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  • 平成18年10月

社会保障費支出の現状に関する会計検査の結果について


(1)生活保護の現況

ア 被保護実世帯数、被保護実人員、保護率等の推移

 被保護実世帯数及び被保護実人員(注2) は、図4—5のとおり、昭和60年頃より減少の傾向にあったが、平成7年度の被保護実世帯数601,925世帯、被保護実人員882,229人あたりから増加に転じ、16年度には被保護実世帯数998,887世帯、被保護実人員1,423,388人となっている。その結果、被保護実人員の人口に占める割合(以下「保護率」という。)は7年度の7.0‰(千分比)から16年度の11.1‰に増加し、被保護実世帯数の総世帯数に占める割合も7年度の14.7‰から16年度の21.5‰へと増加している。

(注2)
 被保護実世帯数及び被保護実人員 現に保護を受けている世帯数及び人員に、臨時の収入増等により一時的に保護停止中の世帯数及び人員を加えたものである。


図4—5 被保護実世帯数、被保護実人員、保護率の推移

図4—5被保護実世帯数、被保護実人員、保護率の推移

(注)
 厚生労働省「社会福祉行政業務報告」及び総務省「人口推計」を基に作成


 なお、全国の65歳以上の人口に占める被保護者の割合は、表4—3のとおり、12年度は17.1‰だったものが、16年度には21.1‰となっている。

表4—3 全国の65歳以上の人口に占める被保護者の割合
 
12年度
13年度
14年度
15年度
16年度
65歳以上
人口(千人)
22,005
22,869
23,628
24,311
24,876
65歳以上
被保護人員(人)
377,122
411,830
449,320
489,843
525,131
65歳以上
保護率(‰)
17.1
18.0
19.0
20.1
21.1
(注)
 総務省「国勢調査」(平成12年度)、「人口推計」(平成13年度〜16年度)及び厚生労働省「被保護者全国一斉調査」を基に作成


 また、世帯類型別の被保護世帯数及び構成比は表4—4のとおりであり、12年度と比べて、実数としてはいずれの世帯類型も大幅な増加となっている。最近の被保護世帯の特徴として、高齢者世帯数が増加しており、このうち単身世帯が87.5%を占めている。また、稼働能力のある者を多く含む母子世帯及びその他世帯(単身世帯)の増加率も大きくなっている。

表4—4 世帯類型別の被保護世帯数及び構成比等(16年度)

(単位:世帯、%)

 
12年度(A)
16年度(B)
B-A
(B-A)/A
高齢者世帯
341,196
(45.4)
465,680
(46.7)
124,484
(50.4)
36.4%
 
うち単身世帯
300,603
<88.1>
407,787
<87.5>
107,184
<86.1>
35.6%
母子世帯
63,126
(8.4)
87,478
(8.7)
24,352
(9.8)
38.5%
障害者・傷病者世帯
290,620
(38.7)
349,844
(35.0)
59,224
(23.9)
20.3%
 
うち単身世帯
226,891
<78.0>
274,972
<78.5>
48,081
<81.1>
21.1%
その他世帯
55,240
(7.3)
94,148
(9.4)
38,908
(15.7)
70.4%
 
うち単身世帯
23,618
<42.7>
48,699
<51.7>
25,081
<64.4>
106.1%
被保護世帯数 (a)
750,181
(100.0)
997,149
(100.0)
246,968
(100.0)
32.9%
 
うち単身世帯
551,112
<73.4>
731,457
<73.3>
180,345
<73.0>
32.7%
保護停止中の世帯 (b)
1,121
1,738
617
55.0%
被保護実世帯数 (a+b)
751,303
998,887
247,584
32.9%
注(1)
 厚生労働省「社会福祉行政業務報告」を基に作成
注(2)
 ( )書きは被保護世帯数に対する構成比、< >書きは各世帯に対する構成比である(ともに単位は%)。
注(3)
 世帯数は月平均の数字であるため、合計が計欄の数字と一致しないことがある。
注(4)
 高齢者世帯とは、男65歳以上、女60歳以上の者のみで構成されている世帯か、これに18歳未満の者が加わった世帯である。
注(5)
 母子世帯とは、現に配偶者がない(死別、離別等による。)18歳以上60歳未満の女子と18歳未満のその子(養子を含む。)のみで構成された世帯である。
注(6)
 障害者・傷病者世帯とは、障害者世帯と傷病者世帯の合計であり、障害者世帯は、世帯主が障害加算を受けているか、障害・知的障害等の心身上の理由のため働けない者である世帯を、傷病者世帯とは、世帯主が入院(介護老人福祉施設入所を含む。)しているか、在宅看護加算を受けている世帯、若しくは傷病のため働けない者である世帯である。
注(7)
 その他世帯とは、高齢者世帯、障害者・傷病者世帯、母子世帯のいずれにも該当しない世帯である。

イ 保護費の扶助別の推移

 保護費の総額は7年度の1兆5156億余円から、16年度には2兆5434億余円と1.7倍に増加している。12年度から16年度までの保護費の扶助別の推移は表4—5のとおりであり、16年度の各扶助費(構成比)は、生活扶助費8401億余円(33.0%)、医療扶助費1兆3028億余円(51.2%)、住宅扶助費3072億余円(12.0%)で、これらの3扶助費で全体の96.3%を占め、その他の介護扶助費等(施設事務費を含む。)は3.6%にとどまっていて、12年度と比較して各扶助費とも大幅に増加しているが、構成比に大きな変動はない。医療扶助費の構成比は12年度以降やや減少しているが、これは12年度の介護保険法の施行に合わせて介護扶助が創設されたことにより、従来の医療扶助で措置されていたものが介護扶助に移行したことの影響によると思料される。

表4—5 12年度から16年度における保護費の扶助別の推移
(単位:百万円、下段( )書きは構成比(%))
12年度
(A)
13年度
14年度
15年度
16年度
(B)
(B-A)/A
(%)
保護費
1,973,420
(100.0)
2,111,757
(100.0)
2,252,319
(100.0)
2,422,226
(100.0)
2,543,449
(100.0)
28.8
 
生活扶助
641,003
(32.4)
695,069
(32.9)
760,195
(33.7)
818,217
(33.7)
840,128
(33.0)
31.0
住宅扶助
200,684
(10.1)
223,992
(10.6)
252,144
(11.1)
282,264
(11.6)
307,271
(12.0)
53.1
医療扶助
1,071,099
(54.2)
1,122,908
(53.1)
1,162,217
(51.6)
1,236,139
(51.0)
1,302,859
(51.2)
21.6
介護扶助
14,333
(0.7)
22,163
(1.0)
29,119
(1.2)
35,841
(1.4)
41,880
(1.6)
192.1
その他の扶助等
46,299
(2.3)
47,623
(2.2)
48,642
(2.1)
49,763
(2.0)
51,310
(2.0)
10.8
(注)
 厚生労働省「生活保護費国庫負担金事業実績報告」を基に作成


 また、12年度から16年度までの扶助別の人員の推移は、表4—6のとおりであり、16年度における扶助別人員の被保護実人員1,423,388人に対する割合は、生活扶助89.4%、医療扶助81.1%、住宅扶助80.3%、介護扶助10.3%、教育扶助9.2%となっており、12年度と比較して、各扶助人員の割合に大きな変化はないが、実数はそれぞれ大幅に増加しており、特に介護扶助人員が大きく伸びて120.3%の増加となっている。

表4—6 12年度から16年度における被保護実人員の扶助別の推移(上位5扶助、重複計上)

(単位:人、下段( )書きは被保護実人員に対する割合(%))

12年度
(A)
13年度
14年度
15年度
16年度
(B)
(B-A)/A
(%)
被保護実人員
1,072,241
(100.0)
1,148,088
(100.0)
1,242,723
(100.0)
1,344,327
(100.0)
1,423,388
(100.0)
32.7
 
生活扶助
943,025
(87.9)
1,014,524
(88.3)
1,105,499
(88.9)
1,201,836
(89.4)
1,273,502
(89.4)
35.0
医療扶助
864,231
(80.6)
928,527
(80.8)
1,002,886
(80.7)
1,082,648
(80.5)
1,154,521
(81.1)
33.5
住宅扶助
824,129
(76.8)
891,223
(77.6)
975,486
(78.4)
1,069,135
(79.5)
1,143,310
(80.3)
38.7
介護扶助
66,832
(6.2)
84,463
(7.3)
105,964
(8.5)
127,164
(9.4)
147,239
(10.3)
120.3
教育扶助
96,944
(9.0)
104,590
(9.1)
114,213
(9.1)
124,270
(9.2)
132,019
(9.2)
36.1
(注)
 厚生労働省「社会福祉行政業務報告」を基に作成


