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健康保険・厚生年金保険適用関係届書に係るデータ入力等業務委託契約の予定価格の積算が適切なものとなるよう是正改善の処置を求めたもの


(1) 健康保険・厚生年金保険適用関係届書に係るデータ入力等業務委託契約の予定価格の積算が適切なものとなるよう是正改善の処置を求めたもの

会計名及び科目
厚生保険特別会計(業務勘定)
(項)業務取扱費
部局等
社会保険庁 
契約の概要
事業主等から提出された届書のデータ入力等業務を委託するもの 
委託契約の積算額
9525万余円
(平成18年度)
低減できた委託契約の積算額
3719万円
(平成18年度)

【是正改善の処置を求めたものの全文】

 健康保険・厚生年金保険適用関係届書に係るデータ入力等業務委託契約の予定価格の積算について

(平成19年10月24日付け 社会保険庁長官あて)

 標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。

1 データ入力等業務の概要

(1) データ入力等業務委託契約の概要

 貴庁では、健康保険法(大正11年法律第70号)及び厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)に基づき健康保険事業及び厚生年金保険事業の運営を行っており、その一環として、事業主等から提出された各種の届書を社会保険オンラインシステムに収録する業務を行っている。
 そして、各地方社会保険事務局では、事業主等から提出された健康保険・厚生年金保険適用関係の各種届書(以下、これらを「届書」という。)のデータ入力業務及び上記の届書等を社会保険事務所等と当該データ入力を行う作業場との間で搬送する業務(以下、これらの業務を「データ入力等業務」という。)を、貴庁が定めた「健康保険・厚生年金保険適用関係届書パンチ委託要領」及び「健康保険・厚生年金保険適用関係届書磁気媒体届書作成仕様書(FD/MO仕様書)」等(以下「委託要領等」という。)に基づき、外部の業者に委託して実施している。また、貴庁では、10種類の届書をこれらの委託の対象としているが、各地方社会保険事務局では、それぞれの判断により委託対象とする届書の種類及びデータ入力等業務の委託件数を決定している。

(2) データ入力等業務委託契約の契約状況

 貴庁では、従来、各地方社会保険事務局において、データ入力等業務委託契約を一般競争契約により締結していたが、平成17年6月から経費の節減を図るため、試行として貴庁において、富山、石川、福井各社会保険事務局(北陸ブロック)分のデータ入力等業務委託契約を一括して一般競争契約により締結している。そして、この試行において特段の問題が生じなかったため、18年6月から本格運用として、上記の北陸ブロックに加え、京都、奈良、和歌山各社会保険事務局(南近畿ブロック)分、山口、福岡、熊本、大分各社会保険事務局(北九州ブロック)分の契約についてもそれぞれ一括して一般競争契約により締結しており、18年度(18年6月から19年3月まで。以下同じ。)の支払額は合計7417万余円となっている。
 なお、毎年度の4月分及び5月分の契約については、前年度の委託業者との間で随意契約により締結することにしている。

(3) データ入力業務の作業

 委託要領等では、データ入力業務に使用する装置(以下「データ入力装置」という。)は、初期入力、入力ミスチェックの機能を備えることなどとしているが、すべてのデータについて入力の際に誤入力がないことを確認する必要があるなどのため、キーボードの特定のキーを打鍵することによりデータを単純複写する機能等は原則として使用しないこととしている。そして、委託対象とする届書の種類ごとに1件当たりの数字、カナ、漢字の各入力文字数を平均的なものとして定めている。

(4) 届書等の搬送

 委託要領等では、個人情報保護等の安全性の確保のために、社会保険事務所等からデータの入力を行う作業場及びその作業場から社会保険事務所等への搬送に使用する車両は、原則として、委託業者が自らの車両を使用することとし、遠隔地等のため搬送が困難な場合などについては、各地方社会保険事務局が個人情報保護等の安全性の上で問題ないと判断した宅配便を取り扱う配送業者を活用することができるとしている。この委託要領等の制定後、貴庁では、18年1月に、「平成18年度における入力業務委託等の取扱いについて」の事務連絡を発し、社会保険事務所等と委託業者との間における届書等の搬送については、個人情報保護等を図るとともに、配送業者を積極的に活用するものとし、できる限り経費節減に寄与する方式を検討すべきであるとしている。

(5) 予定価格の積算

 貴庁では、データ入力等業務委託契約の予定価格の積算に当たっては、データ入力経費及び搬送経費に区別して算定している。そして、データ入力経費については、委託要領等に定められた数字、カナ、漢字ごとの文字数に、それぞれ入力単価を乗ずるなどして算定しており、また、搬送経費については、各地方社会保険事務局が定めた契約期間内における搬送予定回数に、人件費等を乗ずるなどして算定している。
 そして、18年度の一般競争契約におけるデータ入力等業務の予定価格の算定に当たっては、データ入力経費に搬送経費を加えて、合計9525万余円と積算している。

2 本院の検査結果

(検査の対象、観点、着眼点及び方法)

