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  • 平成10年度|
  • 第4章 特定検査対象に関する検査状況

本州四国連絡道路の計画及び実績について


第9 本州四国連絡道路の計画及び実績について

検査対象 本州四国連絡橋公団
本州四国連絡道路の概要 本州と四国との間の交通の円滑化を図り、もって国土の均衡ある発展と国民経済の発達に資するため、本州四国連絡橋公団が建設、管理する有料の道路で、神戸・鳴門ルート、児島・坂出ルート、尾道・今治ルートの3ルートがあり、平成11年5月までに概成しているもの
昭和48年度から平成10年度までの建設費 神戸・鳴門ルート 1兆3487億4095万円
児島・坂出ルート 6358億7729万円
尾道・今治ルート 6599億7052万円
2兆6445億8878万円

1 本州四国連絡道路の概要

(本州四国連絡道路等建設の経緯)

 本州四国連絡橋公団(以下「公団」という。)では、本州と四国との間の交通の円滑化を図り、もって国土の均衡ある発展と国民経済の発達に資するため、本州と四国の連絡橋に係る有料の道路(以下「本州四国連絡道路」という。)及び鉄道の建設及び管理を行っている。
 公団が本州四国連絡道路等の建設を行う場合は、本州四国連絡橋公団法(昭和45年法律第81号)に基づき、建設、運輸両大臣が定める基本計画の指示を受けて行うこととされていて、昭和45年12月に、公団に対し調査に関する基本計画が両大臣から指示された。
 これを受けて公団では、概算事業費及び工期等の調査を実施し、47年11月に「本州四国連絡橋調査報告書」として取りまとめ、両大臣に提出している。
 その報告の概要は、表1のとおりである。

表1
(単位:km、億円)

ルート
区分
神戸・鳴門 児島・坂出 尾道・今治 合計
延長 金額 延長 金額 延長 金額 延長 金額
海峡部 7.5 2,566 13.2 2,976 9.2 1,131 29.9 6,674
陸上部道路 73.2 1,315 25.6 488 51.6 726 150.4 2,531
陸上部鉄道 71.1 840 35.6 419 106.7 1,260
建設費小計
4,722
3,885
1,858
10,466
事務費等
1,097
848
487
2,433
合計
5,820
4,734
2,346
12,900
工期(年) 13 9 9
予想交通量(台/日) 37,900 25,500 15,300
(1) 鉄道計画は在来線で積算
(2) 予想交通量は昭和65年(平成2年)における推定値

 上記の報告では、適正な料金水準を想定して試算すると各ルートとも完成後、おおむね30年以内に建設費用を償還し得るとしている。
 この調査報告を受けて、48年9月に両大臣は、工事に関する基本計画を指示した。この指示に基づき公団は、48年10月に表2のとおり工事実施計画を作成して両大臣に提出し、同月その認可を受けている。

表2
(単位:km、億円)

ルート 路線名 区間 道路 鉄道
延長 金額 延長 金額
神戸・鳴門 一般国道28号 兵庫県津名郡淡路町から三原郡西淡町まで、鳴門市鳴門町から鳴門市撫養町まで 68.6 1,128
本四淡路線   未申請
一般国道28号及び本四淡路線共用部(その1) 神戸市垂水区から兵庫県津名郡淡路町まで、三原郡西淡町から鳴門市鳴門町まで 7.7 1,732 7.7 1,204
  76.3 2,860 7.7 1,204
児島・坂出 一般国道30号 岡山県都窪郡早島町から倉敷市まで、坂出市川崎町から坂出市川津町まで 24.2 567
本四備讃線(木見・大畠間)(その1) 倉敷市木見から倉敷市大畠まで 10.2 154
一般国道30号及び本四備讃線共用部 倉敷市大畠から坂出市川崎町まで 13.6 1,840 13.6 1,506
  37.8 2,407 23.8 1,660
尾道・今治 一般国道317号 尾道市高須町から今治市矢田まで 60.1 2,211
合計     174.2 7,478 31.5 2,864

