会計名及び科目
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一般会計 (組織)農林水産本省 (項)農村振興費
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部局等の名称
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農林水産本省、東北、関東、北陸、東海、近畿、中国四国、九州各農政局、沖縄総合事務局(平成13年1月5日以前は総理府沖縄開発庁沖縄総合事務局)
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補助の根拠
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予算補助
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補助事業者
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北海道ほか16府県
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間接補助事業者
(事業主体)
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市16、町34、村11、計61市町村
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中山間地域等直接支払制度の概要
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中山間地域等における農業生産の維持を通じて耕作放棄地の発生を防止し、その多面的機能を確保する観点から、平地地域と中山間地域等との農業生産条件の不利性を直接的に補正するため、中山間地域等において農業生産活動等を行う農業者等に対し交付金を交付するもの
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交付の対象とならない農用地等に係る交付金交付額
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2億1409万余円
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(平成12年度〜16年度)
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上記に対する国庫補助金相当額
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1億0415万円
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農林水産省では、食料・農業・農村基本法(平成11年法律第106号)に基づき、中山間地域等直接支払交付金実施要領(平成12年12構改B第38号農林水産事務次官依命通知。以下「実施要領」という。)等を制定し、平成12年度から16年度までの5年間を実施期間として、中山間地域等直接支払制度を創設した。
本制度は、山間地及びその周辺の地域その他の地勢等の地理的条件が悪く、農業の生産条件が不利な中山間地域等における農業生産の維持を通じて、耕作放棄地の発生を防止し、中山間地域等の農業・農村が有する水源かん養機能、洪水防止機能等の多面的機能を確保する観点から、平地地域と中山間地域等との農業生産条件の不利性を直接的に補正するため、中山間地域等の農業者等に対して中山間地域等直接支払交付金(以下「交付金」という。)を交付するものである。交付金の負担割合は、原則として国1/2、都道府県1/4、市町村1/4とされており、12年度から16年度までの交付額は2566億余円(国庫補助金相当額1240億余円)となっている。
そして、本制度は、基本的な枠組み及び要件は従来どおりとしつつ、17年度から21年度までの5年間を実施期間とした新たな対策として引き続き実施されている。
交付金は、中山間地域等において、農業者等が継続して農用地における耕作、水路、農道等の維持管理等の農業生産活動等を行う場合に、農用地の地目、生産条件の不利性及び面積に応じて交付されるもので、その具体的な要件及び交付額は実施要領等により次のようになっている。
ア 制度の対象となる農用地
本制度の対象となる農用地(以下「対象農用地」という。)は、山村振興法(昭和40年法律第64号)等に基づき振興山村地域等に指定されている地域等内の農用地区域(農業振興地域の整備に関する法律(昭和44年法律第58号)に定める農用地等として利用すべき土地の区域をいう。以下同じ。)内に存する1ha以上の面積を有する一団の農用地であって、〔1〕勾配が田で1/20以上、畑、草地及び採草放牧地で15度以上である農用地(以下「急傾斜農用地」という。)、〔2〕勾配が田で1/100以上1/20未満、畑、草地及び採草放牧地で8度以上15度未満である農用地(以下「緩傾斜農用地」という。)であって市町村長が特に必要と認めるものなどのいずれかの基準を満たすものとされている。
この場合において、農用地の勾配については、原則として、一つの農用地又は畦畔等を境に隣接している農用地(以下「団地」という。)ごとに判定することなどとされている。
また、対象農用地の面積については、国土調査による地籍図又は土地改良法(昭和24年法律第195号)に基づく区画整理事業に伴う確定測量図等(以下「地籍図等」という。)がある場合には、それらに基づく台帳の面積とし、地籍図等がない場合は1/2,500程度以上の縮尺図面等の図測によることなどとされている。
イ 交付金の交付対象となる農業者等及び農用地
交付金の交付対象となる者は、対象農用地において農業生産活動等を行う農業者等の間で締結される集落協定、又は対象農用地の所有者等と農業者等との間で締結される個別協定(以下、これらの協定を「集落協定等」という。)に基づき、5年間以上継続して農業生産活動等を行う農業者等とされている。
上記の集落協定等では、対象農用地のうち協定の対象となる農用地(以下「協定農用地」という。)の範囲、農業生産活動等として取り組むべき事項等が定められ、その協定農用地が交付金の交付対象となる。
なお、12年3月31日までに耕作放棄地となった農地(以下「既耕作放棄地」という。)については、16年度までに耕作し得る状態に復旧又は林地化することを条件として、協定農用地に含め交付金の交付対象とすることができることとされている。
