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  • 平成14年度|
  • 第4章 特定検査対象に関する検査状況|
  • 第18 地方公共団体に対する財政資金の流れについて

本院の所見


3 本院の所見

 地方公共団体は、国民生活に密接に関連する行政の多くを実施しており、これに対して、国は、地方公共団体に様々な施策を推進するための補助金等を交付したり、地方公共団体間の財政力を調整しつつ地方財政の財源不足額を補てんするために地方交付税交付金を交付したり、地方債の引受けのために政府資金等を手当てして貸し付けたりしている。
 近年の地方財政は、少子・高齢化の進展等に伴う社会保障関係経費等多様な行政事務に係る歳出圧力の増大の下で、バブル経済崩壊後の景気低迷による税収の減少や累次の経済対策に対応して公共投資を拡大したことから、多額の地方債を発行し、その債務残高が急増している。
 この間、国は、公共事業関係を中心とした補助金等を補正予算で措置したり、交付税特会の借入れを増やして地方交付税を確保するなどして財源不足額を完全に補てんする措置を執ったりするとともに、地方債の追加発行を認めたり、各地方公共団体における実際の元利償還金を地方交付税に算入する措置を手厚くしたり、地方債の引受けのために財政資金を積極的に活用したりして、地方公共団体の公共投資の拡大等を支援してきた。
 このような国及び地方の財政措置の結果、地方においては、地方債残高の急増に伴って将来の多額の返済負担が生じるとともに、交付税特会の借入金の地方負担分の増加が将来の地方財政の圧迫要因になると思料される。また、国においても、補助金等の原資の一部にもなっている公債の負担が続く中で、交付税特会の借入金の国負担分の増加が将来の一般会計歳出の圧迫要因になってきている。
 以上のような状況の中で、「国と地方」の改革の議論が高まってきており、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」においては、国庫補助負担金、地方交付税、税源移譲を含む税源配分の在り方を三位一体で改革する具体的な工程等が決定されたところであるが、国と地方を合わせた長期債務残高は、14年度末の約700兆円を更に上回ることが見込まれるなど、国の財政、地方財政とも依然厳しい状況である。
 したがって、今後、地方公共団体が自立的判断の下に効果的に施策を推進できるよう、また、財政資金がより効率的、効果的に使用されるよう、各府省等及び地方公共団体が協力して、次のような点に留意しつつ行財政運営がなされることが望まれる。

ア 補助金等については、これまでの本院の様々な指摘事項等も踏まえ、

(ア)地方公共団体においては、自己負担分の財源についても十分検討した上でその申請を行うとともに、より一層の適正な事業執行に努めること

(イ)関係府省等においては、地方公共団体に対する適正な事業執行に係る指導を引き続き十分行うこと、補助金等や国庫補助事業等の不断の見直しに努めること、また、補助金等の削減又は廃止に当たっては、事業の必要性の検討を慎重に行い、引き続き地方公共団体において実施する必要が認められる事業についてはその財源措置の検討を十分行うこと

イ 地方交付税については、地方公共団体にとって重要な制度である一方、法定5税相当分と交付額との開差が大きい状況が続いていることなどを踏まえ、関係府省等において、地方公共団体における一層の行財政の簡素・効率化とこれによる歳出の抑制等を通じて、地方交付税の額を決定する地方財政計画の策定に当たり歳出総額の抑制を図ること、また、今後とも、地方の負担意識を薄める仕組みを縮小する方向での見直しについて検討を進めること

ウ 地方債については、その残高が増こうしていることや、今後の財政資金の見通しなどを踏まえ、今後の発行に当たっては、地方公共団体において、その必要性、償還確実性等を十分検討すること

 そして、現在進められつつある「国と地方」の改革が着実に進むよう今後の国の予算編成及び地方財政計画の策定がなされるとともに、国及び地方が協調して、上記のような点に留意しつつ行財政運営を行うことにより、国及び地方の債務の増加が抑制されることが望まれる。