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  • 平成11年度|
  • 第4章 国会からの検査要請事項及び特定検査対象に関する検査状況|
  • 第2節 特定検査対象に関する検査状況

地方公共団体が管理する空港の整備・運営状況について


第6 地方公共団体が管理する空港の整備・運営状況について

検査対象 運輸省(航空局)、気象庁、北海道ほか16地方公共団体
国の会計名 空港整備特別会計
地方空港の概要 地方公共団体が管理する空港であって、主要な国内航空路線に必要な飛行場及び地方的な航空運送を確保するため必要な飛行場で、離島空港等を除く21空港
上記21空港の施設整備に係る昭和45年度以降の事業費 4483億余円
(うち国庫補助金 2460億余円)

1 地方空港の概要

(地方空港の位置付け)

 我が国には、平成11年度末現在、空港整備法(昭和31年法律第80号)に定める空港であって供用中のものが80空港存在している。このうち地方公共団体が管理する空港としては、主要な国内航空路線に必要な飛行場として運輸大臣が設置する第二種空港のうち地方公共団体が管理する空港(以下「第二種B空港」という。11年度末現在5空港)及び地方的な航空運送を確保するため必要な飛行場として地方公共団体が設置・管理する第三種空港(11年度末現在51空港)(以下、第二種B空港と第三種空港を合わせて「地方空港」という。)がある。
 なお、第二種B空港も、航空法(昭和27年法律第231号)の適用については空港を管理する地方公共団体がその設置者とみなされることから、空港の新設、滑走路延長等の整備に当たっては、地方公共団体が事業主体となっている。

(地方空港の整備と運営)

 運輸省では、空港整備法等に基づく空港の整備を計画的に推進するため、これまで7次にわたる空港整備五箇年(七箇年)計画を策定している。そして、現在、8年度から14年度までを期間とする第7次空港整備七箇年計画(以下「7次空整」という。)の下で空港整備事業が実施されている。
 地方空港の整備は、地方公共団体が空港整備補助事業として実施しており、8年度から11年度までの4年間に実施された同事業に係る補助対象事業費は表1のとおり計1699億円で、このうち国が支出した空港整備事業費補助金は計1025億円となっている。

表1 地方空港の空港整備補助事業の推移
(百万円)
年度 補助対象事業費 国庫補助金 地方負担額
8 49,675 30,876 18,798
9 50,763 29,685 21,077
10 41,504 24,903 16,601
11 27,991 17,133 10,858
169,934 102,598 67,335

 この結果、地方空港数は逐次増加しており、また、既存空港の滑走路を延長したことにより地方空港のジェット化、大型化等が進んでいる(図1)。

図1 地方空港の滑走路長別空港数

図1地方空港の滑走路長別空港数

 一方、地方空港の運営は、空港管理者である地方公共団体が行っており、運営に伴う収入及び支出についても地方公共団体の収入支出となっている。

(地方空港の整備の手続)

 地方空港の新設、あるいは滑走路の延長等の整備に当たって、運輸省は事業化の要望の段階で地方公共団体から当該空港に係る乗降客数、便数等の需要予測の提出を受けて、空港の必要性、施設規模が適切であるかの検討材料としている。
 地方公共団体は、事業採択の後、航空法に基づき、施設の位置、施設の概要、管理計画、設地及び管理の費用などを内容とする飛行場設置許可申請書等を運輸大臣に提出し、その許可を受けることとされている。
 運輸大臣は、申請に対して飛行場又は航空保安施設の位置、構造等の計画が運輸省令で定める基準に適合するものであること、及び当該地方公共団体が当該飛行場又は航空保安施設を設置、管理するために必要な資金調達能力及び経営能力等を有していることを確認の上、設置等を許可することとなる。

(地方空港の整備に係る費用負担)

 地方空港に係る各種施設の整備及びその管理に要する費用負担をまとめると、表2のとおりとなる。

表2 地方空港に係る施設整備及び管理に要する費用負担(11年度)

