業務に従事する乗務員が、乗務に備えて運転区、車掌区等の区所内にある休養室で休養する際、乗務員を所定の時刻に確実に勤務に就かせるため、乗務員の到着時に受付をし、起床時刻の確認を行い、所定の起床時刻に起床させ、それを確認するなどの業務である。
しかして、乗務員の休養等の実態について調査したところ、乗務員は、運転区等に到着し、事務室で担当助役の到着点呼を受けた後、休養室に赴き休養室内の請負業者の作業員の詰所で、起床時刻の確認を受け、休養し、起床装置(注4)
が設置されている区所では起床装置によって自ら起床し、また、起床装置が導入されていない区所では請負業者の作業員の通報によって起床しており、起床後事務室で担当助役の出勤点呼を受け、乗務する際の諸連絡事項を確認し、勤務に就いている状況であった。そして、前記79区所のうち、休養室が運転区等の事務室から離れているものが24区所、休養室が運転区等の事務室と同一又は近接する建物内にあるものが55区所となっていたが、これらを区別することなく休養管理業務を請け負わせている状況であった。
しかしながら、上記の55区所(1)においては17区所(注5)
、休養管理業務請負費支払相当額92,732,820円、(2)においては12区所(注6)
、同支払相当額65,305,868円、(3)においては26区所(注7)
、同支払相当額164,452,800円)における休養管理業務は、〔1〕 乗務員を起床させる業務については、起床装置が設置されていれば、乗務員はこの装置により自ら起床し、万一起床しないときには休養室が事務室に近いことから担当助役等が休養室に赴き短時間のうちに起床させることが可能であること、〔2〕 起床したことの確認業務については、 乗務員が起床しているかどうかは起床装置の集中制御盤に表示されることから、集中制御盤が事務室に設置されていれば担当助役が起床の状況を把握できること、〔3〕 乗務員の休養室の到着時の受付、起床時刻の確認業務については、担当助役が対面して点呼をとっているのであるから、その際にこれを行うことができることなどから、休養管理業務を請け負わせる必要はないと認められる。
したがって、上記55区所のうち、(ア)起床装置が導入されていない43区所では、新たに起床装置を導入するなどして、(イ)起床装置が設置されている12区所では、起床装置の一部である集中制御盤を請負業者の作業員の詰所から事務室へ移設するなどして、休養管理業務の請負を廃止し、経費の節減を図る要があると認められた。
いま、仮に、本件55区所について、起床装置を新規に導入したり、既設の起床装置の集中制御盤を事務室へ移設したりなどして、本件休養管理業務の請負を廃止することとすれば、初年度には起床装置の設置等工事費として(1)において約7899万円、(2)において約5811万円、(3)において約1億9213万円、計約3億2923万円を要するものの、休養管理業務に係る経費は、導入後増加することとなる年間維持管理経費(起床装置の電気料金及び修繕費)を(1)において232万円、(2)において175万円、(3)において591万円、計998万円程度考慮しても、今後毎年(1)において約9040万円、(2)において約6350万円、(3)において約1億5850万円、計約3億1240万円節減できる計算となる。
上記についての本院の指摘に基づき、各旅客鉄道株式会社では、本件55区所のうち、23区所について、平成元年4月から10月にかけて、起床装置を新規に導入したり、既設の起床装置の集中制御盤を移設したりなどして休養管理業務の請負を廃止し、残りの区所についても同様に同年11月以降順次廃止することとする処置を講じた。
(注1) 東北地域本社ほか3支社等 東北地域本社、同盛岡、同秋田両支店、新潟支社
(注2) 東海鉄道事業本部ほか3支社等 東海鉄道事業本部、同静岡支社、新幹線鉄道事業本部、同関西支社
(注3) 鉄道本部ほか1支社 鉄道本部、和歌山支社
(注4) 起床装置 ベッドの上に置いた空気袋の膨張、収縮の繰り返しによって他の者の睡眠を妨げることなく所定の時刻に起床させる装置(本体)と、事務室等で起床状況を一括把握できるほか、万一起床していないときは数分後にブザーにより警報する装置(集中制御盤)を備えたもの
(注5) 17区所 福島車掌区福島、長岡車掌区長岡両乗務員宿泊所、陸前原ノ町電車区、秋田、山形、福島、新潟各運転所、秋田運転所秋田、山形運転所米沢両支所、盛岡、釜石、大館、新庄、会津若松、新津、直江津各運転区、釜石運転区宮古派出所
(注6) 12区所東京車掌所、高山、中津川、美濃太田、沼津、豊橋各運輸区、浜松、名古屋両運転区、静岡運転所、神領電車区、東京第一、大阪第1両車両所
(注7) 26区所 京都、大阪、京橋、天王寺、奈良、和歌山各車掌区、大阪車掌区大阪乗務員宿泊所、,京都車掌区米原支区、大阪車掌区高槻派出所、大阪、森ノ宮、宮原、日根野、明石、奈良各電車区、京都電車区京都、官原電車区宮原、奈良電車区奈良各乗務員宿泊所、野洲電車区米原、淀川電車区京橋、宮原電車区高槻各派出所、亀山、梅小路、紀伊田辺、新宮各運転区、姫路運転区姫路乗務員宿泊所