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  • 平成9年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
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  • 補助金

消防防災施設整備事業の実施に当たり、設計が適切でなかったなどのため耐震性貯水槽の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの


(281) 消防防災施設整備事業の実施に当たり、設計が適切でなかったなどのため耐震性貯水槽の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)消防庁 (項)消防防災施設等整備費
部局等の名称 山梨県
補助の根拠 予算補助
事業主体 山梨県西八代郡三珠町
補助事業 消防防災施設整備
補助事業の概要  大規模な地震時の火災に対処し、地震防災対策の推進を図るため、平成7年度に、耐震性貯水槽2基を築造するもの
事業費 16,789,000円
上記に対する国庫補助金交付額 8,394,000円
不当と認める事業費 16,789,000円
不当と認める国庫補助金交付額 8,394,000円

1 補助事業の概要

 この補助事業は、山梨県西八代郡三珠町が、消防防災施設整備事業の一環として、同町(1)川浦地区及び(2)上野本村地区において、大規模な地震時の火災に対処し、地震防災対策の推進を図るため、平成7年度に、容量100m3 型の耐震性貯水槽(以下「貯水槽」という。)2基の築造を、工事費計16,789,000円(国庫補助金計8,394,000円)で実施したものである。
 上記の貯水槽は、いずれも箱型の現場打ち鉄筋コンクリート構造となっている。(1)については、町道に面した農地の地中に土被りのないもの(内空断面の幅4.1m、長さ7.1m、高さ3.5m)として、(2)については、町営駐車場の地中に土被りの厚さ35cmのもの(内空断面の幅6.0m、長さ7.0m、高さ2.5m)として、それぞれ築造するもので、その設計に当たっては、大規模な地震時の火災に対処できるよう、常時(注1) と地震時の荷重を考慮した応力計算を行うこととされている。
 そして、本件2基の貯水槽とも、配筋図によると、鉄筋についてはいずれも径16mmのものを使用することとし、頂版(厚さ30cm)及び底版(厚さ30cm)の上面側は30cm、下面側は15cmの間隔に、側壁(厚さ30cm)の外面側は30cm、内面側は15cmの間隔にそれぞれ配置することとして設計していた。

2 検査の結果

 検査したところ、本件貯水槽の設計等が次のとおり適切でなかった。

(ア) 同町では、設計に当たり、過去に築造した容量40m3 型の常時の荷重のみを考慮した防火水槽の配筋図を参考として配筋図を作成したが、常時と地震時の荷重を考慮した応力計算は行っていなかった。

(イ) (1)の貯水槽は、配筋図に基づき施工をしていた。また、(2)の貯水槽は、径16mmの鉄筋を頂版の上面側下面側とも20cm、底版の上面側下面側とも25cmの間隔などとして、配筋図と相違した施工をしていた。

 そこで、上記(ア)、(イ)を基に、常時及び地震時の荷重を考慮して、現況に基づいて改めて応力計算を行うと次のとおり、(1)、(2)の貯水槽とも応力計算上安全な範囲を超えている。

(ア) (1)の貯水槽について、主鉄筋に生じる引張応力度(注2) は、底版の上面側では2,681kgf/cm2 (常時)、側壁の外面側では2,196kgf/cm2 (常時)、3,219kgf/cm2 (地震時)となり、許容引張応力度(注2) 1,200kgf/cm2 (常時)、2,700kgf/cm2 (地震時)を大幅に上回っている。

(イ) (2)の貯水槽について、主鉄筋に生じる引張応力度は、底版の上面側では3,184kgf/cm2 (常時)、下面側では4,263kgf/cm2 (常時)、5,658kgf/cm2 (地震時)となり、許容引張応力度1,200kgf/cm2 (常時)、2,700kgf/cm2 (地震時)を大幅に上回っている。また、底版の上面側のコンクリートに生じる曲げ圧縮応力度(注3) は111.9kgf/cm2 (常時)、156kgf/cm2 (地震時)となり、許容曲げ圧縮応力度(注3) 80kgf/cm2 (常時)、120kgf/cm2 (地震時)を大幅に上回っている。

 したがって、本件貯水槽(工事費相当額計16,789,000円)は、いずれも設計が適切でなかったなどのため所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相当額計8,394,000円が不当と認められる。

(注1)  常時 地震時などに対応する表現で、土圧など常時に作用している荷重及び輪荷重など作用頻度が比較的高い荷重を考慮する場合をいう。

(注2)  引張応力度・許容引張応力度 「引張応力度」とは、材に外から引張力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいう。その数値が設計上許される上限を「許容引張応力度」という。耐震性貯水槽については、水密性と耐久性を確実に維持するために1,200kgf/cm2 (常時)とされている。

(注3)  曲げ圧縮応力度・許容曲げ圧縮応力度 「曲げ圧縮応力度」とは、材の外から曲げようとする力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力のうち圧縮側に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいう。その数値が設計上許される上限を「許容曲げ圧縮応力度」という。