ウ 交付金の交付額
農業者等への毎年度の交付金の交付額は、協定農用地10a当たり田の急傾斜農用地21,000円、緩傾斜農用地8,000円、畑の急傾斜農用地11,500円、緩傾斜農用地3,500円などとされている。
本制度の実施に当たり、対象農用地の選定及び面積の測定は市町村において行うことになっている。そして、市町村長は、実施要領等に基づき、対象農用地の範囲、交付金の使用方法等の事項を内容とする基本方針を策定し、都道府県知事の審査、認定を受けるとともに、集落協定等の審査、認定を行うこととされている。
また、市町村は、協定農用地について、毎年度、勾配の基準等に基づく審査を行うとともに、農業生産活動等の実施状況の現地確認を行うこととされている。
そして、集落協定等に違反した場合には、市町村長は交付金の返還等の措置を講ずることとされている。このうち、協定農用地について耕作又は維持管理が行われなかった場合は、協定農用地のすべてについての交付金を協定認定年度に遡って返還することとされている。また、協定農用地に含まれる既耕作放棄地の復旧等が行われなかった場合は、既耕作放棄地分については協定認定年度に遡って返還し、その他の協定農用地については、当該年度以降の交付金の交付対象としないこととされている。
本制度は、中山間地域等における農業生産条件の不利性を直接的に補正するために農業者等に交付金を交付するものであり、実施要領では、広く国民の理解を得るためには実施に当たって明確かつ合理的・客観的な基準の下に透明性を確保していくことが必要であるなどとされている。そして、本制度は17年度以降も引き続き実施されているところである。
そこで、合規性、有効性等の観点から、本制度がその趣旨を踏まえ実施要領等に基づき適切に実施されているか、農業生産活動等の確保が図られているかなどに着眼して、市町村の基本方針、農業者等の集落協定等及び協定農用地の現況等について検査した。
北海道ほか23府県(注1) 489市町村が12年度から16年度までの間に交付した交付金955億1094万余円(国庫補助金相当額461億5945万余円)を対象に検査を実施した。
検査したところ、北海道ほか16府県(注2)
61市町村において適切とは認められない事態(交付金交付額計2億1409万余円、国庫補助金相当額計1億0415万余円)が見受けられた。
これらを態様別に示すと次のとおりである。
(1)対象農用地の選定や面積の測定が適切に行われていなかったため、協定農用地の中に交付金の交付対象とならない農用地が含まれていたり、協定農用地の面積が過大になっていたりなどしていたもの
北海道ほか16府県
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56市町村
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交付金交付額計
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1億7892万余円
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国庫補助金相当額計
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8801万余円
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ア 農用地区域外の農用地が協定農用地に含まれていたもの
北海道ほか5県
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13市町村
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交付金交付額計
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3680万余円
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国庫補助金相当額計
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1819万余円
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対象農用地は農用地区域内の農用地とされているのに、市町村が農用地区域外の農用地を対象農用地としていたため、協定農用地の中に交付金の交付対象とならない農用地が含まれていた。
イ 勾配に係る基準を満たさない農用地が協定農用地に含まれていたり、協定農用地の傾斜区分が実際と異なっていたりしていたもの
北海道ほか10府県
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23市町村
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交付金交付額計
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1億2787万余円
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国庫補助金相当額計
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6273万余円
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農用地の勾配は団地ごとに判定することとされているのに、市町村が複数の団地を併せて加重平均して算出した勾配により判定するなどして対象農用地としていたため、急傾斜農用地及び緩傾斜農用地のいずれにも該当しない農用地が協定農用地に含まれていたり、緩傾斜農用地に該当する農用地が急傾斜農用地とされていたりしていた。
ウ 協定農用地の面積が過大となっていたもの
北海道ほか8県
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24市町村
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交付金交付額計
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1424万余円
