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  • 平成10年度|
  • 第4章 特定検査対象に関する検査状況

民間能力活用特定施設緊急整備事業の実施について


第7 民間能力活用特定施設緊急整備事業の実施について

検査対象 通商産業省
会計名及び科目 一般会計 (組織)通商産業本省 (項)通商産業本省
事業の根拠 民間事業者の能力の活用による特定施設の整備の促進に関する臨時措置法(昭和61年法律第77号)
事業の概要 国民経済及び地域社会の健全な発展を図り、あわせて国際経済交流等の促進に寄与することを目的として、経済社会の基盤の充実に資する特定施設の整備を民間事業者の経営能力を活用して促進するもの
認定事業数 80件
上記のうち国庫補助対象数 68件(5財団法人等、55株式会社、計60法人)
補助対象事業費 3757億1616万余円 (昭和62年度〜平成10年度)
上記に対する国庫補助金額 112億3850万余円
検査対象件数 27件(21株式会社)
上記の事業に係る事業費 2652億2071万余円 (昭和62年度〜平成10年度)
上記に対する国庫補助金額 68億5047万余円

1 民間能力活用特定施設緊急整備事業の概要

 通商産業省では、「民間事業者の能力の活用による特定施設の整備の促進に関する臨時措置法」(昭和61年法律第77号。以下「民活法」という。)に基づき、民間事業者の機動的、効率的な経営能力を活用して経済社会の基盤の充実に資する新しい施設(以下「特定施設」という。)の整備を行う事業について、昭和61年度から平成10年度までの間に80件を認定(以下、認定した事業を「民活プロジェクト」という。)している。
 また、同事業の認定は、通商産業省のほか郵政省、運輸省、建設省、農林水産省及び厚生省においても行われており、その認定件数は6省で計174件(うち32件が通商産業省との共管)となっている。

(民活法の目的)

 民活法は、特定施設の整備を促進することにより、国民経済及び地域社会の健全な発展を図り、あわせて国際経済交流等の促進に寄与することを目的として昭和61年に制定された。そして、当初は10年間の時限立法とされていたが、平成7年に我が国における経済活動の活力を維持し、国内経済の自律的発展を円滑化することを目的として18年まで延長されている。

(特定施設)

 民活法では、工業技術の研究開発及び企業化、地域の情報化、国際経済交流等を促進するための施設として特定施設17類型35施設(10年度末現在)を規定している。通商産業省ではこのうちの11類型19施設を所管しており、その主な施設の内容は、下表のとおりである。

特定施設名 施設の内容
研究開発・企業化基盤施設 工業技術に関する研究開発及び企業化等を効果的に推進するために設置される研修施設、展示施設、事業場としての施設等が一群となった施設。
情報化基盤施設 情報処理の事業の発達を図るための研修施設、展示施設その他の共同利用施設等が一群となった施設。
国際見本市場施設
国際会議場施設
外国との経済交流、人事交流の促進等を図るための大規模展示場、国際会議場施設。
地域情報管理基盤施設・特定高度情報化建築物 内外の各種情報の集積・処理・提供、セキュリティコントロール等の機能管理を行う情報中枢センター及びそれらと一体的に整備され、入居者に対して高度な情報・通信サービスを提供する高度なビル管理機能が整備された業務用施設。
高度商業基盤施設 小売業の高度化を図るための駐車場等の顧客利便施設、地域住民の生活向上施設、小売業者に対して業務の円滑化を図る施設。

 特定施設の多くは、広く一般の需要に応じる公共的な性格を有するもの、新規に整備されることにより経済活動の基盤として社会的に波及効果が生じることが見込まれるもの、需要が顕在化していても大規模投資を要し事業リスクが大きいことから従来その整備が行われてこなかったものなどが対象となっている。

(整備計画の認定)

 通商産業省ほか5省の主務大臣は、それぞれ所管する特定施設ごとに民間事業者の能力を活用してその整備を促進するため、特定施設の機能、立地、規模、配置に関する事項、特定施設の運営に関する事項等について定めた基本的な指針(以下「基本指針」という。)を策定している。
 そして、民活プロジェクトを行おうとする者は、基本指針に沿って民活プロジェクトに関する整備計画を作成し、主務大臣に提出し認定を受けることができることとされている。
 また、特定施設の整備事業を行う者(以下「認定事業者」という。)が、主務大臣の認定を受けた整備計画(以下「認定計画」という。)の変更をしようとするときは主務大臣の認定を受けなければならないこととされている。

