科目
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一般勘定 (款)事業収入 (項)受信料
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部局等の名称
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日本放送協会
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受信契約の概要
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日本放送協会の放送を受信することのできるテレビジョン受信機を設置した者が、放送法に基づき日本放送協会とその放送の受信について締結する契約
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事業所等との受信契約件数
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2,114千件(平成17年度末現在)
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上記の契約に係る受信料収入
(推計額)
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350億円(平成17年度)
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日本放送協会(以下「協会」という。)は、放送法(昭和25年法律第132号)により、公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように豊かで、かつ、良い放送番組による国内放送を行うことなどを目的として設立された法人で、その財政は、主として協会の放送を受信することのできるテレビジョン受信機(以下「受信機」という。)を設置した者が支払う受信料で賄われている。
放送法では、受信機を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約(以下「受信契約」という。)をしなければならないとされている。そして、協会が総務大臣の認可を受けて制定した日本放送協会放送受信規約では、受信契約は、個人がその世帯に受信機を設置する場合には原則として世帯ごとに、法人等がその事業所等に受信機を設置する場合には、当該事業所等の部屋、自動車等、受信機の設置場所ごとに行うこととなっている。
協会では、受信契約のうち事業所等との受信契約(以下「事業所契約」という。)の対象件数を総務省の「事業所・企業統計調査」の事業所数等を基に推計しており、平成17年度の対象件数は286万件としている。
一方、17年度末の事業所契約の契約件数は、211万4千件(このほか受信料の支払を免除しているものが81万件)となっており、「ホテル・旅館」(45万件)、「官公庁」(25万件)が上位を占めている。なお、事業所契約に係る17年度の受信料収入を契約件数から推計すると約350億円となる。
協会では、上記の事業所契約の締結に当たり、受信機の設置状況を調査している。その方法は、協会は事業所等内に立ち入って調査する権限がないことから、協会職員等が事業所等の担当者から受信機の設置場所・台数等を聴取するなどのほか、国、地方公共団体等の大規模な事業所等については、「テレビ設置状況調査票」(以下「テレビ調査票」という。)を配布又は郵送し、これに施設の名称・住所・電話番号、受信機の設置場所・台数等を記載するよう依頼している。そして、協会では、上記の聴取結果やテレビ調査票に記載された受信機の設置状況に基づいて受信契約を締結している。
協会では、事業所契約を重点的に担当するための部署として、16年6月に本部内に「法人営業センター」を設置し、同センターに、全国各地の放送局や営業センター(以下「地方放送局等」という。)が行う事業所契約についての指導と支援等を行わせることとしている。また、事業所等のうち、国、東京都、独立行政法人等は法人営業センターが担当し、その他の地方公共団体、ホテル、旅館等は、その所在地域の地方放送局等が担当することとしている。
事業所契約の締結に当たっては、前記のとおり、協会は事業所等内に立ち入って調査する権限がないため、事業所等の担当者からの聴き取りやテレビ調査票への記載依頼等により、受信機の設置状況を把握し、これに基づいて受信契約を締結している。
そこで、経済性・効率性等の観点から、協会において受信機の設置状況を的確に把握し、受信契約の締結の促進に努めているかなどに着眼して、事業所契約件数の上位を占めており、組織の詳細又は客室数が公表されていて受信機の設置場所・台数が比較的容易に把握できる国、独立行政法人、国立大学法人、地方公共団体等(以下「官公庁等」という。)並びにホテル及び旅館(以下「ホテル等」という。)を対象として検査した。
そして、検査に当たっては、官公庁等については、受信契約の管理システム上、官公庁等ごとの契約状況を一覧で把握することが困難な状況であるため、協会が官公庁等における受信機の設置状況の把握の手段としているテレビ調査票に着目し、法人営業センター及び全国の地方放送局等からテレビ調査票を取り寄せ、これに記載された受信機の設置場所等と公表されている官公庁等の組織を対照するなどの方法により検査を行った。一方、ホテル等については、ホテル等ごとの契約件数が受信契約の管理システムで把握でき、また、各客室に受信機が設置されていることが想定されることから、検査を実施した地方放送局等において、出版物等に掲載されている各ホテルの客室数と受信契約の管理システムに登録されている契約件数を突合するなどの方法により検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
国の機関である省庁等については、前記のとおり、その地方支分部局も含め法人営業センターが担当することとし、同センターは、毎年、それぞれの本省庁等に地方支分部局も含めたすべての組織の受信機の設置状況について、テレビ調査票の記載を依頼していた。
しかし、地方支分部局を含めたすべての組織の受信機の設置状況を記載したテレビ調査票が提出されていたのは5省庁等のみで、その他の省庁等については、協会職員等のテレビ調査票に記載すべき事項、記載の方法等についての説明が十分でないなど依頼の仕方が適切でなかったことなどから、本省庁等の内部部局やその附属機関等における設置状況のみを記載したテレビ調査票しか提出されていなかった。
