会計名及び科目 | 国有林野事業特別会計(国有林野事業勘定) | ||
(款)国有林野事業収入 (項)林野等売払代 | |||
部局等の名称 | 北海道森林管理局ほか8森林管理(分)局(平成11年2月28日以前は北海道営林局ほか8営林(支)局) | ||
所管換及び使用承認の根拠 | 国有財産法(昭和23年法律第73号) | ||
所管換及び使用承認の概要 | 国有林野を一般国道の道路敷として使用させる場合、有償により所管を移し、又は所管を移すまでの間、有償若しくは無償による使用を承認するもの | ||
(1) | 有償所管換がされていない国有林野の使用承認面積及び財産価額 | 558万m2 29億5550万円 | |
国有林野の財産価額が政令で定める金額以上の路線に係るもの | |||
(2) | 同 | 624万m2 10億1368万円 | |
国有林野の財産価額が政令で定める金額に達しない路線に係るもの |
(平成15年11月19日付け 林野庁長官あて)
標記について、下記のとおり、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を要求し、及び同法第36条の規定により改善の処置を要求する。
記
1 国有財産法に基づく国有林野等の行政財産の管理
貴庁では、国有財産法(昭和23年法律第73号。以下「法」という。)に基づき、国有林野事業特別会計所属の行政財産(企業用財産)である国有林野(以下「国有林野」という。)について所管換(他省庁との間において国有財産の所管を移すことをいう。以下同じ。)をしたり、使用承認(他省庁に対し国有財産の使用を承認することをいう。以下同じ。)をしたりするなどの管理を行っている。そして、貴庁では、国有林野を国道(道路法(昭和27年法律第180号)に基づく一般国道をいう。以下同じ。)の道路敷として使用させる場合には、国道の管理を道路整備特別会計において行う国土交通省(平成13年1月5日以前は建設省)に対して、原則として所管換をすることとしている。これは、法第5条の規定により、各省各庁はその所管に属する行政財産を管理しなければならないこととされていることから、国道の道路敷として使用される国有林野については、国土交通省においてその行政目的の遂行に必要な行政財産としての管理が行われるよう、同省に所管を移すこととしていることによる。また、同省の事務又は事業の遂行上、所管換の手続前に、又は臨時に一定期間に限って国有林野を使用させる必要がある場合には使用承認をすることとしている。
そして、所管換は、森林管理署(11年2月28日以前は営林署。支署及び森林管理事務所を含む。以下同じ。)が所管換を受けようとする部局等から所管換の協議を受け、森林管理局(11年2月28日以前は営林局。分局を含む。以下同じ。)がこれを行うこととなっている。また、使用承認は、使用しようとする部局等から申請書を提出させ、森林管理署がこれを行うこととなっている。
異なる会計間において所管換又は使用承認をする場合には、法第15条及び国有財産法施行令(昭和23年政令第246号)第12条の規定により、財産価額が3000万円以上のものは、有償によることとなっている。また、財産価額が3000万円に達しないものについては、その取扱いによって会計の独立性に影響を及ぼすことがないよう、法第15条ただし書の規定等により、所管換又は使用承認を有償とするか、無償とするかについて、それぞれの会計の長が決定することとなっている。そして、貴庁では、上記の財産価額については、国道を管理する部局等である国土交通省の地方整備局(13年1月5日以前は建設省地方建設局)若しくは北海道開発局開発建設部(13年1月5日以前は総理府北海道開発庁北海道開発局開発建設部)又は都道府県が管轄する区域の路線ごとに評価を行うこととしている。
国道の新設、改築、維持、修繕その他の管理(災害復旧を除く。)は、道路法に基づき、政令で指定する区間(以下「指定区間」という。)内については国土交通大臣、指定区間外については都道府県(ただし、指定区間外の国道の新設又は改築を国土交通大臣が行う場合は、国土交通大臣。以下、これらを「道路管理者」という。)が行うこととなっている。
そして、国道の管理に関する費用は、道路法及び「道路整備費の財源等の特例に関する法律」(昭和33年法律第34号)に基づき、おおむね次表のとおり、国及び都道府県が負担することとされている。
区分 | 費用負担割合 | |
新設 | 国土交通大臣施行 | 国 2/3、都府県 1/3 |
都府県施行 | 国 1/2、都府県 1/2 | |
改築 | 国土交通大臣施行 | 国 2/3、都府県 1/3 |
都府県施行 | 国 5.5/10、都府県 4.5/10 | |
維持、修繕その他の管理 | 指定区間内 | 国 5.5/10、都府県 4.5/10 |
指定区間外 | 都府県 全額(修繕については国が1/2以内を補助) |