施設 整備費の負担(( )は北海道) 管理費の負担
第二種B空港 第三種空港
基本施設
55%(2/3)
地方公共団体 45%(1/3)
50%(60%)
地方公共団体 50%(40%)
地方公共団体
附帯施設(補助対象分)
単独事業分 地方公共団体 地方公共団体
航空保安無線施設
航空交通管制施設
航空気象業務施設

 すなわち、地方空港の整備のうち、滑走路、着陸帯、エプロン等の基本施設及び排水路、照明施設、場周道路等の附帯施設の新設又は改良については地方公共団体が国庫補助事業として実施しており、運輸省は、その事業に要する費用に対して空港整備特別会計から空港整備事業費補助金を交付している。
 また、地方公共団体は、単独事業として〔1〕空港の保安上必要な施設である消防車、除雪車及びこれらの車庫等の整備、〔2〕空港を立地した地域の周辺環境によって必要となる騒音対策、公園の整備等を実施している。
 地方公共団体では、前記の国庫補助事業に係る事業費のうちの地方負担分及び単独事業として行った施設整備の費用の一部について、地方債を発行して賄っているものがある。
 一方、運輸省は、空港を離着陸する航空機の航行を援助するなどの目的で、計器着陸システム等の航空保安無線施設、管制塔等の航空交通管制施設及び空港気象観測システム等の航空気象業務施設の整備・管理を各地方空港において実施している。

2 検査の背景及び着眼点

(検査の背景)

 我が国では、国が設置・管理する空港を含めると、地方と2大都市圏(東京、大阪)とを結ぶネットワークは概成しつつあるとされている。一方、地方空港の新設、滑走路の延長等の整備事業が補助事業として実施されており、前記のとおり、8年度から11年度にかけて1025億円の国庫補助金が投入されているところであるが、これら事業の必要性について、種々の論議がなされている。
 また、近年、航空運送事業の分野においては、航空会社間の競争環境を整備するという観点に立った規制緩和が逐次進められてきていて、航空路線への参入・撤退、運賃設定の両面で自由化が進展している。こうした状況の下で、地方空港の運営環境にも変化が生じており、地方公共団体では空港利用需要の喚起や路線維持等のため、地方空港の最大の収入源でもある着陸料の引下げや航空会社に対する助成等の施策を実施している例が見受けられる。

(検査の着眼点)

 以上を背景として、次のような点に着眼して検査した。
〔1〕 地方空港の利用状況はどうなっているか、乗降客数の需要予測に比べて十分な利用がなされているか。
〔2〕 地方空港の整備及び運営に伴い国及び地方公共団体はどの程度の財政資源を割り当てているか。
〔3〕 近年の航空路線への参入・撤退や航空運賃の規制緩和に伴い、地方空港の運営にどのような影響が生じているか。

(検査の対象)

 11年度末現在において供用されている地方空港56空港のうち、離島に所在する34空港及び開港が新しく(11年11月)通年の利用実績がない新紋別空港を除く、17地方公共団体が管理する21空港(注1) (以下「対象地方空港」という。)を対象として検査した。
 これらの対象地方空港において昭和45年度以降に空港施設の整備に着手した当該施設整備事業に係る補助対象事業費の累計は、表3のとおり、4483億余円となっている。

表3 対象地方空港の補助対象事業費
   (昭和45年度以降に着手した事業の累計値)
(単位:百万円)
空港名 空港管理者 補助対象事業費   空港名 空港管理者 補助対象事業費
事業費
(A)+(B)
国庫補助金
(A)
地方公共団体負担額
(B)
事業費
(A)+(B)
国庫補助金
(A)
地方公共団体負担額
(B)
旭川 旭川市 47,727 34,057 13,670 福島 福島県 53,712 26,855 26,857
帯広 帯広市 11,758 8,841 2,917 富山 富山県 2,398 1,199 1,199
秋田 秋田県 25,774 14,775 10,999 福井 福井県 24 12 12
山形 山形県 12,579 9,169 3,410 松本 長野県 17,532 8,766 8,766
山口宇部 山口県 19,288 10,903 8,385 南紀白浜 和歌山県 38,326 19,162 19,164
中標津 北海道 3,171 1,903 1,268 鳥取 鳥取県 14,576 7,288 7,288
女満別 北海道 21,999 13,607 8,392 出雲 島根県 18,591 9,295 9,296
青森 青森県 45,435 22,717 22,718 石見 島根県 22,537 11,268 11,269
大館能代 秋田県 27,976 13,988 13,988 岡山 岡山県 10,079 4,844 5,235
花巻 岩手県 12,170 6,044 6,126 佐賀 佐賀県 25,115 12,557 12,558
庄内 山形県 17,604 8,802 8,802 合計(21)   448,371 246,052 202,319
(注1) 17地方公共団体が管理する21空港 旭川(旭川市)、帯広(帯広市)、秋田(秋田県)、山形(山形県)、山口宇部(山口県)、中標津、女満別(北海道)、青森(青森県)、大館能代(秋田県)、花巻(岩手県)、庄内(山形県)、福島(福島県)、富山(富山県)、福井(福井県)、松本(長野県)、南紀白浜(和歌山県)、鳥取(鳥取県)、出雲、石見(島根県)、岡山(岡山県)、佐賀(佐賀県)各空港

