ページトップ
  • 平成12年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第8 厚生労働省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

国立病院等における医師会費の国費負担を適切なものにするよう改善させたもの


(3)国立病院等における医師会費の国費負担を適切なものにするよう改善させたもの

会計名及び科目 国立病院特別会計 (病院勘定)  (項)病院経営費
(療養所勘定)  (項)療養所経営費
部局等の名称 国立函館病院ほか101国立病院等
医師会費の概要 医師会に対し経費の一部として会員が納入する会費
医師会費等の支払額 4990万余円 (平成11、12両年度)
支払う必要のなかった医師会費等の額 1691万円 (平成11、12両年度)

1 医師会費の概要

(医師会及びその会費)

 医師会は、医道の高揚、医学及び医術の発達並びに公衆衛生の向上を図り、もって社会福祉を増進することなどを目的に、全国あるいは都道府県、郡市の区域等を単位に設立され、医師が会員となって組織している団体である。医師はすべて医師会に入会する資格があるが、入会するか否かについては医師個人の判断に任されている。そして、医師会に入会した場合は、原則として医師会所定の会費等(以下「医師会費」という。)を納入する必要がある。

(国費による医師会費の支払)

 厚生労働省(平成13年1月5日以前は厚生省)では国立病院、国立療養所及び国立高度専門医療センター(以下、これらを「国立病院等」という。)を設置し、医療等を行うために医師を配置している。そして、同省では、国立病院等の施設の運営上、医師会への入会が必要な場合は、医師会費を国費によって支払うことができる取扱いとしている。これは、国立病院等の機能を発揮する上で、地域の医療機関との連携や情報交換の円滑化を図ることが必要な場合があるとの認識によるもので、医師会への入会は個人であることから、国立病院等の長の入会について国費で負担することとしている。

2 検査の結果

(検査の着眼点及び対象)

 11、12両年度に医師会費の支払実績のある国立札幌病院ほか169国立病院等(支払総額6912万余円)を対象とし、国費による医師会費の支払がその取扱いの趣旨に沿って適切なものとなっているかに着眼して検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、国立函館病院ほか101国立病院等の医師会費等の支払(支払総額4990万余円)のうち1691万余円について、次のような事態が見受けられた。

(1)国立病院等を代表する者以外の者について医師会費を国費で支払っていたもの

国立弘前病院ほか40国立病院等(支払額983万余円)

 上記の国立病院等では、国立病院等を代表する者のほかに、副院長や診療科医長等について医師会費を支払っていた。

(2)医師会費以外の経費を国費で医師会等に支払っていたもの

国立函館病院ほか83国立病院等(支払額708万余円)

 上記の国立病院等では、医師個人の医療行為を保険の対象として医師会が取り扱っている医師賠償責任保険の保険料(以下「医賠責保険料」という。)や医師会以外の団体の会費を支払っていた。

((1)と(2)は重複している国立病院等がある。)

 上記(1)については、代表者の医師会費を国費負担とする前記の取扱いの趣旨に沿っているとは認められず、また、(2)については、個人負担とするべき費用と認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、国立病院等において、医師会費等の支払に当たって国費負担が適切な経費であるかの確認を怠ったことにもよるが、厚生労働省において、国立病院等における医師会費の国費負担に関し明確な指示をすることなく、国立病院等の裁量に任せていたことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、厚生労働省では、13年10月に、国立病院等に対して通知を発し、医師会費の支払について、施設運営上必要とする場合は代表者の医師会費に限り国費で支払うことができること、医賠責保険料等は国費負担の対象とはならないことなどを明確に示し、医師会費の支払が適切に行われるよう周知徹底を図る処置を講じた。