国道の管理に関する費用の財源については、国においては、揮発油税の収入に相当する額の一般会計からの繰入金等を充てることとされ、また、都道府県においては、地方税法(昭和25年法律第226号)等に基づき、軽油引取税の収入に相当する額等を充てることとされている。そして、国有林野の有償による所管換又は使用に要する費用の財源についても、国及び都道府県がそれぞれこれらの財源を充てることとされている。
貴庁では、指定区間外の国道の道路敷として使用させている国有林野については、従前に都道府県道であって無償により貸し付け(注1)
ていたものについて、国道への編入後も所管換をすることなく引き続き都道府県に対し無償により使用承認をしたりなどしてきている。また、指定区間内の国道の道路敷として使用させている国有林野についても、当初の使用承認以降所管換をすることなく引き続き地方整備局等に対し無償により使用承認をしたりなどしてきている。
一方、貴庁では、昭和50年代以降国有林野事業の経営状況が厳しさを増したため、国有林野事業改善特別措置法(昭和53年法律第88号)に基づき、国有林野事業の収支の均衡を回復するなど、その経営の健全性を確立することを目標とする「国有林野事業の改善に関する計画」を53年に策定している。
このような状況の中で、国有林野を国道の道路敷として所管換をする場合に財産価額が3000万円に達しないものを無償として取り扱うことは国有林野事業特別会計の独立性に影響を及ぼすこととなるなどとして、貴庁では、53年及び61年に建設省と協議し、次のとおり取り扱うこととしている。
〔1〕 53年度以降に工事が完了する国道の道路敷については、財産価額が3000万円に達しない国有林野であっても有償により所管換をする(53年における協議)。
〔2〕 52年度以前に工事が完了している国道の道路敷については、財産価額が3000万円以上の国有林野について有償により所管換をする(61年における協議)。
しかし、その後も所管換が進ちょくしなかったことから、貴庁では、平成9年に、使用承認をしているすべての国道の道路敷について財産価額の調査を行い、昭和53年及び61年の協議において、原則として有償により所管換をすることとした従前の取扱いを同省との間で確認している。
そして、貴庁では、この調査の結果を踏まえ、財産価額が3000万円以上の36路線に係る国有林野約745万m2
及び財産価額が3000万円に達しない183路線に係る国有林野約977万m2
について、早期に有償により所管換をすることとし、所管換までの間は有償による使用承認とすることとしている。ただし、52年度以前に工事が完了している国道の道路敷であって財産価額が3000万円に達しない国有林野(以下「協議未了の国有林野」という。)については、有償により所管換をするよう引き続き協議することとしている。
2 本院の検査結果
貴庁においては、「国有林野事業の改革のための特別措置法」(平成10年法律第134号)の規定により国有林野事業の財務の健全化に取り組んでいるところであり、また、上記のとおり、国有林野の所管換及び使用承認に当たっては、国有林野事業特別会計の独立性に影響を及ぼすことがないよう取り扱うこととしている。
そこで、国道の道路敷となっている国有林野の所管換及び使用承認の取扱いについて、法の規定に基づき適切に所管換等がされているか、また、所管換等をする場合には、道路管理者と十分協議し、有償によることとして、前記の財源により道路管理者に所管換等の費用を負担させて収入を確保し、同会計の独立性に影響を及ぼすことがないよう取り扱われているかに着眼して検査した。
上記の財産価額が3000万円以上の36路線のうち北海道森林管理局ほか4管理局(注2) 管内の28路線に係る国有林野約608万m2 の所管換の状況、及び上記の財産価額が3000万円に達しない183路線のうち北海道森林管理局ほか8管理局(注3) 管内の149路線に係る国有林野約654万m2 の所管換の状況等について検査した。
検査したところ、次のとおり、国有林野について有償による所管換がされていなかったり、無償のまま使用承認が継続されていたりしている事態が見受けられた。
(1) 国有林野の財産価額が3000万円以上の路線について
森林管理署では、平成9年9月当時前記28路線の約608万m2
について使用承認をしていた。そして、同年同月から15年3月までの間に有償による所管換がされていたのは約94万m2
のみで、残りの面積に新たに使用承認をした面積を加えた約558万m2
(財産価額29億5550万余円)については有償による所管換がされていなかった。
この約558万m2
については、所管換がされるまでの間、少なくとも有償による使用承認とすべきであるが、使用承認を有償としていたものは約144万m2
のみで、残りの約414万m2
(14年度末の使用承認面積の約74%)については無償のまま使用承認を継続していた(仮に使用承認を有償に切り替えたとすれば年間の使用料収入は約7100万円となる。)。