ウ 福祉事務所の状況

 都道府県知事又は市町村長により設置された福祉事務所は、次のように区分される。
〔1〕 都道府県が所管する福祉事務所(町村の行政区域を担当、以下「県福祉事務所」という。)
〔2〕 政令市が所管する福祉事務所(以下「政令市福祉事務所」という。)及び東京都区部(以下「都区部」という。)が所管する福祉事務所(以下「都区部福祉事務所」という。)
〔3〕 中核市が所管する福祉事務所(以下「中核市福祉事務所」という。)
〔4〕 その他の市等が所管する福祉事務所(以下「その他市福祉事務所」という。)
 上記の区分ごとの福祉事務所が所管する被保護実世帯数、被保護実人員及び保護費は表4—7のとおりであり、いずれについても政令市福祉事務所、都区部福祉事務所(以下これらを「政令市等福祉事務所」という。)及び中核市福祉事務所で過半を占めている。

表4—7 実施機関別の被保護実世帯数、被保護実人員、保護費の構成比(16年度)

(下段( )書きは構成比(%))

実施機関
自治体数
被保護実世帯数
(世帯)
被保護実人員
(人)
保護費
(百万円)
保護率
(‰)
 
政令市福祉事務所
13市
(0.4)
286,716
(28.7)
404,616
(28.4)
766,224
(30.1)
19.1
都区部福祉事務所
23区
(0.7)
105,514
(10.5)
137,484
(9.6)
280,966
(11.0)
16.3
中核市福祉事務所
35市
(1.1)
126,800
(12.6)
184,944
(12.9)
321,387
(12.6)
11.7
都市部小計
71市区
(2.2)
519,030
(51.9)
727,044
(51.0)
1,368,577
(53.8)
16.0
その他市福祉事務所
647市
(20.7)
367,803
(36.8)
533,994
(37.5)
909,822
(35.7)
8.4
県福祉事務所
2,405町村
(77.0)
112,054
(11.2)
162,351
(11.4)
265,050
(10.4)
合計
3,123市区町村
(100.0)
998,887
(100.0)
1,423,388
(100.0)
2,543,449
(100.0)
11.1
注(1)
 厚生労働省「社会福祉行政業務報告」及び「生活保護費国庫負担金事業実績報告」を基に作成
注(2)
 自治体数は、16年4月1日現在における数値である。
注(3)
 県福祉事務所には、町村長が管理する福祉事務所を含む。
注(4)
 被保護実世帯数及び被保護実人員は月平均の数値であるため、各実施機関の合計が各計欄の数字と一致しないことがある。

エ 保護開始・廃止世帯数の理由別の推移

 保護開始・廃止世帯数(各年度9月中の実績)の推移についてみると、図4—6のとおり、昭和60年度から平成4年度までの8年間は、保護廃止世帯数が保護開始世帯数を上回っているが、5年度から16年度までは、保護開始世帯数が保護廃止世帯数を上回る状況が続いている。また、開始理由については、「傷病」の割合が減少し、「稼働収入減」及び「その他」の割合が増加する傾向にあり、また、廃止理由については、「その他」以外の理由はいずれも増加傾向にある。

図4—6 保護開始・廃止世帯数及び理由別の推移

図4—6保護開始・廃止世帯数及び理由別の推移

注(1)
 厚生労働省「社会福祉行政業務報告」を基に作成
注(2)
 各年度の9月中に保護開始又は保護廃止した世帯数であり、純開始は保護開始世帯数から保護廃止世帯数を差し引いた世帯数である。

 16年度における開始理由の詳細についてみると、表4—8のとおりであり、「傷病」40.0%に「その他」のうちの「急迫保護」15.5%、「要介護状態」0.3%を加えた55.9%が何らかの身体的要因によるもの、「稼働収入減」15.2%に「その他」のうちの「貯金等の減少・喪失」13.3%等を加えた38.2%が経済的要因によるものとなっている。12年度と比較すると、経済的要因により保護を開始した世帯数が大きく伸びて30.9%の増加となっている。

表4—8 保護開始世帯の保護開始理由別構成比(16年度)

(単位:世帯、%、下段( )書きは構成比(%))

保護開始理由
12年度保護開始世帯数
(A)
16年度保護開始世帯数
(B)
B-A
(B-A)/A
(%)
傷病(a)
6,347
(43.2)
6,833
(40.0)
486
(20.5)
7.6
稼働収入減(b)
2,046
(13.9)
2,607
(15.2)
561
(23.6)
27.4
その他
6,288
(42.8)
7,610
(44.6)
1,322
(55.8)
21.0
 
急迫保護(c)
2,651
(18.0)
2,647
(15.5)
△4
(△0.1)
△0.1
貯金等の減少・喪失(d)
1,500
(10.2)
2,269
(13.3)
769
(32.4)
51.2
働いていた者の離別等(e)
779
(5.3)
801
(4.7)
22
(0.9)
2.8
仕送り等の減少・喪失(f)
419
(2.8)
514
(3.0)
95
(4.0)
22.6
社会保障給付金の減少・喪失(g)
180
(1.2)
252
(1.4)
72
(3.0)
40.0
働いていた者の死亡(h)
53
(0.3)
76
(0.4)
23
(0.9)
43.4
要介護状態(i)
41
(0.2)
61
(0.3)
20
(0.8)
48.7
その他
665
(4.5)
990
(5.8)
325
(13.7)
48.8
総数
14,681
(100.0)
17,050
(100.0)
2,369
(100.0)
16.1
身体的要因によるもの(a+c+i)
9,039
(61.5)
9,541
(55.9)
502
(21.1)
5.5
経済的要因によるもの(b+d+e+f+g+h)
4,977
(33.9)
6,519
(38.2)
1,542
(65.0)
30.9
(注)
 厚生労働省「社会福祉行政業務報告」を基に作成


 また、廃止理由の詳細については表4—9のとおりであり、「死亡・失踪」が36.7%、「傷病治癒」が22.7%、「稼働収入の増加」等の経済的要因によるものが14.8%、「社会保障給付金の増加」等の他法他施策の活用等によるものが9.7%となっている。12年度と比較すると、経済的要因により保護を廃止した世帯数が大きく伸びて46.1%の増加となっている。

表4—9 保護廃止世帯の保護廃止理由別構成比(16年度)

(単位:世帯、%、下段( )書きは構成比(%))

保護廃止理由
12年度保護廃止世帯数
(A)
16年度保護廃止世帯数
(B)
B-A
(B-A)/A
(%)
傷病治癒(a)
1,111
(11.1)
2,669
(22.7)
1,558
(86.5)
140.2
死亡・失踪(b)
2,989
(30.0)
4,315
(36.7)
1,326
(73.6)
44.3
稼働収入増(c)
994
(9.9)
1,520
(12.9)
526
(29.2)
52.9
その他
4,864
(48.8)
3,254
(27.6)
△1,610
(△89.4)
△33.1
 
社会保障給付金の増加(d)
464
(4.6)
503
(4.2)
39
(2.1)
8.4
親類縁者等の引取り(e)
267
(2.6)
315
(2.6)
48
(2.6)
17.9
施設入所(f)
207
(2.0)
267
(2.2)
60
(3.3)
28.9
働き手の転入(g)
110
(1.1)
119
(1.0)
9
(0.5)
8.1
仕送りの増加(h)
87
(0.8)
101
(0.8)
14
(0.7)
16.0
医療費の他法負担(i)
48
(0.4)
65
(0.5)
17
(0.9)
35.4
その他
3,681
(36.9)
1,884
(16.0)
△1,797
(△99.8)
△48.8
総数
9,958
(100.0)
11,758
(100.0)
1,800
(100.0)
18.0
身体的要因によるもの(a)
1,111
(11.1)
2,669
(22.7)
1,558
(86.5)
140.2
経済的要因によるもの(c+g+h)
1,191
(11.9)
1,740
(14.8)
549
(30.5)
46.1
他法他施策の活用等によるもの(d+e+f+i)
986
(9.9)
1,150
(9.7)
164
(9.1)
16.6
注(1)
 厚生労働省「社会福祉行政業務報告」を基に作成
注(2)
 「傷病治癒」が大幅に増加し「その他」が大幅に減少しているのは、14年度までは「その他」で区分されていた「急迫保護で医療扶助単給」が、15年度から「傷病治癒」に区分されたことによるものである。

(2)生活保護の地域格差の状況

ア 保護率の地域格差

(ア)都道府県別の保護率

 16年度における都道府県別の保護率は、図4—7及び表4—10のとおり、全国平均は11.1‰であり、最も高い大阪府の23.1‰と最も低い富山県の2.1‰との間には10.7倍の格差がある。12年度の保護率については、全国平均が8.4‰で、最も高い北海道の18.4‰と最も低い富山県の1.8‰との間には10.1倍の格差があったことから、格差に大きな変化はないものの、保護率の差は16.6ポイントから21.0ポイントへと拡大している状況である。また、保護率の高い5道府県(北海道、京都、大阪、高知、福岡)は各地に存在するのに対して、低い5県(富山、福井、長野、岐阜、静岡)は中部・甲信地方に集中している。ただし、全国平均の保護率を超える13都道府県の分布をみると、中部以東は3都道県であるのに対し、近畿以西は10府県であり、保護率に西高東低の傾向がみられる。