(助成措置)

 民活法では、国及び地方公共団体は、民活プロジェクトを実施するのに必要な資金の確保又はその融通のあっせんに努めるなどとされており、民活プロジェクトの円滑な促進を図るため次のような助成措置が講じられている。

(ア) 民間能力活用特定施設緊急整備費補助金

 民間能力活用特定施設緊急整備費補助金(以下「民活補助金」という。)は、特定施設の整備について、国がその整備のための費用の一部を負担することにより、特定施設の緊急な整備を図ることを目的とするもので、国及び関係地方公共団体が特定施設の整備事業に要する経費(土地取得費等を除く。)の5%(関係地方公共団体が地方交付税交付団体の場合は国が3分の2、地方交付税不交付団体の場合は国が2分の1を負担)を認定事業者に交付するものである。
 通商産業省では、前記80件の認定計画のうち68件の施設整備(国庫補助対象事業費3757億1616万余円)を実施した60法人に対して総額112億3850万余円の民活補助金を交付している。

(イ) 日本開発銀行等からの出資、融資

 民活プロジェクトを実施するのに必要な資金の確保又はその融通の措置として日本開発銀行及び北海道東北開発公庫(以下「開銀等」という。なお、11年10月1日において両法人は解散し、新設された日本政策投資銀行にその一切の権利及び義務が承継された。)から出資及び融資を受けることができる措置が講じられている。

(ウ) 課税の特例措置

 認定事業者が認定計画に従って取得した特定施設又は特定施設の敷地である土地については、地方税法(昭和25年法律第226号)の定めるところにより、不動産取得税、固定資産税、特別土地保有税及び事業所税について軽減又は免除の措置が講じられている。

(エ) 産業基盤整備基金による債務保証

 特定施設の整備に必要な資金の借入れについては、産業基盤整備基金から債務保証を受けることができる措置が講じられている。

2 検査の背景及び着眼点

(検査の背景)

 民活法を始めとして、民間能力の活用による地域活性化等を図ることを目的とした制度が整備されており、地方公共団体と民間企業が協力・連携し、柔軟で多様な施策の展開を図るために設立された民間事業者の数は多数に上っている。
 しかし、これらの中には、多額の資金を投じ、長期間にわたり施設を整備したにもかかわらず、近年の景気低迷等社会経済情勢の変化により、経営が不安定になっているものも見受けられるなど、施設の運営や事業経営を巡って社会的関心が高まっている。

(検査の着眼点)

 上記のように、民間事業者における経営悪化が、施設整備の目的に照らし適切でない事態をもたらすことも懸念される。このうち民活プロジェクトは、民活法の制定から10年余りを経過していて多数の事業実績があり全国各地で展開する民間事業者の能力を活用した施設整備事業の先駆けとなっている。このことから、今回の検査においては、民活プロジェクトのうち他省に比べて補助金の額が多額となっている通商産業省所管のものを対象として補助事業の執行状況及び認定事業者の経営状況の調査を行い、整備された施設が有効に運営されるよう経営が安定したものとなっているかに着眼して検査した。

3 検査の状況

(1) 検査の対象及び検査の方法

 本院は、民活補助金の交付を受けた認定事業者60法人のうち、開業後間がないものや経営形態が民法上の公益法人であるなど統一的な分析が困難なものを除き、補助金の交付額が1000万円以上の株式会社で、次の要件に該当する計21社が実施した民活プロジェクト27件、総事業費7495億9260万余円(うち国庫補助対象事業費2652億2071万余円)について検査した。

〔1〕  5箇年以上の経営状況の把握が可能な元年度から6年度までの間に開業した16社(以下「6年度以前開業会社」という。)

〔2〕  7年度又は8年度に開業した会社のうち、大規模な施設(特定施設以外の施設の整備を含めた総事業費が500億円以上の施設)を整備した5社(以下「7年度以降開業大規模会社」という。)

