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  • 平成8年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第12 自治省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

消防防災施設整備費補助金による画像伝送システムの整備において、競争の利益を十分生かした適切な契約を締結するよう改善させたもの


消防防災施設整備費補助金による画像伝送システムの整備において、競争の利益を十分生かした適切な契約を締結するよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)消防庁 (項)消防防災施設等整備費
部局等の名称 消防庁
補助の根拠 予算補助
事業主体 横浜市ほか7市
補助事業 画像伝送システム(施設分)の整備
補助事業の概要 地震等の大規模災害が発生した場合の情報収集及び伝達体制の確保のため、衛星通信の送受信装置、高所監視カメラ等からなる画像伝送システムを整備するもの
事業費 29億0882万余円 (平成7、8両年度)
上記に対する国庫補助金交付額 13億7914万余円 (平成7、8両年度)
過大と認める国庫補助金交付額 8600万円 (平成7、8両年度)
<検査の結果>
 上記の補助事業において、契約の内容に適合した履行の確保のために必要か否かを十分検討することなく、土木工事等の建設工事と同様に最低制限価格を設定したため、国庫補助金約8600万円が過大に交付されていた。
 このような事態が生じていたのは、消防庁において、事業主体が最低制限価格を設定するに際し、整備契約の内容、契約相手方等の状況を考慮することについて、十分指導していなかったことなどによると認められた。
<当局が講じた改善の処置>
 本院の指摘に基づき、消防庁では、平成9年11月に都道府県に対して通達を発するなどして、事業主体に対して、画像伝送システムの整備契約を行うに際しては、最低制限価格を設定する必要性の有無について検討し、競争の利益を十分生かした適切な契約を締結させる処置を講じた。

1 事業の概要

(画像伝送システムの概要)

 消防庁では、阪神・淡路大震災で甚大な被害が発生したことを踏まえ、地震等の大規模災害が発生した場合に情報収集及び伝達体制を確保し、災害に対する迅速かつ的確な防災活動を展開するため、画像伝送システム(施設分)(以下「画像システム」という。)の整備を行う市町村等に対し、消防防災施設整備費補助金を交付している。画像システムの構成は、市消防本部等に設置された衛星通信の送受信装置等、市内の高所に設置された消防用高所監視力メラ等からなっている。
 そして、同庁では、平成7、8両年度に、札幌市ほか30市に対し、上記の補助金を計47億6751万余円(7年度41億9331万余円、8年度5億7420万余円)交付している。

(最低制限価格)

 上記の各市では、画像システムの整備に当たり、指名競争入札に付したうえで、当該画像システムの整備契約を電気通信機器製造業者と締結している。
 地方自治法(昭和22年法律第67号)及び地方自治法施行令(昭和22年政令第16号)には、指名競争入札に付する場合、最低制限価格を設けることができる旨、規定されている。すなわち、工事又は製造の請負の契約において、契約の内容に適合した履行を確保するため特に必要があると認めるときは、あらかじめ最低制限価格を設けることができ、予定価格の制限の範囲内で最低制限価格以上の価格をもって申込みをした者のうち最低の価格をもって申込みをした者を落札者とすることができるとされている。
 地方公共団体等が行う土木工事等の建設工事の場合は、原価割れ受注によって工事の手抜きや安全対策の不徹底等が生じるおそれがあり、工事の適正な施工の確保に支障を来すことがある。このため、地方公共団体等ではその履行を確保するため、必要な場合には、上記により最低制限価格を設定している。

2 検査の結果

(調査の観点)

 画像システムの整備契約において、最低制限価格を設定しているものがどのくらいあるか、また、設定している場合は、その必要性の検討を十分行っているかという観点から調査した。

(調査の対象)

 札幌市ほか16市(注1) (以下「17市」という。)において、7、8両年度に締結した画像システムの整備契約20件、事業費計61億8496万余円(これに対する国庫補助金28億7025万余円)を対象として調査した。

(調査の結果)

 調査したところ、17市では前記のとおり画像システムの整備契約を指名競争入札により行っており、このうち札幌市ほか11市では、本件契約が工事請負契約であることから、特段の検討をしないまま、土木工事等の建設工事と同様に最低制限価格を設定していた。

 上記12市のうち横浜市ほか7市(注2) (以下「8市」という。)における契約9件、事業費29億0882万余円(これに対する国庫補助金13億7914万余円)については、その入札において、入札価格が最低制限価格を下回ったため失格となっていた業者があり、この中には入札者の大半が失格となっているものも見受けられた。これら9件の入札における落札価格の予定価格に対する率は80%から92%となっており、一方、失格となった者の入札価格の予定価格に対する率は67%から85%となっていた。
 しかし、次のことなどから、本件画像システムの整備契約においては、最低制限価格を設定しなくてもその履行の確保はできると認められ、建設工事と同様に最低制限価格を設定しているのは、競争契約における競争の利益を阻害していて適切とは認められない。

(ア) 画像システムの整備における現場作業は装置の設置、調整程度であり、現場作業が主体となる土木工事等の作業とは内容が異なっていること

(イ) 画像システムの整備に係る設計額の内訳をみると、市場価格の低下の傾向がある装置費が平均で約80%を占めており、落札価格が安価であるからといって材料等の使用量を減らすなどの事態が生じることにはならないこと

(ウ) 17市においては、指名に当たって、資力、信用、能力、実績等を審査の上、契約の内容に適合した履行の確保が十分期待できる業者を選定して入札に参加させていること。現に最低制限価格を設定せずに入札を執行した5市では、予定価格の44%から68%の価格で落札しているが、契約内容に適合した履行の確保がなされていること

(過大に交付されていた補助金)

 最低制限価格を下回った入札を失格としていた前記の8市9件の契約において、最低制限価格を設定しないで、最低価格申込者と契約したとすると、7、8両年度の事業費計29億0882万余円(これに対する国庫補助金13億7914万余円)が26億3480万余円となり、この結果、国庫補助金約8600万円が過大に交付されていると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、事業主体において、画像システムの整備契約の内容、契約相手方等の状況を十分考慮することなく、工事請負契約であるからとして一律に最低制限価格を設定していたことなどにもよるが、消防庁において、このことについて事業主体を十分指導していなかったことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、消防庁では、9年11月に都道府県に対して通達を発するなどして、事業主体に対して、画像システムの整備契約を行うに際しては、最低制限価格を設定する必要性の有無について検討し、競争の利益を十分生かした適切な契約を締結させる処置を講じた。

(注1) 札幌市ほか16市 札幌、浦和、川崎、横浜、新潟、富山、静岡、名古屋、京都、岡山、広島、高松、松山、高知、長崎、熊本、大分各市
(注2) 横浜市ほか7市 浦和、横浜、静岡、京都、岡山、松山、長崎、熊本各市