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  • 平成14年度|
  • 第4章 特定検査対象に関する検査状況

高速道路等における有料道路自動料金収受システムの利用状況について


第12 高速道路等における有料道路自動料金収受システムの利用状況について

検査対象 日本道路公団、首都高速道路公団、阪神高速道路公団
有料道路自動料金収受システムの概要 高速道路等の料金所に設置された路側無線装置と車両に設置された車載器との間の無線通信により、通行料金の支払を自動的に行うシステム
上記のシステムに係る事業費(平成10〜14年度) 日本道路公団 1093億円
首都高速道路公団 377億円
阪神高速道路公団 126億円
1596億円

1 有料導路自動料金収受システムの概要

(システムの概要)

 日本道路公団、首都高速道路公団及び阪神高速道路公団(以下、それぞれ「道路公団」、「首都公団」、「阪神公団」という。)では、平成10年度から有料道路自動料金収受システム(Electronic Toll Collection System。以下「ETC」という。)の整備を行っている。このシステムは、有料道路の料金所に設置された路側無線装置と車両に設置されETCカードを挿入したETC車載器との間の無線通信により、通行料金の支払を自動的に行い、車両を停止させることなく料金所を通行すること(以下、この通行を「無線通行」という。)ができるようにするものである。

(ETCの整備効果)

 ETCについては、国土交通省(以下「国交省」という。)等によれば以下のような効果があるとされている。

ア 利用者の利便性・快適性の向上

 ETCの利用者(以下「ETC利用者」という。)は、無線通行が可能になり、料金所での現金の支払等の手間も不要となるので、ノンストップとキャッシュレスによりETC利用者の利便性・快適性が向上する。

イ 料金所渋滞の解消

 料金所の通適時間が短縮されるため料金所の時間当たり処理台数が向上し、高速道路の渋滞の約3割を占めるとされる料金所渋滞を解消することが可能になる。

ウ コスト削減

 料金収受員により料金収受を行っているレーンをETCレーンとして整備し、ETC車載器を取り付けた車両(以下「ETC車」という。)の増加に伴いETCレーンの専用運用化が進めば、料金収受員を削減することができ、料金収受に係る管理費の削減が可能になる。

エ 新たな料金施策の実施

 ETCでは車両ごとに走行した区間や時間等がその都度把握できるので、利用の形態や路線の特性等に応じたきめ細かい料金設定が可能となり、区間割引や夜間割引等、利用者のニーズや環境対策等様々な政策目的に対応した多様な料金施策が可能になる。

(利用率の目標)

 国交省では、19年度までにETCの利用率(注1) (以下「利用率」という。)を全国平均で70%程度にまで引き上げることを目標としている。そして、利用率を50%程度にまで上げることにより、3公団の料金所で発生する渋滞はおおむね解消できるとし、これによる経済効果を年間3000億円(9年度試算)、料金所周辺の二酸化炭素排出量の削減割合を2割と試算している。
 また、利用率について、道路公団では15年度で15%程度、16年度で25%程度に、首都公団ではそれぞれ20%程度、40%程度に、更に19年度で85%程度に、阪神公団ではそれぞれ15%程度、35%程度、85%程度に向上させることを目標としている。

 高速道路等における有料道路自動料金収受システムの利用状況についての図1

(ETCレーンの整備状況)

 3公団では、13年3月又は7月から一部の料金所でETCの一般利用者向け運用を開始し、15年3月には主要な料金所850箇所にサービスを拡大している。その事業費は、10年度から14年度までの間において、道路公団で1093億円、首都公団で377億円、阪神公団で126億円となっており、3公団で計1596億円となっている。
 そして、国交省では、15年度中に3公団が管理する高速道路、一般有料道路及び都市高速道路(以下「高速道路等」という。)を含む全国のほぼすべての料金所約1,300箇所にETCのサービスを拡大する方針を掲げている。
 15年9月までにETCレーンが整備された料金所数は、表1のとおり、道路公団では608料金所、首都公団では151料金所、阪神公団では123料金所、計882料金所となっており、通行台数の多い主要な料金所にはほぼすべてETCレーンが整備されている。

