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  • 平成10年度|
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大型超精密加工装置の調達に当たり、設置場所の検討が十分でなかったため、搬入、据付け・調整等が完了していないのに契約代金の全額を支払うなどしていて適切を欠いているもの〔理化学研究所本所〕(228)


(228)  大型超精密加工装置の調達に当たり、設置場所の検討が十分でなかったため、搬入、据付け・調整等が完了していないのに契約代金の全額を支払うなどしていて適切を欠いているもの

科目 (出資金部門) (項)研究事業費
部局等の名称 理化学研究所本所
契約名 大型超精密加工装置の製作物供給
契約の概要 大型X線ホログラム光学素子を研削・切削加工するための加工装置を製作し、指定場所に据え付け、調整を行うもの
契約の相手方 東芝機械株式会社
契約 平成10年9月 一般競争契約
契約額 74,550,000円
不当と認める契約額 74,550,000円

1 契約の概要

(契約の内容)

 理化学研究所(以下「理研」という。)では、科学技術庁から委託されたX線極限解析装置の研究開発を実施するため、大型超精密加工装置(以下「加工装置」という。)の製作、据付け・調整等を、平成10年9月に、一般競争契約により11年3月10日を納期として東芝機械株式会社(以下「製造会社」という。)に契約額74,550,000円で請け負わせている。
 この契約では、加工装置を製造会社の工場で製作し、工場内で理研の立合検査を受けた後、納入場所として指定された理研の板橋分所に搬入して据付け・調整を行い、併せて、加工装置の設置場所に空調設備工事、照明設備工事等の付帯工事を施工することとされている。そして、製作、据付け・調整等が完了した後、理研が検収を行った上で契約代金を支払うこととされている。

(加工装置の概要)

 この研究開発は、9年度から13年度までを計画期間として毎年度委託されているものである。
 加工装置は、9年度に行った開発結果を基に開発されるもので、サブミクロン(注1) 単位の超微細な制御技術を用いた研削・切削加工により大型X線ホログラム光学素子(注2) を製作するために、前後、上下、左右方向に可動する本体部を備えている。そして、理研では、仕様書において、加工装置の性能を確保するために必要な繰り返し位置決め精度(注3) 、運動精度等を定めており、また、加工装置が振動及び温度の影響を受けやすいので、振動1Gal(注4) 基準温度21℃以上25℃以下の設備環境において使用されることと定めている。また、上記の契約に定める検収に当たっては、設置場所において、仕様書に定める加工装置の性能上特に重要な繰り返し位置決め精度及び運動精度について、室温23℃(±0.5℃)の測定環境において確認することとされている。

(契約の履行等の状況)

 理研では、加工装置の製作、納入及び付帯工事が契約どおり履行され、11年3月10日に検収を了したとして、同年4月30日に契約代金の全額74,550,000円を支払っている。また、科学技術庁から受託した本件調査研究が予定どおり完了したとして、同庁に対し、同月9日に調査研究完了報告書を提出している。

(注1)  サブミクロン 1ミクロン(1mmの1,000分の1)以下のこと。

(注2)  大型X線ホログラム光学素子 X線を用いて物質の構造を解析する際に用いる大型の反射鏡(長さ1,200mm、幅500mm、高さ400mm)。

(注3)  繰り返し位置決め精度 材料を加工する際、研削工具を目標とする研削位置へ繰り返し正確に移動させるための位置精度のこと。

(注4)  Gal ガル。加速度の単位で、1Galは毎秒、1cm/秒の速度が変化すること。

2 検査の結果

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(ア) 理研では、加工装置は契約どおり納入されたとしていたが、実際は、納入場所である板橋分所には搬入されておらず、11年7月の会計実地検査時においても、製造会社の工場に保管されたままになっていた。その後、8月に、加工装置を新たな設置場所とした理研本所の研究施設に搬入し据付け・調整を行ったが、同施設に準備された空調設備等は、簡易かつ応急的なものであったことから、仕様書で定めた設備環境の水準に達しておらず、繰り返し位置決め精度の確認もできていない状況となっていた。

 このような事態となった主な原因は、次のとおりである。
 すなわち、理研では、契約に当たり、加工装置の設置場所を、9年度から研究開発の拠点としていた板橋分所としていた。しかし、本件契約の前後に板橋分所について加工装置の設置のための現状調査を行った結果、同分所に設置するには変電設備の更新等に多額の費用を要することなどが判明した。そこで新たな設置場所の検討を行ったものの、契約上の納期までにこれを決定することができなかったことによると認められる。

(イ) また、理研では、上記のようなことから加工装置が契約上の納期までに納入されておらず検収が完了していないのに、契約どおりに納入され検収を行ったこととして、前記のとおり、11年4月30日に、実際には実施されていない加工装置の搬入、据付け・調整や付帯工事の費用(計8,212,894円)を含めて契約代金の全額を製造会社に支払っていた。さらに、科学技術庁に対し、加工装置が契約どおり納入されたとする事実と異なる内容の調査研究完了報告書を提出していた。

 上記のとおり、本件加工装置の調達に当たり、設置場所の変電設備の更新等について事前に検討すべきであったのにこれを十分行っていなかったため、納期までに設置場所が決定できず製造会社の工場に保管させたままとしていたり、その後の加工装置の設備環境が水準に達していなかったりしていることは適切とは認められない。また、契約どおりの履行が完了していないのに、完了したこととして契約代金74,550,000円の全額を支払い、事実と異なる内容の調査研究完了報告書を提出していたのは、経理処理が適正を欠いたものとなっている。

 このような事態が生じていたのは、理研において、本件加工装置の調達に当たり、設置場所についての検討が十分でなかったこと、適正な経理を行う旨の認識を欠いていたことなどによると認められる。

 したがって、上記の事態は、加工装置の調達に係る計画及び経理が適切を欠いていて不当と認められる。