3 検査の状況

(1) 対象地方空港の利用の状況

(対象地方空港の乗降客数)

 地方公共団体が設置・管理する地方空港56空港の平成11年度における乗降客数は計18,431千人、このうち対象地方空港は計12,958千人であり、我が国の全空港(防衛庁との共用飛行場を除く。)の乗降客数231,308千人に占める割合は、それぞれ7.9%、5.6%となっている。
 これを1空港当たりの平均でみると、対象地方空港は617千人であり、運輸大臣等が設置・管理する第一種空港(新東京国際、関西国際、東京国際(羽田)、大阪国際(伊丹)の4空港)の29,311千人、運輸大臣が設置・管理する第二種空港(第二種A空港。新千歳、福岡等20空港)の4,781千人に比べてそれぞれ2.1%、12.9%程度となっている(図2)。

図2 空港種別ごとの乗降客数(11年度)

図2空港種別ごとの乗降客数(11年度)

 また、11年度における対象地方空港の空港別の乗降客数は図3のとおりである。

図3 空港別乗降客数(11年度)

図3空港別乗降客数(11年度)

(路線の特徴)

 11年10月における対象地方空港を利用する路線は1日当たり計165便(1往復を1便としている。以下同じ。)であるが、このうち92便(55%)が東京(羽田)線又は大阪(伊丹・関西国際)線、うち64便(38%)が羽田線であり、地方と大都市とを結ぶ路線が大半を占めている。
 対象地方空港の1日当たりの便数は1空港平均で7.8便となっており、10便以下の空港が21空港中14空港、5便以下の空港が8空港となっている。また、同一路線の1日当たり便数は、大部分の路線で5便以下となっている(表4)。

表4 対象地方空港の便数(11年10月ダイヤ)

空港名 1日の便数計 路線別便数内訳   空港名 1日の便数計 路線別便数内訳
2大都市線 その他 2大都市線 その他
羽田 伊丹
関空
小計 羽田 伊丹
関空
小計
旭川 13.5 7 2 9 4.5 福島 9.7   2 2 7.7
帯広 6.1 4 1 5 1.1 富山 10.1 5   5 5.1
秋田 11.6 5 2 7 4.6 福井 0.0     0 0.0
山形 7.0 1 3 4 3.0 松本 4.0   1 1 3.0
山口宇部 5.6 5   5 0.6 南紀白浜 3.0 2   2 1.0
中標津 4.0 2   2 2.0 鳥取 6.0 3   3 3.0
女満別 14.3 5 2 7 7.3 出雲 16.0 5 5 10 6.0
青森 20.6 8 3 11 9.6 石見 3.0 2 1 3 0.0
大館能代 3.0 1 1 2 1.0 岡山 10.9 4   4 6.9
花巻 7.3   2 2 5.3 佐賀 5.0 2 2 4 1.0
庄内 5.0 3 1 4 1.0  計 165.6 64 28 92 73.6

 (注) 週当たり便数を1日当たりに換算しているため、小数点以下のものがある。

(地方空港の需要予測)