このため、テレビ調査票に記載されていない省庁等の地方支分部局について、法人営業センターでは、東京近郊に所在する地方支分部局は自ら担当し、東京近郊以外の地域に所在する地方支分部局は地方放送局等に担当させることにしていた。
そこで、これらの地方支分部局のテレビ調査票の保管状況を検査したところ、地方放送局等に担当させることにした地方支分部局約4,300箇所のテレビ調査票については、法人営業センターと地方放送局等との間の連絡・調整が十分でなかったなどのため、地方放送局等で約1,900箇所の分しか保管されておらず、半数以上の地方支分部局については受信機の設置状況を的確に把握しているとはいえない状況となっていた。
独立行政法人については、すべて法人営業センターが担当することとしているが、113法人のうち3法人についてはテレビ調査票が保管されていなかった。
また、国の省庁等と同様に、提出されたテレビ調査票に地方に所在する機関の受信機の設置状況が記載されていない法人も見受けられた。そして、独立行政法人は法人営業センターの担当としていることもあり、これらの法人の地方に所在する機関の設置状況は、地方放送局等でもほとんど把握していなかった。
国立大学法人については、東京都に所在する11法人は法人営業センターが担当し、残りの78法人は地方放送局等が担当することとしていた。
しかし、地方放送局等が担当する78法人のうち28法人については、テレビ調査票が保管されておらず、受信機の設置状況を的確に把握しているとはいえない状況となっていた。
地方公共団体については、東京都のみ法人営業センターが担当し、他の道府県、市区町村については地方放送局等が担当することとしていた。そして、各地方公共団体のテレビ調査票の保管、記載等の状況について検査したところ、地方放送局等が担当している地方公共団体について、以下のとおり、受信機の設置状況の把握が十分できていなかった。
ア 道府県について
道府県の場合、テレビ調査票は、本庁、警察、病院及び高校等の機関別に提出されているものが多い。そこで、地方放送局等における機関別の保管状況をみたところ、本庁分で3県、警察分で11県、病院分で14道県、高校等分で7県についてテレビ調査票が保管されていなかった。また、保管されているテレビ調査票の調査年度について、本庁分でみると、10年度から17年度まで区々となっていた。
さらに、テレビ調査票の記載内容をみたところ、警察分で警察署・交番等に設置されている受信機に関する記載がないもの、病院分で病室に設置されている受信機に関する記載がないもの、高校等分で高校、専門学校、大学等の一部の学校しか記載されていないものなどが多数見受けられた。
イ 市区町村について
市区町村の場合も、テレビ調査票は、本庁、消防、小中学校及び保育所の機関別に提出されているものが多い。そこで、地方放送局等における機関別の保管状況をみたところ、協会がテレビ調査票の記載を依頼した時点で存在した全国2,574市区町村のうち、本庁分で352市区町村、消防分で1,348市区町村、小中学校分で633市区町村、保育所分で1,517市区町村についてテレビ調査票が保管されていなかった。
また、テレビ調査票の記載内容をみると、道府県の場合と同様に、消防分で消防署、消防団等に設置されている受信機に関する記載がないものが見受けられた。さらに、保育所分では、受信機の設置場所により受信料が有料(事務室)又は免除(保育室等)と扱いが分かれるが、受信機の具体的な設置場所の記載がないのに全数を免除扱いとしているものなどが多数見受けられた。
ホテル等との受信契約は、各地方放送局等が担当することとしていた。そして、その契約の締結に当たっては、ホテル等の新設又は増設時に地方放送局等の職員が訪問して受信契約の交渉を行っており、受信契約件数は、ホテル等からの申告に基づいたものとなっていた。
今回、検査を実施した地方放送局等が所在している北海道ほか15都府県(注)
に所在するホテルのうち、5つのホテルグループに属する128ホテルについて、公表されている数の客室にすべて受信機が設置されていると仮定して、その契約率(客室数に対する受信契約件数の比率)を試算したところ、各ホテルグループごとの契約率には最大で80ポイント以上の差がある状況となっていた。
また、契約率が最も高いホテルグループに属する各ホテルについて、その所在する地方放送局等ごとに契約率を試算したところ、その契約率は区々となっており、最大50ポイント以上の差がある状況となっていた。
上記のように、官公庁等について、地方放送局等でテレビ調査票が保管されていなかったり、テレビ調査票の記載内容が十分なものとなっていなかったり、また、ホテル等について、ホテルグループや地方放送局等の間で契約率が区々となっていたりなどしている事態は、受信契約の締結を促進する上で適切とは認められず、改善を図る必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、次のようなことなどによると認められた。
ア 全国的な規模を有する事業所等の地方組織との受信契約について、協会職員のテレビ調査票の重要性に対する認識が十分でなく、法人営業センターと地方放送局等との担当区分が明確となっていなかったこと
イ 事業所等の担当者に、受信機を設置した者は協会と受信契約をしなければならないと放送法等の定めの趣旨が徹底されていなかったことや、テレビ調査票について、記載すべき事項、記載の方法、記載された内容の確認方法、記載依頼の周期等が明確にされていなかったこと
ウ ホテル等との受信契約について、法人営業センターの指導による統一的な取組が行われていなかったこと
上記についての本院の指摘に基づき、協会では、事業所等における受信機の設置状況を適切に把握するなどして、受信契約の締結を促進するよう、18年7月以降、次のような処置を講じた。
ア 事業所契約について、法人営業センターと地方放送局等との間の担当区分を明確化した。
イ 受信機の設置状況の調査について、事業所等の担当者に放送法等の趣旨を理解してもらうための文書やテレビ調査票の標準的な書式を定めるとともに、協会の担当者会議を開催するなどして、テレビ調査票の記載依頼等を適切に行うよう地方放送局等に周知徹底をした。
ウ ホテル等との受信契約について、全国に展開しているホテルグループのうち、契約率の低いホテルグループについては法人営業センターが計画的に対応することとするとともに、その他のホテルについても法人営業センターの指導により地方放送局等に統一的な取組を行わせることとした。