図4—7 都道府県別の保護率及び被保護実人員

図4—7都道府県別の保護率及び被保護実人員

(注)
 厚生労働省「社会福祉行政業務報告」、総務省「国勢調査」(平成12年度)及び「人口推計」(平成16年度)を基に作成(以下の都道府県別の保護率、被保護実人員についても同様)


表4—10 都道府県別の保護率の格差の状況
項目
平均
最大
(A)
最小
(B)
格差
(A/B)
(A-B)
16年度保護率
11.1‰
大阪府
23.1‰
富山県
2.1‰
10.7
21.0ポイント
12年度保護率
8.4‰
北海道
18.4‰
富山県
1.8‰
10.1
16.6ポイント

 また、16年度における被保護実人員の都道府県別の構成比についてみると、表4—11のとおりであり、被保護実人員の多い上位5都道府県で全国の被保護実人員の約5割、上位10都道府県で同約7割を占め、これらの都道府県はいずれも政令市(都区部を含む。)の所在する都道府県となっている。

表4—11 被保護実人員の都道府県別構成比(16年度)
順位
都道府県
被保護実人員
(人)
構成比
(%)
保護率
(‰)
1
大阪府
204,150
14.3
23.1
2
東京都
184,029
12.9
14.8
3
北海道
129,505
9.0
22.9
4
神奈川県
96,540
6.7
11.0
5
福岡県
91,453
6.4
18.0
6
兵庫県
76,678
5.3
13.7
7
埼玉県
48,547
3.4
6.8
8
京都府
48,313
3.3
18.3
9
千葉県
43,114
3.0
7.1
10
愛知県
40,983
2.8
5.6
11〜47
青森県外36県
460,078
32.3
7.8
1,423,388
100.0
11.1
上位5都道府県計
705,677
49.5
17.3
上位10都道府県計
963,310
67.6
13.9
注(1)
 厚生労働省「社会福祉行政業務報告」を基に作成
注(2)
 被保護実人員は月平均の数値であるため、各都道府県の合計が各計欄の数値と一致しないことがある。

(イ)政令市及び都区部別の保護率

 16年度における政令市及び都区部(以下、これらを「政令市等」という。)別の保護率については図4—8及び表4—12のとおりであり、平均は18.3‰であるが、最も高い大阪市の38.1‰と最も低いさいたま市の7.5‰との間には5.0倍の格差がある。12年度の保護率については、平均14.0‰で、最も高い大阪市の25.5‰と最も低い千葉市の6.5‰との間には3.8倍の格差があったことから、格差は拡大しており、保護率の差も18.9ポイントから30.5ポイントへと拡大している状況である。

図4—8 政令市等別の保護率及び被保護実人員

図4—8政令市等別の保護率及び被保護実人員

(注)
 厚生労働省「社会福祉行政業務報告」、総務省「国勢調査」(平成12年度)及び「人口推計」(平成16年度)等を基に作成(以下の政令市等別の保護率、被保護実人員についても同様)


表4—12 政令市等別の保護率の格差の状況
項目
平均
最大
(A)
最小
(B)
格差
(A/B)
(A-B)
16年度保護率
18.3‰
大阪市
38.1‰
さいたま市
7.5‰
5.0
30.5ポイント
12年度保護率
14.0‰
大阪市
25.5‰
千葉市
6.5‰
3.8
18.9ポイント

(ウ)中核市別の保護率

 16年度における中核市別の保護率については図4—9及び表4—13のとおりであり、平均は11.7‰であるが、最も高い旭川市の29.5‰と最も低い岡崎市の2.3‰との間には12.5倍の格差がある。12年度の保護率については、平均9.8‰で、最も高い旭川市の23.0‰と最も低い富山市の2.2‰との間には10.1倍の格差があったことから、格差は拡大しており、保護率の差も20.7ポイントから27.1ポイントへと拡大している状況である。

図4—9 中核市別の保護率及び被保護実人員

図4—9中核市別の保護率及び被保護実人員

(注)
 厚生労働省「社会福祉行政業務報告」、総務省「国勢調査」(平成12年度)等を基に作成(以下の中核市別の保護率、被保護実人員についても同様)


表4—13 中核市別の保護率の格差の状況

項目
平均
最大
(A)
最小
(B)
格差
(A/B)
(A-B)
16年度保護率
11.7‰
旭川市
29.5‰
岡崎市
2.3‰
12.5
27.1ポイント
12年度保護率
9.8‰
旭川市
23.0‰
富山市
2.2‰
10.1
20.7ポイント

(エ)その他の市町村の都道府県別の保護率

 16年度におけるその他の市町村の都道府県別の保護率については図4—10及び表4—14のとおりであり、平均は8.4‰で政令市等及び中核市より低くなっているが、最も高い北海道の20.4‰と最も低い富山県の1.7‰との間には11.9倍の格差がある。12年度の保護率については、平均6.4‰で、最も高い福岡県の17.2‰と最も低い岐阜県の1.3‰の間には12.5倍の格差があったことから、格差は縮小しているものの、保護率の差は15.8ポイントから18.7ポイントへと拡大している状況である。

図4—10 その他の市町村の都道府県別の保護率及び被保護実人員

図4—10その他の市町村の都道府県別の保護率及び被保護実人員

(注)
 厚生労働省「社会福祉行政業務報告」、総務省「国勢調査」(平成12年度)及び「人口推計」(平成16年度)等を基に作成(以下のその他の市町村の都道府県別の保護率、被保護実人員についても同様)


表4—14 その他の市町村の都道府県別の保護率の格差の状況
項目
平均
最大
(A)
最小
(B)
格差
(A/B)
(A-B)
16年度保護率
8.4‰
北海道
20.4‰
富山県
1.7‰
11.9
18.7ポイント
12年度保護率
6.4‰
福岡県
17.2‰
岐阜県
1.3‰
12.5
15.8ポイント

 また、全国的にも保護率の高い福岡県について、16年度における市別及び町村別の格差の状況をみると、以下のとおりとなっている(表4—15参照)
〔1〕 市別については平均は15.4‰で、最も高い山田市(18年3月より嘉麻市)の68.7‰と最も低い小郡市の3.1‰の間には22.1倍の格差がある。
〔2〕 町村別については平均は26.1‰で、最も高い福岡県田川保健福祉環境事務所管内(香春町ほか8町村)の105.3‰と最も低い同糸島保健福祉環境事務所管内(二丈町ほか1町)の6.3‰の間には16.7倍の格差がある。

表4—15 福岡県の福祉事務所別の保護率の格差の状況(16年度)
項目
平均
最大
(A)
最小
(B)
格差
(A/B)
(A-B)
その他市福祉事務所
15.4‰
山田市
68.7‰
小郡市
3.1‰
22.1
65.6ポイント
県福祉事務所
26.1‰
田川
105.3‰
糸島
6.3‰
16.7
99.0ポイント

イ 支給済保護費の地域格差

(ア)都道府県別の支給済保護費

 16年度における都道府県別の支給済保護費は、図4—11のとおりであり、全国平均は541億1595万余円となっていて、最も大きい大阪府は3886億6337万余円、最も小さい福井県は41億6559万余円となっている。

図4—11 都道府県別の支給済保護費(16年度)

図4—11都道府県別の支給済保護費(16年度)

(注)
 厚生労働省「社会福祉行政業務報告」及び「生活保護費国庫負担金事業実績報告」を基に作成


 また、支給済保護費の都道府県別の構成比をみると、表4—16のとおり、支給済保護費の大きい上位5都道府県で全国の支給済保護費の約5割、上位10都道府県で約7割を占めていて、これら上位の都道府県はいずれも政令市等の所在する都道府県となっている。

表4—16 支給済保護費の都道府県別構成比(16年度)
順位
都道府県
支給済保護費
(百万円)
構成比
(%)
保護率
(‰)
1
大阪府
388,663
15.2
23.1
2
東京都
367,848
14.4
14.8
3
北海道
217,789
8.5
22.9
4
神奈川県
175,973
6.9
11.0
5
福岡県
164,847
6.4
18.0
6
兵庫県
135,553
5.3
13.7
7
埼玉県
85,455
3.3
6.8
8
京都府
79,397
3.1
18.3
9
千葉県
77,171
3.0
7.1
10
愛知県
75,640
2.9
5.6
11〜47
青森県外36県
775,110
30.4
7.8
2,543,449
100.0
11.1
上位5都道府県計
1,315,121
51.7
17.3
上位10都道府県計
1,768,339
69.5
13.9
(注)
 厚生労働省「生活保護費国庫負担金事業実績報告」を基に作成


