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  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

任期制自衛官に係る退職手当制度において、職務に従事しない期間を退職手当の算定上考慮するよう改善の意見を表示したもの


任期制自衛官に係る退職手当制度において、職務に従事しない期間を退職手当の算定上考慮するよう改善の意見を表示したもの

会計名及び科目
一般会計
(組織)防衛本庁
(項)防衛本庁
部局等の名称
内部部局(防衛庁の退職手当制度の所掌部局)
陸上自衛隊(支払部局)
任期制自衛官に対する退職手当の概要
任用期間を満了した任期制自衛官に対して防衛庁の職員の給与等に関する法律(昭和27年法律第266号)の規定により支給される退職手当
退職手当の支給を受けた者の数及び支給額
21,258人
205億4853万円
(平成16、17両年度)
上記のうち任用期間中に職務に従事していない期間が1月以上あった者の数及び支給額
126人
1億4909万円
 
職務に従事していない期間を考慮して減額することになる額
 
1610万円
(平成16、17両年度)

【改善の意見表示の全文】

任期制自衛官に係る退職手当制度について

(平成18年10月13日付け 防衛庁長官あて)

 標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の意見を表示する。

1 任期制自衛官に係る退職手当制度等の概要

(1)任期制自衛官に係る退職手当制度

 貴庁では、防衛庁の職員の給与等に関する法律(昭和27年法律第266号)第28条の規定に基づき、2年又は3年を任用期間として任用される自衛官(以下「任期制自衛官」という。)に対して、任用期間の満了時に退職手当を支給している。
 この退職手当は、退職時の俸給日額(俸給月額の30分の1に相当する額)に各任期ごとに定められた支給日数(最初の任用期間が2年である者にあっては100日、引き続き1回2年を任用期間として任用された者にあっては200日等)を乗じて得た額を支給するものである。そして、国家公務員退職手当法(昭和28年法律第182号)に基づく退職手当と同様に勤続に対する報償としての性格を基本的には有するものの、短期任用という極めて特殊な任期制自衛官の任用形態を考慮して任期満了時に所定の額を一律に支給するものとなっている。

(2)育児休業及び休養休職

 国家公務員の育児休業等に関する法律(平成3年法律第109号。以下「育児休業法」という。)により、子を養育する国家公務員の継続的な勤務を促進し、もってその福祉を増進するとともに、公務の円滑な運営に資することを目的として、育児休業制度が設けられている。そして、自衛官は、防衛庁長官又はその委任を受けた者(以下「任命権者」という。)の承認を受けて、当該自衛官の3歳に満たない子を養育するため、当該子が3歳に達する日まで、育児休業をすることができることとなっている。
 また、任命権者は、自衛隊法(昭和29年法律第165号)第43条の規定により、心身の故障のため長期の休養を要する自衛官について、3年を超えない範囲内において休職させることができる(以下、この休職を「休養休職」という。)こととなっている。
 そして、上記の育児休業をしている自衛官又は休養休職をしている自衛官は、いずれも自衛官としての身分を保有するが、職務に従事しないこととなっている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点及び方法)

 任期制自衛官は平成17年度末現在39,150人となっており、任期制自衛官に対して支給した退職手当は17年度13,948人分、143億6694万余円と多額に上っている。また、育児休業については、その期間は4年4月の育児休業法の施行当初には子の年齢が1歳に達する日までとされていたが、14年4月の同法の改正により子の年齢が3歳に達する日まで延長されるとともに、次世代育成支援対策推進法(平成15年法律第120号)の施行等により、今後、育児休業をする者の増加が見込まれている。
 そこで、経済性・効率性等の観点から、育児休業等により職務に従事しない期間のある者の増加が見込まれることに対応して任期制自衛官に係る退職手当制度を改める要がないかについて着眼し、各駐屯地において退職手当支給調書等を確認することなどにより退職手当の支給を受けた任期制自衛官の職務への従事状況を検査した。

(検査の対象)

