平成18年度
第3章 個別の検査結果
第1節 省庁別の検査結果
第8 財務省
意見を表示し又は処置を要求した事項
独立行政法人国立印刷局における土地及びその譲渡収入による資金などの保有資産について適正規模を検討するとともに、不要な資産を国庫に返納させるよう適切な制度を整備するよう意見を表示したもの
|
||||||||||||||||||||||||||||||
【意見を表示したものの全文】
独立行政法人国立印刷局における土地及び土地譲渡収入などによる資金について
(平成19年10月30日付け財務大臣あて)
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示する。
記
1 印刷局の業務運営等の概要
(1) 印刷局の概要及び業務運営実績
独立行政法人国立印刷局(以下「印刷局」という。)は、従前は貴省の特別の機関として、印刷局特別会計によって運営されていたが、独立行政法人国立印刷局法(平成14年法律第41号。以下「印刷局法」という。)に基づき、平成15年4月に、通貨制度の安定に寄与すること等を目的として、日本銀行券の製造、官報の編集・印刷等の事業を行う独立行政法人に移行した。貴省は、移行に際し、印刷局特別会計において資産として保有していた現金及び預金100億円、本局、工場等の事業用の土地882,102.91m2(帳簿価額1934億4610万余円)のほか、東京都港区虎ノ門や千代田区大手町に所在する賃貸土地30,575.16m2(同1037億8641万余円)などの資産計4177億6522万余円を印刷局に承継させている。
そして、承継後における資金及び土地、資産合計の推移についてみると、表1のとおり、18年度末で資金及び土地の計が3567億4268万余円、資産合計が4424億7629万余円となっており、そのうち土地は18年度末で帳簿価額にして総額2782億4010万余円(事業用の土地1927億1243万余円、賃貸土地855億2767万余円)となっている。
| 表1 資金及び土地、資産合計の推移
(単位:百万円) |
区分
|
(開始時)
15年4月1日
|
(15年度末)
16年3月31日
|
(16年度末)
17年3月31日
|
(17年度末)
18年3月31日
|
(18年度末)
19年3月31日
|
【資金】
(流動資産)
現金及び預金
有価証券
未収金(注)
(固定資産)
投資有価証券
長期性預金
資金計
|
10,000
−
3,017
−
−
13,017
|
9,287
10,000
−
−
−
19,287
|
10,690
11,000
−
17,984
3,000
42,675
|
15,038
19,999
−
14,981
4,000
54,020
|
9,122
23,993
−
42,886
2,500
78,502
|
【土地】
事業用の土地
賃貸土地
土地計
|
193,446
103,786
297,232
|
193,446
103,786
297,232
|
193,446
97,634
291,080
|
193,446
97,634
291,080
|
192,712
85,527
278,240
|
資金・土地計
|
310,250
|
316,519
|
333,756
|
345,101
|
356,742
|
資産合計
|
417,765
|
430,298
|
432,747
|
438,177
|
442,476
|
未収金は承継時の現金及び預金の未収分のみを表示した。
|
国庫納付金納付額の計算においては、中期目標の期間に納付した恩給負担金及び国家公務員共済組合法の長期給付に関する組合の追加費用(以下「整理資源等」という。)の負担額から同負担金に係る退職給付費用(財政再計算に伴い引当不足となった整理資源等の負担金に係る費用)の額を控除した額を、積立金の額から控除し、控除後の積立金の額に相当する金額の2分の1の額を国庫納付金の納付の基準とすることと定めている。
|
| 表2 印刷局の業務運営実績(平成15〜18年度)
(単位:百万円) |
区分 |
年度 |
15〜18年度累計 |
|||
15 |
16 |
17 |
18 |
||
売上高
売上原価
販売費及び一般管理費 |
87,522
66,804
14,295 |
86,708
70,368
11,213 |
83,464
66,266
9,911 |
80,499
63,433
10,054 |
338,194
266,871
45,474 |
営業利益 |
6,423 |
5,126 |
7,286 |
7,012 |
25,848 |
営業外収益
営業外費用 |
6,176
4,044 |
6,049
4,684 |
6,039
5,649 |
5,285
4,703 |
23,550