 地方公共団体では、空港の新設や滑走路の延長等の整備事業に当たり、事業化を要望する段階において運輸省に対し空港の需要予測を提出している。
 この需要予測は、地方公共団体が、基本的には供用開始時、5年後及び10年後の各時点における乗降客数を予測するものである。
運輸省によれば、この需要予測は空港整備の前提となるものであり、空港整備の必要性、施設規模が適切であるかどうかの検討材料として、地方公共団体に提出させており、具体的には、提出された需要予測を、上記の目的に用いるほか、事業実施に当たって行う費用対効果分析の基礎データとしても用いているとしている。

(需要予測と乗降客数の実績)

 対象地方空港のうち、11年度の実績値と需要予測値との比較が可能な14空港について、11年度における乗降客数を同年度の需要予測値(本院において11年度の前後の需要予測値などから換算)と比較することにより利用状況を検査した。
 その結果、5空港で乗降客数が需要予測値を上回っているものの、9空港で需要予測値を下回っており、このうち乗降客数が需要予測値の50%に満たない空港が4空港あった。
 また、対象地方空港のうち、7年度時点の需要予測がなされている13空港について、7年度の乗降客数を同年度の需要予測値と比較したところ、5空港で乗降客数が需要予測値を上回っているものの、8空港で需要予測値を下回っており、このうち、乗降客数が需要予測値の50%に満たない空港が3空港あった(表5)。

表5 11年度及び7年度における乗降客数の需要予測に対する達成率

達成率
(実績値/需要予測値)
11年度 7年度
空港数 比率(%) 空港数 比率(%)
100%以上 5 35.7 5 38.5
100%未満
(うち50%未満)
9
(4)
64.3
(28.6)
8
(3)
61.5
(23.1)
14 100 13 100

 (注) 比率は、小数点以下第2位を四捨五入している。

 上記のうち、11年度の乗降客数の実績値が需要予測値を下回っている原因について、これらの空港を管理する地方公共団体では、次のことなどが考えられるとしている。
〔1〕 経済社会情勢の変化により、航空需要の将来への伸びが予測どおり伸びなかったこと、特に観光需要が低迷したこと
〔2〕 新幹線鉄道、高速道路等の他の交通機関の開通により、航空機が分担すると想定していた旅客がこれら交通機関に転換したこと
〔3〕 近傍の既存の地方拠点空港に比べて、航空ダイヤ、運賃面で有利な設定がなされなかったため、対象地方空港を利用すると想定した地域の旅客が期待どおり利用しなかったこと

(需要予測の手法)

 地方公共団体が実施している需要予測の手法について、運輸省では、個々の空港には地域特性があり立地条件も異なることから、一般化は困難と思われるため、画一的な手法を定めたマニュアルはないとしている。そして、必要に応じ、地方公共団体の行う需要予測に対し助言、指導等という形で関与することにより、不適切な予測要素の設定の是正等を行っているとしている。
 そこで、地方公共団体における需要予測の手法について調査したところ、一般的に以下の手法が用いられていた。
 すなわち、将来の都道府県間の旅客流動量(注2) を想定した後、この中から当該空港の利用が想定される地域(以下「空港勢力圏」という。)と相手側の空港勢力圏との間の旅客流動量を絞り込み、これに航空機を利用する旅客数の比率(以下「航空分担率」という。)を乗じることにより、将来時点における当該空港の旅客需要を予測していた。そして、この予測に用いる各要素については次のとおりとなっていた。
〔1〕 都道府県間の旅客流動量としては、一般的に「旅客地域流動調査」(運輸省)等の統計データを基礎とする。
〔2〕 空港勢力圏の範囲については、例えば周辺空港との距離や生活圏などを勘案して設定する。
〔3〕 空港勢力圏に係る旅客流動量が各都道府県の全域に係る旅客流動量に占める構成比を、人口や事業所数等の指標を参考として設定し、都道府県間の旅客流動量にこの構成比を乗じて空港勢力圏に係る旅客流動量を求める。
〔4〕 航空分担率については、航空と鉄道の運賃(差)及び所要時間(差)、時間価値等を設定し、各要素を用いて推計する。
 このように需要予測は、統計データを基礎としながら、地方公共団体による種々の設定に基づき行われており、需要予測を行うに当たっては、それぞれのケースに応じてこうした設定等が適切に行われることが重要である。