(2) 国有林野の財産価額が3000万円に達しない路線について
森林管理署では、9年9月当時前記149路線の約654万m2
について使用承認をしていた。そして、同年同月から15年3月までの間に有償による所管換がされていたのは約202万m2
のみで、残りの面積に新たに使用承認をした面積を加えた約624万m2
(財産価額10億1368万余円)については有償による所管換がされていなかった。
この約624万m2
については、所管換がされるまでの間、少なくとも有償による使用承認とすべきであるが、使用承認を有償としていたものは約191万m2
のみで、残りの約433万m2
(14年度末の使用承認面積の約69%)については無償のまま使用承認を継続していた(仮に使用承認を有償に切り替えたとすれば年間の使用料収入は約4060万円となる。)。
国道の道路敷として使用承認している国有林野については、恒久的に国土交通省の行政目的である道路の用に供されることが見込まれることから、同省において行政財産としての管理が行われるよう所管換をすることとしている。
しかし、上記(1)のとおり、国有林野の財産価額が3000万円以上の路線について、有償による所管換がされておらず無償のまま使用承認が継続されているなど、法の規定に基づいた適正な国有林野の管理が行われていない事態は適切でなく、是正改善の必要があると認められる。
また、上記(2)のとおり、国有林野の財産価額が3000万円に達しない路線について、前記の財源により費用を負担させて有償による所管換がされておらず無償のまま使用承認が継続されているなど、国有林野事業特別会計の独立性に影響を及ぼしている事態は適切でなく、改善の必要があると認められる。
このような事態が生じているのは、次のことなどによると認められる。
(ア) 森林管理局及び森林管理署において、法の規定に関する認識が十分でなく、所管換までの期間中の使用承認の更新の際、使用承認を有償へ切り替える取扱いが十分徹底されていなかったこと
(イ) 使用承認をしている路線に関係する森林管理局と地方整備局(北海道開発局を含む。)との間及び森林管理署と道路管理者との間において、計画的な所管換をするための定期的な連絡調整を行う場が設けられていなかったこと
3 本院が要求する是正改善及び改善の処置
国有林野事業は、その危機的な財務状況に対処して、財政の健全性を回復し、国有林野を将来にわたって適切かつ効率的に管理経営する体制を確立することが求められている。
貴庁では、本院の検査の進行に伴い、国道の道路敷として使用承認をしている国有林野の取扱いについて、国土交通省と協議している。そして、本院が前記の事態について改善を図る要があるとして15年10月に質問を発したところ、貴庁では、これを受けて、協議未了の国有林野についても有償により所管換をすることを決定し、これを含めてすべて早期に有償により所管換をすることとしている。また、森林管理署及び道路管理者間の定期的な連絡調整の場において、所管換に係る年次計画の策定等の措置を講ずることで同省と合意している。そして、同年11月6日付けで通知を発し、森林管理局において有償による所管換を計画的に推進し、併せて森林管理署において無償による使用承認の早期解消を推進するよう周知徹底を図ることとしている。
ついては、貴庁において、前記の事態について、森林管理局及び森林管理署に対し、法の規定に基づく取扱いの徹底を図るとともに、国土交通省との合意に基づき早期に体制を整備し、更に次のような処置を講じて、有償による所管換の推進及び無償による使用承認の早期解消を図る必要があると認められる。
(ア) 前記(1)の事態については、森林管理署において、現に国道の道路敷として使用承認をしている国有林野であって財産価額が3000万円以上のものについて、道路管理者と引き続き協議して、法の規定により早期に有償により所管換をするよう年次計画を策定すること(会計検査院法第34条による是正改善の処置要求)
(イ) 前記(2)の事態については、森林管理署において、現に国道の道路敷として使用承認をしている国有林野であって財産価額が3000万円に達しないものについて、道路管理者と引き続き協議して、国有林野事業特別会計の独立性に影響を及ぼすことなく早期に有償により所管換をするよう年次計画を策定すること(同法第36条による改善の処置要求)
(注1) | 無償により貸し付け 「国有林野の管理経営に関する法律」(昭和26年法律第246号)第8条の2第1項の規定により国有林野を道路の用に供するため地方公共団体に対し無償により貸し付けることができることとなっている。 |
(注2) | 北海道森林管理局ほか4管理局 北海道、関東及び九州各森林管理局並びに函館及び青森両分局 |
(注3) | 北海道森林管理局ほか8管理局 北海道、関東、近畿中国、四国、九州各森林管理局及び北見、函館、青森、名古屋各分局 |