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厚生年金保険の老齢厚生年金及び国民年金の老齢基礎年金の支給が適正でなかったもの


(121)厚生年金保険の老齢厚生年金及び国民年金の老齢基礎年金の支給が適正でなかったもの

会計名及び科目
厚生保険特別会計(年金勘定)
(項)保険給付費
国民年金特別会計(基礎年金勘定)
(項)基礎年金給付費
部局等の名称
社会保険庁
支給の相手方
(1)
厚生年金保険
531人
 
(2)
国民年金
4人
 
535人
 
老齢厚生年金等の支給額の合計
(1)
厚生年金保険
699,272,983円
(平成15年度〜18年度)
(2)
国民年金
1,420,845円
(平成16、17両年度)
700,693,828円
 
不適正支給額
(1)
厚生年金保険
189,981,309円
(平成15年度〜18年度)
(2)
国民年金
1,420,845円
(平成16、17両年度)
191,402,154円
 

1 保険給付の概要

(1)厚生年金保険及び国民年金の給付

 厚生年金保険(前掲の「健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたもの」 参照)において行う給付には、老齢厚生年金等がある。また、国民年金は、日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者等を被保険者として、老齢、死亡等に関して年金等の給付を行うものであり、この給付には、老齢基礎年金等がある。

(2)厚生年金保険の老齢厚生年金

ア 老齢厚生年金の支給の原則

 老齢厚生年金では、厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)により、厚生年金保険の適用事業所に使用された期間(以下「被保険者期間」という。)を1月以上有し、老齢基礎年金に係る保険料納付済期間が25年以上ある者等が65歳以上である場合に受給権者となる。

イ 特別支給の老齢厚生年金

 特別支給の老齢厚生年金では、当分の間の特例として、65歳未満であっても60歳(坑内員及び船員については56歳から60歳までの一定の年齢)以上で被保険者期間を1年以上有し、老齢基礎年金に係る保険料納付済期間が25年以上ある者等が受給権者となっている。

ウ 特別支給の老齢厚生年金の給付額

 労働特別支給の老齢厚生年金の給付額は、〔1〕受給権者の被保険者期間及びその期間における報酬を基に算定される額(以下「基本年金額」という。)と〔2〕配偶者等について加算される額との合計額となっている。
 なお、基本年金額は定額部分及び報酬比例部分からなっており、定額部分及び上記〔2〕の加算額の支給開始年齢は平成13年度から25年度(女子は18年度から30年度)にかけて3年ごとに1歳ずつ60歳から65歳に引き上げられることとなっている。

エ 特別支給の老齢厚生年金の支給の停止

(ア)特別支給の老齢厚生年金の受給権者が、厚生年金保険の適用事業所に新たに使用されて被保険者となったときなどには、次のとおり、年金の支給を停止することとなっている。

a 17年4月以降の支給の停止

 総報酬月額相当額(注) と基本月額(基本年金額を12で除して得た額)との合計額が280,000円を超えるときは、総報酬月額相当額と基本月額とを用いて、一定の方式により算定した額に応じ、基本年金額の一部又は年金の額の全部の支給停止

b 17年3月以前の支給の停止

〔1〕 総報酬月額相当額(16年3月までは標準報酬月額。以下同じ。)と基本月額(基本年金額の100分の80に相当する額を12で除して得た額。以下同じ。)との合計額が280,000円(16年3月までは220,000円)以下のときは基本年金額の100分の20に相当する額の支給停止
〔2〕 上記の合計額が280,000円(16年3月までは220,000円)を超えるときは、総報酬月額相当額と基本月額とを用いて、一定の方式により算定した額に応じ、基本年金額の一部又は年金の額の全部の支給停止

 総報酬月額相当額 標準報酬月額と、受給権者が被保険者である日の属する月以前1年間の標準賞与額(総額)を12で除して得た額との合算額

(イ)この場合の支給停止の手続は次のとおりである。

〔1〕 厚生年金保険の適用事業所の事業主は、新たに使用した者等が受給権者であるときは、その者の生年月日、基礎年金番号、資格取得年月日、報酬月額等を記載した被保険者資格取得届に、その者から提出を受けた年金手帳を添えて地方社会保険事務局の社会保険事務所等に提出する。
〔2〕 社会保険事務所等は、これを調査確認の上、届出内容を社会保険庁にオンラインで伝送し、同庁は、これに基づいて受給権者に係る年金の支給停止額を算定の上、支給額を決定する。

