平成15年度
第3章 個別の検査結果
第1節 省庁別の検査結果
第8 厚生労働省
不当事項
保険料(15)(16)
(15)健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたもの
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1 保険料の概要
(健康保険、厚生年金保険)
健康保険は、常時従業員を使用する事業所の従業員を被保険者として、業務外の疾病、負傷、分娩等に関し医療、療養費、傷病手当金、出産手当金等の給付を行う保険である。また、厚生年金保険は、常時従業員を使用する事業所の70歳未満(平成14年3月31日までは65歳未満)の従業員を被保険者として、老齢、死亡等に関し年金等の給付を行う保険である。
そして、事業所に使用される従業員のうち、いわゆるパートタイム労働者等の短時間就労者については、労働時間、労働日数等からみて当該事業所に常用的に使用されている場合には被保険者とすることとされている。
(保険料の徴収)
保険料は、被保険者と事業所の事業主とが折半して負担し、事業主が納付することとなっている。
そして、これらの事業主は、地方社会保険事務局の社会保険事務所等に対し、健康保険及び厚生年金保険に係る次の届け書を提出することとなっている。
(ア)新たに従業員を使用したときには、資格取得年月日、報酬月額等を記載した被保険者資格取得届
(イ)毎年7月(14年度までは8月)には、同月1日現在において使用している被保険者の報酬月額等を記載した被保険者報酬月額算定基礎届
(ウ)被保険者の報酬月額が所定の範囲以上に増減したときには、変更後の報酬月額等を記載した被保険者報酬月額変更届
(エ)賞与を支給したときには、被保険者の賞与額等を記載した被保険者賞与支払届
これらの届け書の提出を受けた社会保険事務所等は、その記載内容を審査するとともに、届け書に記載された被保険者の報酬月額に基づいて標準報酬月額(注1)を、また、被保険者の賞与額に基づいて標準賞与額(注2)を、それぞれ決定しこれらに保険料率を乗じて得た額を保険料として徴収している(15年3月31日以前は、事業主が支給した被保険者の賞与総額に特別保険料率を乗じて得た額を賞与に係る保険料として徴収している。)。
保険料の15年度の収納済額は、健康保険保険料6兆3787億余円、厚生年金保険保険料19兆2425億余円、計25兆6213億余円に上っている。
2 検査の結果
(検査の着眼点及び対象)
本院では、毎年度の決算検査報告において、短時間就労者を使用している事業主や特別支給の老齢厚生年金(注3)の裁定を受け年金の額の全部を支給されている受給権者(「厚生年金保険の老齢厚生年金及び国民年金の老齢基礎年金の支給が適正でなかったもの」参照)を使用している事業主が届出を適正に行っていなかったなどのため多額の保険料が徴収不足となっている事態を掲記している。
そして、短時間就労者が増加傾向にあることから、本年の検査に当たっては、北海道社会保険事務局ほか25社会保険事務局の190社会保険事務所等管内の事業主のうち、短時間就労者を多数使用している事業主を中心に選定し、特別支給の老齢厚生年金の裁定を受け年金の額の全部を支給されている受給権者を使用している事業主なども含めた2,486事業主について、社会保険事務所等における13年度から16年度までの間の保険料の徴収の適否を検査した。
| (注3) | 特別支給の老齢厚生年金 厚生年金保険において行う保険給付であり、厚生年金保険の被保険者期間が1年以上あって老齢基礎年金に係る保険料納付済期間が25年以上ある者などに60歳以上65歳に達するまでの間支給される。そして、受給権者が厚生年金保険の適用事業所に使用され被保険者である間は、その者の標準報酬月額等に応じて年金の額の一部又は全部の支給が停止される。 |
(徴収不足の事態)
検査したところ、上記26社会保険事務局の183社会保険事務所等管内における短時間就労者又は特別支給の老齢厚生年金の受給権者を使用しているなどの2,453事業主のうち1,055事業主について、徴収額が2,577,168,530円(健康保険保険料751,835,174円、厚生年金保険保険料1,825,333,356円)不足していた。
このような事態が生じていたのは、事業主が次のように届出を適正に行っていなかったのに、上記の183社会保険事務所等において、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったことによると認められる。
〔1〕 被保険者資格取得届の提出を怠っていたもの
| 888事業主 | 徴収不足額 | 2,368,090,139円 |
〔2〕 資格取得年月日の記載が事実と相違していたもの
| 129事業主 | 徴収不足額 | 137,590,265円 |
〔3〕 被保険者賞与支払届の提出を怠っていたものなど
| 38事業主 | 徴収不足額 | 71,488,126円 |
このように事業主が届出を適正に行っていなかったのは、制度を十分に理解していなかったり、従業員が受給している特別支給の老齢厚生年金が支給停止となる事態を避けようとしたりしていたことなどによる。
なお、これらの徴収不足額については、本院の指摘により、すべて徴収決定の処置が執られた。
徴収不足額の大部分を占める被保険者資格取得届の提出を怠っていた事態についての事例を示すと次のとおりである。
| <事例1> | 短時間就労者を使用している事業主が被保険者資格取得届の提出を怠っていたもの |
A会社は、物品の販売等の業務に従事する従業員87人を使用していた。同会社は、これら従業員のうち40人については、勤務時間が短く常用的な使用でないなどとして、社会保険事務所に対して被保険者資格取得届を提出していなかった。
しかし、上記の40人について賃金台帳、雇用契約書等により調査したところ、同会社はこのうち34人を常用的に使用しており、被保険者資格取得届を提出すべきであった。
このため、健康保険保険料5,845,523円、厚生年金保険保険料10,270,702円、計16,116,225円が徴収不足になっていた。
| <事例2> | 特別支給の老齢厚生年金の受給権者を使用している事業主が被保険者資格取得届の提出を怠っていたもの |
B会社は、食品の卸等の業務に従事する従業員18人を使用していた。同会社は、これら従業員のうち9人については、年金の受給権者である従業員から被保険者資格取得届が提出されると受給している特別支給の老齢厚生年金が支給停止になるとの申出を受けるなどしたため、社会保険事務所に対して被保険者資格取得届を提出していなかった。
しかし、上記の9人について賃金台帳、雇用契約書等により調査したところ、同会社はこのうち6人を常用的に使用しており、被保険者資格取得届を提出すべきであった。
このため、健康保険保険料1,484,936円、厚生年金保険保険料2,461,451円、計3,946,387円が徴収不足になっていた。
(地方社会保険事務局ごとの徴収不足額)
これらの徴収不足額を地方社会保険事務局ごとに示すと次のとおりである。