 (注2)  旅客流動量 2地点間を1年間に移動する旅客数

(2) 地方空港に係る国及び地方公共団体の収入及び支出

ア 施設整備費

(国及び地方公共団体の空港施設の整備費)

 対象地方空港では、新規開港の時点で空港諸施設の整備が実施されているほか、供用開始後において滑走路を延長するなどの施設整備が実施されているが、このうち国庫補助事業として実施される基本施設及び附帯施設の整備に係る累計事業費を整備事業の内容別に示すと表6のとおりとなっている。

表6 対象地方空港の施設整備事業費(昭和45年度以降の累計値)
(単位:百万円)
空港名 空港管理者 整備事業の内容 事業期間 補助対象事業費
事業費
(A)+(B)
国庫補助金
(A)
地方公共団体負担額
(B)
旭川 旭川市 2000m化 51〜58 18,457 14,544 3,913
2500m化 4〜11 29,270 19,513 9,757
帯広 帯広市 新設 51〜56 7,081 5,437 1,644
2500m化 57〜62 3,749 2,785 964
その他 3〜11 928 619 309
秋田 秋田県 新設 49〜55 22,535 12,953 9,582
その他 元〜10 3,239 1,822 1,417
山形 山形県 2000m化 53〜61 12,282 8,992 3,290
その他 元〜4 297 177 120
山口宇部 山口県 その他 60〜5 620 367 253
2500m化 7〜11 18,668 10,536 8,132
中標津 北海道 2000m化 5〜8 3,171 1,903 1,268
女満別 北海道 2000m化 55〜60 10,488 7,577 2,911
2500m化 6〜11 11,511 6,030 5,481
青森 青森県 2500m化 56〜元 40,433 20,216 20,217
その他 6〜11 5,002 2,501 2,501
大館能代 秋田県 新設 5〜9 27,976 13,988 13,988
花巻 岩手県 2000m化 50〜57 8,671 4,335 4,336
その他 4〜7 2,138 1,069 1,069
2500m化 10〜11 1,361 640 721
庄内 山形県 新設 62〜6 17,604 8,802 8,802
福島 福島県 新設 61〜4 26,519 13,259 13,260
2500m化 7〜11 27,193 13,596 13,597
富山 富山県 その他 2〜11 2,398 1,199 1,199
福井 福井県 その他 6 24 12 12
松本 長野県 2000m化 3〜6 17,532 8,766 8,766
南紀白浜 和歌山県 1800m化 63〜7 36,199 18,099 18,100
2000m化 9〜11 2,127 1,063 1,064
鳥取 鳥取県 2000m化 57〜2 14,302 7,151 7,151
その他 6〜7 274 137 137
出雲 島根県 2000m化 59〜4 18,591 9,295 9,296
石見 島根県 新設 62〜4 22,537 11,268 11,269
岡山 岡山県 2500m化 元〜4 8,136 4,067 4,069
3000m化 10〜11 1,943 777 1,166
佐賀 佐賀県 新設 63〜9 25,115 12,557 12,558
合計(21)       448,371 246,052 202,319
(注) 整備内容の「その他」はエプロン整備等である。

 また、航空保安無線施設、航空交通管制施設及び航空気象業務施設については国が設置しているが、これらの施設整備に係る費用は表7のとおりとなっている。

表7 対象地方空港に係る航空保安無線施設等の整備費(最近5年間(7〜11年度)の計)

(単位:百万円)
空港名 航空保安無線施設・航空交通管制施設 航空気象業務施設   空港名 航空保安無線施設・航空交通管制施設 航空気象業務施設   空港名 航空保安無線施設・航空交通管制施設 航空気象業務施設
旭川 849 112 962 青森 800 117 918 松本 31 63 94
帯広 866 31 898 大館能代 2,512 120 2,633 南紀白浜 195 100 296
秋田 565 43 609 花巻 753 47 801 鳥取 608 24 632
山形 404 98 502 庄内 16 25 41 出雲 355 40 396
山口宇部 1,110 78 1,189 福島 262 113 376 石見 15 7 22
中標津 95 105 200 富山 864 56 920 岡山 1,037 49 1,086
女満別 880 101 982 福井 144 30 174 佐賀 2,255 135 2,390
  合計 14,627 1,505 16,132 1空港平均 696 71 768