 さらに、16年度における都道府県別の人口1人当たりの支給済保護費についてみると、図4—12のとおりであり、全国平均は19,919円で、最も大きい大阪府の44,096円と最も小さい富山県の4,715円との間には9.3倍の格差があり、保護率とほぼ同様の分布状況となっている。

図4—12 都道府県別の人口1人当たりの支給済保護費(16年度)

図4—12都道府県別の人口1人当たりの支給済保護費(16年度)

(注)
 厚生労働省「生活保護費国庫負担金事業実績報告」及び総務省「人口推計」を基に作成


(イ)被保護実人員1人当たりの支給済保護費

a 都道府県別の被保護実人員1人当たりの支給済保護費

 16年度における都道府県別の被保護実人員1人当たりの支給済保護費は、図4—13のとおりであり、全国平均は1,786,898円で、最も大きい富山県の2,177,210円と最も小さい岩手県の1,525,623円との間には1.4倍の格差がある。また、支給済保護費の約半分を占める医療扶助費についてみると、全国平均は915,322円で、最も大きい富山県の1,352,259円と最も小さい宮城県の755,225円との間には1.7倍の格差がある。
 保護率と1人当たり支給済保護費との間に明確な関連はみられないが、保護率が全国で最も低い富山県は、被保護実人員1人当たりの支給済保護費では、総額、医療扶助費ともに全国で最も大きくなっている。

図4—13 都道府県別の被保護実人員1人当たりの支給済保護費(16年度)

図4—13都道府県別の被保護実人員1人当たりの支給済保護費(16年度)

(注)
 厚生労働省「社会福祉行政業務報告」及び「生活保護費国庫負担金事業実績報告」を基に作成


b 政令市等別の被保護実人員1人当たりの支給済保護費

 16年度における政令市等別の被保護実人員1人当たりの支給済保護費は、図4—14のとおりであり、政令市等の平均は1,959,738円となっていて、最も大きい北九州市の2,247,186円と最も小さい仙台市の1,584,820円との間には1.4倍の格差がある。また、同様に医療扶助費についてみると、政令市等の平均は948,857円となっていて、最も大きい北九州市の1,373,159円と最も小さい仙台市の710,610円との間には1.9倍の格差がある。
 政令市等においては、都道府県に比べて被保護実人員1人当たりの保護費の支給水準が全般に高くなっているが、保護率と被保護実人員1人当たりの支給済保護費との間に明確な関係はみられない。

図4—14 政令市等別の被保護実人員1人当たりの支給済保護費(16年度)

図4—14政令市等別の被保護実人員1人当たりの支給済保護費(16年度)

(注)
 厚生労働省「社会福祉行政業務報告」及び「生活保護費国庫負担金事業実績報告」を基に作成


c 中核市別の被保護実人員1人当たりの支給済保護費

 16年度における中核市別の被保護実人員1人当たりの支給済保護費は、図4—15のとおりであり、中核市の平均は1,737,757円となっていて、最も大きい富山市の2,206,214円と最も小さい岡山市の1,554,995円との間には1.4倍の格差がある。また、同様に医療扶助費についてみると、中核市の平均は894,313円となっていて、最も大きい豊橋市の1,342,743円と最も小さい奈良市の729,875円との間には1.8倍の格差がある。
 中核市における被保護実人員1人当たりの保護費の支給水準は、都道府県とほぼ同様であり、保護率と被保護実人員1人当たりの支給済保護費との間に明確な関係はみられない。

図4—15 中核市別の被保護実人員1人当たり支給済保護費(16年度)

図4—15中核市別の被保護実人員1人当たり支給済保護費(16年度)

(注)
 厚生労働省「社会福祉行政業務報告」及び「生活保護費国庫負担金事業実績報告」を基に作成


(ウ)扶助別の支給済保護費

 支給済保護費については、支給済保護費に占める割合が大きい生活扶助費、医療扶助費、住宅扶助費及び近年構成比が伸びている介護扶助費について、扶助世帯1世帯当たり又は扶助人員1人当たりの額で比較する。

a 生活扶助世帯1世帯当たりの生活扶助費

 生活扶助費は世帯を単位として支給されることから、生活扶助世帯1世帯当たりで比較する。
 16年度における都道府県別の生活扶助世帯1世帯当たりの生活扶助費は、図4—16のとおりであり、全国平均は966,349円となっていて、最も大きい大阪府の1,073,715円と最も小さい山形県の720,475円との間には1.4倍の格差がある。
 生活扶助は、級地、世帯員の年齢及び人数、各種加算、稼働収入等の収入の多寡等によってその支給額が決められるため、このような格差の要因を特定することは難しいが、全国平均より高い8都道府県はいずれも支給済保護費の総額が全国でも上位の都道府県となっている。一方、被保護実人員1人当たり支給済保護費が全国1位の富山県は、この指標でみると全国で下から4番目となっている。

図4—16 都道府県別の生活扶助世帯1世帯当たりの生活扶助費(16年度)

図4—16都道府県別の生活扶助世帯1世帯当たりの生活扶助費(16年度)

(注)
 厚生労働省「社会福祉行政業務報告」及び「生活保護費国庫負担金事業実績報告」を基に作成


b 医療扶助人員1人当たりの医療扶助費

 医療扶助費は現に医療サービスを受けた者を単位として支給されることから、医療扶助人員1人当たりで比較する。
 16年度における都道府県別の医療扶助人員1人当たりの医療扶助費は、図4—17のとおりであり、全国平均は1,128,485円となっていて、最も大きい富山県の1,622,643円と最も小さい宮城県の925,479円との間には1.7倍の格差がある。
 そして、医療扶助人員1人当たり医療扶助費と、被保護実人員に占める高齢者の比率、医療扶助人員に占める入院患者、精神科入院患者及び医療扶助単給人員(注3) の比率との相関についてみると、表4—17のとおり、いずれも正の相関がみられ、これらの比率の高いところで医療扶助人員1人当たり医療扶助費も高くなっている傾向がある。

(注3)
 医療扶助単給人員 医療扶助以外に、生活扶助(入院患者日用品費等の一部を除く。)等継続的に支給される扶助を受けていない被保護者をいう。


図4—17 都道府県別の医療扶助人員1人当たりの医療扶助費(16年度)

図4—17都道府県別の医療扶助人員1人当たりの医療扶助費(16年度)

(注)
 厚生労働省「社会福祉行政業務報告」、「被保護者全国一斉調査」及び「生活保護費国庫負担金事業実績報告」を基に作成


表4—17 医療扶助人員1人当たり医療扶助費と被保護人員に占める高齢者の比率等との相関(16年度)
指標
相関係数
被保護人員に占める高齢者の比率
0.5552
医療扶助人員に占める入院患者の比率
0.7365
医療扶助人員に占める精神科入院患者の比率
0.7115
医療扶助人員に占める医療扶助単給人員の比率
0.7399

 また、生活保護の医療扶助は国民健康保険の例による診療方針等によることとされていることから、16年度における医療扶助の診療費と国民健康保険の診療費を比較すると、表4—18のとおりであり、〔1〕入院では、生活保護がレセプト1件当たり日数で長く、1日当たり診療費及びレセプト1件当たり診療費で低くなっていて、〔2〕入院外では、生活保護がすべての項目で国民健康保険を上回っている。

表4—18 医療扶助の診療費と国民健康保険の診療費との比較(16年度)
区分
項目
生活保護(A)
国民健康保険(B)
A/B
入院
1日当たり診療費 (円/日)
16,249
22,673
0.71
1件当たり日数 (日/件)
22.7
18.2
1.24
1件当たり診療費 (円/件)
368,746
413,127
0.89
入院外
1日当たり診療費 (円/日)
7,123
6,809
1.04
1件当たり日数 (日/件)
2.9
2.1
1.38
1件当たり診療費 (円/件)
20,751
14,315
1.44
(注)
 社会保険診療報酬支払基金「基金年報」等を基に作成


c 住宅扶助世帯1世帯当たりの住宅扶助費

 住宅扶助費は世帯を単位として支給されることから、住宅扶助世帯1世帯当たりで比較する。
 16年度における都道府県別の住宅扶助世帯1世帯当たりの住宅扶助費(月平均)は、図4—18のとおりであり、全国平均は32,893円となっていて、最も大きい神奈川県の45,272円と最も小さい福井県の18,514円との間には2.4倍の格差がある。この住宅扶助世帯1世帯当たりの住宅扶助費の地域格差には、級地別の基準額の地域格差が反映されており、被保護世帯のうち実際家賃が4万円以上の世帯の割合をみると、1世帯当たりの住宅扶助費の大きい神奈川県、東京都及び埼玉県で5割を超えている。

図4—18 16年度における都道府県別の住宅扶助世帯1世帯当たりの住宅扶助費(月平均)

図4—1816年度における都道府県別の住宅扶助世帯1世帯当たりの住宅扶助費(月平均)

