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  • 平成10年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第4 住宅・都市整備公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

土地区画整理事業等において教育施設等のため確保している公益施設用地の用途を変更して早期に処分するよう改善させたもの


土地区画整理事業等において教育施設等のため確保している公益施設用地の用途を変更して早期に処分するよう改善させたもの

科目 (住宅・都市整備勘定) (項)宅地造成費
(項)住宅等建設費
(項)利子及債券発行諸費
(項)給与関係諸費
(項)管理諸費
(項)資産取得費等
部局等の名称 住宅・都市整備公団(平成11年10月1日以降は「都市基盤整備公団」)
東京支社ほか9支社等
公益施設用地の概要 土地区画整理事業及び住宅建設事業において、事業施行地区の居住者の利便に供する目的で確保される教育施設等のための用地
確保しておく必要がなくなった公益施設用地の面積 90,856m2
上記に係る支出済額 70億9280万余円

1 公益施設用地の概要

(土地区画整理事業等の概要)

 住宅・都市整備公団(平成11年10月1日以降は「都市基盤整備公団」。以下「公団」という。)では、住宅事情の改善を特に必要とする大都市地域その他の都市地域において、集団住宅及び宅地の大規模な供給と健全な市街地の造成を行うことなどを目的として、土地区画整理事業並びに集団的な住宅及びこれに伴う各種施設が一体として構成される住宅団地の建設事業(以下「住宅建設事業」という。)を実施している。

(土地区画整理事業の公益施設用地)

 土地区画整理事業は、主として大都市の既成市街地の周辺地域において実施されているものであることから、住宅用地のほかに施行地区の居住者の利便に供する教育施設等のための用地(以下「公益施設用地」という。)を確保している。
 そして、公益施設用地の位置、規模等については事業計画に定めることとされており、同計画を定める場合には、住宅・都市整備公団法(昭和56年法律第48号。以下「公団法」という。)により、あらかじめ施行地区の所在する地方公共団体の長の意見を聴かなければならないこととされている。また、事業に着手後、住宅及び施設の需要等の変化に対応して事業計画を変更する場合も、あらかじめ当該地方公共団体の長の意見を聴かなければならないこととされている。そして、事業の完了後において、造成宅地の処分に当たり用途を変更する必要がある場合には、あらかじめ当該地方公共団体の長と協議調整を図ることとしている。

(住宅建設事業の公益施設用地)

 住宅建設事業は、主として大都市の既成市街地及びその周辺部で住宅を集団的に建設するものであり、公益施設を配置する場合は団地内にその用地を確保することとしている。
 そして、公益施設用地の位置及び規模については当該団地の建設計画に定めることとされており、同計画を定める場合には、公団法により、あらかじめ当該団地の所在する地方公共団体の長の意見を聴かなければならないこととされている。また、事業着手後、建設計画が当該団地及びその周辺の立地状況、住宅及び施設の需要等の変化に対応できなくなるような場合には、それらの変化に適合するよう、当該地方公共団体の長と協議調整の上、建設計画を速やかに変更することとされている。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 土地区画整理事業及び住宅建設事業(以下「土地区画整理事業等」という。)は、計画の策定から事業の完了まで長期間を要するものである。近年、少子高齢化など社会経済情勢が急速に変化しているところから、事業計画等がこうした社会経済情勢の変化に対応して適切に見直されているか、特に、教育施設等の公益施設用地を計画どおりの利用が見込めないまま保有していないかに着眼して検査した。

(検査の対象)

 土地区画整理事業については、10年度末までに事業の完了している地区及び10年度末現在施行中の地区のうち、土地の造成工事が完了した後3年以上経過しても処分されていない公益施設用地がある東京支社ほか7支社等管内(注1) の28地区内の公益施設用地59箇所、376,724m2 、支出済額(注2) 410億2184万余円を対象として検査した。
 住宅建設事業については、10年度末までに住宅の建設を完了し管理を開始している団地及び10年度末現在施行中で住宅の建設が一部完了し管理を開始している団地のうち、土地の造成工事が完了した後3年以上経過しても処分されていない公益施設用地がある東京支社ほか5支社等(注3) 管内の20団地内の公益施設用地26箇所、146,467m2 、支出済額60億4596万余円を対象として検査した。
 これらの合計は、48地区・団地、85箇所、523,191m2 、支出済額470億6780万余円である。

(検査の結果)

 検査したところ、東京支社ほか4支社等管内(注4) において、公益施設用地として確保する必要がなくなっていると認められるものが、10地区・団地内の15箇所、90,856m2 、支出済額70億9280万余円見受けられた。
 これらの用地は、地方公共団体との協議に基づき小学校、中学校、幼稚園又は保育所の用地として確保されたものであるが、少子化による児童数の減少などの要因により、既に建設されている周辺の施設で対応できたり、計画されているすべての施設を建設しなくても対応できたりなどしていて、公益施設用地として確保する必要がなくなっていると認められたものである。なお、これらの用地に係る10年度の利息等の経費は、利息1億1126万余円、固定資産税及び都市計画税2331万余円並びに管理費786万余円、計1億4245万余円となっており、これらの経費は未処分のまま保有すれば今後も引き続き発生するものである。
 これらの用地を事業別に示すと次のとおりである。