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国庫補助金相当額計
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708万余円
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対象農用地の面積は、地籍図等がある場合にはそれらに基づく台帳の面積とすることとされているのに、市町村が地籍図等ではなく縮尺図面等により面積を測定するなどしていたため、協定農用地の面積が過大となっていた。
(2)集落協定において取り組むこととされていた農業生産活動等が適切に行われていなかったもの
福島県ほか2県
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5町
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交付金交付額計
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3516万余円
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国庫補助金相当額計
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1614万余円
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ア 協定農用地の一部について農業生産活動等が行われていなかったもの
鳥取県
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3町
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交付金交付額計
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2464万余円
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国庫補助金相当額計
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1232万余円
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協定農用地において集落協定の締結後5年間以上継続して農業生産活動等を行うことが交付金の交付要件とされているのに、その一部が5年経過前に宅地にされていて、農業生産活動等が行われていなかった。また、これについて町では交付金の返還等の措置を講じていなかった。
イ 協定農用地に含めていた既耕作放棄地の一部について復旧が行われていなかったもの
福島県ほか1県
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2町
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交付金交付額計
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1052万余円
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国庫補助金相当額計
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382万余円
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集落協定において、既耕作放棄地を16年度までに耕作し得る状態に復旧することとして協定農用地に含めていたのに、その一部が16年度までに復旧されていなかった。また、これについて町では交付金の返還等の措置を講じていなかった。
このような事態が生じていたのは、集落協定等を締結している農業者等、市町村及び道府県において制度の趣旨に対する理解が十分でないことにもよるが、次のことなどによると認められた。
ア 市町村において、
(ア)対象農用地の選定等に当たり、制度の内容の理解が十分でなく、農用地区域内の農用地であることの確認が十分でなかったり、団地の勾配の判定方法や対象農用地の面積の測定方法を誤ったりしていたこと
(イ)協定農用地について、勾配の基準等に基づく審査や農業生産活動等の実施状況の現地確認、及び現地確認等に基づく農業者等に対する適切な指導が十分に行われていなかったこと
イ 道府県において、市町村における対象農用地の選定及び面積の測定や、協定農用地に係る審査及び現地確認の実態の把握、並びにこれらに基づく市町村に対する適切な指導が十分に行われていなかったこと
ウ 農林水産省において、道府県及び市町村に対する制度の趣旨及び内容についての周知徹底、道府県及び市町村における制度の実施状況の把握並びに制度の適切な実施に資する情報提供及び指導助言が十分に行われていなかったこと
上記に対する本院の指摘に基づき、農林水産省では、18年9月に各地方農政局等に対して通知を発し、制度が適切に実施されていなかった前記の事態について所要の措置を講ずるとともに、都道府県及び市町村に対し制度の趣旨及び内容について周知徹底を図り、制度の適切かつ効果的な実施を確保するために次のような処置を講じた。
ア 市町村に対し、対象農用地の選定及び面積の測定や協定農用地に係る審査及び現地確認がそれぞれ適切に行われているかについて具体的な調査方法を明記したチェックシートにより実態調査を実施させるとともに、その調査結果を都道府県を経由して地方農政局等に報告させることとした。
イ 都道府県に対し、上記の実態調査により是正が必要と判明した事態について、市町村に是正計画を策定するよう指導を行い、当該是正計画についてその適否を判断の上、地方農政局等に報告させることとした。
(注1) | 北海道ほか23府県 北海道、京都府、秋田、山形、福島、茨城、富山、山梨、長野、静岡、三重、兵庫、奈良、鳥取、島根、広島、山口、香川、愛媛、福岡、佐賀、大分、宮崎、沖縄各県
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(注2) | 北海道ほか16府県 北海道、京都府、秋田、山形、福島、富山、山梨、長野、三重、兵庫、鳥取、島根、広島、香川、大分、宮崎、沖縄各県
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