(注)
 厚生労働省「社会福祉行政業務報告」、「被保護者全国一斉調査」及び「生活保護費国庫負担金事業実績報告」を基に作成


d 介護扶助人員1人当たりの介護扶助費

 介護扶助費は現に介護サービスを受けた者を単位として支給されることから、介護扶助人員1人当たりで比較する。
 16年度における都道府県別の介護扶助人員1人当たりの介護扶助費は、図4—19のとおりであり、全国平均は284,436円となっていて、最も大きい茨城県の445,493円と最も小さい熊本県の190,502円との間には約2.3倍の格差がある。
 そして、介護扶助人員1人当たりの介護扶助費と、介護保険被保険者に占める要支援認定者の比率との相関についてみると、表4—19のとおり、中程度の負の相関がみられ、要介護度の低い者の割合の高いところで介護扶助人員1人当たりの介護扶助費が低くなっている傾向がある。また、介護扶助人員に占める介護保険被保険者以外の者の比率との相関についてみると、表4—19のとおり、強い正の相関がみられ、介護保険被保険者以外の者(介護サービス費の10割を扶助される者)の割合の高いところで介護扶助人員1人当たりの介護扶助費が高くなっている傾向がある。

図4—19 都道府県別の介護扶助人員1人当たりの介護扶助費(16年度)

図4—19都道府県別の介護扶助人員1人当たりの介護扶助費(16年度)

(注)
 厚生労働省「社会福祉行政業務報告」、「介護給付費実態調査」、「被保護者全国一斉調査」及び「生活保護費国庫負担金事業実績報告」等を基に作成


表4—19 介護扶助人員1人当たり介護扶助費と介護保険被保険者に占める要支援認定者の比率等との相関(16年度)
指標
相関係数
介護保険被保険者に占める要支援認定者の比率
-0.4135
介護扶助人員に占める介護保険被保険者以外の者の比率
0.7985

ウ 世帯類型別構成比の地域格差

(ア)都道府県別の世帯類型別構成比

 16年度における被保護世帯の世帯類型別構成比を都道府県別にみると、以下のとおりとなっており(図4—20 及び表4—20参照 )、特に、母子世帯及びその他世帯において、格差が大きくなっている。
〔1〕 高齢者世帯は平均46.7%で、最大の熊本県57.4%と最小の新潟県38.3%との格差は1.4倍
〔2〕 障害者・傷病者世帯は平均35.0%で、最大の山梨県43.6%と最小の福岡県30.1%との格差は1.4倍
〔3〕 母子世帯は平均8.7%で、最大の北海道14.0%と最小の富山県1.5%との格差は9.0倍
〔4〕 その他世帯は平均9.4%で、最大の新潟県15.0%と最小の岐阜県2.7%との格差は5.4倍

図4—20 都道府県別(被保護世帯の多い順)の世帯類型別構成比(16年度)

図4—20都道府県別(被保護世帯の多い順)の世帯類型別構成比(16年度)

(注)
 厚生労働省「社会福祉行政業務報告」を基に作成


表4—20 都道府県別の世帯類型別構成比の格差(16年度)
項目
平均
最大
(A)
最小
(B)
格差
(A/B)
(A-B)
高齢者世帯
46.7%
熊本県
57.4%
新潟県
38.3%
1.4
19.0ポイント
母子世帯
8.7%
北海道
14.0%
富山県
1.5%
9.0
12.4ポイント
障害者・傷病者世帯
35.0%
山梨県
43.6%
福岡県
30.1%
1.4
13.5ポイント
その他世帯
9.4%
新潟県
15.0%
岐阜県
2.7%
5.4
12.2ポイント

(イ)政令市等別の世帯類型別構成比

 16年度における政令市別の世帯類型別構成比は、以下のとおりとなっている(図4—21 及び表4—21参照 )。
〔1〕 高齢者世帯は平均46.6%で、最大の北九州市69.1%と最小の千葉市35.8%との格差は1.9倍
〔2〕 障害者・傷病者世帯は平均33.7%で、最大のさいたま市40.2%と最小の北九州市25.2%との格差は1.5倍
〔3〕 母子世帯は平均8.5%で、最大の札幌市15.1%と最小の北九州市2.0%との格差は7.4倍
〔4〕 その他世帯は平均10.8%で、最大の千葉市21.7%と最小の北九州市3.5%との格差は6.0倍

図4—21 政令市等別(被保護世帯の多い順)の世帯類型別構成比(16年度)

図4—21政令市等別(被保護世帯の多い順)の世帯類型別構成比(16年度)

(注)
 厚生労働省「社会福祉行政業務報告」等を基に作成


表4—21 政令市等別の世帯類型別構成比の格差(16年度)
項目
平均
最大
(A)
最小
(B)
格差
(A/B)
(A-B)
高齢者世帯
46.6%
北九州市
69.1%
千葉市
35.8%
1.9
33.2ポイント
母子世帯
8.5%
札幌市
15.1%
北九州市
2.0%
7.4
13.1ポイント
障害者・傷病者世帯
33.7%
さいたま市
40.2%
北九州市
25.2%
1.5
15.0ポイント
その他世帯
10.8%
千葉市
21.7%
北九州市
3.5%
6.0
18.1ポイント

(ウ)中核市別の世帯類型別構成比

 16年度における中核市別の世帯類型別構成比は、以下のとおりとなっている(図4—22 及び表4—22参照 )。
〔1〕 高齢者世帯は平均44.9%で、最大の岐阜市63.5%と最小の新潟市32.6%との格差は1.9倍
〔2〕 障害者・傷病者世帯は平均36.8%で、最大の岡崎市48.6%と最小の和歌山市30.5%との格差は1.5倍
〔3〕 母子世帯は平均9.9%で、最大の旭川市18.1%と最小の富山市1.6%との格差は10.7倍
〔4〕 その他世帯は平均8.2%で、最大の新潟市17.9%と最小岐阜市1.0%との格差は17.0倍

図4—22 中核市別(被保護世帯の多い順)の世帯類型別構成比(16年度)

図4—22中核市別(被保護世帯の多い順)の世帯類型別構成比(16年度)

(注)
 厚生労働省「社会福祉行政業務報告」を基に作成


表4—22 中核市別の世帯類型別構成比の格差(16年度)
項目
平均
最大
(A)
最小
(B)
格差
(A/B)
(A-B)
高齢者世帯
44.9%
岐阜市
63.5%
新潟市
32.6%
1.9
30.9ポイント
母子世帯
9.9%
旭川市
18.1%
富山市
1.6%
10.7
16.4ポイント
障害者・傷病者世帯
36.8%
岡崎市
48.6%
和歌山市
30.5%
1.5
18.0ポイント
その他世帯
8.2%
新潟市
17.9%
岐阜市
1.0%
17.0
16.8ポイント

(エ)その他の市町村の都道府県別の世帯類型別構成比

 16年度におけるその他の市町村の都道府県別の世帯類型別構成比は、図4—23及び表4—23のとおりであり、都道府県別の構成比の平均及び格差とほぼ同様の状況となっている。

図4—23 その他の市町村の都道府県別(被保護世帯の多い順)の世帯類型別構成比(16年度)

図4—23その他の市町村の都道府県別(被保護世帯の多い順)の世帯類型別構成比(16年度)

(注)
 厚生労働省「社会福祉行政業務報告」を基に作成


表4—23 その他の市町村別の世帯類型別構成比の格差の状況(16年度)
項目
平均
最大
(A)
最小
(B)
格差
(A/B)
(A-B)
高齢者世帯
47.1%
熊本県
59.6%
埼玉県
39.9%
1.4
19.7ポイント
母子世帯
8.6%
大阪府
15.3%
富山県
1.4%
10.4
13.8ポイント
障害者・傷病者世帯
35.6%
香川県
43.7%
宮崎県
30.0%
1.4
13.7ポイント
その他世帯
8.5%
福岡県
13.3%
富山県
4.4%
3.0
8.9ポイント

エ 保護開始・廃止理由別構成比の地域格差

 16年9月中における都道府県別の保護開始・廃止理由別構成比は、図4—24のとおりとなっている。

図4—24 都道府県別の保護開始・廃止理由別構成比(16年度)

図4—24都道府県別の保護開始・廃止理由別構成比(16年度)

注(1)
 厚生労働省「社会福祉行政業務報告」を基に作成
注(2)
 上段が保護開始に係るもの、下段が保護廃止に係るものである。

 開始理由の格差については、以下のとおりとなっている(表4—24参照)
〔1〕 「傷病」は平均40.0%で、最大の山梨県75.0%と最小の秋田県18.6%との格差は4.0倍
〔2〕 「稼働収入減」は平均15.2%で、最大の香川県27.8%と最小の福井県4.5%との格差は6.1倍
〔3〕 「その他」は平均44.6%で、最大の秋田県71.4%と最小の山梨県7.1%との格差は10.0倍
さらに、その他の開始理由の内訳についてみると、以下のとおりとなっている。
〔1〕 「急迫保護」は平均15.5%に対し最大は大阪府の44.4%
〔2〕 「貯蓄等の減少・喪失」は平均13.3%に対し最大は秋田県の45.0%
〔3〕 「仕送り等の減少・喪失」は平均3.0%に対し最大は秋田県の13.1%
 特に、「急迫保護」については、青森県ほか19県で0%となっている一方で、大阪府44.4%、神奈川県15.2%など、一部の大都市地域について高くなっており、これらの地域の保護率の上昇に大きな影響を与えていると思料される。