 本州四国連絡道路等は、3ルートを同時に着工することとしていたが、48年の石油ショックに伴う総需要抑制の一環として公共事業の繰延べが行われるなど社会経済情勢の変化を受け、同年11月に着工が延期された。
 その後、50年8月の関係大臣の協議により、当面1ルートの早期完成を図ることが同意され、そのルートは第3次全国総合開発計画において決定することとされた。また、他の2ルートについては、各橋の地域開発効果、工事の難易度を勘案し、当面着工すべき橋は関係省庁で協議の上決定することとされ、大三島橋の着工、大鳴門橋の着工準備及び因島大橋の着工時期の検討が決定された。そして、52年11月に策定された第3次全国総合開発計画において、当面、早期完成を図るルートを児島・坂出ルートとすることが決定され、その後、順次、連絡橋の建設が追加決定された。

(本州四国連絡道路の現況)

 本州四国連絡道路は、48年以降平成10年度までの間に、総額2兆6445億8878万余円の建設費をもって建設が進められ、11年5月までに3ルートが概成しており、その現況は次のとおりである。

ア 神戸・鳴門ルート(神戸淡路鳴門自動車道)

 神戸・鳴門ルートは、兵庫県神戸市から淡路島を経て徳島県鳴門市に至る一般国道28号として建設されたもので、海峡部を明石海峡大橋と大鳴門橋で結ぶ延長89.0kmの有料道路である。
 昭和60年6月に大鳴門橋が供用開始され、平成10年4月に明石海峡大橋等が供用開始されたことにより全線が供用されている。

イ 児島・坂出ルート(瀬戸中央自動車道)

 児島・坂出ルートは、岡山県都窪郡早島町から同県倉敷市児島、瀬戸内海島しょ部を経て香川県坂出市に至る一般国道30号として建設されたもので、海峡部を下津井瀬戸大
橋、北備讃瀬戸大橋、南備讃瀬戸大橋等で結ぶ延長37.3kmの有料道路で、昭和63年4月に全線が供用されている。

ウ 尾道・今治ルート(西瀬戸自動車道)

 尾道・今治ルートは、広島県尾道市から瀬戸内海島しょ部を経て愛媛県今治市に至る一般国道317号として建設されたもので、海峡部を因島大橋、多々羅大橋、来島海峡大橋、大三島橋等で結ぶ延長59.4kmの有料道路である。
 54年5月に大三島橋が供用開始され、平成11年5月に来島海峡大橋、多々羅大橋等が供用開始されたことにより生口島及び大島の島内区間の一部を除き全線が供用されている。

(本州四国連絡鉄道の概要及び現況)

 本州四国連絡道路と橋りょうを共用する鉄道路線のうち、神戸・鳴門ルートの本四淡路線は、兵庫県神戸市垂水区から淡路島を経て徳島県鳴門市に至る路線で、海峡部の明石海峡大橋と大鳴門橋は道路鉄道併用橋として計画され、淡路島島内は鉄道単独路線として計画されたものである。このうち大鳴門橋は道路鉄道併用橋として建設されているが鉄道は開業されておらず、また、明石海峡大橋は昭和62年9月に道路単独橋に変更されている。
 児島・坂出ルートの本四備讃線は、岡山県倉敷市から瀬戸内海島しょ部を経て香川県綾歌郡宇多津町に至る延長32.4kmの鉄道路線で、瀬戸内海島しょ部の橋りょうは道路鉄道併用橋として建設されている。そして、倉敷市茶屋町(茶屋町駅)から倉敷市児島(児島駅)までを西日本旅客鉄道株式会社が、倉敷市児島(児島駅)から香川県綾歌郡宇多津町(宇多津駅)までを四国旅客鉄道株式会社が営業している。
 尾道・今治ルートについては、当初から鉄道建設の計画はない。
 なお、鉄道施設に係る建設費用の償還額については、日本鉄道建設公団(平成9年度までは日本国有鉄道清算事業団)が負担することとなっており、また、道路と鉄道の共用施設のうち鉄道部分に係る維持管理費等の費用は鉄道会社が施設の利用料として負担することとなっている。

