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  • 平成10年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第6 厚生省|
  • 不当事項|
  • 補助金

社会福祉施設等施設整備事業等の実施及び経理が不当と認められるもの


(42)−(44) 社会福祉施設等施設整備事業等の実施及び経理が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計(組織)厚生本省 (項)社会福祉施設整備費
(項)社会福祉諸費
部局等の名称 埼玉県ほか1県
補助の根拠 老人福祉法(昭和38年法律第133号)
事業主体 3社会福祉法人
補助事業 社会福祉施設等施設整備事業、社会福祉施設等設備整備事業
補助事業の概要 特別養護老人ホーム等を新設するため、平成9、10両年度に施設又は設備の整備を行うもの
補助対象事業費 1,447,643,000円
上記に対する国庫補助金交付額 965,090,000円
不当と認める補助対象事業費 81,355,000円
不当と認める国庫補助金交付額 54,238,000円

1 補助金の概要

 厚生省は、施設入所者等の福祉の向上を図るため、老人福祉法(昭和38年法律第133号)等に基づき、市町村、社会福祉法人等が行う社会福祉施設等の整備事業に対し、都道府県又は市(以下「県等」という。)が補助する場合、その事業に要する費用の一部として、社会福祉施設等施設整備費補助金及び社会福祉施設等設備整備費補助金を交付している。
 上記の社会福祉施設等の整備事業のうち老人福祉施設の整備事業は、老人の福祉に資するため特別養護老人ホーム、老人デイサービスセンター、ケアハウス等の施設及び設備を整備するものである。
 そして、国庫補助金の交付額は、「社会福祉施設等施設整備費及び社会福祉施設等設備整備費の国庫負担(補助)について」(平成3年厚生省社第409号)により、施設整備事業及び設備整備事業ごとに次のように算定することとなっている。

(ア) 施設整備事業については、整備する各施設ごとの本体工事費、暖房設備工事費等の経費の種目ごとに、また、設備整備事業については、整備する各施設ごとの一般設備、非常通報装置等の経費の種目ごとに、所定の基準額と補助対象となる経費の実支出額とを比較して少ない方の額を選定する。

(イ) (ア)により経費の種目ごとに選定した額の合算額と、施設又は設備整備に係る総事業費から寄付金その他の収入額(社会福祉法人等の場合は寄付金収入を除く。)を控除した額とを比較して少ない方の額に県等の補助率4分の3を乗ずる。

(ウ) (イ)により得られた額と、県等が社会福祉法人等に補助した額とを比較して少ない方の額(補助対象事業費)に国庫補助率3分の2を乗じて得た額の範囲内の額を交付額とする。
 また、平成9年度以降は、国庫補助金交付の条件として、社会福祉法人等が事業を行うために締結する契約については、県等が行う契約手続の取扱いに準拠して適切に実施しなければならないこととなっている。

2 検査の結果

 北海道ほか21都府県及び12市が補助した119社会福祉法人について検査した結果、埼玉県ほか1県の3社会福祉法人が実施した特別養護老人ホーム等の施設整備事業及び設備整備事業の3事業に係る国庫補助金54,238,000円が不当と認められる。
 これを不当の態様別に示すと次のとおりである。

〔1〕  工事の契約処置が適切でないもの

2事業 不当と認める国庫補助金
50,687,000円


〔2〕  補助の対象とならないなどのもの

1事業 不当と認める国庫補助金
3,551,000円


 これは、事業主体である社会福祉法人において補助事業に対する認識が十分でなかったこと、県において同法人から提出された実績報告書等の審査・確認が十分でなかったことなどによるものである。
 これらの事態を県別・事業主体別に示すと次のとおりである。


県名 事業主体
(所在地)
補助事業 年度 補助対象事業費 左に対する国庫補助金 不当と認める補助対象事業費 不当と認める国庫補助金 摘要





千円 千円 千円 千円
(42) 埼玉県 社会福祉法人清澄会
(岩槻市)
特別養護老人ホーム等施設整備 9、10 535,921 357,279 16,910 11,274 契約処置不適切

