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雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったもの


(122)雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったもの

会計名及び科目
労働保険特別会計(雇用勘定) (項)失業等給付費
部局等の名称
厚生労働本省(支給庁)
札幌公共職業安定所ほか111公共職業安定所(支給決定庁)
支給の相手方
293人
失業等給付金の支給額の合計
求職者給付
185,318,657円
(平成15年度〜18年度)
就職促進給付
10,112,859円
(平成15年度〜17年度)
195,431,516円
 
不適正支給額
求職者給付
54,555,608円
(平成15年度〜17年度)
就職促進給付
10,112,859円
(平成15年度〜17年度)
64,668,467円
 

1 保険給付の概要

(1)雇用保険

 雇用保険は、常時雇用される労働者等を被保険者とし、被保険者が失業した場合及び被保険者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合などに、その生活及び雇用の安定を図るなどのため失業等給付金の支給を行うほか、雇用安定事業、能力開発事業及び雇用福祉事業を行う保険である。

(2)失業等給付金の種類

 失業等給付金には、次の求職者給付及び就職促進給付のほか、教育訓練給付及び雇用継続給付の4種がある。

ア 求職者給付には7種の手当等があり、このうち、

(ア)基本手当は、失業等給付金の支給額の大半を占めかつ失業者の生活の安定を図る上で基本的な役割を担うもので、受給資格者(注1) が失業している日について所定給付日数を限度として支給される。

(イ)特例一時金は、被保険者であって季節的に雇用される者等が失業した場合に支給される。

イ 就職促進給付には5種の手当等があり、このうち再就職手当は、受給資格者が基本手当を受給できる日数を所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上残して安定した職業に就いた場合に支給(注2) される。

 受給資格者 被保険者が、離職し労働の意思及び能力を有するにもかかわらず職業に就くことができない状態にあり、原則として、離職日以前1年間に被保険者期間が通算して6箇月以上あることの要件を満たしていて、公共職業安定所において基本手当を受給する資格があると決定された者
 平成15年3月1日から17年3月31日までの間に所定給付日数の3分の2以上残して再就職した場合には、再就職手当に代えて財団法人高年齢者雇用開発協会から早期再就職支援金(後掲の「早期再就職者支援基金事業における早期再就職者支援金の支給が不当と認められるもの」 参照)が支給される。

(3)失業等給付金の支給

 上記の手当等は、公共職業安定所が次のように支給決定を行い、これに基づいて厚生労働本省が支給することとなっている。
ア 基本手当及び特例一時金については、受給資格者等から提出された失業認定申告書等に記載されている就職又は就労(臨時的に短期間仕事に就くこと)の有無等の事実について確認し、失業の認定を行った上、支給決定を行う。
イ 再就職手当については、受給資格者から提出された再就職手当支給申請書に記載されている雇入年月日等について調査確認の上、支給決定を行う。

2 検査の結果

(1)検査の対象及び方法

 北海道労働局ほか22労働局の札幌公共職業安定所ほか213公共職業安定所管内において、平成14年度から18年度までの間に失業等給付金の支給を受けた者(以下、失業等給付金の支給を受けた者を「受給者」という。)のうち9,655人を対象として、公共職業安定所における失業等給付金の支給決定の適否について、受給者が提出した失業認定申告書等により検査した。

(2)不適正支給の事態

 検査したところ、北海道労働局ほか19労働局の札幌公共職業安定所ほか111公共職業安定所管内における15年度から18年度までの間の受給者293人に対する失業等給付金(支給額195,431,516円)のうち、64,668,467円が適正に支給されていなかった。これを給付の種別に示すと次のとおりである。

ア 求職者給付

 札幌公共職業安定所ほか111公共職業安定所管内の受給者292人に対する基本手当及び特例一時金(支給額185,318,657円)のうち、54,555,608円(基本手当53,589,858円、特例一時金965,750円)が適正に支給されていなかった。
 このような事態が生じていたのは、受給者が誠実でなく、再就職していながらその事実を失業認定申告書等に記載していないなどのため、同申告書等の内容が事実と相違するなどしていたのに、上記の112公共職業安定所において、これに対する調査確認が十分でないまま支給決定を行っていたことによると認められる。