表1 ETCレーンの整備状況
  全料金所数 ETCが整備された料金所数 全料金所数に対するETCが整備された料金所数の割合
道路公団 942
(5,741)
 
608
(4,032)
[1,388]
64.5%
首都公団 162
(395)
 
151
(373)
[267]
93.2%
阪神公団 132
(336)
 
123
(320)
[159]
93.2%
合計 1,236
(6,472)
 
882
(4,725)
[1,814]
71.4%
(注)
( )内は全レーン数、[ ]内はETCレーン数

(ETC車載器の設置状況)

 15年9月末現在の車種別のETC車載器設置済車両台数(累計)は、表2のとおり約151万台である。このうち、普通車が全体の約90%を占めており、その数は約135万台となっている。

表2 ETC車載器の普及状況(15年9月末現在)
車種 台数 構成比
軽自動車 32,346 2.1%
普通車 1,353,401 89.3%
中型車 63,532 4.2%
大型車 58,091 3.8%
特大車 8,146 0.5%
合計 1,515,516  
(注)
車種区分は道路公団の料金制度の区分による。

(ETCの普及に対する料金施策等)

 3公団では、ETCの普及を図るため、通行料金に関して、13年11月に期間限定特別割引(注2) や、14年7月にETC前払割引(注3) の制度を創設して、これを実施している。
 また、3公団では、主に高速道路等の多頻度利用者に対するETCの普及促進を図ることを目的として、新たにETC車載器を購入し、併せてモニターとして協力するETC利用者を対象として車載器購入等に係る費用の一部を支援するため、15年6月にETCモニター・リース等支援制度(国費負担額約10億円、3公団負担額計約25億円)を創設し、これにより先着おおむね47万台(一般車両おおむね12万台、業務用車両おおむね35万台)に対し1台に付き5,000円の助成を行っている。この結果、15年9月末現在で一般車両123,563台、業務用車両68,281台、計191,844台が新たにETC車載器を設置している。

(注2) 期間限定特別割引 ETC利用者に対して3公団ごとの割引累計額の上限を10,000円として通行料金を20%割り引くもの
(注3) ETC前払割引 ETC利用者があらかじめ料金を前払するもので、前払金10,000円に対して利用可能額が10,500円(割引率4.8%)に、また、前払金50,000円に対して利用可能額が58,000円(割引率13.8%)になるように割り引くもの

2 検査の背景及び着眼点

 3公団においては、前記のとおり、ETCレーンの整備を行うため多額の事業費を投入して路側無線装置、車両検知器等のETC関連機器を料金所に設置するとともに、ETC利用者に対する割引などの料金施策等を実施している。その結果、道路公団、首都公団及び阪神公団における利用率は、15年3月ではそれぞれ4.7%、6.2%、3.3%、同年9月では10.5%、12.4%、7.1%と増加傾向を示しているものの、前記の利用率の目標を達成するためには、更にETCの普及促進に努めることが必要となる。
 また、ETCは、高速道路等の利用者にとって身近なものであり、また国民にとっても関心が高いものとなっている。
 このような状況を踏まえ、ETCの利用状況、整備効果等に着眼して検査した。

3 検査の状況

(1)ETCの利用手続について

 ETCを利用するに当たっては、次のような手続を要することとなっており、この手続には即日から3週間程度(クレジットカードの発行に要する日数を含む。)を要するとされている。
〔1〕 クレジットカード会社等とETCカードの貸与契約を締結し、ETCカードの発行を受ける。
〔2〕 自動車用品店等の車載器販売店(以下「販売店」という。)で、ETC車載器を購入し、車載器を車両に装着する。
〔3〕 販売店を通じて、ETCによる料金計算に必要な車両情報の発行を財団法人道路システム高度化推進機構にファクシミリ又はオンラインによって申請する。
〔4〕 同機構は、必要な情報を発行して販売店に郵送又はオンラインによって送付し、販売店はその情報を車載器に登録する(以下「セットアップ」という。)
 また、ETC利用者は、通常、ETCカードの年会費、車載器の購入費、車載器の取付費、セットアップに必要な情報の発行料及びセットアップ手数料として合計で1万5千円から3万円程度を負担する必要があるとされている。
 このように、ETCの利用に当たっては、手続のための時間と一定の費用が必要となっている。