(本州四国連絡道路の料金制度及び償還計画)

 本州四国連絡道路は、建設費、維持管理費、調達資金に係る利息等の総費用を一定期間(償還期間)内に料金収入により償還する有料道路となっており、公団が料金を設定するに当たっては、道路整備特別措置法(昭和31年法律第7号)により、料金及び料金の徴収期間について、あらかじめ建設大臣の認可を受けることとされている。
 この料金の額については、3ルートが相互に代替的な関係にあること、建設時期や建設費の違いによる料金格差を生じないようにすることなどを考慮して、道路整備特別措置法施行令(昭和31年政令第319号)により3ルートの料金プール制(注1) を採ることとされている。そして、推定交通量等を基礎として、償還期間内の料金収入総額が上記の建設費、維持管理費、利息等の費用の合算額に見合う額となるように、全路線画一対距離料金制(注2) を基本として車種別に料金が設定されている。
 また、公団では、料金設定と併せて、各年度の推定交通量に車種別の料金の額を乗じるなどして算出した年度ごとの料金収入から、年度ごとの費用の合算額を差し引いた残額を償還金に充当することとする償還計画を策定している。

(借入金等の概要)

 本州四国連絡道路等の建設に要する資金は、主に債券発行及び借入れによる有利子資金で調達されているが、調達資金のコストを所定の水準に抑え金利負担を軽減するために、政府及び地方公共団体から出資金が拠出されている。出資を行う地方公共団体は、本州四国連絡橋公団法第4条第1項の地方公共団体を定める政令(昭和45年政令第152号)等により、大阪府、兵庫県、岡山県、広島県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、大阪市及び神戸市の10府県市が指定されている。
 これら調達資金等のうち道路分の平成10年度末現在額は表3のとおりである。

表3
(単位:億円)

区分 10年度末残高
(道路分)
区分 10年度末残高
(道路分)
本州四国連絡橋債券 36,464 長期借入金 1,607 
政府引受債 20,265 道路整備特別会計借入金 0.9
資金運用部資金 7,257 道路開発資金 7 
簡保資金 13,008 政府保証借入金 206 
政府保証債 1,202 民間借入金 1,392 
縁故債 14,996



出資金 5,846 


政府出資金 3,893 


地方公共団体出資金 1,952 

2 検査の背景及び着眼点

 本州四国連絡道路は、永年の歳月と多大な費用をもって建設されたものであり、その建設資金は、多額の有利子資金や政府等からの出資金によって賄われており、それらは今後、料金収入をもって償還することとなっている。
 そして、児島・坂出ルートが昭和63年の供用開始以来10年以上経過し、また、尾道・今治ルートが平成11年5月に全線供用されたことにより3ルートが概成した。これにより本州四国連絡道路の建設はほぼ完了し、今後は道路及び橋りょうの維持管理に努めるとともに、借入金等の償還を進めていくことが公団の重要な責務となっている。
 このような状況を踏まえ、本州四国連絡道路の建設、管理の計画及び実績に着眼して検査を実施した。

3 検査の状況

(1) 建設費について

(工事実施計画及び実績)

 本州四国連絡道路等の建設は、前記のとおり、建設、運輸両大臣から工事実施計画の認可を受け実施されているが、同計画は昭和48年10月の認可以降たびたび変更が行われており、その道路のルートごとの推移は次のとおりである。

ア 神戸・鳴門ルート

 48年10月に、道路延長76.3km、計画額2860億円の工事実施計画の認可を受けている。そして、平成10年度までに計16回の工事実施計画の追加、変更を行い、同年度末における道路延長は89.0km、建設費の執行実績は1兆3487億円となっていて、当初の計画額に比べて約4.7倍となっている。
 その主な増加理由をみると、垂水区間及び西神地区工事の新規追加、明石海峡大橋が道路鉄道併用橋から道路単独橋に変更されたことに伴い同大橋の建設費が全額道路事業の負担となったこと、大鳴門橋の道路及び鉄道の負担割合の変更、物価上昇による建設費の増額等となっている。