イ 運営等に係る収入及び支出

(航空に関連する国の収入)

 国は航空機の所有者等から航空機燃料税を徴収していて、このうち13分の11が一般会計から空港整備特別会計に繰り入れられ、空港整備等の財源となっている。
 また国は、国内の空港に着陸する航空機の使用者から着陸1回ごとに、飛行距離と最大離陸重量等に応じて算定される航行援助施設利用料を徴収しており、航行援助施設利用料は空港整備特別会計の収入となっている。

(地方空港に係る国の支出)

 国は、地方空港においても、航空管制等業務及び航空気象業務を行っており、これに伴い所要の人件費並びに航空保安無線施設、航空交通管制施設及び航空気象業務施設の維持管理・運営のための物件費が発生している。
 対象地方空港におけるこれら国の業務に係る支出は、航空管制等業務のうち航空路管制などに係る共通的な経費であって空港ごとの特定が困難なものを除き、11年度において、航空管制等業務を担当する地方航空局の空港出張所で3,482百万円、航空気象業務を担当する気象庁の空港出張所等で921百万円、合計4,403百万円であり、1空港平均では、それぞれ165百万円、43百万円、合計209百万円となっている。

(地方公共団体の収入及び支出)

 対象地方空港に係る収入及び支出については、当該空港を管理するいずれの地方公共団体においても、区分経理し、その額を特定して把握しているものはなかった。そこで、各地方公共団体における9年度から11年度までの一般会計の決算額等から、対象地方空港の運営に伴う収入及び支出と考えられる項目及び額を抽出し、空港の運営に伴う地方公共団体の収入及び支出を調査した。

(地方公共団体の収入)

 対象地方空港の運営に係る収入の内容は各地方公共団体によって様々であるが、代表的なものは次のようになっていた。
〔1〕 空港を利用する航空会社から条例に基づき徴収する着陸料(航空機の着陸1回ごとに航空機重量及び騒音値に応じて算定)及び停留料(6時間以上空港内に停留する航空機に対して航空機重量に応じて24時間ごとに算定)等の空港使用料
〔2〕 空港ターミナルビル等の敷地等として民間事業者に貸し付ける空港敷地等行政財産の使用料
〔3〕 国から譲与を受ける航空機燃料譲与税(航空機燃料税の収入額の13分の2に相当する額が一定の算式に基づき空港関係市町村及び空港関係都道府県に譲与される。)
 そして、9年度から11年度における対象地方空港の収入の額は、1空港平均で486百万円(9年度)、430百万円(10年度)、325百万円(11年度)となっていた。
 11年度に収入が大きく減少しているのは、11年4月以降、大部分の対象地方空港で着陸料を3分の2に引き下げたためである。

(地方公共団体の支出)

 また、対象地方空港の運営に係る支出の内容は各地方公共団体によって様々であるが、代表的なものは次のようになっていた。
〔1〕 土木施設・電気施設等の維持管理、空港警備及び消防業務等の委託費又は請負費、ハイジャック防止対策への補助金、消防車両・機器類等の備品購入費、供用開始後に生じた環境対策の追加等からなる物件費
〔2〕 空港管理業務を行うための職員の人件費
 そして、9年度から11年度における対象地方空港の支出の額は、1空港平均で524百万円(9年度)、533百万円(10年度)、513百万円(11年度)となっていた。
 また、このほか、地方公共団体は対象地方空港に係る既往年度の施設整備費を賄うために発行された地方債の償還費を支出している。
 なお、地方空港の管理・運営にどれだけの財政資源を割り当てるかは、空港管理者である地方公共団体がその責任において決定することであり、支出項目の多くは空港機能の維持のために必須のものと考えられる。

(収入と支出の関係)