 検査した特定施設は、研究開発・企業化基盤施設、情報化基盤施設、国際見本市場施設、国際会議場施設、地域情報管理基盤施設・特定高度情報化建築物、国際ビジネス交流基盤施設、卸共同流通ターミナル、高度商業基盤施設等であり、なかには複数の施設を一体的に整備している場合もある。

 これらの特定施設は、経済活動の基盤として社会的に波及効果が生じるような高い機能を有するため、その整備には初期の段階で多額の投資を必要とする。このことから投資が回収されるまでに長期間を要し、特に開業後しばらくの間、固定的経費の負担が大きくなり、経営努力によって損失を縮小させている会社においても、単年度黒字に転換するまでは累積損失が増大するような不安定な経営になりやすい。したがって、社会的な波及効果を施設整備後直ちに発揮するためには、開業後の経営をいかに安定的に推移させるかが重要である。

 このような民活プロジェクトの特徴に配慮するとともに、施設整備に要した多額の投資の回収は特定施設と他の施設の運営が一体化されている場合がほとんどであることから、それぞれの認定事業者の経営状況全体を検討の対象とした。そして、経営の経常的活動から生じる営業損益、借入金の利息や資金の運用収入を反映する営業外損益を重視し、損失を生じている場合にはその主な要因についても分析した。

 実地検査においては、通商産業省及び民活プロジェクトの整備・運営を行っている認定事業者を対象として、6年度以前開業会社については6年度から10年度まで、7年度以降開業大規模会社については8年度から10年度までの経営状況を調査した。

(2) 検査の対象とした21社に関する検査の概況

(助成措置の実績)

ア 民活補助金

 民活補助金は21社に対して交付されており、10年度末までの累計額は国庫補助対象事業費2652億2071万余円に対し68億5047万余円となっている。

イ 開銀等からの出資

 開銀等からの出資は16社に対して行われており、10年度末までの累計額は119億2000万円となっている。

ウ 開銀等からの融資

 開銀等からの融資は20社に対して行われており、10年度末までの累計額は2797億6000万円となっており、その内訳は、無利子融資1016億8000万円、有利子融資1780億8000万円となっている。
 また、10年度末現在の融資残高は2386億5500万円となっており、その内訳は、無利子融資775億2700万円、有利子融資1611億2800万円となっている。

エ 地方税の減免状況

 地方税の減免は14社が受けており、10年度末までの減免額の累計額は30億6126万余円となっている。その税目別内訳は、不動産取得税1億5880万円、固定資産税4億6471万余円、特別土地保有税11億3147万円、事業所税13億0628万余円となっている。

オ 債務保証

 産業基盤整備基金による債務保証は1社が受けており、債務保証額は民間金融機関からの融資に係る4000万円となっている。

(資金調達と出資及び融資の構成)

 21社の総事業費7495億9260万余円に係る調達財源は、民間からの出資709億8900万円及び融資3115億4000万円、地方公共団体からの出資457億7300万円計4283億0200万円、前記助成措置による民活補助金、出資及び融資の2985億3047万余円(国庫補助金68億5047万余円、出資119億2000万円、融資2797億6000万円)などとなっている。民間からの資金調達が計3825億2900万円となっており、これは総事業費の51%となる。
 また、各社ごとに民間と公共部門である開銀等及び地方公共団体からの出資額及び融資額の構成比率についてみると、出資では民間からの出資額が過半を占めているものが15社となっているが、融資では公共部門からの融資額が過半を占めているものが12社となっている。

(経営状況の概況)

 21社の10年度の経営の概況についてみると、下表のとおりである。

(単位:社)
区分 営業外損益 経常損益 純損益 累積損益
利益 損失 利益 損失 利益 損失 利益 損失
営業損益 利益 6年度以前開業 9社 2 7 6 3 6 3 1 8
7年度以降開業 0社 0 0 0 0 0 0 0 0
損失 6年度以前開業 7社 4 3 0 7 1 6 0 7
7年度以降開業 5社 0 5 0 5 0 5 0 5
合計 21社 6 15 6 15 7 14 1 20

