会計名
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厚生保険特別会計
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国民年金特別会計
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部局等の名称
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社会保険庁
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国有の物品の時価評価額の算定の概要
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独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構に出資された国有の物品の時価評価額を減価償却の計算を行うなどして算定するもの
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国有の物品に係る政府出資金の額
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14億9818万余円
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過小となっている時価評価額
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1億3416万円
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(平成18年10月30日付け 社会保険庁長官あて)
標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を要求する。
記
貴庁では、厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)、国民年金法(昭和34年法律第141号)及び健康保険法(大正11年法律第70号)に基づき、厚生年金保険、国民年金及び政府管掌健康保険の被保険者、年金受給者等の健康の保持増進、福祉の増進等を目的として、年金の福祉施設及び政府管掌健康保険の保健・福祉施設(以下「年金・健康保険福祉施設」という。)を多数設置し、運営してきた。
これらの年金・健康保険福祉施設については、年金の福祉施設の抜本的な見直しを行うこととした与党年金制度改革協議会の合意等を踏まえ、近年の年金制度等を取り巻く厳しい財政状況、施設を取り巻く社会環境及び国民のニーズの変化等にかんがみ、整理合理化を行うとされたことから、貴庁では、平成17年3月に「年金・健康保険福祉施設(病院を除く)に係る整理合理化計画」を取りまとめた。そして、独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構(以下「機構」という。)を同年10月に設立して、これに整理合理化の対象となる年金・健康保険福祉施設を出資し、機構成立後5年以内に民間等に譲渡し又は廃止することとした。
機構がその成立時に国から承継する年金・健康保険福祉施設に係る土地、建物その他の財産の価額の合計額に相当する金額は、政府から機構に出資されたものとするとされ、この金額(以下「政府出資金の額」という。)は、機構の成立の日現在における時価を基準として厚生労働大臣が任命した評価委員が評価した価額とするとされている。
そして、この評価委員による評価のため、貴庁では、各地方社会保険事務局に対して通知等を発し、機構が承継する288の年金・健康保険福祉施設ごとに、国有財産又は国有の物品(電話加入権等の無形固定資産を含む。以下「国有物品」という。)の別に時価評価額を算定するよう指示しており、その算定結果に基づき、機構が承継する288施設の時価評価額を計192,180,453,870円と算定している。
このうち、国有物品の時価評価額については、「年金の福祉施設等の国有物品について」(平成16年庁文発第1220009号社会保険庁総務部経理課長・運営部企画課長通知)等の通知により、上記の288施設で供用しているすべての国有物品を対象として、物品管理簿上の取得価格を基に税法上の減価償却を適用して算定することとしており、各地方社会保険事務局では、物品管理簿と現有の国有物品を突合・確認の上、貴庁が表計算ソフトにより作成した「物品減価償却試算表」(以下「試算表」という。)に、対象となる国有物品の品名、取得年月日、単価、数量等のデータを入力して、国有物品ごとに時価評価額を算定することとされている。その際、減価償却については、上記の通知に添付されている耐用年数表において物品の所属分類(「家具、電気機器(ガス機器を含む)及び家庭用品」、「その他有形固定資産」等)ごとに設けられた適用区分の入力コード(以下「区分コード」という。)を試算表に入力することにより、区分コードごとにあらかじめ設定された耐用年数を適用した定額法で、国有物品の取得時点から出資時点までの減価償却が自動的に計算されるようになっており、各地方社会保険事務局は、その減価償却後の価額をそれぞれの国有物品の時価評価額としている。
そして、貴庁では、独立行政法人において、取得価格が50万円未満の資産は原則として資産計上しないとされていることなどから、上記の時価評価額が50万円以上となる国有物品の価額を政府出資金の額に計上することとし、出資された国有物品の時価評価額を計1,498,189,650円と算定している。
機構に出資された国有物品の時価評価額は、政府出資金の額及び機構の資本金の額の基礎となり、ひいては、今後、機構が年金・健康保険福祉施設の譲渡等の業務を行うに当たり、その入札を実施する際の予定価格にも反映されるものであることから適正に算定されることが必要である。
そこで、正確性等の観点から、機構に出資された国有物品の時価評価額が適正に算定されているかなどに着眼して検査した。
前記288施設の国有物品について、貴庁及び北海道社会保険事務局ほか27社会保険事務局(注1) 並びに機構(年金・健康保険福祉施設を含む。)を対象として、貴庁においては全国47社会保険事務局分の試算表を精査して、北海道社会保険事務局ほか27社会保険事務局においては試算表と物品管理簿等とを照合するなどして、また、機構においては承継された国有物品を実際に確認するなどして検査を実施した。
検査したところ、試算表に不適切な部分があったため、国有物品の時価評価額が過小となっていた。
すなわち、貴庁では、国有物品のうち美術品等については、前記通知の耐用年数表において「その他有形固定資産」に分類し、減価償却を行わない資産に該当するものとしていた。そして、北海道社会保険事務局ほか24社会保険事務局(注2)
では、美術品等の時価評価額を算定するに当たり、試算表に「その他有形固定資産」の区分コードを入力していた。