 本院は、貴庁が18年度に一般競争契約を締結している前記の3ブロック(10社会保険事務局)を対象として、貴庁及び6社会保険事務局(注) において会計実地検査を行った。検査に当たっては、データ入力等業務委託契約について、経済性等の観点から、データ入力経費の算定がデータ入力装置の持つ効率的な機能を考慮したものとなっているか、搬送経費の算定が配送業者を活用した経済的なものとなっているかなどに着眼して、貴庁においては契約書等の書類により、6社会保険事務局においては届書等を確認するなどの方法により検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、データ入力等業務の予定価格の積算について次のような事態が見受けられた。

(1) データ入力経費について

 貴庁では、データ入力業務については、前記のとおり、対象となる届書ごとに入力データ1件当たりの数字、カナ、漢字の平均的な入力文字数を定め、この入力文字数に一定の単価を乗ずるなどしてデータ入力経費を算定していた。 そして、この入力文字数は、委託要領等でデータ入力装置が有するデータの単純複写機能を原則として使用しないこととしていることから、届書の入力データ1件ごとに届書コード等の文字数をすべて合計して算出し、データ入力経費を合計7957万余円と算定していた。
 しかし、一般的にデータ入力装置を使用するに当たっては、同一のデータを入力する項目はあらかじめ固定項目として登録し、当該登録された項目については、入力作業を行わなくてもデータとして一律に記録されるような設定を行っている。そして、本件データ入力業務は届書の種類ごとにまとめて委託していることから、届書の種類ごとに共通して使用する数字8桁の届書コードなど、同一のデータを入力する項目については固定項目の設定を行うこととすれば、届書によっては入力する数字の文字数が34文字から21文字になるなど入力文字数が大幅に減少することとなり、積算額は合計5647万余円となる。
 現に、同種のデータ入力等業務委託契約を締結している一部の地方社会保険事務局管内の委託業者においては、同一のデータを入力する項目について固定項目の設定を行い、効率的なデータ入力業務を行っている状況であった。

(2) 搬送経費について

 貴庁では、搬送経費を算定するに当たり、社会保険事務所等と作業場との間での搬送予定回数等を各地方社会保険事務局から聴取し、契約期間における1週間の平均の搬送予定回数を算出し、これに人件費等を乗ずるなどして、委託業者の車両で搬送した場合の経費を合計1567万余円と算定していた。
 しかし、搬送方法については、前記の事務連絡により、委託業者の車両による方法と個人情報保護等の安全性が確保された配送業者による方法との比較検討を十分行うこととすれば、委託業者より経済的な配送業者を活用することができることとなり、契約期間における1週間の平均搬送予定回数に1個当たりの料金を乗ずるなどして算出すると、積算額は合計158万余円となる。
 現に、福岡社会保険事務局管内では、経済的に搬送を行うため、個人情報保護等の安全性が確保された配送業者に委託している状況であった。

(低減できた積算額)

 上記の(1)及び(2)より、18年度のデータ入力等業務の予定価格の積算額について修正計算すると、計5805万余円となり、貴庁の積算額計9525万余円と比べ、3719万余円が低減できたと認められる。

(是正改善を必要とする事態)

 上記のように、データ入力等業務委託契約の予定価格の積算に当たり、データ入力経費の算定がデータ入力装置の持つ効率的な機能を活用するようになっていなかったり、搬送経費の算定が経済的な配送業者を活用するようになっていなかったりしている事態は適切とは認められない。そして、今回検査対象としたのは貴庁が契約している前記3ブロックの地方社会保険事務局であり、他の地方社会保険事務局においても上記のような事態が生じていると思料されることから、早急に是正改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、貴庁において、データ入力経費については、同一のデータを入力する項目に関し固定項目の設定を行うことにより再度入力しないこととするなど、データ入力業務を経済的に実施するための検討が十分でなかったり、搬送経費については、搬送方法に関し経済的に実施するための検討及び確認が十分でなかったりしたことなどによると認められる。

3 本院が求める是正改善の処置

 貴庁では、今後もデータ入力等業務委託を行うこととしており、また、前記の3ブロック以外においても複数の地方社会保険事務局を一括して契約を締結することを検討している。
 さらに、貴庁の廃止後、新たに年金事業の運営を行うため22年4月1日までに設立することとされている日本年金機構においても、引き続き、データ入力等業務を行い、これを外部の業者に委託することになると見込まれる。
 ついては、貴庁において、データ入力等業務委託契約の予定価格の積算を適切なものとするため、次のとおり委託要領等を改めるなどの是正改善の処置を求める。
ア データ入力経費について、データ入力業務を効率的に行うため、同一のデータを入力する項目については固定項目の設定を行い、それを前提としたデータ入力文字数を定めること
イ 搬送経費について、委託業者の車両による搬送経費と、個人情報保護等の安全性が確保された配送業者を活用した搬送経費との比較検討を十分行うこと

 6社会保険事務局  福井、京都、奈良、和歌山、福岡、熊本各社会保険事務局