イ 児島・坂出ルート

 昭和48年10月に、道路延長37.8km、計画額2407億円の工事実施計画の認可を受けている。そして、平成10年度までに計10回の工事実施計画の追加、変更を行い、同年度末における道路延長は37.3km、建設費の執行実績は6358億円となっていて、当初の計画額に比べて約2.6倍となっている。
 その主な増加理由をみると、鷲羽山地区の開削方式からトンネルへの変更、与島パーキングエリアの追加、物価上昇による建設費の増額等となっている。

ウ 尾道・今治ルート

 昭和48年10月に、道路延長60.1km、計画額2211億円の工事実施計画の認可を受けている。そして、平成10年度までに計12回の工事実施計画の変更を行い、同年度末における道路延長は59.4km、建設費の執行実績は6599億円となっていて、当初の計画額に比べて約2.9倍となっている。
 その主な増加理由をみると、自転車歩行者道の設置、瀬戸田パーキングエリアの追加、物価上昇による建設費の増額等となっている。一方、尾道大橋関連区間等において、一般道路事業(建設省)と有料道路事業(公団)の合併施行方式(注3) を導入したことによる負担分の減少などにより減額変更されている。

(建設工事費デフレーターによる比較)

 本州四国連絡道路の建設期間は、昭和50年の大三島橋の着工以来、平成11年の全線供用まで約23年と長期にわたっている。
 この間の建設費の執行実績を、建設省作成の有料道路についての建設工事費デフレーター(注4) により10年の価格に換算すると、その額は2兆9111億円となる。そして、これを昭和48年の価格で計算された当初の工事実施計画額の合計額7478億円を同デフレーターにより平成10年の価格に換算した1兆6526億円と比べると、約1.7倍(神戸・鳴門ルート約2.2倍、児島・坂出ルート約1.4倍、尾道・今治ルート約1.4倍)となっている。
 上記のことから、建設費の執行実績は工法の変更、施設の追加、道路負担分の変更等により、当初の工事実施計画額に比べて物価の上昇以上に大きく増加している。

(2) 交通量について

(推定交通量の計算手法)

 公団では、供用区間の変更に伴い、その都度、建設費、維持管理費、料金収入、推定交通量等を見直し、料金及び料金徴収期間の変更の認可を受けており、昭和54年の大三島橋供用に伴う当初の認可を受けて以来、平成9年12月までに受けた変更認可は計8回となっている。上記の認可時における交通量の推定は、本州と四国の間を移動する本州四国間交通量と、島しょ部を発着地とする島しょ部交通量について行っている。このうち料金設定に大きな影響を及ぼす本州四国間交通量は、まず本州四国間全体の人及び貨物の輸送量を推定してから、そのうちの連絡橋利用の輸送量を推定し、これを自動車1台当たりの平均乗車人員及び積載量(人/台、t/台。以下「平均乗車人員等」という。)の推定値で除して台数に換算し算出している。
 上記のうち輸送量については、経済成長率、将来の人口、過去の本州四国間の輸送量実績等を基にして推定しており、12年度(西暦2000年度)の橋利用の輸送量についてみると表4のように推定している。これによると、3年11月の変更認可時では、昭和63年1月の変更認可時と比べて旅客、貨物ともに増加するとしているが、平成9年12月の変更認可時では、旅客は更に増加するものの貨物は大きく減少するとしている。

表4

旅客(人/日) 貨物(t/日)
変更認可年 昭和63年 平成3年 平成9年 昭和63年 平成3年 平成9年
本州四国間輸送量 昭和59年度実績輸送量 79,000 242,000
昭和63年度実績輸送量 109,000 275,000
平成5年度実績輸送量 120,000 225,000
平成12年度推定輸送量 127,000 155,000 144,000 394,000 394,000 245,000
平成12年度橋利用推定輸送量 52,000 80,000 88,000 105,000 107,000 52,000

(注) 本州四国間輸送量は、鉄道、フェリー、橋利用等の輸送量を合計したものである。

 また、平均乗車人員等については、過去の実績等を基にして推定しており、12年度の平均乗車人員等についてみると表5のように推定している。これによると昭和63年変更認可時に比べて平成3年変更認可時及び9年変更認可時では平均乗車人員等がそれぞれ増加するとし、推定交通量が減少する方向への修正を加えている。