しかし、試算表には、「その他有形固定資産」の区分コードが入力されたときは、減価償却の計算を行わない計算式とすべきところ、既に耐用年数が経過したものとして減価償却の計算を行う計算式が設定されていたため、美術品等の時価評価額は残存価格である取得価格の10%となり、減価償却の計算を行わない場合と比べて過小となっていた。また、そのうち、時価評価額が50万円未満と算定されたものは政府出資金の額に計上されていなかった。
東京社会保険事務局では、管理していた国民年金健康保養センターの国有物品のうち油絵2点(30号・取得価格100万円、40号・取得価格150万円)について、「その他有形固定資産」の区分コードを試算表に入力した。しかし、試算表では、既に耐用年数が経過したものとして減価償却の計算が行われたため、時価評価額は、それぞれ10万円、15万円と算定され、いずれも政府出資金の額に計上されていなかった。上記について、「その他有形固定資産」に分類された国有物品を減価償却しないこととして修正計算すると、前記の25社会保険事務局における国有物品(88点、取得価格138,485,452円)の時価評価額は、次表のとおり、計134,161,052円過小になっていると認められる。
国有物品1点当たりの取得価格
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国有物品の取得価格
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貴庁の算定した時価評価額
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適切と認められる時価評価額
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過小と認められる時価評価額
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50万円以上500万円未満
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95,241,452
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(9,524,146)
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95,241,452
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95,241,452
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500万円以上
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43,244,000
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4,324,400
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43,244,000
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38,919,600
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計
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138,485,452
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\
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計
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134,161,052
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また、貴庁及び青森社会保険事務局ほか10社会保険事務局(注3) において、国有物品の時価評価額を算定するに当たり、室内装飾品等として「家具、電気機器(ガス機器を含む)及び家庭用品」の区分コードを試算表に入力していたものの中には、取得価格が高額な絵画、彫刻等が相当数見受けられ、これらの中には、美術品等として、減価償却の計算を行う必要のないものがあると認められる。したがって、室内装飾品等とされた絵画、彫刻等については、美術品等に該当するかどうかを貴庁において確認し、時価評価額について必要な修正を行う要があると認められる。
上記のように、機構に出資された国有物品の時価評価額の算定が適正となっていないため、機構に対する政府出資金の額及び機構の財務諸表等における資本金等の額が正しく表示されていない事態は、是正改善を図る要があると認められる。
このような事態が生じているのは、主として、貴庁において試算表を作成して各地方社会保険事務局に送付する際に、十分確認していなかったことなどによると認められる。
機構に出資された年金・健康保険福祉施設の国有物品の時価評価額は、政府出資金の額及び機構の資本金の額の基礎となり、ひいては、今後、機構が年金・健康保険福祉施設の譲渡等の業務を行っていくに当たり、その入札を実施する際の予定価格に反映されるものであることから適正に算定されることが必要である。
また、貴庁では、機構に対して今後も年金・健康保険福祉施設15施設及び厚生年金病院10施設の追加出資を予定していることから、国有物品の時価評価額を正しく算定することが求められる。
ついては、貴庁において、政府出資金の額を適切なものとするため、次のような処置を講ずる要があると認められる。
ア 本院の指摘により判明した時価評価額に係る誤りを修正して適正なものにすること
イ 修正した時価評価額を基に評価委員による再評価を受けるなどして政府出資金の額等を適切なものに改めること、及び、これに基づき修正した政府出資金の額を機構に通知すること
ウ 今後機構に追加出資する年金・健康保険福祉施設等の国有物品の時価評価額の算定に当たり、同様の事態が生じないよう、算定方法を改善するとともに美術品等の適切な評価について周知徹底を図ること
北海道社会保険事務局ほか27社会保険事務局 北海道、宮城、秋田、福島、茨城、栃木、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、石川、静岡、愛知、京都、大阪、兵庫、島根、岡山、広島、山口、愛媛、福岡、佐賀、長崎、大分、鹿児島、沖縄各社会保険事務局
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北海道社会保険事務局ほか24社会保険事務局 北海道、宮城、秋田、山形、茨城、東京、新潟、富山、石川、福井、長野、三重、滋賀、京都、大阪、兵庫、和歌山、鳥取、岡山、広島、徳島、香川、高知、福岡、宮崎各社会保険事務局
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青森社会保険事務局ほか10社会保険事務局 青森、岩手、群馬、埼玉、千葉、静岡、愛知、島根、佐賀、熊本、大分各社会保険事務局
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