表4—24 都道府県別の保護開始理由別構成比の格差の状況(16年度)
保護開始理由
平均
最大
(A)
最小
(B)
格差
(A/B)
(A-B)
傷病
40.0%
山梨県
75.0%
秋田県
18.6%
4.0
56.3ポイント
稼働収入減
15.2%
香川県
27.8%
福井県
4.5%
6.1
23.3ポイント
その他
44.6%
秋田県
71.4%
山梨県
7.1%
10.0
64.2ポイント
 
急迫保護
15.5%
大阪府
44.4%
青森県
ほか19県
0.0%
44.4ポイント
貯金等の減少・喪失
13.3%
秋田県
45.0%
徳島県
2.3%
18.9
42.6ポイント
働いていた者の離別等
4.6%
北海道
11.9%
富山県
ほか4県
0.0%
11.9ポイント
仕送り等の減少・喪失
3.0%
秋田県
13.1%
山形県
ほか5県
0.0%
13.1ポイント
社会保障給付金の減少・喪失
1.4%
石川県
7.6%
山形県
ほか5県
0.0%
7.6ポイント
働いていた者の死亡
0.4%
長野県
2.3%
岩手県
ほか21県
0.0%
2.3ポイント
要介護状態
0.3%
山形県
8.8%
青森県
ほか24県
0.0%
8.8ポイント
その他
5.8%
京都府
31.1%
山形県
ほか1県
0.0%
31.1ポイント
(注)
 厚生労働省「社会福祉行政業務報告」を基に作成


 また、廃止理由の格差については、以下のとおりとなっている(表4—25参照)
〔1〕 「傷病治癒」は平均22.6%に対し最大の大阪府は55.6%
〔2〕 「死亡・失踪」は平均36.6%に対し最大の京都府は59.8%
〔3〕 「稼働収入増」は平均12.9%に対し最大の島根県は32.1%
〔4〕 「その他」のうちの「社会保障給付金の増加」は平均4.2%に対し最大の鳥取県は24.0%
 特に、「傷病治癒」については、前記の「急迫保護」と同様に、岩手県ほか5県が0%となっている一方で、大阪府55.6%、東京都22.7%など、一部の大都市地域について高くなっている傾向がみられる。

表4—25 都道府県別の保護廃止理由別構成比の格差の状況(16年度)
保護廃止理由
平均
最大(A)
最小(B)
格差
(A/B)
(A-B)
傷病治癒
22.6%
大阪府
55.6%
岩手県
ほか5県
0.0%
55.6ポイント
死亡・失踪
36.6%
京都府
59.8%
広島県
18.8%
3.1
40.9ポイント
稼働収入増
12.9%
島根県
32.1%
富山県
0.0%
32.1ポイント
その他
27.6%
広島県
63.2%
大阪府
13.4%
4.7
49.8ポイント
 
社会保障給付金の増加
4.2%
鳥取県
24.0%
山梨県
0.0%
24.0ポイント
親類・縁者等の引取り
2.6%
山梨県
10.5%
富山県
ほか2県
0.0%
10.5ポイント
施設入所
2.2%
山形県
21.8%
宮城県
ほか3県
0.0%
21.8ポイント
働き手の転入
1.0%
滋賀県
5.3%
青森県
ほか16県
0.0%
5.3ポイント
仕送りの増加
0.8%
石川県
7.8%
岩手県
ほか16県
0.0%
7.8ポイント
医療費の他法負担
0.5%
愛媛県
8.4%
岩手県
ほか23県
0.0%
8.4ポイント
その他
16.0%
広島県
53.6%
山形県
0.0%
53.6ポイント
(注)
 厚生労働省「社会福祉行政業務報告」を基に作成


オ 被保護世帯の就労世帯比率及び国民年金受給率の地域格差

(ア)都道府県別の就労世帯比率

 16年度における都道府県別の被保護世帯の就労世帯比率(注4) は、図4—25及び表4—26のとおりであり、全国平均は12.3%で、最も高い島根県の19.7%と最も低い山梨県の5.6%との間には3.4倍の格差がある。
 また、就労世帯比率を世帯類型別にみると、高齢者世帯が3.8%、障害者・傷病者世帯が8.3%であるのに対し、母子世帯が48.4%、その他世帯が36.1%と高くなっている。
 さらに、世帯類型別の就労世帯比率を都道府県別にみると、〔1〕母子世帯については、最も高い京都府の58.5%と最も低い茨城県の7.3%との間には8.0倍の格差があり、〔2〕その他世帯については、最も高い鳥取県の61.0%と最も低い岐阜県の17.2%との間には3.5倍の格差がある。

(注4)
 就労世帯比率 世帯員の誰かが就労している被保護世帯の被保護世帯全体に対する比率


図4—25 都道府県別の就労世帯比率(16年度)

就労世帯比率世帯員の誰かが就労している被保護世帯の被保護世帯全体に対する比率

(注)
 厚生労働省「社会福祉行政業務報告」等を基に作成


表4—26 都道府県別の就労世帯比率の格差(16年度)
項目
平均
最大
(A)
最小
(B)
格差
(A/B)
(A-B)
被保護世帯
12.3%
島根県
19.7%
山梨県
5.6%
3.4
14.1ポイント
 
高齢者世帯
3.8%
岩手県
17.5%
山梨県
1.6%
10.3
15.8ポイント
母子世帯
48.4%
京都府
58.5%
茨城県
7.3%
8.0
51.2ポイント
障害者・傷病者世帯
8.3%
島根県
18.7%
静岡県
3.8%
4.9
14.9ポイント
その他世帯
36.1%
鳥取県
61.0%
岐阜県
17.2%
3.5
43.7ポイント

(イ)都道府県別の国民年金受給率

 16年度における65歳以上の被保護者の国民年金(老齢年金及び老齢基礎年金)の受給率(以下「国民年金受給率」という。)は、図4—26及び表4—27のとおりであり、全国平均は30.5%で、全国の65歳以上の国民年金受給率の平均79.6%と比べて2.6倍の格差があり、これを都道府県別にみると、最も高い岩手県の54.2%と最も低い神奈川県の18.5%との間に2.9倍の格差がある。65歳以上の国民年金受給率の都道府県別の格差は1.1倍であるのに比べ、被保護者の国民年金受給率には2.9倍の格差がある。

図4—26 都道府県別の国民年金受給率(16年度)

図4—26都道府県別の国民年金受給率(16年度)

(注)
 厚生労働省「被保護者全国一斉調査」及び社会保険庁「社会保険事業の概況」を基に作成


表4—27 都道府県別の国民年金受給率の格差(16年度)
項目
平均
最大
(A)
最小
(B)
格差
(A/B)
(A-B)
65歳以上被保護人員
30.5%
岩手県
54.2%
神奈川県
18.5%
2.9
35.6ポイント
65歳以上人口
79.6%
青森県
87.8%
福岡県
73.5%
1.1
14.2ポイント

カ 福祉事務所の実施体制及び実施状況等の地域格差

(ア)保護の実施体制

a 現業員の充足率

 生活保護業務を担当する現業員の配置数は、前記1—(1)—エ のとおり、市については被保護世帯80世帯に1人、町村については同65世帯に1人が標準とされていて、16年度における全国1,225福祉事務所の現業員の標準数は計12,210人となっている。これに対し、現業員の実際の配置数は計11,944人であることから、標準数に対する配置数の割合(以下「充足率」という。)は97.8%となっており、充足率が100%未満の37都道府県の281事務所では、現業員が計1,198人の不足となっている。そして、充足率を都道府県別にみると、図4—27及び表4—28のとおりであり、最も高い長野県の183.5%と最も低い大阪府の66.5%との間には2.7倍の格差がある。また、34府県が充足率100%以上(被保護実人員計633,029人)であるのに対して、13都道府県が充足率100%未満(被保護実人員計790,358人)となっており、都道府県数では全体の27.7%であるが、被保護実人員では全体の55.5%を占めている。さらに、査察指導員についても、25都道府県の115事務所で計160人の不足となっている。
 なお、上記のように現業員の配置数が標準数を下回っている理由について、事業主体では、被保護者の増加による一時的な不足があること、増員には努めているものの財政的に標準数の現業員を配置するのが困難なことを挙げている。

図4—27 現業員の充足率等の都道府県別状況(16年度)