19,081 |
経常利益 |
8,554 |
6,492 |
7,676 |
7,594 |
30,317 |
特別利益
特別損失 |
−
508 |
2,903
4,931 |
2
669 |
1,462
451 |
4,368
6,560 |
当期純利益
当期総利益 |
8,045
8,045 |
4,464
4,464 |
7,009
7,009 |
8,605
8,605 |
28,125
28,125 |
利益剰余金
積立金 |
8,045
8,045 |
12,509
12,509 |
19,519
19,519 |
28,125
28,125 |
|
(注)
|
18年度末時点における積立金額28,125百万円のうち、印刷局法第15条第1項に規定する国庫納付相当額は9,553百万円である。
|
| 表3 賃貸土地に係る損益の状況(平成15〜18年度)
(単位:百万円) |
区分
|
年度
|
15〜18年度累計
|
|||
15
|
16
|
17
|
18
|
||
営業外収益のうち
受取賃貸料
営業外費用のうち
貸与資産費用
|
3,120
−
|
3,670
949
|
3,873
890
|
2,594
950
|
13,259
2,790
|
差引損益
|
3,120
|
2,720
|
2,982
|
1,644
|
10,468
|
(注)
|
貸与資産費用の内容は固定資産税の支払額であるが、15年度は固定資産税の納付がなかったため、貸与資産費用は計上されていない。
|
(2) 土地の譲渡
前記の賃貸土地のうち東京都港区虎ノ門2丁目に所在する賃貸土地(面積8,974.44m2、帳簿価額182億5874万余円、以下「虎ノ門の土地」という。)については、15年12月に東京都からその一部(1,762.62m2、帳簿価額61億5154万余円、貸付先は日本たばこ産業株式会社)を道路用地として譲り受けたい旨の要望があり、更に17年11月に国家公務員共済組合連合会から残部(7,211.82m2、帳簿価額121億0720万余円、貸付先は国家公務員共済組合連合会)を病院敷地として譲り受けたい旨の要望があった。通則法第48条等の規定により、土地の譲渡は主務大臣の認可を受けるべき重要な財産の譲渡にあたることから、印刷局は財務大臣の認可を受けて、16年6月及び17年3月に東京都に対し計90億5156万余円、18年4月に国家公務員共済組合連合会に対し131億5200万円、合計222億0356万余円で虎ノ門の土地を譲渡し、上記の帳簿価額182億5874万余円を差し引いた39億4481万余円の土地売却益を得ている。
このほか、印刷局は、事業用の土地のうち独立行政法人に移行する前より更地のまま保有していたり、事業の効率化の過程で不要となっていたりした宿舎用地など計12,974.35m2、帳簿価額33億4791万余円の土地の譲渡について、18年12月に財務大臣の認可を受け、一般競争入札などを行い、18年度は10億3798万余円(1,924.21m2、帳簿価額7億0690万余円)、19年度は6月末までに49億6750万余円(10,817.22m2、帳簿価額26億2413万余円)で譲渡している。
2 本院の検査結果
(検査の着眼点、対象、観点及び方法)
政府は、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005」(平成17年6月21日閣議決定)により、政府資産について最大限の有効活用を行うため、経済財政諮問会議において資産・債務の管理の在り方について検討を行う方針を打ち出し、同会議の下に設置された資産債務等専門調査会は、独立行政法人などが保有する財産について新たな目標を検討することなどを内容とする報告を取りまとめている。
一方、政策評価・独立行政法人評価委員会は、「平成18年度における独立行政法人の組織・業務全般の見直し方針」(18年7月)において、国の歳出の縮減を図る見地から、業務の廃止・縮小・重点化や運営の効率化などの見直しの視点を掲げている。
そこで、賃貸土地等を譲渡するなどして得た資金が有効に活用されているか、又は国庫に返納する必要はないかなどに着眼し、貴省及び印刷局において、印刷局が国の特別会計から承継した資産4177億6522万余円を対象に、経済性、有効性等の観点から、会計実地検査を行った。そして、印刷局本局においては、土地譲渡収入を含む資金の保有状況及び運用方針などについて、また、貴省においては、前記の土地譲渡収入の活用方針や保有資産の適正規模に対する考え方などについて、関係資料の提示を受けるなどして検査した。
(検査の結果)
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