(2)ETCの利用状況について

ア ETCの利用台数及び利用率

 3公団におけるETC車の1日当たりの利用台数及び利用率の推移は、図1のとおりとなっており、15年9月現在の1日当たりの利用台数及び利用率は、道路公団で約48万4000台・10.5%、首都公団で約13万4000台・12.4%、阪神公団で約5万6000台・7.1%となっている。

図1 ETC利用台数及び利用率

図1ETC利用台数及び利用率

イ 料金支払方法別の利用状況

(ア)道路公団における料金支払方法別の利用状況

 道路公団の高速道路及び一般有料道路の通行に係る料金の支払方法には、現金、ハイウェイカード、回数券、ETCによる無線通行、クレジットカード及び別納カードがある。
 これら支払方法別の通行台数及び料金収入の15年7月までの状況は、図2及び図3のとおりである。

高速道路等における有料道路自動料金収受システムの利用状況についての図2

 支払方法を通行台数の割合でみると、ETCによる支払は増加しているものの、15年7月においても6.8%となっており、現金が45.0%、別納カードが21.0%とこの両者で66%を占めている。
 このうち別納カードは、15年7月では、現金に次いで多い支払方法となっており、料金収入の割合でみると、現金よりも常に多く、34.0%から36.7%の間で推移しており、最も大きな割合を占めている。
 また、別納カードは、通行台数でみると全体の20%程度であるのに対し、料金収入でみると35%程度もあることから、別納カードは1回当たりの利用金額が大きいことがうかがわれる。
 なお、割引率が高かった3万円(割引率7.7%)及び5万円(割引率13.8%)のハイウェイカードについては、偽造ハイウェイカードの流通・利用が後を絶たないことや、国交省に設置された社会資本整備審議会において14年8月に「偽造が社会問題化しているハイウェイカードや回数券を廃止し、割引策をETCによるものに早期に集約すべきである」との答申が出されたことなどから、15年2月末をもって販売を終了している(5万円券について、首都公団では発行しておらず、阪神公団では13年8月15日をもって販売を終了している。)。このようなことにより、ハイウェイカードは減少傾向になっているものと考えられる。

(イ)別納制度の概要

 道路公団の別納カードは通行料金別納制度(以下「別納制度」という。)の利用者が使用するものであり、別納制度の利用者(以下「別納利用者」という。)の大半は運送事業者等の大口利用者である。
 この別納制度は、道路公団の高速道路及び一部の一般有料道路を利用する者が1年を通じて月平均1万円以上利用すれば、1箇月分の通行料金を翌月末までにまとめて支払うことができるようになり、表3のとおり、1箇月の通行料金の合計額に応じて通行料金の割引が受けられる制度である。

表3 別納制度の割引率(高速道路)
1箇月の通行料金の合計額 割引率
1.4万円までの部分 0%
1.4万円を超え7万円までの部分 5%
7万円を超え70万円までの部分 10%
70万円を超え140万円までの部分 15%
140万円を超え280万円までの部分 20%
280万円を超え700万円までの部分 25%
700万円を超える部分 30%

 そして、別納利用者に貸与されている別納カードのほとんどは、15年9月現在、料金収受員との受渡しにより通行する収受処理とETC車載器に挿入して無線通行する収受処理のいずれにも対応できる「ETC別納カード」になっており、いずれの通行によっても同じ割引が受けられることになっている。
 このように、別納利用者は、高額ハイウェイカードの廃止によりETC前払割引が最も大きな経済的利点を受けられる手段となった一般利用者と異なり、既に高率の割引を受けていて、ETCを利用しても割引面での優位性がないので、ETCに経済的な利点を感じにくい利用者といえる。そして、利用率の向上を図る観点からは、これら大口利用者である別納利用者を現状よりさらにETC利用者にさせることが必要である。
 なお、別納制度については、一部の組合により不適切に利用されてきた点を是正するため、道路公団では15年9月に現行の制度の廃止を決定し、新規加入の受付を中止している。そして、国土交通大臣の指示により代替となるETCの利用を前提とした新たな割引制度の創設を検討している。

