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  • 第3章 特定検査対象に関する検査状況

湾岸平和基金に対する拠出金について


第2 湾岸平和基金に対する拠出金について

(平成3年度決算検査報告参照)

1 拠出金の概要

(拠出の経緯と拠出額)

 我が国は、平成2年8月2日のイラクのクウェイト侵攻に対し、国際連合安全保障理事会の決議を基礎に問題の解決が図られるべきであるとの立場をとった。そして、湾岸の平和と安定の回復に向けて上記決議に従って活動している各国を支援するため、湾岸アラブ諸国協力理事会(注) (以下「理事会」という。)に設けられた湾岸平和基金(以下「基金」という。)に対して、次のとおり、総額1兆4928億8000万円の資金を拠出している。

〔1〕 2年9月21日付第1回交換公文により1228億8000万円

〔2〕 2年12月24日付第2回交換公文により1300億円

〔3〕 3年3月12日付第3回交換公文により1兆1700億円

〔4〕 3年7月9日付第4回交換公文により700億円

(注)  湾岸アラブ諸国協力理事会  昭和56年5月、イラン・イラク戦争を背景とした周辺地域情勢の激動を機に、湾岸アラブ6箇国(アラブ首長国連邦、オマーン、カタル、クウェイト、サウディ・アラビア、バハレーン)が、経済、社会、文化等幅広い分野での協力関係を増進し、その結束の強化を目的として結成した国際機関であり、本部はサウディ・アラビアのリヤドに置かれている。そして、理事会は、最高理事会、閣僚理事会及び事務局により構成されている。

(拠出金の使途)

 この基金の運用に責任を有する機関として、我が国政府の代表と理事会の代表で構成する運営委員会(以下「委員会」という。)が設置されている。そして、拠出金の使途は、上記各交換公文及びそれに基づく委員会の決定により、次のように定められている。

ア 第1回及び第2回交換公文による拠出金(合計2528億8000万円)は、交換公文において、(1)「資金協力」及び(2)「資機材の調達、輸送及び据付けに係る協力」(以下「物資協力」という。)を行うために使用することとされており、その詳細は、委員会により次のとおり決定されている。 

(1) 航空機及び船舶の借上げ経費その他の輸送関連経費を対象とする資金協力

(2) 次の資機材を対象とする物資協力

(a)防暑機材、(b)水関連機材、(c)車両その他輸送関連資機材、(d)宿舎及びその附属機材、(e)建設資機材及び通信機材、(f)事務用資機材、(g)食糧、医薬品及び医療関連資機材、並びに(h)海洋資源及び環境の破壊及び汚染の防止のための資機材(以下「環境汚染防止資機材」という。)

(3) 基金の運用に係る経費

イ 第3回及び第4回交換公文による拠出金(合計1兆2400億円)は、交換公文において、「資金協力」を行うために使用することとされており、その詳細は、委員会により次のとおり決定されている。

(a)輪送関連、(b)医療関連、(c)食糧・生活関連、(d)事務関連、(e)通信関連、(f)建設関連

(使用状況の通報)

 そして、交換公文において、我が国は、拠出金の使用につき、委員会の決定する適当な経路で通報を受けることとなっている。

2 昨年までの検査状況

 我が国からの基金に対する拠出金の支出については、外務省から本院に提出されている計算書及び証拠書類等により、すべて予算、法令等に従い適正に行われたことを確認した。
 一方、委員会による拠出金の使用については、本院の検査権限は委員会に及ばないので、外務省に対し委員会からの通報等の提示を求めるなどして調査することになる。そして、委員会から外務省に対し、随時、基金の支払に関する資料が提出されていたが、平成3年度決算検査報告の作成時点で、委員会による支払が全て完了していなかったことから、完了後に作成・提出されることになっている基金の財務に関する報告書(以下「財務報告」という。)は、作成・提出されていなかった。
 したがって、本院では、財務報告が我が国に提出されるのをまって、委員会による拠出金の使用について調査することとした。

3 財務報告

(財務報告の提出)

 委員会では、5年3月23日までに基金のすべての支払を完了し、同年8月22日には財務報告を作成し、これを同月27日に我が国に提出した。
 財務報告は、前記のような各回の拠出金の使途の差異から、第1回及び第2回交換公文による拠出金の分を併せて1分冊、第3回及び第4回交換公文による拠出金の分を併せて1分冊の計2分冊となっている。そして、財務報告には、基金の収入額、支払額のほか、支払額の協力形態(資金、物資)別、受益国別、使途別の内訳等が明記されている。また、理事会が委嘱した外部監査人の見解が添付されている。