印刷局の中期目標期間(15〜19年度)における資金計画によると、15年度期首に国から承継した繰越金は運転資金として132億86百万円が見込まれ(中期目標期間期首に実際に承継した繰越金は、開始貸借対照表(表4参照)に計上されている現金及び預金のほか、開始貸借対照表で未収金に計上されていた額を含む130億1774万余円)、中期目標期間終了時の19年度末には資金残高が478億15百万円となるとされている。
| 表4 印刷局の中期目標期間開始時(平成15年4月1日)の貸借対照表
(単位:百万円) |
借方科目
|
金額
|
貸方科目
|
金額
|
(資産の部)
I流動資産
現金及び預金
売掛金
製品
半製品
原材料
仕掛品
貯蔵品
未収金
II固定資産
1有形固定資産
建物
建物付属設備
構築物
機械装置
車両運搬具
工具器具備品
土地
建設仮勘定
2無形固定資産
特許権
ソフトウエア
その他の無形固定資産
3投資その他資産
賃貸土地
資産合計
|
36,602
10,000
2,710
3,358
5,390
3,900
5,313
2,598
3,330
383,163
277,033
35,412
12,191
2,331
31,389
95
2,021
193,446
144
343
0
336
6
103,786
103,786
417,765
|
(負債の部)
I流動負債
未払金
未払費用
前受金
賞与引当金
その他の流動負債
II固定負債
退職給付引当金
その他の固定負債
負債合計
(資本の部)
I資本金
政府出資金
資本合計
負債・資本合計
|
4,400
2,001
106
50
2,229
12
112,563
111,831
732
116.964
300,800
300,800
300,800
417,765
|
(注)
|
未収金には、承継時の現金及び預金の未収入分3,017百万円が含まれている。
|
これに対し、18年度の財務諸表によると、19年3月31日現在の資金残高の実績は、表5のとおり、785億0258万余円となっていて、この額は、中期目標期間終了時に見込まれている資金の残高をすでに300億円程度上回っている状況となっていた。その主な要因としては、中期計画には見込まれていない前記の虎ノ門の土地等の譲渡収入が18年度までに232億4155万余円あったことによると認められた。
| 表5 資金残高の推移(表1の一部再掲)
(単位:百万円) |
区分
|
(開始時)
15年4月1日
|
(15年度末)
16年3月31日
|
(16年度末)
17年3月31日
|
(17年度末)
18年3月31日
|
(18年度末)
19年3月31日
|
(流動資産)
現金及び預金
有価証券
未収金(注)
(固定資産)
投資有価証券
長期性預金
|
10,000
−
3,017
−
−
|
9,287
10,000
−
−
−
|
10,690
11,000
−
17,984
3,000
|
15,038
19,999
−
14,981
4,000
|
9,122
23,993
−
42,886
2,500
|
資金残高
|
13,017
|
19,287
|
42,675
|
54,020
|
78,502
|
未収金は承継時の現金及び預金未収分のみを表示した。
|
このほか、表6のとおり、15年度から18年度において、施設整備費の支出が、年度計画の予算に計上された額を12%から58%(平均で29%)下回っていて、固定資産に係る支出が予定より少なかったために、資金が増加していることも要因である。
| 表6 予算及び決算における施設整備費の対比
(単位:百万円) |
区分
|
中期計画
|
15年度
|
16年度
|
17年度
|
18年度
|
18年度までの累計
|
予算
決算
|
38,493
|
11,046
8,593
|
7,896
3,294
|
12,036
8,873
|
7,364
6,478
|
38,342
27,240
|
差異
予算に対する比率
|
2,452
22.2%
|
4,601
58.3%
|
3,162
26.3%
|
885
12.0%
|
11,101
29.0%
|
そして、19年度資金運用計画によれば、期首の資金残高785億0258万余円のうち1年以上の長期運用に充てられているものが現金及び預金に含まれる定期預金45億円、長期性預金25億円、国債などで運用されている投資有価証券428億8629万余円となっており、計498億8629万余円が長期運用資金とされている。
このように、印刷局は独立行政法人に移行した当初の中期計画において、その終了時には478億15百万円と、開始時の132億86百万円の3倍を超える資金を保有することを見込んでいたが、実際には独立行政法人に移行してから4年が経過した19年3月末時点で、中期計画には見込んでいなかった土地の譲渡などにより、上記のように785億0258万余円と多額の資金を保有する状況となっている。