(ウ)首都公団及び阪神公団における料金支払方法別の利用状況

 首都高速道路及び阪神高速道路の通行に係る料金の支払方法には、現金、ハイウェイカード、回数券、ETCによる無線通行及びETCカードの手渡しによるICカード読み取り(以下「ICCR」という。)がある。このうちICCRは、ETCカードを車載器に挿入して無線通行するのではなく、ETCカードを料金収受員がいるレーンにおいて手渡しして料金収受の処理をするものである。
 これら支払方法別の通行台数の15年7月までの状況は、図4及び図5のとおりである。

図4 首都公団における支払方法別の通行台数の割合

図4首都公団における支払方法別の通行台数の割合

図5 阪神公団における支払方法別の通行台数の割合

図5阪神公団における支払方法別の通行台数の割合

 首都公団及び阪神公団においては、ETCによる無線通行は年々増加しているが、15年7月においても、それぞれ現金が41.8%、41.9%、回数券が27.3%、33.7%となっていて、両公団とも、この両者で全体の約7割を占めている。

(エ)回数券の概要

 回数券は、複数の通行券を一綴りとして販売され、利用回数に応じた割引額が設定されているもので、首都公団では料金圏別、車種別に9回券(最大割引率9.5%)から100回券(同18.5%)までの36種類を、阪神公団では同様に9回券(最大割引率11.1%)から100回券(同18.5%)までの37種類を設けている。
 回数券は、本来多頻度利用者に対する料金割引を目的とした制度であり、回数券を利用すれば料金所における通過時間が現金による支払等に比べ短縮できるので、少数のレーンでの料金所運営が可能になることから開業当初から導入されている。
 首都公団及び阪神公団において、前記のように回数券の利用が高率になっているのは、回数券による割引がETCによる割引に比べて割引率が高く、利便性も現金の支払に比べ高いことなどから、運送事業者等の大口利用者等に従来から頻繁に利用されてきたことによるほか、これら大口利用者にとってETCの利点が感じられにくいことにもよると考えられる。

(オ)アンケート調査の結果

 今回、道路公団の協力を得て、高速道路等の大口利用者であり、ほとんどがETC別納カードを保有している別納利用者に対し、ETCに関するアンケート調査を実施した。そして、個人172人中40人、法人5,942社中2,167社、事業協同組合1,165組合中618組合及びその組合員である2,571社等、計5,396団体等から回答を得た。
 その結果は、以下のとおりである。

〔1〕 ETC車載器の取付状況

 ETC車載器の取付状況は、ほとんどの者がETC別納カードを既に保有しているにもかかわらず、図6のとおり4%から13%となっていた。そして、事業協同組合(運送系)は9%、事業協同組合(その他)は5%となっており、これらは法人(13%)と比較して取付けが進んでいない状況となっていた。

図6 ETC車載器の取付状況

図6ETC車載器の取付状況

〔2〕 ETC車載器を取り付けた理由

 ETC車載器を取り付けた理由は、図7のとおり、「待たなくて通行できる」(35%)、「手間が省ける」(22%)などと利便性や快適性を求めたものが約6割を占めていた。

図7 ETC車載器を取り付けた理由

図7ETC車載器を取り付けた理由

〔3〕 今後ETC車載器を取り付けるための条件

 今後どのような状況になればETC車載器を設置するのかとの問いに対しては、図8のとおり、「車載器の値下げ」(24%)、「別納割引以上の割引の実施」(21%)、「都市高速で回数券以上の割引の実施」(9%)、「割引対象路線の増加」(7%)といった経済的な利点を求めるものが61%を占めていた。この他にも利用明細書の発行を求めるものが9%、手続の簡素化を求めるものが6%などとなっていた。

図8 今後車載器を取り付けるための条件

図8今後車載器を取り付けるための条件

(3)ETCの整備効果について

 ETCの整備効果としては、前記のとおり、〔1〕利用者の利便性・快適性の向上、〔2〕料金所渋滞の解消、〔3〕コスト削減及び〔4〕新たな料金施策の実施が挙げられているが、現時点での3公団におけるこれらの効果の発現状況は次のとおりとなっている。
ア 利用者の利便性・快適性の向上