表5

旅客(人/台) 貨物(t/台)
変更認可年 昭和63年 平成3年 平成9年 昭和63年 平成3年 平成9年
実績平均乗車人員等(昭和55年度道路交通センサス等) 2.0 2.4
実績平均乗車人員等(昭和63年度瀬戸中央自動車道等) 5.0 3.5
実績平均乗車人員等(平成5年度瀬戸中央自動車道等) 4.0 3.3
平成12年度推定平均乗車人員等 2.0 3.0 3.5 2.1 2.6 3.2

(児島・坂出ルートの交通量の推定と実績)

ア ルート全体の交通量について

 供用開始以来10年以上を経過した児島・坂出ルートについて、上記の昭和63年、平成3年及び9年の3回の変更認可時における推定交通量の変更状況及びその推定交通量に対する実績交通量等の状況をみると、次のとおりである(図1参照)

本州四国連絡道路の計画及び実績についての図1

 昭和63年の供用開始以来、平成2年度までの間における各年度の実績交通量の平均は9,070台/日から10,823台/日であり、推定交通量の24,900台/日から27,240台/日を大きく下回り、その実績率(推定交通量に対する実績交通量の比率)は34.8%から43.4%と著しく低くなっている。
 3年の変更認可時においては、このような状況を踏まえて推定交通量の見直しを行っており、3年度の推定交通量を昭和63年変更認可時の推定交通量28,410台/日に比べて約60%減少させた11,370台/日としている。そして、平成4年度以降は毎年約16%の伸び率で増加していくものと見込み、8年度では24,020台/日と推定している。しかし、3年度から8年度までの間の実績交通量は、11,262台/日から15,211台/日であり、対前年度の伸び率は約5%から約14%となっていて、実績率も年々低下し、8年度では約63.3%なっていた。
 そこで、更に9年の変更認可時において推定交通量の見直しを行い、9年度の推定交通量を3年の変更認可時の推定交通量27,920台/日に比べて約43%減少させた15,860台/日とし、10年度は9年度からの伸び率を約9%として17,390台/日(3年の変更認可時の推定交通量21,490台/日に比べると約19%減少)としている。しかし、9年度の実績交通量は16,126台/日で推定交通量を約1%上回っているものの、10年度は15,793台/日で推定交通量を下回っていて、実績率は約90%となっている。

イ 車種別の交通量について

 児島・坂出ルートにおける車種別交通量について昭和63年度から平成2年度までの状況をみると、普通車(軽自動車を含む。以下同じ。)の実績率は40.5%から53.6%で推移しているのに対し、大型車(特大車を含む。以下同じ。)の実績率は23.1%から24.6%と大きく下回っている。そして、3年の変更認可時に推定交通量の見直しが行われたものの、3年度から8年度までの間の実績率は、普通車が67.9%から100.7%であるのに対し、大型車は51.0%から93.6%と、1台当たりの通行料金が高い大型車の交通量の計画と実績のかい離が大きくなっている。その後、9年の見直しでは更に推定交通量を減少させたことから、同年度は普通車、大型車とも100%前後の実績率となり、特に3年の変更認可時に比べて推定交通量を大幅に減少させた大型車は10年度もほぽ100%の実績率となったが、普通車は実績率が90%を下回っている。

ウ 他輸送機関の輸送量の状況

 児島・坂出ルートと並行する輸送機関である宇野・高松間のフェリーの航送台数(注5) をみると、児島・坂出ルートが供用された昭和63年度は前年度比約26%減の137万台となっていたが、その後平成元年度から9年度までは124万台から132万台で推移しており、ほぼ横ばい傾向となっている。
 また、JR瀬戸大橋線(本四備讃線)の昭和63年度から平成9年度までの輸送人員(注6) を昭和62年度の宇高連絡船(63年4月廃止)の輸送人員と比べると、宇高連絡船が年間427万人であったのに対し、JR瀬戸大橋線は年間987万人から1099万人と2倍以上で推移している。