図4—27現業員の充足率等の都道府県別状況(16年度)

(注)
 厚生労働省「生活保護の現況と課題」を基に作成


表4—28 充足率による専任者数等の分布(16年度)
(( )、< >内の単位:%)
 
都道府県数
被保護実人員
標準数
配置数
専任者数
1年未満経験者数
充足率
 
100%以上
34
(72.3)
633,079
(44.5)
5,526
(45.3)
5,963
(49.9)
5,108
(48.9)
<85.6>
1,513
(53.2)
<25.3>
充足率
 
100%未満
13
(27.7)
790,358
(55.5)
6,684
(54.7)
5,981
(50.1)
5,344
(51.1)
<89.3>
1,333
(46.8)
<22.2>
合計
47
(100.0)
1,423,388
(100.0)
12,210
(100.0)
11,944
(100.0)
10,452
(100.0)
<87.5>
2,846
(100.0)
<23.8>
注(1)
 厚生労働省「社会福祉行政業務報告」を基に作成
注(2)
 ( )書きは各項目の構成比、< >書きは専任者数、1年未満経験者数それぞれの配置数に対する割合である。
注(3)
 被保護実人員は月平均の数値であるため、合計が各計欄の数値と一致しないことがある。

b 現業員の専任者割合及び経験年数

 16年度における現業員のうち生活保護業務に専従している者の割合(以下「専任者割合」という。)は、全国平均が87.5%であり、最も高い秋田県等の100.0%と最も低い長野県の17.0%との間には5.8倍の格差がある。
 また、現業員のうち当該業務の経験が1年未満である者の割合は、全国平均が23.8%であり、最も高い山梨県の53.6%と最も低い京都府の16.7%との間には3.2倍の格差がある。

(イ)保護の申請率、開始率及び相談・開始割合

 16年度における生活保護に関する相談件数に対する申請件数の割合(以下「申請率」という。)は、表4—29のとおりであり、全国平均は30.6%で、政令市間でみると、最も高い千葉市の71.1%と最も低い北九州市の15.8%との間には4.5倍の格差がある。また、申請件数に対する開始件数の割合(以下「開始率」という。)の全国平均は89.5%であり、最も高い千葉市の98.0%と最も低い福岡市の87.0%との間には1.1倍の格差がある。さらに、相談件数に対する開始件数の割合の全国平均は28.0%であり、最も高い千葉市の69.7%と最も低い北九州市の14.6%の間には4.7倍の格差がある。

表4—29 申請率、開始率及び相談・開始割合の格差(16年度)
 
平均
最大
(A)
最小
(B)
格差
(A/B)
(A-B)
申請率
全国の福祉事務所
30.6%
 
 
政令市福祉事務所
30.6%
千葉市
71.1%
北九州市
15.8%
4.5
55.3ポイント
中核市及びその他市福祉事務所
山梨県
69.1%
福井県
19.7%
3.5
49.4ポイント
開始率
全国の福祉事務所
89.5%
 
 
政令市福祉事務所
91.5%
千葉市
98.0%
福岡市
87.0%
1.1
11.0ポイント
中核市及びその他市福祉事務所
神奈川県
99.1%
熊本県
73.8%
1.3
25.3ポイント
県福祉事務所
74.8%
奈良県
92.6%
大分県
59.1%
1.5
33.5ポイント
相談・開始割合
全国の福祉事務所
28.0%
 
 
政令市福祉事務所
28.0%
千葉市
69.7%
北九州市
14.6%
4.7
55.1ポイント
中核市及びその他市福祉事務所
山梨県
65.7%
福井県
16.5%
3.9
49.2ポイント
注(1)
 厚生労働省「生活保護の現況と課題」を基に作成
注(2)
 県福祉事務所では相談件数を集計していないため、申請率及び相談・開始割合は算出できない。

(ウ)保護開始時調査等

 福祉事務所では、制度の適正な運営の推進のため、実施要領等に基づき、要保護者の保護の申請時の受給要件を確認するため、当該世帯における収入、資産、稼働能力、扶養義務者の扶養能力等の実態を把握するための調査、審査に努めることとされている。また、保護開始後においても、個々の世帯の実情に即した処遇及び自立の助長等の観点から訪問調査活動を積極的かつ効果的に実施し、当該世帯の生活実態及び就労実態の迅速な把握に努めることとされている。

a 関係先調査

 16年度における保護開始時の金融機関、雇用先等の関係先に対する調査の都道府県別の実施状況についてみると、図4—28のとおり、保護申請1件当たりの関係先調査件数の全国平均は23.7件であり、最も多い鹿児島県の42.1件と最も少ない東京都の5.9件との間には7.1倍の格差がある。

図4—28 保護申請1件当たりの関係先調査件数の都道府県別状況(16年度)

図4—28保護申請1件当たりの関係先調査件数の都道府県別状況(16年度)

(注)
 厚生労働省「生活保護の現況と課題」を基に作成


b 扶養能力調査

 16年度における保護開始時に扶養能力調査を行った割合を都道府県別にみると、図4—29のとおりであり、全国平均は70.3%で、最も高い福島県等の100.0%と最も低い大阪府の37.0%との間には2.7倍の格差がある。また、調査を実施した世帯1世帯当たりの調査件数についてみると、全国平均は2.7件で、最も多い愛媛県の5.5件と最も少ない広島県の1.6件との間には3.4倍の格差がある。さらに、扶養調査件数に対する扶養義務履行件数の比率は、全国平均は2.5%と極めて低率であるが、最も高い新潟県の10.9%と最も低い愛知県の0.3%との間には36.3倍の格差がある。

図4—29 保護開始世帯1世帯当たりの扶養能力調査件数の都道府県別状況(16年度)

図4—29保護開始世帯1世帯当たりの扶養能力調査件数の都道府県別状況(16年度)

(注)
 厚生労働省「生活保護の現況と課題」を基に作成


 さらに、保護開始時に行う扶養義務者等に対する扶養能力調査によって扶養が実施されなかった際に、どの程度の間隔を置いて再調査を行うかについてみたところ、図4—30のとおりであり、毎年再調査を行うと定めている事務所がある一方で、4年以上の間隔となっている事務所、頻度を特段定めずに現業員等の判断にゆだねている事務所も見受けられた。

図4—30 扶養再調査の間隔

図4—30扶養再調査の間隔

(エ)被保護世帯の訪問調査活動

a 訪問格付割合

 現業員は、被保護世帯に対する指導の必要性に応じて訪問間隔(1箇月から1年)の格付を行い、訪問計画を立てて被保護者宅での指導等を行っている。
 16年度において訪問格付を1箇月から3箇月としている被保護世帯の割合をみると、全国平均は48.0%であり、実施機関別にみた格差は以下のとおりとなっている(表4—30参照)
〔1〕 政令市福祉事務所で最大の川崎市65.3%と最小の横浜市17.1%との格差は3.8倍
〔2〕 中核市及びその他市福祉事務所で最大の青森県89.7%と最小の鹿児島県25.1%との格差は3.5倍
〔3〕 県福祉事務所で最大の高知県86.4%と最小の鹿児島県15.6%との格差は5.5倍

表4—30 訪問格付が3箇月以内の被保護世帯割合の格差(16年度)
 
平均
最大
(A)
最小
(B)
格差
(A/B)
(A-B)
全国の福祉事務所
48.0%
 
 
政令市福祉事務所
46.4%
川崎市
65.3%
横浜市
17.1%
3.8
48.2ポイント
中核市及びその他市福祉事務所
青森県
89.7%
鹿児島県
25.1%
3.5
64.6ポイント
県福祉事務所
60.0%
高知県
86.4%
鹿児島県
15.6%
5.5
70.8ポイント
注(1)
 厚生労働省「生活保護の現況と課題」を基に作成
注(2)
 都区部福祉事務所は「中核市及びその他市福祉事務所」に含まれている。

 また、現業員による訪問調査活動の状況は、図4—31のとおりであり、現業員1人当たりの月間訪問件数の全国平均は26.1件で、最も多い徳島県の41.6件と最も少ない長野県の13.4件との間には3.1倍の格差がある。

図4—31 1箇月当たりの訪問件数と訪問格付割合(16年度)

図4—311箇月当たりの訪問件数と訪問格付割合(16年度)

(注)
 厚生労働省「生活保護の現況と課題」を基に作成


b 訪問調査活動に関する監査結果

 16年度に都道府県及び政令市が行った監査結果により、訪問調査活動について、訪問頻度及び目的達成等に問題があると指摘された被保護世帯の割合は、全国平均は23.4%であるが、都道府県別には、図4—32のとおり、10%未満が10県ある一方で、50%以上の県もある状況である。

図4—32 監査結果で訪問頻度等に問題があると指摘された被保護世帯の割合別にみた都道府県数(16年度)

図4—32監査結果で訪問頻度等に問題があると指摘された被保護世帯の割合別にみた都道府県数(16年度)