(ア)ETCレーンの運用方針

 ETCレーンの運用形態には、ETC車の処理のみを行う専用運用と、一般車とETC車の両方の処理を行う混在運用がある。
 そして、ETCレーンの運用に当たっては、11年3月に警察庁と当時の建設省との間で「ETC車線の運用についてはETCの普及を図り、もって料金所における交通渋滞の解消・緩和を図るため、ETC車両の専用運用をすること。ただし、災害その他の緊急事態が発生した場合や、ETC車両の専用運用に起因して著しい交通障害を生じた場合には、必要に応じて混在運用とするなどの対応を図ること」との取決めがなされており、3公団ではこれに従ってETCレーンを運用している。

(イ)ETCレーンの運用状況

〔1〕 道路公団の場合

 道路公団が管理する高速道路及び一般有料道路の入口、出口及び本線料金所(道路の管理区分が異なる区間境などにおいて料金を徴収するために設置してある料金所)について、ETCレーンの整備状況及び運用状況をみると、表4のとおりとなっていた(15年5月及び7月のデータを集計したもの。)。

表4 道路公団におけるレーンの運用状況
料金所の状況
レーンの状況
常時専用運用を行っていた料金所 専用運用を行っていない時間帯があった料金所 合計
885箇所 209箇所 1,094箇所
全レーン数 3,381 530 3,911
ETCレーン数 1,089 235 1,324
(内訳) 常時専用運用を行っていたレーン 963 0 963
専用運用と混在運用との切替を行っていたレーン 65 201 266
常時混在運用を行っていたレーン 41 34 75
閉鎖等されていたレーン 20 0 20
(注)
料金所数は入口、出口を別々に計上してある。

 これによれば、料金所数についてみると、ETCレーンが整備された料金所1,094箇所のうち、常時専用運用を行っていた料金所は885箇所で、全体の約81%となっていた。また、レーン数についてみると、常時専用運用を行っていたETCレーンは963レーンで、ETCレーン全体(1,324レーン)の約73%となっていた。

〔2〕 首都公団の場合

 首都高速道路の本線料金所について、ETCレーンの整備状況及び運用状況をみると、表5のとおりとなっていた(15年9月1日から12日までの土日を除く計10日間のデータによる。)。

表5 首都公団における本線料金所のレーンの運用状況
料金所の状況
レーンの状況
常時専用運用を行っていた料金所 専用運用を行っていない時間帯があった料金所 合計
4箇所 14箇所 18箇所
全レーン数 21 79 100
ETCレーン数 18 61 79
(内訳) 常時専用運用を行っていたレーン 4 0 4
専用運用と混在運用との切替を行っていたレーン 0 14 14
常時混在連用を行っていたレーン 12 47 59
閉鎖等されていたレーン 2 0 2

 

 これによれば、料金所数についてみると、ETCレーンが整備された本線料金所18箇所のうち、常時専用運用を行っていた料金所は4箇所で、全体の約22%となっていた。レーン数についてみると、常時専用運用を行っていたETCレーンは4レーンで、ETCレーン全体(79レーン)の約5%となっていた。また、専用運用を行っていない時間帯があった料金所14箇所において、専用運用が行われなかった時間は1日当たり平均3時間程度となっていた。

〔3〕 阪神公団の場合

 阪神高速道路の本線料金所について、ETCレーンの整備状況及び運用状況をみると、表6のとおりとなっていた(15年9月1日から12日までの土日を除く計10日間のデータによる。)。

表6 阪神公団における本線料金所のレーンの運用状況
料金所の状況
レーンの状況
常時専用運用を行っていた料金所 専用運用を行っていない時間帯があった料金所 合計
7箇所 7箇所 14箇所
全レーン数 47 38 85
ETCレーン数 15 16 31
(内訳) 常時専用運用を行っていたレーン 7 0 7
専用運用と混在運用との切替を行っていたレーン 0 6 6
常時混在運用を行っていたレーン 8 10 18
閉鎖等されていたレーン 0 0 0

