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物品の管理が適切なものとなるよう是正改善の処置を要求したもの


物品の管理が適切なものとなるよう是正改善の処置を要求したもの

科目 有形固定資産
部局等の名称 理化学研究所(平成15年10月1日以降は独立行政法人理化学研究所)和光本所、筑波、播磨、神戸各研究所
物品の概要 研究等の用に供するために所有する物品のうち固定資産として分類されている機械・装置及び工具・器具・備品
固定資産台帳に登載されている物品 47,933件 470億6872万余円 (平成14事業年度末)
上記のうち適切に管理されていなかった物品 2,189件 8億9162万円  

【是正改善の処置要求の全文】

  物品の管理について

(平成15年11月19日付け 独立行政法人理化学研究所理事長あて)

 標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を要求する。

1 物品管理の概要

(理化学研究所の物品)

 貴研究所は、独立行政法人理化学研究所法(平成14年法律第160号)に基づいて、平成15年10月1日に理化学研究所(以下「旧研究所」という。)から一切の権利及び義務を承継して設立され、研究成果を広く社会に普及することを目的として、物理学、工学、化学、生物学、医科学などの分野で、基礎から応用まで幅広く研究を行っている。そして、科学技術基本法(平成7年法律第130号)に基づく科学技術基本計画(第1期平成8年7月閣議決定、第2期平成13年3月閣議決定)の策定を受けて、ライフサイエンス、ナノテクノロジー等の研究分野に重点的に研究資源が配分されているため、これらの分野の研究を行っている貴研究所の事業費は、9事業年度446億余円から14事業年度812億余円へと増加してきており、組織も播磨研究所、横浜研究所及び神戸研究所を開設するなど拡大してきている。
 また、組織の拡大に伴い、研究等の用に供するために所有する物品のうち耐用年数が1年以上で取得価額が20万円以上であることから固定資産として分類されている機械・装置及び工具・器具・備品の件数及び簿価は、9事業年度末現在31,689件、435億余円から14事業年度末現在55,516件、568億余円と増加してきている。

(研究室等の改廃)

 貴研究所は、埼玉県和光市に所在し、主として法人の管理を行う本所(以下「新和光本所」という。)及び和光、筑波、播磨、横浜、神戸の5研究所から構成されており、各研究所の下に各研究室等が組織されている。このうち、新和光本所及び和光研究所は、旧研究所においては和光本所として単一の組織とされていたものが、貴研究所の設立に当たり、別組織に改組されたものである。
 そして、研究室等には、期間を区切って機動的に先端的基礎研究を行うなどのため一定期間しか存続しないものや、組織の拡大に伴い新設されたり、新設された研究室等へ研究内容が引き継がれて廃止されたものなどがある。

(物品管理の制度)

 旧研究所における財務及び会計に関しては、旧理化学研究所法(昭和33年法律第80号)等の法令及び「理化学研究所の会計規程の基本的事項」(平成12年3月科学技術庁長官承認)等の規程に基づき、必要な帳簿を備えて財務及び会計に関する増減異動を的確に記録することとなっている。
 そして、物品の取得、使用、保管及び処分(以下「管理」という。)については、理化学研究所の会計規程の基本的事項及び会計規程(平成12年規程第4号)の定めるところによるほか、物品の有効利用等適正かつ効率的な管理を図ることを目的として12年9月に和光本所経理部が制定した物品管理事務取扱要領(平成12年達第42号、以下「要領」という。)の定めるところにより行うこととされている。そして、要領により、和光本所経理部長(以下「経理部長」という。)は、物品の管理の適正を期するため、その管理に関する事務を総括し、固定資産台帳を備えて、旧研究所全体の物品の増減額、現在額等を明らかにし、物品の管理について必要な調整をすることとなっている。また、物品管理役である経理部長及び各研究所の研究推進部長等は、物品管理簿を備えて、その研究所等に属する物品の管理を行うこととなっている。さらに、物品使用責任者である各課長、室長、チームリーダー等は、物品使用簿を備えて、所属組織の物品について、その使用者を指定するなどの管理を行うこととなっている。
 貴研究所における物品管理についても、独立行政法人理化学研究所会計規程(平成15年規程第62号)及び物品管理事務取扱細則(平成15年細則第80号)において、旧研究所の規定とほぼ同様の規定が定められており、経理部長は物品の管理に関する事務を統括し、物品の増減額及び現在額を明らかにすることとなっている。