 営業利益を計上しているのは9社である。このうち、営業外利益を計上しているのは2社、営業外損失を計上しているのは7社であり、また、経常利益を計上しているのは6社、経常損失を計上しているのは3社となっている。この9社はすべて6年度以前開業会社であり、開業後の経過年数が短い7年度以降開業大規模会社はいずれも営業利益を計上するに至っていない。

 営業損失を計上しているのは12社である。このうち、営業外利益を計上しているのは4社、営業外損失を計上しているのは8社であり、この12社はすべて経常損失を計上している。
 また、21社について、営業損益及び営業外損益の別にみると次のとおりである。

ア 営業損益の状況

 営業利益を計上している9社のうち、4社は営業収入が増加しているが、他の5社は営業収入が伸び悩んでおり、なかには営業活動だけでは経営が成り立つ状況になく減価償却費を圧縮して計上しているものなども見受けられる。しかし、いずれの会社も厳しい経営環境の中で営業費用の節減など経営努力により営業利益を計上している。
 営業損失を計上している12社のうち、営業損失が増加しているのは3社で、主として営業収入の伸び悩み又は減少によるものである。他の9社は営業収入の増加や営業費用の節減などにより営業損失は減少しているものの、大規模投資に伴う減価償却費の負担が大きいことから3社では、営業収入に対する営業費用の比率が134%から158%となっており、毎期10億円以上の営業損失を計上している。

イ 営業外損益の状況

 営業外利益を計上しているのは6社で、その主な要因は投資資産の運用により収益を得たことや、有利子借入金がないため支払利息が生じなかったことなどである。
 営業外損失を計上しているのは15社で、その主な要因は施設整備に要する資金の相当部分を有利子借入金により調達していることによる支払利息の負担が大きいことである。ただし、有利子借入金の償還が進んでいるため損失額は減少している。

 これらの結果、純利益を計上しているものが7社(すべて6年度以前開業会社)、純損失を計上しているものが14社となっている。そして、10年度末で累積利益を計上しているものは1社にすぎず、20社では累積損失を計上している。この20社のうち6社(6年度以前開業会社16社のうちの3社、7年度以降開業大規模会社5社のうちの3社)では債務超過の状況に陥っており、なかには累積損失が資本金の6倍を超えているものもある。

 また、累積損失を計上している20社のうち、随時計画変更を行っているなどのため適切な比較が困難な3社を除いた17社について、その累積損失の額を計画額と比較すると、累積損失の額が計画額の範囲内にあるものが5社(すべて6年度以前開業会社)、累積損失の額が計画額を上回っているものが12社となっている。この12社のうち2社では計画額との開差が縮小していて改善の傾向にあるものの、他の10社(うち債務超過5社)については計画額との開差が拡大していて、経年ごとに悪化している状況にある。

(経常損失の要因)

 経常損失を計上している15社について、その主な要因は次のとおりである。

ア 営業収入の伸び悩み

 各社において計上される営業収入は、特定施設の利用料収入とその他の施設から得られる収入から成っている。
 特定施設の利用料金については、周辺地域の類似施設の市場価格や運営経費及び借入金の償還等に見合う採算性を確保することなどに配慮するとともに、特定施設の整備の目的から公共性を最大限に発揮する上で広く一般に利用を募ることにも努力を傾注しながら、利用料金の設定を行っている。しかし、景気の悪化に伴う鉄道、道路等の周辺の基盤整備の遅延や、オフィス需要の低下、催事の減少などの事情も加わったことにより、特定施設の有効活用が困難となるおそれが出てきたことなどから10社は、当初計画で設定した利用料金を引き下げている。

 特定施設には様々な形態があるため利用率を統一的に把握することはできないものの、利用料金を引き下げたことによって利用率が開業当初の実績に比べておおむね上昇している。しかし、10社のうち6社(うち債務超過3社)では、計画で見込んだ収入を大幅に下回り、営業収入が伸び悩んでいる。

イ 大規模投資に伴う減価償却費の負担

 大規模な初期投資を要した民活プロジェクトにおいては、毎年度多額の減価償却費を営業費用として計上する必要がある。このため、営業収入に対する減価償却費の比率が40%以上となっているものが8社(うち債務超過4社)あり、これらは営業収入の伸び悩みにより償却費の負担がかなり大きいものとなっている。