 

 これによれば、料金所数についてみると、ETCレーンが整備された本線料金所14箇所のうち、常時専用運用を行っていた料金所は7箇所で、全体の50%となっていた。レーン数についてみると、常時専用運用を行っていたETCレーンは7レーンで、ETCレーン全体(31レーン)の約23%となっていた。また、専用運用を行っていない時間帯があった料金所7箇所において、専用運用が行われなかった時間は1日当たり平均11時間程度となっていた。
 このように、特に都市高速道路において常時専用運用が行われていないETCレーンが多数見受けられるのは、渋滞時において専用運用を行った場合、かえって渋滞を助長し料金所までの到達時間を増大させることになるので、料金所としての処理能力の確保を考慮すると、現在のETCの利用率ではETCレーンの混在運用はやむを得ないとしているからである。
 しかし一方で、ETC利用者にとっては、キャッシュレスによる利便性は享受できるもののノンストップ通行による快適性は享受できない場合がある状況になっている。

イ 料金所渋滞の解消

(ア)道路公団の渋滞の状況

 道路公団では、管理する高速道路及び一般有料道路において、年間30回以上交通集中渋滞が発生する箇所、平均渋滞長が2km以上である箇所等の特に渋滞の著しい221箇所について、道路構造種別に渋滞の状況を集計しており、14年の状況は表7のとおりとなっていた。

表7 年間の渋滞状況
種別 上り坂サグ部 料金所部 インターチェンジ・ジャンクション合流部 トンネル部 サービスエリア・パーキングエリア合流部 車線減少部 その他 合計
箇所数
(構成比)
84 45 41 29 1 1 20 221
(38.0%) (20.4%) (18.6%) (13.1%) (0.5%) (0.5%) (9.0%)  
渋滞量km・h
(構成比)
27,907 10,988 12,105 11,475 49 198 2,503 65,225
(42.8%) (16.8%) (18.6%) (17.6%) (0.08%) (0.3%) (3.8%)  
注(1) サグ(英:sag) 凹形縦断曲線において、下り勾配から上り勾配の接続によってできる谷の部分
注(2) 渋滞量 渋滞中の車列の長さと渋滞継続時間との積を合計したもの

 これによると、料金所部の渋滞量は10,988km・hであり、全渋滞量65,225km・hの16.8%を占めていた。

(イ)首都公団及び阪神公団の渋滞の状況

 首都高速道路で発生した渋滞のうち、本線料金所で発生した渋滞量は46・1km・h/日であり、これは全渋滞量554km・h/日の約8.3%であった(14年10月の平日平均データによる。)。
 また、阪神高速道路で発生した渋滞のうち、本線料金所で発生した渋滞量は9.6km・h/日であり、これは全渋滞量256.4km・h/日の約3.7%であった(15年3月から7月までの平日平均データによる。)。
 上記のように、料金所渋滞は、現状においては、道路公団で全渋滞のうちの2割弱、首都公団及び阪神公団で同様に1割弱となっていた。そして、料金所渋滞は、ETCの利用率が50%程度に達した際におおむね解消するとされているものであるが、利用率が10%程度である現状においては、ETCによる料金所渋滞の解消の効果が顕著に現れる状況には至っていない。

ウ コスト削減

 利用率が上昇し、ETC車のための専用運用を行うレーンが増えれば、料金収受業務に要する人員が削減できるため、管理費の節減が図られるとされている。
 道路公団では、利用率が全料金所で50%になれば全国に約9,000人いる料金収受員を約2,300人削減できるとし、削減できる費用は年間約140億円になると試算している。
 また、首都公団では、年間149億円の料金収受業務の委託費を、利用率が30%に達すれば約20億円(13.4%)、50%に達すれば約51億円(34.2%)、70%に達すれば約77億円(51.7%)節減できると試算している。
 さらに、阪神公団では、年間96億円の料金収受業務の委託費を、利用率が30%に達すれば約9億円(9.5%)節減できると試算している。
 しかし、現状においては、前記のとおり、ETCレーンで混在運用が行われており、その場合には一般車に対応する要員として従来と同様の要員が必要となることもあり、ETCの運用が人員の削減につながる場合は限定される。したがって、コストの削減について、3公団では一部に一定の効果の発現が見られるとしているものの、顕著な効果は見受けられていない。