<土地区画整理事業>
<住宅建設事業>
 支社等 3支社等  支社等 3支社等
 地区数 6地区  団地数 4団地
 箇所数 11箇所  箇所数 4箇所
 面積 70,647m2  面積 20,209m2
 支出済額 58億3194万余円  支出済額 12億6085万余円
うち10年度分の
うち10年度分の
 利息 9748万余円  利息 1378万余円
 固定資産税等 988万余円  固定資産税等 1343万余円
 管理費 687万余円  管理費 98万余円
1億1424万余円 2820万余円

<事例1>

 土地区画整理事業施行地区のA地区では、当該地区の地方公共団体との協議により、施行面積74.3haの中に中学校1校の用地として2.4haが計画されているが、平成4年3月に事業が完了した後も、中学校が建設されないまま公団が当該用地を保有している。
 そして、当該地方公共団体の1戸当たりの中学生数は、昭和57年5月策定の事業計画では0.22人としていたが、平成10年度では0.11人となっている。
 このような状況において、当該地区に計画されている中学校の新設の必要性について検討したところ、入居当初から、この地区の中学生の受入れはこの地区を学校区域に含む既存の中学校で対応できている。そして、この中学校の生徒数の推移をみると、昭和57年度は1,129人であったものが、事業完了直後の平成4年度は635人、10年度は605人と大幅に減少してきており、既存の学校施設にかなりの余裕がある状況である。
 したがって、計画戸数1,855戸に対して現在の入居戸数は1,185戸と計画戸数に対する割合は63.9%であるが、今後、入居戸数が計画戸数に達したとしても、少子化の状況の下では中学校の新設の需要が見込めないものとなっていて、当該用地は中学校用地として必要でなくなっていると認められた。

<事例2>

 住宅建設事業施行のB団地では、当該団地が所在する地方公共団体との協議により、施行面積55.1haの中に小学校4校の用地として計6.5haが計画されている。そして、賃貸住宅及び分譲住宅計7,236戸の建設が完了し、管理を開始又は分譲を終了した平成2年3月までに順次3校が開校したが、残る1校の用地1.5haは小学校が建設されないまま公団が保有している。
 この用地における小学校の新設の必要性について検討したところ、計画されていたすべての住宅の建設が完了し入居開始後9年を経過しているが、団地内の小学生の受入れは団地内にある既存の3校で対応できている。そして、この3校の児童数の合計の推移をみると、2年度は2,232人で、その後増加したものの、5年度の2,349人をピークに減少し続けており、10年度では1,870人となっていて、既存の学校施設にかなりの余裕がある状況である。
 したがって、少子化の状況の下では小学校の新設の需要が見込めないものとなっていて、当該用地は小学校用地として必要でなくなっていると認められた。
 以上のように、公益施設用地としての利用が見込めないのに、事業計画等を見直さないまま保有している事態は、投下した多額の事業費の効果が発現されないもので適切とは認められず、早急に地方公共団体と協議して公益施設用地の用途変更を行うなどして、当該用地の処分の促進を図る要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、少子化の急速な進行等の事情もあるが、次のことなどによると認められた。

(1) 公団及び地方公共団体において、公益施設用地の利活用や処分の促進についての認識が十分でなく、計画策定時に比べて社会経済情勢が変化するなどして公益施設の需要が減少しているのに、これに対応した計画の見直しを十分行っていなかったこと

(2) 公団において、事業計画等の変更や処分の促進について、関係地方公共団体等との協議を十分行っていなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、公団では、11年10月に各支社等に対し処分されていない公益施設用地について地方公共団体の取得の意向を確認し土地利用計画の見直しを図るよう通知を発した。これを受けて各支社等では、地方公共団体との協議に入り、当該地方公共団体において利用の意思がないものについて公益施設用地の用途変更を行い、その処分を図るための処置を講じた。

(注1)  東京支社ほか7支社等 東京、千葉地域、神奈川地域、埼玉地域、茨城地域、中部、関西各支社、関西文化学術研究都市事業本部

(注2)  支出済額 10年度末までに当該公益施設用地に対して支出された土地取得費、造成費、管理費等の合計額。ただし、土地区画整理事業の場合は、地区全体の支出額を当該地区全体の面積で除して、これに当該公益施設用地の面積を乗じて得られた額。

(注3)  東京支社ほか5支社等 東京、千葉地域、埼玉地域、関西各支社、震災復興、土地有効利用両事業本部

(注4)  東京支社ほか4支社等 東京、埼玉地域、茨城地域各支社、震災復興、関西文化学術研究都市両事業本部