(物品管理の事務の流れ)

 旧研究所における物品管理の事務の主なものは次のとおりである。

(1)使用

〔1〕 物品管理役は、契約担当役等から引渡しを受けた物品(固定資産に分類したものに限る。以下同じ。)を物品使用責任者に引渡す場合において、経理部長に通知するとともに、物品管理簿に記載する。
〔2〕 経理部長は、上記の通知を受けたときは、遅滞なく固定資産台帳に登載する。
〔3〕 物品使用責任者は、物品管理役から物品の引渡しを受けた場合において、物品使用簿に記載するとともに、物品の使用者を指定し、設置場所が決定したときは、物品管理役に通知する。

(2)処分

〔1〕 物品使用責任者は、所管する物品が不用となった場合には、不用物品撒去申請書(以下「撤去申請書」という。)により物品管理役に通知する。
〔2〕 物品管理役は、移管等により有効利用が図れない物品については、経理部長の承認を得て不用の決定をすることができる。ただし、物品の耐用年数が満了し、残存価格が150万円未満のものについては、承認があったものとして不用決定し、物品使用責任者に返納を命じるとともに、撤去申請書により経理部長に通知する。そして、不用決定した物品のうち譲渡することが不適当であると認めるもの及び譲渡又は売払いできないものは、廃棄することができる。
〔3〕 経理部長は、〔2〕の不用決定の承認をし、又は通知を受けたときは、当該物品について、速やかに固定資産台帳から除却の処理をしなければならない。

(償却資産に対する固定資産税)

 貴研究所が所有している機械・装置等の物品には、地方税法(昭和25年法律第226号)に基づいて、市町村長等が決定した毎年1月1日(以下「賦課期日」という。)現在の価格に応じ、固定資産税が課税されている。
 そして、貴研究所では、毎年賦課期日における償却資産について、その所在、種類、数量、取得時期、取得価額、耐用年数その他償却資産の価格の決定に必要な事項をその償却資産の所在地の市町村長等に申告(以下、この申告を「償却資産の申告」という。)している。

2 本院の検査結果

(検査の着眼点)

 前記のとおり、近年、貴研究所の研究分野に対して、重点的に研究資源が配分されているため、貴研究所の事業費は著しく増加している。そして、これらの研究の用に供するため、貴研究所が所有している機械・装置等の物品の件数及び簿価も増加していること、15年10月1日に貴研究所が独立行政法人となり、機械・装置等の資産を適正に承継することが必要とされていることなどから、本院では昨年次からこれら物品の管理が適切に行われているかに着眼して検査しており、本年次も引き続き同様の着眼点から検査した。

(検査の対象)

 貴研究所のうち和光本所、筑波、播磨、神戸の各研究所において、帳簿の整備状況について検査するとともに、14事業年度末現在固定資産台帳に登載されている物品47,933件、14事業年度末簿価470億6872万余円及び14事業年度中に除却した物品4,841件、除却時の簿価3億3673万余円を対象として検査した。

(検査の結果)

(1)帳簿の整備状況

ア 物品管理簿について

 本院が貴研究所の物品の管理状態について検査に着手した14年7月時点では要領上物品管理役が備えることとされている物品管理簿が和光本所、筑波、神戸の各研究所で作成されていなかった。そして、事業年度末現在の固定資産台帳の写しが物品管理簿として代用されていたが、期中の物品の使用や処分等に関する物品管理簿への記載は行われていない状態であった。その後、本院の検査を受けて、筑波、神戸の両研究所では15年に入って、和光本所では15年7月に固定資産台帳を基にして14事業年度末現在の物品管理簿を作成した。