(明石海峡大橋及び大鳴門橋の交通量の推定と実績)

 神戸・鳴門ルートは、平成10年4月の明石海峡大橋の供用開始により全線が供用されている。その全線供用後の交通量についてみると、明石海峡大橋は推定交通量を10年度30,030台/日、11年度31,350台/日としているが、実績交通量は10年度25,614台/日、11年度24,031台/日(9月末まで)となっていて、実績率はそれぞれ85.2%、76.6%となっている。
 また、大鳴門橋は推定交通量を10年度24,100台/日、11年度25,220台/日としているが、実績交通量は10年度16,605台/日、11年度16,454台/日(9月末まで)となっていて、実績率はそれぞれ68.9%、65.2%となっている。
 以上のように、輸送量、平均乗車人員等に変更を加えるなどして推定交通量を見直しているが、実績交通量はその推定交通量も下回っている状況となっている。

(3) 建設費用の償還について

(料金収入の計画と実績)

 公団における借入金等の償還は、本州四国連絡道路の通行車両から得られる料金収入から建設費、維持管理費、利息等の支出を差し引いた残額(以下「収支差」という。)を償還金に充当することにより行われることとなっている。
 しかし、前記のように、実績交通量が推定交通量に達していない現状では予定の料金収入は得られず、昭和63年度以降の料金収入の計画と実績を対比すると、図2のとおり、平成3年の変更認可において計画を見直した直後に実績が計画を上回る年が見られるものの、その後は実績が計画を下回っている。

本州四国連絡道路の計画及び実績についての図2

(損益及び収支率)

 損益の状況についてみると、表6のとおり道路料金収入は増加してきているものの、業務外費用に対する道路料金収入の比率は9年度54.4%、10年度59.9%で、道路料金収入では支払利息を賄えない状況となっている。その結果、毎年度多額の当期損失金を計上していて、欠損金は10年度末現在8377億円の多額に上っている。

表6
(単位:億円、%)

項目 63 2 3 4 5 6 7 8 9 10
費用の部










経常費用 996 1,026 1,089 1,171 1,218 1,190 1,135 1,139 1,071 1,052 1,545
 業務外費用 886 904 968 1,041 1,078 1,041 978 996 930 907 1,353
(債券利息) 642 658 688 741 824 842 851 862 853 842 1,266
(借入金利息) 225 225 258 277 230 174 103 111 54 41 40
収益の部










経常収益 361 327 336 390 414 431 438 496 507 605 856
 道路料金 359 326 328 382 396 411 434 445 471 494 811
 収入










当期損失金 635 699 753 780 804 758 696 515 563 446 688
欠損金 1,668 2,367 3,121 3,901 4,706 5,465 6,162 6,678 7,241 7,688 8,377
業務外費用に対する道路料金収入の割合 40.5 36.0 33.8 36.6 36.7 39.4 44.3 44.6 50.6 54.4 59.9

 また、収支率(費用/収益。本院試算による。)の推移をみると、大三島橋のみの供用時点(昭和54年度から57年度)では費用が収益を大きく上回り、収支率は1,717%から2,114%となっていた。その後、昭和58年度の因島大橋、63年度の児島・坂出ルートの供用など供用区間が増えてきたことから収支率は図3のとおり改善傾向にあり、平成8年度では210%、9年度では173%、10年度では180%となった。このうち全線供用後10年以上を経過した児島・坂出ルートの収支率についてみると、8年度では168%、9年度では133%、10年度では151%となっている。

本州四国連絡道路の計画及び実績についての図3

(収支差の計画と実績)

 このような状況の中、公団では昭和58年の変更認可において、償還期間を62年からの33年間(当初28年間)に延長している。
 また、平成9年の変更認可においては、利用層を拡大しその定着を図るなどのため、料金を平均約7%引き下げ、さらに20%割引の特別料金(10年4月から15年3月まで)を設定するなど料金水準を下げるとともに、償還期間を8年からの50年間に延長している。
 児島・坂出ルート供用開始に係る変更認可以後の償還計画上の収支差と実績とを対比すると、図4のとおりであり、3年に償還計画を見直したことにより、3、4両年度は収支差の実績が計画を上回っているが、その後8年度までは収支差の実績が計画を下回っている状況となっている。また、9年の償還計画の見直し後の9、10両年度は、収支差の実績が計画を上回っている。