(3)国民年金の老齢基礎年金

 老齢基礎年金では、保険料納付済期間が25年以上ある者等が65歳に達したとき、又は65歳に達する前に繰上げ支給の請求をしたときは、そのときから受給権者となる。そして、繰上げ支給の請求をした者(昭和16年4月1日以前に生まれた者に限る。)が、その後、厚生年金保険の被保険者となったときは、年金の額の全部が支給停止されることとなっていて、その手続は特別支給の老齢厚生年金の場合とほぼ同様である。

2 検査の結果

(1)検査の対象及び着眼点

 北海道社会保険事務局ほか27社会保険事務局の217社会保険事務所等管内において、平成15年に特別支給の老齢厚生年金の裁定を受けて年金の額の全部を支給されている受給権者等655,222人のうち、厚生年金保険の適用事業所からの給与収入が確認されて調査の要があると認められた者が2,321人見受けられた。そこで、上記の217社会保険事務所等において、これらの受給権者等を使用している1,159事業所について、厚生年金保険の被保険者資格取得届等の提出の必要性の有無に着眼して、15年度から18年度までの間における特別支給の老齢厚生年金、老齢基礎年金等の支給の適否を検査した。

(2)検査の方法

 社会保険事務所等や事業所において、事業主が使用する従業員の賃金台帳、出勤簿、雇用契約書等を調査することなどにより検査した。

(3)不適正支給の事態

 検査したところ、北海道社会保険事務局ほか22社会保険事務局の161社会保険事務所等管内における366事業所の535人については当該事業所において常用的に使用されていて、年金の額の一部又は全部の支給を停止すべきであったのに被保険者資格取得届が提出されなかったなどのため、年金の支給停止の手続が執られていなかった。このため、特別支給の老齢厚生年金等の受給権者531人に対する支給(支給額699,272,983円)について189,981,309円、老齢基礎年金の受給権者4人に対する支給(支給額1,420,845円)について1,420,845円、計191,402,154円が適正に支給されていなかった。
 このような事態が生じていたのは、受給権者又は事業主が制度を十分理解していなかったり、誠実でなかったりして、事業主が前記の届出を怠るなどしていたのに、上記の161社会保険事務所等において、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったことによると認められる。
 なお、これらの不適正支給額については、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。
 これらの不適正支給額を地方社会保険事務局ごとに示すと次のとおりである。

地方社会保険事務局名
社会保険事務所等
本院が調査した受給権者等数
不適正受給権者数
左の受給権者に支給した年金の額
左のうち不適正支給額
   
千円
千円
北海道
札幌東ほか7
62
23
25,068
6,564
宮城
仙台東ほか5
50
17
14,301
4,023
秋田
秋田ほか3
41
7
6,438
1,049
福島
東北福島ほか4
58
12
18,395
2,690
茨城
水戸北ほか3
56
17
22,551
3,957
栃木
宇都宮東ほか4
73
26
33,980
12,272
埼玉
浦和ほか5
55
35
49,860
18,035
千葉
千葉ほか3
46
8
7,384
2,118
東京
麹町ほか18
395
93
136,318
40,989
神奈川
鶴見ほか10
69
18
41,503
14,740
新潟
新潟東ほか6
53
16
17,063
4,793
石川
金沢南ほか3
63
17
25,207
8,290
静岡
静岡ほか7
114
28
33,208
8,260
愛知
大曽根ほか9
105
27
35,356
8,925
京都
上京ほか4
48
15
8,138
1,664
大阪
福島ほか10
116
26
26,165
7,462
兵庫
三宮ほか9
140
34
48,950
15,555
岡山
岡山東ほか3
46
13
11,318
3,520
広島
広島東ほか7
84
16
13,650
2,744
愛媛
松山西ほか2
27
11
18,170
4,882
福岡
東福岡ほか9
215
54
61,085
11,173
佐賀
佐賀ほか2
22
3
6,026
1,116
鹿児島
鹿児島南ほか5
52
19
40,548
6,572
161箇所
1,990
535
700,693
191,402