エ 新たな料金施策の実施

 3公団では、ETCレーンの整備に伴い新たな料金施策を実施している。

(ア)道路公団の場合

 道路公団では、一般道路を利用している長距離走行車に高速道路の利用を促進させ、一般道路の沿道環境の改善、渋滞緩和を図ることを目的とした「ETC長割社会実験」を実施している。これは、15年7月19日から16年1月18日までの間、入口料金所を無線通行したETC車が高速道路を300km以上走行した場合には、その走行距離に応じて現行の長距離割引よりさらに大きな割引率を適用するものである。また、東京湾アクアラインの一層の利用促進を図り、湾岸道路等の交通の円滑化等を目的とした「東京湾アクアライン社会実験」を実施しており、これによりETC車の通行料金を約23%引き下げている。

(イ)首都公団及び阪神公団の場合

 首都公団では、住宅地域の沿道環境を改善することを目的として、料金に格差を設けて、住宅地域に集中した交通の湾岸部への転換を図る施策である「環境ロードプライシング」を実施している。これにより、1号横羽線に平行する湾岸線の大黒・浮島ジャンクション間を大型車がETCにより無線通行した場合、通行料金を通常より割安にしている。また、ETC利用者を対象に路線の端末区間など短距離区間を割引料金で利用できるようにすることを目的とした「ETC特定区間料金」を実施している。これらのほか、今後導入が検討されているETCを活用した料金施策として、ETC夜間割引社会実験(夜間の一定時間帯に限り通行料金を割り引くもの)やETC回数券並割引(ETC前払割引に公団が独自の割引を加えETCで回数券並の割引を行うもの)などがある。
 阪神公団でも、首都公団と同様の「環境ロードプライシング」を実施しており、3号神戸線に平行する5号湾岸線の阪神西線区間で大型車がETCにより無線通行した場合、通行料金を通常より割安にしている。
 3公団における上記の新たな料金施策は、ETCの普及促進、利用しやすい料金の設定、負担の公平性の確保、環境の改善、現道の渋滞緩和などの目的を有し、利用率の向上等によって、これらの目的が早期に達成されることが期待されている。
 特に、ETCは車両ごとの利用状況を把握できる機能を有し、その機能により、都市高速道路では入口と出口の路側無線装置等を活用することにより料金制度を均一料金制から距離制へ移行させるなど、ETC利用者のニーズや様々な政策目的に対応した多様な料金施策の実施が可能となる。そして、3公団では、多様な料金施策の実施に当たっては、利用率の向上と設備環境の整備が必要となるため、15年度中に全国のほぼすべての料金所にETCを整備するとともに、16年度中に首都公団及び阪神公団のすべての出口にETCを整備することとしている。しかし、現状では、行い得る新たな料金施策は一定の範囲に限られた状況となっている。

4 本院の所見

 ETCは、その整備効果として、利用者の利便性・快適性の向上、料金所渋滞の解消、コスト削減、新たな料金施策の実施など、各般の効果が期待されている。そして、これらの整備効果を発現させるためには、利用率を目標に向けて大幅に向上させることが不可欠である。
 しかし、13年3月のETCの一般運用開始以来2年余りが経過し、利用率は増加傾向にあるものの、15年9月の全国平均で10.4%であり、現状では、これらの整備効果は十分発現しているとは認められない状況である。
 したがって、3公団においては、高速道路等の利用者に対してETCの社会的、経済的利点の周知徹底を図って新たな需要を喚起するとともに、ETCによる割引と現行の割引制度との均衡を図ったり、経営的観点や利用者間の公平性の確保に配慮しつつ各種割引策を実施したり、ETCレーンの常時専用運用を行う料金所を極力増やしたりするなどして利用率の更なる向上を図り、もうてETCのもたらす各種整備効果が早期に発現するよう努めることが望まれる。