ウ 多額の支払利息の負担

 営業外費用の主なものである支払利息については、施設整備に要する調達資金における有利子借入金の比率が総事業費の34%から94%となっている10社(うち債務超過6社)では、営業収入に対する支払利息の比率は平均26%と高くなっていて財務内容の大きな悪化要因となっている。

(資金不足と経営支援)

 上記の経常損失の各要因のうち、減価償却費は現金の支出を伴わず企業内に留保されることにかんがみて各社の資金収支についてみると、資金不足から借入金の償還を賄うことができないものが11社ある。これら各社においては関係機関と協調しながら経営改善に取り組んでおり、特にこのうちの9社に対しては次のような経営支援が行われている。

〔1〕  民間金融機関及び開銀の融資に係る元本償還の一部棚上げ、利息の一部棚上げ又は一部免除

〔2〕  地方公共団体からの補助金、融資、増資等

〔3〕  他社との事業統合による経営合理化

 一方、これらの経営支援を受けていない他の2社は、手持ち資金が9年度に比べて50%以上減少している状況である。

(3) 経営状況悪化等の要因

 単年度黒字に転換し経営が安定してきている民活プロジェクトについては、短期間に施設整備を完了し需要に即応したこと、有利な立地条件にあったことなどが経営の安定要因として挙げられる。例えば、研究開発・企業化基盤施設を整備した3社は、こうした経営の安定要因により、利用率が高く利用料金の引き下げも行っていないことから、既に単年度黒字に転換し累積損失を減少させている。

 一方、単年度赤字の状態が続き経営が不安定な民活プロジェクトについては、施設が比較的大規模であり整備に長期間を要したことから、経済状況の悪化による周辺の基盤整備の遅延やオフィス需要の低下等不況の影響を直接被っている。例えば、研究開発・企業化基盤施設を整備した3社は、開業後も周辺の工業団地の整備、企業誘致が進んでいないことなどから、施設の利用が停滞し営業収入が伸び悩んで厳しい経営状況にある。また、大規模な地域情報管理基盤施設・特定高度情報化建築物を整備した6社(うち債務超過4社)は、整備に長期間を要し、開業の時期がいわゆるバブル経済崩壊後の厳しい経営環境の時期と重なったことから、道路、鉄道等の周辺の基盤整備の遅れによる交通アクセスの不利を被ったり、さらにオフィス需要の低下等に見舞われたりなどして営業活動が不振となっている。

4 本院の所見

 上記の検査の結果、民活プロジェクトの認定事業者の経営状況は、単年度黒字に転換した事業者では営業活動が軌道に乗り始め、おおむね改善の方向に向かっているが、単年度黒字に転換していない事業者では、多額の借入金の償還、不況の長期化による需要不足などの影響により、なお不安定な状況にある。これは、当初設定した計画時の経済環境が大きく変化したことにもよるが、認定事業者による整備計画の見直しが行われていなかったり、十分でなかったりして社会経済環境の変化に応じきれなかったことなどによると思料される。

 民活プロジェクトは、今後とも、国民経済及び地域社会の健全な発展と、あわせて国際経済交流等の促進に寄与する主体として、幅広い取組みが期待されているところから本事業の安定的な経営が行われることが望まれている。

 一方、民活プロジェクトは、初期投資が多額に上り、開業後の固定的経費の負担が大きく、投資回収までに長期間を要するものが多いことなど経営上のリスクを抱えている。

 このようなことから民活プロジェクトを既に実施している認定事業者においては、経営の合理化、運営方法の改善等による財務体質の一層の改善を図り、また、今後、民活プロジェクトを行おうとする者においては、適切な整備計画及び収支計画を策定し、いずれも安定した経営が行えるよう努めることが重要である。

 また、各民活プロジェクトを支援する地方公共団体、民間出資者、関係金融機関等においては、事業者の経営安定のために連携を図りながら多方面から協力していくことが望まれる。

 そして、通商産業省においては、他省とも協調を図り、上記の事業者に対して事業運営における適切な収支計画の策定及び適時適切な見直しの重要性を周知させるとともに、特定施設の運営状況について実態を的確に把握するなどして認定事業者における安定的な経営に資するよう努めることが肝要である。