そして、前記の土地譲渡収入については、現実に発生した多額の資金のうち、帳簿価額を上回る部分が売却益として計上されることになる。この土地の売却益については、中期目標期間の終了時の積立金に関する印刷局法等の規定に基づき、その2分の1相当額は中期目標期間終了後に国庫に納付される見込みである。しかし、国から承継した土地の帳簿価額相当額の資金については、政府出資金を減額して国に戻入することなどを想定した規定は存しないため、印刷局が中期目標期間が終了した後も保有し続けることになる。
上記のように、印刷局は土地譲渡による資金を19年6月末までに282億0905万余円得て、これを長期運用資金として保有しているのに、制度上このうちの帳簿価額部分は国庫に納付させることができない状況となっている。そして、「平成18年度における独立行政法人の組織・業務全般の見直し方針」(18年7月)において、独立行政法人は業務の廃止・縮小・重点化や運営の効率化などの見直しを求められていることなどから、今後の中期計画において工場再編などの資金需要が生じるとしても限定的なものと認められる。さらに、印刷局では、再開発が予定されている千代田区大手町所在の賃貸土地(18,982.52m2、帳簿価額851億7395万余円)などを保有していることから、今後も多額の土地譲渡収入が見込まれている。しかし、貴省において、これによって得られた資金の活用方針や保有させる資産の適正規模などは具体的に検討されていない状況となっていた。
(改善を必要とする事態)
これら土地譲渡収入を含む多額の資金を国債等の形で長期運用資金として印刷局が引き続き保有する事態は、現下の財政状況にかんがみ、国の特別会計から承継させた資産の有効活用の面から適切とは認められず、改善の要があると認められる。
(発生原因)
このような事態が生じているのは、貴省において15年4月に独立行政法人に移行する際に承継する土地等について、現に使用中の事業用の資産に限定せずに、賃貸土地等を含めて承継させたことが背景にあるが、次のような理由によると認められる。
ア 印刷局が承継した多額の賃貸土地や、その譲渡により得た多額の資金について、印刷局の本来業務への必要性を勘案した適正な規模かどうかについて十分な検討が行われなかったこと
イ 印刷局の保有する資金については、事業運営の果実である利益については原則として積立金の2分の1の額を国庫に納付する規定はあるが、土地の譲渡等により多額の資金が生じることや出資そのものを回収する必要が生じるような状況を想定した制度となっていないこと
3 本院が表示する意見
政府は、「経済財政改革の基本方針2007」(平成19年6月19日閣議決定)の中で、「独立行政法人見直しの3原則」を掲げ、印刷局を含む全101法人について、19年内を目途に、政府として「独立行政法人整理合理化計画」を策定するとしている。これを受けて、「独立行政法人整理合理化計画の策定に係る基本方針」(平成19年8月10日閣議決定)では、保有資産(実物資産及び金融資産)の見直しを行うことを明記している。具体的には実物資産について、事務・事業の見直しに応じて不要となった土地・建物等の実物資産の売却、国庫返納等を行うとともに、保有することについて特段の合理的理由のない資産について原則として売却すること、金融資産については、事務・事業の見直しに応じて不要となった金融資産の売却やそれに伴う積立金の国庫返納を行うなど圧縮の方向で見直しを行うこととしている。
本院では、会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書「特別会計の状況に関する会計検査の結果について」(18年10月)において、厳しい財政状況にかんがみ、特別会計の決算剰余金及び積立金等について、決算剰余金の一般会計への繰入れ等に必要な規定の整備を図ること、積立金等の適正な保有規模について検討をすることを方策として記載し、その有効活用を図るなどの検討を行うことの重要性を報告しているところである。独立行政法人における資金等の資産についても特別会計における決算剰余金や積立金等と同様に一般会計への繰入れを行うことが可能となるようにするなど有効活用を図ることが相当であると認められる。
印刷局は多額の土地譲渡収入金などの資金を保有し、なお、依然として前記の千代田区大手町所在の賃貸土地等を保有していることから今後も多額の譲渡収入が見込まれる。
ついては、貴省において、印刷局における資産の有効活用や前記の「独立行政法人整理合理化計画の策定に係る基本方針」に従った実物資産の原則売却、金融資産の圧縮などの観点から、印刷局の保有資産の適正規模について具体的に検討し、不要な資産を国庫に返納させるよう適切な制度を整備する要があると認められる。