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  • 平成13年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

特定求職者雇用開発助成金と中小企業雇用創出人材確保助成金との併給調整について事務処理の適正化を図るよう是正改善の処置を要求したもの


(1) 特定求職者雇用開発助成金と中小企業雇用創出人材確保助成金との併給調整について事務処理の適正化を図るよう是正改善の処置を要求したもの

会計名及び科目 労働保険特別会計(雇用勘定) (項)雇用安定等事業費
部局等の名称 青森労働局ほか17労働局
支給の根拠 雇用保険法(昭和49年法律第116号)
特定求職者雇用開発助成金の内容 高年齢者など就職が特に困難な者を雇い入れた事業主に対し、賃金の一部を助成するもの
調査した事業主数 267事業主
上記に対する特定求職者雇用開発助成金の支給額 4億6648万余円 (平成12年度〜14年度)
中小企業雇用創出人材確保助成金が併給されていた事業主数 26事業主  
上記に対する特定求職者雇用開発助成金の不適正支給額 4210万円 (平成12年度〜14年度)

【是正改普の処置要求の全文】

 特定求職者雇用開発助成金と中小企業雇用創出人材確保助成金との併給調整について

(平成14年11月14日付け 厚生労働大臣あて)

 標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を要求する。

1 制度の概要

(特定求職者雇用開発助成金)

 貴省では、雇用保険法(昭和49年法律第116号)に基づき、雇用安定事業の一環として、高年齢者及び障害者など就職が特に困難な者(以下「特定求職者」という。)の雇用機会の増大を図るため、都道府県労働局(以下「労働局」という。)において、特定求職者を雇い入れた事業主に対し、特定求職者に支払った賃金の一部を助成する特定求職者雇用開発助成金(以下「特開金」という。)を支給している。
 特開金の支給を受けようとする事業主は、特定求職者の雇入れ日(賃金締切日が定められている場合は、雇入れ日の直後の賃金締切日の翌日。以下同じ。)から最初の6箇月を第1期、次の6箇月を第2期(重度の身体障害者等については、更に次の6箇月を第3期)とする各期の末日の翌日から1箇月以内に、公共職業安定所に対し、特定求職者の氏名、生年月日、雇入れ年月日、支払賃金額、中小企業雇用創出人材確保助成金(以下「雇用創出助成金」という。)等の受給の有無等を記載した支給申請書及び申請に必要な添付書類を提出することとなっている。
 そして、公共職業安定所は、支給申請書等の記載内容を確認の上、支給要件に適合しているかなどについて審査して支給を決定し、これに基づいて労働局が特開金を支給することとなっている。なお、平成13年10月に制度の見直しが行われ、同年10月以降、公共職業安定所の審査を経た支給申請書等の記載内容等について更に労働局において審査することとした上、支給決定については労働局が行うこととしている。
 13年度における特開金の支給者数は延べ約18万人、支給実績額は659億余円に上っている。

(中小企業雇用創出人材確保助成金)

 貴省が所管している雇用・能力開発機構(以下「機構」という。)では、「中小企業における労働力の確保及び良好な雇用の機会の創出のための雇用管理の改善の促進に関する法律」(平成3年法律第57号)に基づき、雇用安定事業の一環として、中小企業における労働力の確保及び良好な雇用の機会の創出を図るため、機構の都道府県センター(以下「センター」という。)において、中小企業者で新たな事業分野への進出又は事業の開始(以下「新分野進出等」という。)に係る改善計画について都道府県知事から認定を受け、新分野進出等に必要となる労働者(以下「対象労働者」という。)を新たに雇い入れた事業主に対し、対象労働者に支払った賃金の一部を助成する雇用創出助成金を支給している。
 雇用創出助成金の支給を受けようとする事業主は、対象労働者の雇入れ日から最初の6箇月を第1期、次の6箇月を第2期とする各期の末日の翌日から1箇月以内に、センターに対し、新分野進出等に伴う事業の用に供するための施設又は設備等の確定した内容及び費用の額、対象労働者の氏名、雇入れ年月日等を記載した支給申請書及び申請に必要な添付書類を提出することとなっている。
 そして、センターは、支給申請書等の記載内容を確認の上、支給要件に適合しているかなどについて審査して支給を決定し、これに基づいて雇用創出助成金を支給することとなっている。
 13年度における雇用創出助成金の支給者数は延べ約13万人、支給実績額は981億余円に上っている。

(両助成金の併給調整)

 特開金及び雇用創出助成金は、賃金の一部をそれぞれ助成するものであることから、特定求職者に該当し、かつ、対象労働者にも該当する労働者(以下「両助成該当労働者」という。)に対して、特開金と雇用創出助成金を併給することはできないこととなっている。なお、13年9月までに両助成該当労働者を雇い入れた事業主に対しては、原則として、雇用創出助成金が支給され、特開金は支給されないこととなっていたが、雇用保険制度の整理合理化の一環として雇用創出助成金の助成率が引き下げられるなど、両助成金の制度の見直し(注1) に伴い、同年10月以降に両助成該当労働者を雇い入れた事業主に対しては、特開金が支給され、雇用創出助成金は支給されないこととなった。

2 本院の検査結果

(検査の着眼点)