イ 物品使用簿について

 要領上物品使用責任者が備えることとされている物品使用簿についても、和光本所では、要領に規定されていない固定資産カードで代用している状態であった。そして、物品使用責任者が物品が不用となった旨を通知する場合には、特段の規定はないものの、実際には固定資産カードを撤去申請書に添付して物品管理役に提出しているので、撤去された物品については物品使用責任者が過去の使用状況、管理状況について帳簿上の記録として把握できない状態となっていた。

(2)帳簿の記載等の状況

ア 14事業年度末現在の固定資産台帳に廃止された研究室等が管理箇所として記載されるなどしていて帳簿の記載が適切でないもの

  2,189件 14事業年度末簿価 8億9162万余円

 14事業年度末現在固定資産台帳に登載されている物品47,933件、14事業年度末簿価470億6872万余円に係る固定資産台帳の記載内容を検査したところ、以下のとおり、廃止された研究室等が管理箇所として記載されるなどしていて帳簿の記載が適切でないものが2,189件、14事業年度末簿価8億9162万余円あった。
〔1〕 廃止された研究室等が管理箇所として記載されていたもの

  2,002件 14事業年度末簿価 8億7060万余円

〔2〕 物品が研究室の移転とともに他の研究所に移転しているのに、移転前の研究所に所在するとして記載されていたもの

  187件 14事業年度末簿価 2101万余円

 なお、前記のとおり、和光本所、筑波、神戸の各研究所では、15年以降に物品管理簿を整備したところであるが、14事業年度末現在における固定資産台帳と播磨研究所を含めた4研究所の物品管理簿の記載内容を比較したところ、(ア)固定資産台帳にはあるが、物品管理簿にはない物品の記載が815件、14事業年度末簿価3億5962万余円、(イ)物品管理簿にはあるが、固定資産台帳にはない物品の記載が124件(取得時期は元年1月から15年3月、取得価格4億2054万余円)あり、固定資産台帳の記載内容と物品管理簿の記載内容との間に相違が生じていた。
イ 物品の処分に当たり、撤去申請書の申請年月日を書き換えるなど事務手続が適切でないもの
 14年4月1日から15年3月31日までに固定資産台帳から除却した物品4,841件、除却時の簿価3億3673万余円に係る事務手続を検査したところ、一連の事務処理の遅れを受けて、撤去申請書の申請年月日若しくは決裁年月日等が書き換えられていたものが、960件、6605万余円あった。
 これらのうちには、固定資産税の賦課期日前に撤去申請書が提出されているにもかかわらず、その処理が遅れるなどして、当該撤去申請書に係る物品の価額を除かないまま償却資産の申告をしたため、固定資産税が課税されることとなったものが見受けられた。

(是正改善を必要とする事態)

 貴研究所において、備えることとなっている帳簿が備えられていなかったり、帳簿の記載が適切でなかったり、物品の処分に係る手続が適切でなかったりなどしていて、適切な物品管理が行われていない事態は、是正改善の必要があると認められる。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、適切な物品管理に対する認識が十分でなかったことのほか、貴研究所の予算の増加に伴い、10事業年度以降、研究用機器の取得も増大し、また、新しい研究所の設置や組織の見直しに伴う研究室等の改廃等が行われてきたにもかかわらず、前記の要領等に基づいて事務の適切な処理が行われているか確認が十分でなかったこと、十分な事務処理体制の見直しがなされていなかったことなどによると認められる。

3 本院が要求する是正改善の処置

 貴研究所は、独立行政法人化に伴い、実施する事務・事業を効率的かつ効果的に行うことにより、国民生活の安定及び社会経済の健全な発展に資することが求められている。そして、その目的に資するため、正確な財務情報を開示する要があり、承継した資産の正確な把握をすることはもとより、物品においても、適正かつ効率的な管理を図ることが求められている。
 ついては、貴研究所において、正確な物品管理の実態を把握するとともに、物品の管理の適正を期するため、次のような処置を講ずる要があると認められる。
(ア)物品管理に携わる者に物品管理に対する認識を徹底させ、必要な帳簿を整備して正確に記帳することにより、各研究所における物品の現況を十分把握して適正かつ効率的な管理を図ることができるようマニュアル等を作成すること
(イ)物品管理を適切に行うよう事務処理体制の整備を図ること