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  • 平成12年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第11 国土交通省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

岸壁等の築造工事における基礎部の設計を経済的なものとするよう改善させたもの


(4)岸壁等の築造工事における基礎部の設計を経済的なものとするよう改善させたもの

会計名及び科目 港湾整備特別会計(港湾整備勘定)  (項)港湾事業費
 (項)離島港湾事業費
 (項)沖縄港湾事業費
部局等の名称 近畿、中国、四国各地方整備局、内閣府沖縄総合事務局(平成13年1月5日以前は運輸省第三港湾建設局、沖縄開発庁沖縄総合事務局)
補助の根拠 港湾法(昭和25年法律第218号)、離島振興法(昭和28年法律第72号)、沖縄振興開発特別措置法(昭和46年法律第131号)
補助事業者
(事業主体)
府1、県2、市1、管理組合1、計5事業主体
補助事業 大阪府深日港ほか9港の港湾整備事業
補助事業の概要 港湾整備事業の一環として、岸壁及び物揚場を築造するため、その基礎部を施工するもの
事業費 21億6040万余円 (平成11、12両年度)
上記に対する国庫補助金交付額 15億5688万余円
基礎捨石及び被覆石に係る工事費 3億9989万余円 (平成11、12両年度)
節減できた工事費 1億1480万円 (平成11、12両年度)
上記に対する国庫補助金相当額 8860万円

1 補助事業の概要

(岸壁等の基礎部の工事の概要)

 国土交通省では、港湾施設の整備を推進するため、地方公共団体等の港湾管理者(以下「事業主体」という。)が行う国庫補助事業として、港湾整備事業を毎年度多数実施している。
 港湾整備事業の一環として、大阪府ほか4事業主体(注) では、平成11、12両年度に、深日港ほか9港において、深日港多奈川地区−2m物揚場等工事その2工事ほか16工事を、工事費総額21億6040万余円(国庫補助金15億5688万余円)で施行している。
 上記の各工事は、岸壁及び物揚場(以下「岸壁等」という。)を築造するため、ケーソン等を据え付けるための基礎部として、捨石により基礎マウンドを築造した後、その表面を所定の精度に均し、さらに、その上部に被覆材として捨石を設置してその表面を同様に均すなどするものである(以下、基礎マウンドに使用する捨石を「基礎捨石」、被覆材に使用する捨石を「被覆石」という。)(参考図参照)

(岸壁等の基礎部の設計)

 各事業主体では、岸壁等の港湾施設の設計に当たっては、「港湾の施設の技術上の基準・同解説」(運輸省港湾局監修。以下「技術基準・同解説」という。)に従って行っている。そして、技術基準・同解説において、防波堤を設計する際は港内の静穏度、風、波等を考慮するとされていることなどから、本件工事で築造する岸壁等も波の影響を受け基礎マウンドの基礎捨石が散乱するおそれがあるとして、基礎部を次のように設計していた。
(ア)各事業主体が定めた規格のうち最低重量の規格(5〜200kg/個など)の基礎捨石で基礎マウンドを築造する。
(イ)基礎マウンドの上部に基礎捨石より1規格程度重い規格(200kg/個又は200〜400kg/個)の被覆石を設置する。
 これにより、基礎捨石及び被覆石に係る工事費を計3億9989万余円と算定していた。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 岸壁等の港湾整備事業は毎年度継続的に多数実施されており、これに係る基礎部の工事費も多額に上っていることから、岸壁等の基礎部の設計が経済的なものとなっているかという点に着眼して検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、次のことから、本件工事では、基礎マウンドの上部に被覆石を設置する要はないと認められた。
(ア)岸壁等は、防波堤等により静穏度が確保された港内にあるため、波の影響が少なく、基礎捨石が散乱するおそれがないこと
(イ)技術基準・同解説において、防波堤の設計については波力を考慮し被覆石の必要重量を算定することとなっているが、岸壁等の設計についてはそのような規定はないこと
(ウ)技術基準・同解説において、河川の流入部のような流れやフェリー等プロペラなどにより基礎部が洗掘されるおそれがある場合は、被覆石等を設置することとされているものの、本件工事で築造する岸壁等はいずれもこのような場合に該当しないこと
 したがって、本件各工事については、被覆石を設置しないこととして経済的な設計を行う要があると認められた。
 現に、他の事業主体においては、静穏度が確保された港内にある岸壁等の基礎部について、被覆石を設置しないこととして設計している状況であった。

(節減できた工事費)

 上記により、本件各工事において、被覆石を設置しない設計とすれば、前記17工事の基礎捨石及び被覆石に係る工事費3億9989万余円は2億8508万余円となり、約1億1480万円(国庫補助金相当額約8860万円)を節減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、各事業主体において、岸壁等の基礎部について、現場条件に応じて被覆石を設置しない経済的な設計とすることについての認識が十分でなかったことにもよるが、国土交通省において、被覆石を設置しない設計とすることについて明確にしていなかったことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、国土交通省では、13年10月に文書を発し、岸壁等の基礎部については、洗掘されるおそれのある場合を除いて、被覆石を設置しない経済的な設計とするよう事業主体を指導する処置を講じた。

大阪府ほか4事業主体 大阪府、愛媛、沖縄両県、石垣市、境港管理組合

(参考図)

大阪府ほか4事業主体大阪府、愛媛、沖縄両県、石垣市、境港管理組合