(財務報告の内容)

 財務報告の主な内容は次のとおりである。

ア 第1回交換公文及び第2回交換公文による拠出金の分の収入額及び支払額

 収入額は、我が国からの拠出金252,880百万円及び利子1,365百万円の合計額254,245百万円となっている。
 また、支払額は、資金協力170,011百万円、物資協力83,975百万円及び基金の運用に係る経費259百万円の合計額254,245百万円で、上記収入額と同額となっている。そして、資金協力及び物資協力の受益国別、使途別の内訳は次表のとおりとなっている。

(単位:百万円)

受益国 資金協力 物資協力
使途 金額 使途 金額
アメリカ 航空輸送 98,151 防暑機材 200
海上輸送 51,112 水関連機材 437
小計 149,263 車両その他輸送関連資機材 16,459


宿舎及びその附属機材 5,824


建設資機材及び通信機材 27,267


事務用資機材 9,539


食糧、医薬品及び医療関連資機材 4,401


小計 64,127
イギリス 航空輸送 6,518

海上輸送 133
燃料費 1,849
小計 8,500
サウディ・アラビア

車両その他輸送関連資機材 1,268
環境汚染防止資機材 13,311
小計 14,579
エジプト 航空輸送 2,036 車両その他輸送関連資機材 2,238
海上輸送 4,132
鉄道輸送 3
小計 6,171
シリア 航空輸送 1,502 車両その他輸送関連資機材 1,259
海上輸送 1,665
小計 3,167
クウェイト

建設資機材及び通信機材 161
車両その他輸送関連資機材 287
食糧、医薬品及び医療関連資機材 215
環境汚染防止資機材 337
小計 999
バハレーン

環境汚染防止資機材 398
カタル

環境汚染防止資機材 375
パキスタン 航空輸送 1,749

モロッコ 航空輸送 515

バングラデシュ 航空輸送 342

セネガル 航空輸送 249

フィリピン 航空輸送 44

ポーランド 航空輸送 11


合計 170,011 合計 83,975

イ 第3回交換公文及び第4回交換公文による拠出金の分の収入額及び支払額

 収入額は、我が国からの拠出金1,240,000百万円及び利子2,077百万円の合計額1,242,077百万円となっている。
 また、支払額は上記収入額と同額の1,242,077百万円で、すべて資金協力に係るものである。そして、その受益国別、使途別の内訳は次表のとおりとなっている。 

(単位:百万円)

受益国 使途 金額
アメリ力 輸送関連 1,092,536
食糧・生活関連 56,109
小計 1,148,645
イギリス 輸送関連 39,000
フランス 輸送関連 3,154
医療関連 96
食糧・生活関連 1,083
事務関連 1,083
通信関連 217
建設関連 867
小計 6,500
サウディ・アラビア 輸送関連 3,051
医療関連 5,500
食糧・生活関連 10,728
小計 19,279
エジプト 輸送関連 14,719
シリア 輸送関連 7,628
パキスタン 輸送関連 3,066
モロッコ 輸送関連 651
バングラデシュ 輸送関連 663
セネガル 輸送関連 715
ニジェール 輸送関連 585
クウェイト 食糧・生活関連 626
合計 1,242,077

(外部監査人の見解)

 外部監査人は、財務報告が交換公文締結日からすべての支払を完了した日までの期間における拠出金の使用状況及び同期間末における拠出金に係る基金の財務状態を反映している旨の見解を述べている。

4 検査の状況

(調査の方法)

 上記のように、財務報告においては、我が国からの拠出金等の使途は、前記交換公文の使途に関する規定及びそれに基づき委員会が決定した使途の詳細に合致したものとなっているが、一方、外務省では、前記のとおり、基金の支払総額1兆4963億余円について、随時、委員会から支払に関する資料を受領している。この資料は、資金協力に係るものとして受益国から委員会に提出された使途等に関する資料、物資協力に係るものとして委員会・納入業者間の契約関係の資料などである。
 そこで、本院は、外務省からこれら資料の提示を受けたり、説明を聴取したりして、財務報告に記載されている受益国別の使途及び金額が、同資料等による基金の支払と相違していないかどうかについて調査した。

(調査の結果)

 これらの資料及び外務省からの説明により確認した限りにおいては、財務報告に記載されている受益国別の使途及び金額で、同資料等による基金の支払と相違しているものは見受けられず、交換公文の規定に違背するものは見受けられなかった。