イ 就職促進給付

 札幌公共職業安定所ほか34公共職業安定所管内の受給者45人に対する再就職手当の支給額10,112,859円全額が適正に支給されていなかった。
 このような事態が生じていたのは、受給者が誠実でなく、再就職手当支給申請書に事実と相違した雇入年月日を記載するなどしていたのに、上記の35公共職業安定所において、これに対する調査確認が十分でないまま支給決定を行っていたことによると認められる。
 なお、これらの不適正支給額については、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。
 これらの不適正支給額を都道府県労働局ごとに示すと次のとおりである。

労働局名
公共職業安定所
本院が調査した受給者数
不適正受給者数
左の受給者に支給した失業等給付金
左のうち不適正失業等給付金
 
 
千円
千円
北海道
札幌ほか9
699
38
23,815
7,129
札幌ほか2
77
3
357
357
小計
 
 
24,173
7,487
栃木
佐野ほか3
105
4
3,519
577
 
小計
 
 
3,519
577
群馬
前橋ほか3
279
7
7,487
2,000
 
小計
 
 
7,487
2,000
千葉
千葉ほか1
137
7
4,099
1,868
 
小計
 
 
4,099
1,868
東京
上野ほか10
410
21
12,780
7,128
渋谷ほか4
117
7
1,783
1,783
小計
 
 
14,564
8,912
神奈川
横浜ほか4
195
6
3,365
2,998
横須賀
11
1
79
79
小計
 
 
3,445
3,078
新潟
新潟ほか3
281
19
7,159
2,013
長岡
17
2
628
628
小計
 
 
7,788
2,642
石川
金沢
108
8
8,365
1,843
金沢
29
4
926
926
小計
 
 
9,291
2,770
岐阜
岐阜ほか3
307
12
9,560
1,202
多治見
5
1
201
201
小計
 
 
9,762
1,404
愛知
名古屋中ほか9
270
18
13,302
5,257
名古屋東ほか3
45
5
1,154
1,154
小計
 
 
14,457
6,412
京都
京都西陣ほか3
238
14
6,378
2,599
京都西陣
43
2
613
613
小計
 
 
6,991
3,212
大阪
大阪東ほか8
380
28
14,872
4,636
大阪東ほか4
79
6
1,512
1,512
小計
 
 
16,384
6,149
兵庫
灘ほか5
187
14
7,764
2,607
姫路ほか1
2
2
541
541
小計
 
 
8,306
3,149
島根
松江ほか3
227
12
6,561
1,160
 
小計
 
 
6,561
1,160
香川
高松ほか3
274
7
3,465
908
高松ほか1
36
2
387
387
小計
 
 
3,853
1,296
高知
高知ほか3
256
15
13,620
1,474
須崎
10
1
140
140
小計
 
 
13,760
1,614
福岡
福岡中央ほか6
472
13
4,986
1,647
大牟田ほか1
55
3
631
631
小計
 
 
5,618
2,279
長崎
長崎ほか6
371
17
14,582
3,262
諫早ほか2
27
3
761
761
小計
 
 
15,343
4,023
鹿児島
鹿児島ほか6
476
20
12,706
1,848
川内
9
1
84
84
小計
 
 
12,790
1,932
沖縄
那覇ほか4
336
13
6,925
2,389
那覇ほか1
33
2
306
306
小計
 
 
7,232
2,696
求職者給付計
112箇所
6,007
292
185,318
54,555
就職促進給付計
35箇所
595
45
10,112
10,112
合計
 
 
 
195,431
64,668

 上段は求職者給付に係る分、下段は就職促進給付に係る分である。
 公共職業安定所数及び不適正受給者数については、各給付間で重複しているものがあり、実数はそれぞれ112箇所、293人である。
 求職者給付計の本院が調査した受給者数及び不適正受給者数については、同一の受給者が複数の労働局で失業等給付金の支給を受けているものがあるため、労働局別の受給者数を集計した数とは一致しない。