(注)
 厚生労働省「生活保護の現況と課題」を基に作成


(オ)医療扶助の適正化

 福祉事務所では、医療扶助の適正化の取組として、以下のような措置等を講じている。
〔1〕 入院日数が180日を超えるなど入院が長期に渡っている被保護者に対して実態把握を行った結果入院の必要がないことが明らかになった者(以下「入院の必要がない長期入院患者」という。)に対する適切な措置
〔2〕 診療日数が過度に多い被保護者(同一月内に同一診療科目を15日以上受診している月が3箇月以上続いている者で頻回受診と認められる者。以下「頻回受診者」という。)に対する適正受診の指導
〔3〕 医療扶助費の適正な支出を確保するための医療扶助受給者のレセプト点検の実施
 そして、これらの取組に対し、厚生労働省では、都道府県等を通じて技術的助言等を行っている。

a 入院の必要がない長期入院患者

 16年度において入院の必要がない長期入院患者とされた被保護者は、表4—31のとおり、全国で計5,532人であり、そのうち16年度末に退院等の措置が執られていない者の割合(以下「未措置患者割合」という。)については、全国平均で31.0%となっている。未措置患者割合を医療扶助人員が上位の10都道府県についてみると、最も高い愛知県の49.4%と最も低い千葉県の5.8%との間に8.4倍の格差がある。
 なお、上記のように入院の必要がない長期入院患者が未措置となっている理由について、福祉事務所では、退院後の受入先が確保できないことなどを挙げている。

表4—31 医療扶助人員上位10都道府県における長期入院患者の措置状況(16年度)
都道府県名
医療扶助人員
(1箇月平均)
(人)
(A)
左のうち入院の必要がない長期入院患者
(人)
(B)
比率
(%)
(B/A)
未措置患者数
(人)
(C)
未措置患者割合
(%)
(C/B)
最小
全国
1,154,520
5,532
0.4
1,720
31.0
大阪府
155,146
775
0.4
282
36.3
東京都
151,761
754
0.4
183
24.2
北海道
113,785
277
0.2
83
29.9
神奈川県
81,160
297
0.3
78
26.2
福岡県
77,056
410
0.5
134
32.6
兵庫県
64,184
262
0.4
43
16.4
京都府
37,045
98
0.2
18
18.3
埼玉県
36,926
120
0.3
44
36.6
千葉県
31,672
103
0.3
6
5.8
愛知県
30,163
342
1.1
169
49.4
最大
(注)
 厚生労働省「生活保護の現況と課題」を基に作成


b 頻回受診者

 16年度において頻回受診者とされた被保護者は、表4—32のとおりであり、全国で計3,867人で、そのうち16年度末に必要とされる通院日数に改善された者の割合(以下「改善者割合」という。)については、全国平均で32.3%となっている。改善者割合を医療扶助人員が上位の10都道府県についてみると、最も高い千葉県の68.7%と最も低い大阪府の15.4%との間に4.4倍の格差がある。

表4—32 医療扶助人員上位10都道府県にみる頻回受診者の改善状況(16年度)
都道府県名
医療扶助人員
(1箇月平均)
(人)
(A)
左のうち頻回受診者
(人)
(B)
比率
(%)
(B/A)
改善者数
(人)
(C)
改善者割合
(%)
(C/B)
 
全国
1,154,520
3,867
0.3
1,251
32.3
大阪府
155,146
454
0.2
70
15.4
最小
東京都
151,761
491
0.3
131
26.6
 
北海道
113,785
219
0.1
76
34.7
神奈川県
81,160
286
0.3
72
25.1
福岡県
77,056
620
0.8
262
42.2
兵庫県
64,184
214
0.3
85
39.7
京都府
37,045
85
0.2
31
36.4
埼玉県
36,926
54
0.1
24
44.4
千葉県
31,672
16
0.0
11
68.7
最大
愛知県
30,163
162
0.5
44
27.1
 
(注)
 厚生労働省「生活保護の現況と課題」を基に作成


c レセプト点検による過誤調整

 福祉事務所では、医療機関から社会保険診療報酬支払基金の審査を経て提出されたレセプトについて、都道府県の本庁及び福祉事務所の医療担当職員や業務委託等により点検を行っている。16年度において、レセプト点検の結果、請求が妥当でないとして返還等の措置が執られた額(以下「過誤調整額」という。)及びその額の医療費支払総額に対する割合(以下「過誤調整率」という。)については、表4—33のとおりであり、過誤調整額は、計136億2933万余円、過誤調整率の全国平均は1.0%となっている。支払総額が上位の10都道府県の過誤調整率についてみると、最も高い埼玉県の1.2%(過誤調整額4億7019万余円)と最も低い千葉県の0.5%(過誤調整額2億0877万余円)との間に2.4倍の格差がある。

表4—33 支払総額上位10都道府県にみる過誤調整率(16年度)
都道府県名
支払総額
(千円)
(A)
過誤調整額
(千円)
(B)
過誤調整率
(%)
(B/A)
 
全国
1,288,996,980
13,629,333
1.0
大阪府
191,463,558
2,130,879
1.1
東京都
170,975,956
1,514,524
0.8
北海道
110,445,740
681,026
0.6
福岡県
97,496,350
1,069,270
1.0
神奈川県
75,074,084
789,881
1.0
兵庫県
63,863,365
677,527
1.0
愛知県
41,865,069
432,894
1.0
埼玉県
38,341,716
470,193
1.2
最高
京都府
37,464,332
267,465
0.5
 
千葉県
37,075,907
208,779
0.7
最低
(注)
 厚生労働省「生活保護の現況と課題」を基に作成


(カ)被保護世帯の自立助長

 福祉事務所では、被保護世帯の保護からの脱却を目指し、就労指導等の様々な方策を用いて被保護世帯の自立助長の推進を図るため支援を行っているが、中でも特に自立助長が見込まれる世帯を「自立助長推進対象世帯」として、重点的に就労支援等を行っており、16年度における全国の自立助長推進対象世帯計34,144世帯のうち39.9%の13,653世帯が自立更生の目的を達している。この自立の要因としては、就労指導による稼働開始等が10,155世帯と全体の74.3%を占めている。
 自立助長の都道府県別の状況についてみると、図4—33のとおりであり、被保護世帯のうち自立助長推進対象世帯を選定する割合については、全国平均が3.5%であり、最も高い熊本県の7.6%と最も低い愛知県の1.9%との間には4.0倍の格差がある。また、選定された世帯のうち自立更生の目的を達成した世帯の割合については、上記のとおり全国平均が39.9%であり、最も高い石川県の57.9%と最も低い岐阜県の22.1%との間には2.6倍の格差がある。

図4—33 被保護世帯に対する自立助長の推進状況(16年度)

図4—33被保護世帯に対する自立助長の推進状況(16年度)

(注)
 厚生労働省「生活保護の現況と課題」を基に作成


キ 生活保護関係経費の一般歳出に占める割合

 16年度における負担金等の国庫負担対象事業費及び一般財源により支出した現業員等の人件費の合計額(以下「生活保護関係経費」という。)について、全国で上位に位置する20市等を列挙すると、表4—34のとおりであり、事業主体ごとの生活保護関係経費の一般歳出に対する割合は、4.0%から14.3%となっている。

表4—34 一般歳出に占める生活保護関係経費(国庫負担対象事業分の多い順)の状況(16年度)

(単位:百万円、%)

都道府県等名
16年度生活保護関係経費
16年度
一般歳出額
(B)
対一般
歳出比
(A/B)
国庫負担対象事業分
一般財源関係
(A)
東京都区部
281,380
14,174
295,555
2,936,249
10.0
大阪市
214,500
6,465
220,965
1,746,685
12.6
札幌市
88,406
3,677
92,083
802,951
11.4
横浜市
85,089
2,995
88,085
1,303,830
6.7
神戸市
68,301
2,765
71,066
776,543
9.1
京都市
62,855
2,285
65,141
664,643
9.8
福岡市
50,181
1,998
52,179
732,418
7.1
川崎市
42,054
1,599
43,654
509,128
8.5
名古屋市
36,519
2,027
38,546
963,333
4.0
堺市
32,054
1,005
33,059
295,395
11.1
北九州市
29,934
2,335
32,270
515,180
6.3
広島市
28,136
1,547
29,684
525,659
5.6
東大阪市
24,561
718
25,279
176,688
14.3
千葉市
17,847
720
18,568
343,669
5.4
熊本市
17,145
662
17,808
218,010
8.1
旭川市
17,094
822
17,917
157,176
11.3
函館市
16,977
846
17,823
129,460
13.7
高知市
16,464
495
16,959
158,092
10.7
仙台市
15,819
674
16,494
395,075
4.1
岡山市
14,886
495
15,382
228,784
6.7
(注)
 福祉事務所の生活保護関係経費(非常勤含む)の人件費相当額