 今回、本院において試みに前記の収入と支出を対比したところ以下の状況となっていた。
 9年度から11年度の収入と支出をみると、供用中19空港中13空港(9年度)、21空港中14空港(10年度)、21空港中19空港(11年度)で支出が収入を上回っており、その差額は、平均で38百万円(9年度)、103百万円(10年度)、187百万円(11年度)となっている(表8)。
 また、各空港の支出の収入に対する比率を平均すると171%(9年度)、223%(10年度)、259%(11年度)となっている。
 このように、多くの空港で支出が収入を上回っており、その差が増加する傾向にある。
 なお、空港整備事業に当たって、運輸省が11年度以降の新規事業採択時に行うこととしている費用対効果分析では、空港整備事業の効果を、旅行・輸送時間の短縮及び旅行・輸送費用の低減等の利用者便益と空港管理者の収益増加等の供給者便益の合計としている。このうち供給者便益については、基本的には空港管理者である地方公共団体の収入の増分と支出の増分との差で計測されることとなっていて、地方公共団体の収入、支出が空港整備事業のもたらす効果の一つの要素と位置付けられている。
 しかしながら、空港運営に係る支出及び収入については、前述のとおり区分経理がされていなかったため、正確な収支分析は困難である。

表8 対象地方空港に係る地方公共団体の収支の試算

(空港数、%)
支出−収入 9年度 11年度 10年度
空港数 比率 空港数 比率 空港数 比率
収入>支出 6 31.6 7 33.3 2 9.5
0〜2億円未満 8 42.1 7 33.3 8 38.1
2〜4億円未満 4 21.1 5 23.8 8 38.1
4億円以上 1 5.3 2 9.5 3 14.3
19 100.0 21 100.0 21 100.0
1空港平均 38百万円 103百万円 187百万円
(注) 比率は、小数点以下第2位を四捨五入している。

(3) 航空分野の規制緩和の影響

(規制緩和の地方空港への影響)

 我が国の航空運送事業分野においては、近年、自由な競争によりサービスの向上・多様化や運賃・料金の一層の低廉化を通じて利用者の利便を図ることなどを目的として、航空会社間の競争環境を整備するという観点に立った規制緩和が進展しており、航空路線への参入・撤退、運賃設定が逐次自由化されてきている。
 こうした規制緩和の進展を背景として、高需要路線における航空会社間の競争が激化し運賃が低下している状況が見受けられる。このことは、利用者利便の向上という一面を有すると同時に、低需要路線など採算性の悪い路線については減便か路線撤退の可能性が生じてきている。また、空港の立地条件によっては、高需要路線を持っている近隣空港が利用者にとって旅行費用等の面で利便性が向上して、地方空港の利用が抑制される結果ともなっている(表9)。

表9 対象地方空港と近隣の地域拠点空港との競争力比較例(11年10月時点)

利用空港 出発地 東京便旅行費用比較(円)
旭川空港利用 旭川駅 航空運賃+空港連絡バス 25,570〜29,870
新千歳空港利用 航空運賃+JR 割引運賃 18,370〜28,070
佐賀空港利用 佐賀バスセンター 航空運賃+空港連絡バス往復割引 22,000〜27,550
福岡空港利用 航空運賃+空港高速バス往復割引 17,125〜28,175

 (注) 航空運賃は、特定割引のうち最低額、及び普通運賃である。

 こうした状況に対して、対象地方空港を管理する地方公共団体では、現行の便数及び路線の維持並びに利用者の利便性の向上のため、次のような施策を実施しているが、これは、収入の減少や支出の増加を招く結果ともなっている。

(ア) 着陸料の引下げ

 対象地方空港を管理する大部分の地方公共団体では、11年4月に一斉に着陸料を3分の2に引き下げているほか、一部の地方公共団体では、表10のとおり、引下げ時期の前倒しあるいは引下げ幅の拡大を実施し、航空会社の負担の軽減や運賃値下げ(値上げの回避)を通じて便数及び路線の維持を図っている。

表10 着陸料の引下げ状況(一斉引き下げ以外)