 陸上自衛隊の17年度末現在の任期制自衛官は26,659人と全任期制自衛官の過半数を占めていることから、陸上自衛隊の任期制自衛官に対して支給した退職手当、16年度10,534人分、98億5947万余円、17年度10,724人分、106億8906万余円、計21,258人分、205億4853万余円を対象として検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、退職手当の支給を受けた任期制自衛官の職務への従事状況は、次のようになっていた。
 すなわち、16、17両年度に退職手当の支給を受けた任期制自衛官のうち、任用期間中に育児休業等により職務に従事していない期間が1月以上あった者は、次表のとおり、計126人(退職手当支給額計1億4909万余円)となっていた。そして、これらの者の任用期間計3,360月のうち職務に従事していない期間の月数は計706月、一人当たりでは任用期間26.6月のうち職務に従事していない期間が5.6月となっていた。

年度
職務に従事していない理由
人数
左に係る退職手当支給額
任用期間
(一人当たり)
職務に従事していない期間
(一人当たり)
16
育児休業
53人
65,446,819円
1,464月
(27.6月)
305月
(5.7月)
休養休職
16人
14,169,998円
384月
(24.0月)
86月
(5.3月)
69人
79,616,817円
1,848月
(26.7月)
391月
(5.6月)
17
育児休業
45人
56,704,988円
1,200月
(26.6月)
249月
(5.5月)
休養休職
12人
12,775,998円
312月
(26.0月)
66月
(5.5月)
57人
69,480,986円
1,512月
(26.5月)
315月
(5.5月)
合計
育児休業
98人
122,151,807円
2,664月
(27.1月)
554月
(5.6月)
休養休職
28人
26,945,996円
696月
(24.8月)
152月
(5.4月)
126人
149,097,803円
3,360月
(26.6月)
706月
(5.6月)

 そして、上記のように職務に従事していない期間のあった者に対しても、所定の額の退職手当が減額することなく支給されていた。

<事例>

 A任期制自衛官は、13年3月に2年を任用期間として任用され、15年3月に支給日数100日の退職手当が支給された。そして、同月に引き続き2年を任用期間として任用された後、15年8月から16年6月までの10箇月間育児休業したが、任用期間が満了した17年3月に支給日数200日の退職手当1,264,666円が支給されていた。
 しかし、このように育児休業等により職務に従事していない期間のある任期制自衛官に対しても所定の退職手当を減額することなく支給していることは、任用期間の全期間にわたり職務に従事した任期制自衛官との間に不均衡を生じさせており、勤続に対する報償という任期制自衛官の退職手当の基本的性格に照らし、適切とは認められない。
 そして、育児休業等により現実に職務を執ることを要しない期間が1月以上あったときは、その月数の2分の1に相当する月数を退職手当の算定の基礎となる勤続期間から除算するなどして退職手当の額を算定することとしている国家公務員退職手当法に準じて、職務に従事していない期間のある任期制自衛官の退職手当を計算すると、16年度約860万円、17年度約740万円、計約1610万円を減額することになると認められる。

(改善を必要とする事態)

 上記のように、職務に従事していない期間のある任期制自衛官に対して退職手当を減額することなく支給している事態は、任用期間の全期間にわたり職務に従事した任期制自衛官と不均衡を生じており、陸上自衛隊と同様に任期制自衛官を任用している海上自衛隊及び航空自衛隊においても同様であることから、改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、現行の任期制自衛官に係る退職手当制度では、育児休業等により職務に従事しない期間を退職手当の算定上考慮することとなっていないことによると認められる。

3 本院が表示する改善の意見

 貴庁では、自衛隊の精強性を維持するため、今後も引き続き多数の任期制自衛官を任用することが見込まれるとともに、次世代育成支援対策推進法の施行に伴い男性職員の育児休業取得促進に取り組んでおり、今後、男性自衛官の育児休業取得も予想される。
 ついては、前記の事態にかんがみ、貴庁において、任期制自衛官に係る退職手当制度において、職務に従事しない期間を退職手当の算定上考慮するよう適切な処置を講ずる要があると認められる。