 社会福祉法人清澄会(以下「清澄会」という。)は、平成9、10両年度に特別養護老人ホーム等の施設の整備を建築工事費880,582,500円で実施し、これを基に算定された国庫補助金357,279,000円の交付を受けていた。
 清澄会では、この建築工事の契約に当たり、予定価格を860,000,000円、最低制限価格を予定価格の97.50%に当たる838,500,000円と設定し、8業者による指名競争入札に付していた。そして、最低制限価格を下回る754,000,000円(予定価格の87.67%)から835,000,000円(同97.09%)で入札した4業者を失格として排除し、予定価格と最低制限価格の範囲内のうちの最低価格838,650,000円(同97.51%)で入札した業者を落札者とし、これに消費税を加えた880,582,500円で同業者と契約を締結していた。
 しかし、本件契約は指名競争入札に付しており、清澄会では、県が定めた業者選定の手続に従って、契約の内容に適合した履行が十分期待できる業者を選定して入札に参加させていた。したがって、予定価格の97.50%という著しく高率な最低制限価格を設定し、これを下回る業者を排除していたことは、競争契約における競争の利益を阻害するもので適切とは認められない。
 本件建築工事において最低価格で入札した業者と契約したとすれば、契約額は消費税相当額を加えた791,700,000円となり、本件契約額はこれに比べて88,882,500円割高となっており、これを基に国庫補助金額を算定すると346,005,000円となり、前記の国庫補助金額との差額11,274,000円が過大になっていると認められる。

(43) 埼玉県 社会福祉法人緑風会
(三郷市)
特別養護老人ホーム等施設整備 9、10 891,176 594,114 59,119 39,413 契約処置不適切

 社会福祉法人緑風会(以下「緑風会」という。)は、平成9、10両年度に特別養護老人ホーム等の施設の整備を建築工事費1,312,185,000円で実施し、これを基に算定された国庫補助金594,114,000円の交付を受けていた。
 緑風会では、この建築工事の契約に当たり、予定価格を1,258,400,000円、最低制限価格を予定価格の99.30%に当たる1,249,700,000円と設定し、11業者による指名競争入札に付していた。そして、最低制限価格を下回る1,143,800,000円(予定価格の90.89%)から1,238,000,000円(同98.37%)で入札した4業者を失格として排除し、予定価格と最低制限価格の範囲内のうちの最低価格1,249,700,000円(最低制限価格と同額)で入札した業者を落札者とし、これに消費税を加えた1,312,185,000円で同業者と契約を締結していた。
 しかし、本件契約は指名競争入札に付しており、緑風会では、県が定めた業者選定の手続に従って、契約の内容に適合した履行が十分期待できる業者を選定して入札に参加させていた。したがって、予定価格の99.30%という著しく高率な最低制限価格を設定し、これを下回る業者を排除していたことは、競争契約における競争の利益を阻害するもので適切とは認められない。
 本件建築工事において最低価格で入札した業者と契約したとすれば、契約額は消費税相当額を加えた1,200,990,000円となり、本件契約額はこれに比べて111,195,000円割高となっており、これを基に国庫補助金額を算定すると554,701,000円となり、前記の国庫補助金額との差額39,413,000円が過大になっていると認められる。

(44) 広島県 社会福祉法人明翠会
(福山市)
特別養護老人ホーム等施設整備 9 20,546 13,697 5,326 3,551 補助の対象外及び補助対象事業費の精算過大

 社会福祉法人明翠会(以下「明翠会」という。)は、平成9年度に特別養護老人ホーム等の新設に伴う入所者用ベッド、厨房機器、事務機器等の設備整備を総事業費61,496,910円(補助対象事業費20,546,000円)で実施したとして、これを基に算定された国庫補助金13,697,000円の交付を受けていた。
 しかし、明翠会では、実際は、設備の一部を補助の対象とならないリース契約により設置したり、低額で購入したりしていて、実績報告書記載の総事業費より低額な36,074,012円で事業を実施していた。
 したがって、実際の総事業費(補助対象事業費15,220,000円)に基づき国庫補助金を算定すると10,146,000円となり、前記の国庫補助金との差額3,551,000円が過大に交付されている。

(42)−(44) の計


1,447,643 965,090 81,355 54,238