本州四国連絡道路の計画及び実績についての図4

(現行の償還計画の概要)

 3ルートの概成及び全線供用を踏まえた9年の変更認可における償還計画の概要は、次のとおりである(図5参照)

3ルートの概成及び全線供用を踏まえた9年の変更認可における償還計画の概要は、次のとおりである(図5参照)。

 すなわち、交通量は22年度まで年間約4%の伸び率で推移し、それ以降は年間約1%の伸び率で45年度まで推移すると推定し、料金収入についても、ほぼ同様の伸び率で推移するとしている。そして、11年度以降の将来金利を一定と設定し、政府及び地方公共団体からの出資(道路分)については、3年の変更認可時においては12年度まで総額7142億円を予定していたのに対し、24年度まで総額1兆6434億円(うち政府1兆0952億円)と大幅に増額することとしている。これにより、予定していた有利子資金の一部を無利子資金とすることで利子負担が軽減され、18年度に資金収支は黒字に転換し、37年度には欠損金が解消され、さらに、48年度には有利子資金の償還が、58年度には出資金(道路分)の償還が完了するとしている。
 この9年の変更認可における償還計画についてみると、既に述べたように、実績交通量は推定交通量を下回り、収入も計画を下回っているものの、金利の低下や公団における維持管理費等の節減努力による支出の減少が大きいため、9、10両年度は収支差の実績が計画を上回っている。

4 本院の所見

 本州四国連絡道路は、永年の歳月と多額の有利子資金、政府等出資金等によって建設された道路で、通行車両から得られる料金収入により建設費、維持管理費、利息等を償還する有料道路である。その建設のための所要資金については、一定の料金水準及び償還期間等を設定し償還することになっている。
 この道路の建設費は、物価上昇に加え、工法の変更、施設の追加、道路負担分の変更等種々の要因により当初計画に比べて大幅に増加し、金利を含めた償還を要する金額も大幅に増加している。また、償還財源である道路料金収入についてみると、その基礎をなす推定交通量について当初推定の計数を見直しその引下げを行っているにもかかわらず、実績交通量がこれを下回っている状況にあることから、支払利息を賄えないものとなっている。そして、これらのことなどから償還期間の延長を余儀なくされている。したがって、本州四国連絡道路のような大規模プロジェクトの計画策定時においては、できるだけ正確に建設費を見込むことが肝要であり、また、交通量推定の精度の向上を図るとともに、関係府県市等との連携を強化したり、利用の拡大等のため割引料金を活用したりなどして需要の喚起を図り、交通量を増大させて料金収入の増収に努める要があると認められる。
 また、9年の変更認可における償還計画によれば、58年度には償還が完了するとしている。この償還期間は50年という長期にわたるものであり、その間には社会経済情勢の変化もあることなどを考えると、公団において償還計画の達成状況を絶えず把握するとともに、状況の変化に応じて適時適切な見直しを行う要があると認められる。
 本院としては、償還計画の達成状況について引き続き注視していくこととする。

(注1)  料金プール制 有料道路として建設された複数の路線の収支を一つの償還対象とする制度

(注2)  全路線画一対距離料金制 全路線の各インターチェンジ間について一定km当たり料金(料率)に当該インターチェンジ間の距離を乗じて料金を設定する方式

(注3)  合併施行方式 一般国道の自動車専用道路等の整備に当たり、一般道路事業と有料道路事業の間で建設等の分担を定め、連携して事業を行う方式

(注4)  建設工事費デフレーター 建設工事費の物価変動を修正するために用いられる一種の物価指数

(注5)  四国運輸局「本州・四国間の旅客及び貨物の動向」統計による。

(注6)  四国運輸局「本州・四国間の旅客及び貨物の動向」統計による。