 特開金及び雇用創出助成金は、雇用安定事業の一環として、雇用の創出を図る上で重要な助成金であり、その支給額も多額に上っている。そこで、前記のとおり、両助成該当労働者に対して、特開金と雇用創出助成金とは併給できないこととなっていること及び特開金と雇用創出助成金の支給決定機関が異なっていることから併給調整が適正に行われているかに着眼して検査した。

(検査の対象及び方法)

 検査に当たっては、北海道労働局ほか26労働局(注2) において、13年9月までに特定求職者を雇い入れ特開金を受給している事業主で、かつ、雇用創出助成金を受給している267事業主(支給した特開金4億6648万余円)を対象に、両助成金に係るそれぞれの支給申請書等の書類を突合するなどして検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、青森労働局ほか17労働局(注3) において、26事業主が雇い入れた両助成該当労働者39人について特開金4210万余円が雇用創出助成金と併給されており、不適正な支給と認められる。
 上記の事態について、その一例を示すと次のとおりである。

<事例>

 不動産業を営んでいるA事業主は、B公共職業安定所の紹介により平成12年9月に6人の労働者を新たに雇い入れ、このうち、4人は特定求職者に該当するとして、B公共職業安定所に対し特開金の支給申請書等を提出し、13年4月に第1期分として2,165,125円、同年10月に第2期分として2,151,998円、計4,317,123円の支給申請を行っていた。そして、B公共職業安定所では、支給申請書に雇用創出助成金等を受給していない旨の申告がなされていたために、A事業主に対して雇用創出助成金の申請の有無について十分確認することなく支給決定を行い、C労働局ではこれに基づき同額を支給していた。
 一方、A事業主は、12年4月に新たな事業分野への進出である清涼飲料水の製造・販売業を創業し、同年9月に新たに6人の労働者を雇い入れ、このうち5人は対象労働者に該当するとして、Dセンターに対し雇用創出助成金の支給申請書等を提出し、13年4月に第1期分として4,722,750円、同年10月に第2期分として4,740,000円、計9,462,750円の支給申請を行い、Dセンターではこれに基づき同額を支給していた。
 しかし、A事業主から提出された特開金と雇用創出助成金の支給申請書等によれば、A事業主が雇い入れた者のうち3人は両助成該当労働者であるのに、当該3人に係る特開金3,640,000円と雇用創出助成金5,940,000円が併給されていた。

(是正改善を必要とする事態)

 前記のように、両助成該当労働者を雇い入れた事業主に対して、特開金と雇用創出助成金とは併給できないこととなっているのに、両助成金が併給されている事態は適切とは認められない。
 両助成金の制度の見直しが行われた13年10月以降に両助成該当労働者を雇い入れた事業主に対しては、特開金が支給され、雇用創出助成金は支給されないこととなったが、特開金と雇用創出助成金の支給は今後も引き続き実施されていくものであり、また、今後とも同種併給の事態が発生するおそれがあることから、早急に是正改善を図る必要があると認められる。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、事業主が誠実でないことなどにもよるが、主として次のことによると認められる。
(ア) 労働局の下に設置されている公共職業安定所と貴省が所管している機構のセンターとの間において、相互に連絡調整する体制が整備されていないなどのため、併給について審査・確認が十分でないこと
(イ) 貴省において、特開金と雇用創出助成金との併給調整について、労働局及び機構に対する指導が十分でないこと

3 本院が要求する是正改善の処置

 完全失業率が5%を上回るなど厳しい雇用情勢が続く中、雇用安定事業の一環として雇用の創出等を図る特開金及び雇用創出助成金の役割は重要なものとなっている。
 ついては、貴省において、前記のような不適正な支給を防止するため、事業主に対し制度の周知徹底を図るとともに、支給の適正化を図るため次のような処置を講ずる要があると認められる。
(ア) 労働局とセンターとの間において、併給について相互に連絡調整する体制を整備することなどにより併給について審査・確認を徹底させること
(イ) 特開金と雇用創出助成金との併給調整について、労働局及び機構に対して十分指導すること

 制度の見直し(中小企業事業主に対する助成率等の主な改正点)


特定求職者雇用開発助成金 雇入れ年月日 10年6月18日〜13年9月30日 13年10月1日以降
特定求職者 助成率 支給期間 助成率 支給期間
55歳以上65歳未満の者
1/3
1年 60歳以上65歳未満の者
1/3
1年
45歳以上55歳未満の者等
1/4
45歳以上60歳未満の者
1/3
6箇月
重度の身体障害者等
1/2
1年6箇月 重度の身体障害者等
1/2
1年6箇月
中小企業雇用創出人材確保助成金 雇入れ年月日 11年1月1日〜
12年9月30日
12年10月1日〜
13年9月30日
13年10月1日以降
対象労働者 助成率 支給期間 助成率 支給期間 助成率等 支給期間
1/2 1年 1/3 1年 1/4又は40万円 6箇月
公共職業訓練修了者
1/2

(注2) 北海道労働局ほか26労働局 北海道、青森、宮城、山形、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、石川、静岡、愛知、京都、大阪、兵庫、和歌山、島根、山口、香川、高知、福岡、佐賀、熊本、鹿児島、沖縄各労働局
(注3) 青森労働局ほか17労働局 青森、宮城、茨城、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、京都、大阪、兵庫、和歌山、島根、山口、香川、佐賀、鹿児島各労働局