地方公共団体 対象地方空港 着陸料改定時期 着陸料の引下げ幅
(引下げ時期の前倒し)
旭川市 旭川 10年10月〜11年3月 5/6
帯広市 帯広 10年10月〜11年3月 5/6
北海道 中標津、女満別 10年10月〜11年3月 5/6
佐賀県 佐賀 開港(10年7月)〜11年3月 1/2
(引下げ幅の拡大)
佐賀県 佐賀 11年4月〜 2/3
山形県 山形、庄内 11年4月〜 1/2

(イ) 航空会社の運航上発生する費用の一部負担

 一部の地方公共団体では、地方空港での夜間駐機の費用の一部を助成したり、いわゆるコミューター路線の維持のため路線を運行する航空会社の運航経費の一部を、関係する地方公共団体と共同して助成するなど航空会社に対する支援を行っている(表11)。

表11 航空会社に対する支援等
地方公共団体 対象地方空港 年度
夜間駐機の費用の一部助成
島根県 出雲 10年度から
秋田県 秋田 12年度から(予定)
佐賀県 佐賀 12年度から(予定)
コミューター路線の運航経費の一部助成
岩手県 花巻 9年度から12年度まで
和歌山県 南紀白浜 8年度から12年度まで
鳥取県 鳥取 8年度から12年度まで
島根県 出雲 8年度から12年度まで

 なお、運輸省においても、規制緩和後の路線設定・廃止の自由化のなかで、高需要幹線路線への過度の集中、地方路線からの相次ぐ撤退などの事態を防ぎ、バランスある国内航空ネットワークの維持形成を図っていくため、羽田空港等の一部の地方路線に係る着陸料の軽減や、混雑空港における発着枠配分に当たっても地方空港への路線に優先的な配分を行うこととするなどしている。

4 本院の所見

ア 我が国では地方と2大都市圏(東京、大阪)とを結ぶネットワークは概成しつつあるとされている一方、地方空港の新設、滑走路の延長等の整備事業が実施されている。
 空港整備の事業採択の段階において、運輸省では地方公共団体から需要予測の提出を受け、空港整備の必要性、施設規模が適切かどうかの検討材料としている。
 近年の地方空港の利用実績をみたところ、対象地方空港のうち地方公共団体が行った需要予測の値に比べて、乗降客数が上回っている例が少なからず見受けられるものの、過半の空港において、地方公共団体が行った需要予測の値に比べて乗降客数が下回っており、中には需要予測値の50%未満の空港も見受けられる。
 地方空港の根幹的な施設である基本施設及び附帯施設の整備費の一部は国が負担していること及び航空管制業務等に係る整備費等は国が支出していることから、関係方面において、十分な利用がなされるような対応が望まれる。
イ こうした利用状況にある地方空港の需要予測については、各地方公共団体が主体となって実施している。その需要予測の手法については、統計データを基礎としながら、各空港の地域特性や立地条件を踏まえつつ、種々の設定等が行われることから、それぞれのケースに応じて予測要素の設定等が適切に行われることが重要である。
 また、需要予測は、地方公共団体の施設整備や運営の前提となっているばかりでなく、運輸省では空港整備の必要性、施設規模が適切かどうかの検討材料として、また、費用対効果分析の基礎データとして用いているものであることから、今後は運輸省において、まず予測手法の調査研究を始めとして、一層予測精度の向上を図るための取組みが望まれる。
ウ 今回、地方空港の運営に伴う地方公共団体の収入と支出の把握を試みたところ、多くの空港で支出が収入を上回る状況となっていて、特に11年度において着陸料が引き下げられた結果、その差が増加する傾向が見受けられた。
 なお、地方空港の運営に伴う支出をどのような財源で確保するかは設置管理者である地方公共団体が各々の財政状況等を踏まえて行うべきものであること、地方空港は高速交通を担う施設としての公共性を有しており、その運営を収支のみによって評価することは適当でないことには留意が必要である。
 こうした状況から、今後、主として地方公共団体の責任においてなされる地方空港の新設・滑走路延長等の整備に当たっては、まず精度の高い需要予測を実施した上で、これに基づく費用と事業効果の評価を適切に実施することが重要であり、地方空港の利用が効率的かつ有効に行われていくことが肝要である。
 本院としては、今後とも地方空港の整備及び運営について注視していくこととする。