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中小企業金融公庫が信用保証協会に対して行う融資事業について、その効果が十分発現するよう貸付けの在り方を検討するとともに、実態を踏まえ貸付金利を見直すよう意見を表示したもの


中小企業金融公庫が信用保証協会に対して行う融資事業について、その効果が十分発現するよう貸付けの在り方を検討するとともに、実態を踏まえ貸付金利を見直すよう意見を表示したもの

科目
信用保険等業務勘定
貸付金
貸付金利息
部局等
中小企業金融公庫(平成16年6月30日以前は中小企業総合事業団信用保険部門、11年6月30日以前は中小企業信用保険公庫)
信用保証協会に対する融資事業の概要
保証債務の額を増大するために必要な原資となるべき資金及び保証債務の履行を円滑にするために必要な資金の貸付け
融資基金残高
6732億2762万円
(平成18年度末)
信用保証協会への貸付金残高
4629億5600万円
(平成18年度末)

【意見を表示したものの全文】

 信用保証協会に対して行う融資事業の効果等について

(平成19年10月26日付け 中小企業金融公庫総裁あて)

 標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示する。

1 信用保証協会に対して行う融資事業の概要

(1) 信用保険事業及び融資事業の概要

 貴公庫は、中小企業金融公庫法(昭和28年法律第138号)に基づき、中小企業者に対する貸付けに係る債務の保証等についての保険(以下「信用保険事業」という。)並びに信用保証協会法(昭和28年法律第196号)に基づき設立された全国52の信用保証協会(以下「協会」という。)に対しその保証債務の額を増大するために必要な原資となるべき資金及び保証債務の履行を円滑にするために必要な資金の貸付け(以下「融資事業」という。)を行っている。
 貴公庫は、上記の信用保険事業及び融資事業を経理するために設けられた信用保険等業務勘定の中小企業信用保険準備基金及び融資基金に、それぞれの事業の原資として国から出資を受けている。
 融資基金に対する国の出資は、昭和33年度から平成9年度まで毎年度行われており、累計で7477億円となっている。その内訳は国の一般会計からの出資額が計6749億円、産業投資特別会計からの出資額が計728億円となっている。そして、10年度以降の出資はなく、16年度に産業投資特別会計からの出資金残高726億余円が国庫に返還され、18年度末の融資基金の残高は6732億余円となっている。

ア 信用保険事業

 中小企業の信用力の不足を補い、その資金調達の円滑化を図るために、中小企業信用補完制度が設けられている。同制度は、協会が金融機関に対して中小企業者の債務を保証する信用保証事業と、信用保証事業による協会の債務保証を中小企業信用保険法(昭和25年法律第264号)に基づいて貴公庫が包括的に保険する信用保険事業によって成り立っている。

イ 融資事業

 融資事業の概要を示すと図1 のとおりであり、融資基金から各協会に貸し付けられた公庫資金4629億余円(18年度末)は金融機関に定期預金等として預託され、それにより中小企業者に対する信用保証付融資の促進が期待されている。

図1 融資事業概要図

図1融資事業概要図

 

(注)
 金額は平成18年度の額である。


 融資事業は、中小企業金融公庫融資基金貸付基準(昭和44年44中信公融第147号)により、協会の適正な保証債務の額の増大を図るための長期資金貸付と保証債務の履行を円滑にするための短期資金貸付に区分され、さらに、長期資金貸付は、全体的な保証を促進する普通長期資金貸付、特定の政策目的を推進するための保証の促進等を図る特別長期資金貸付等に区分されている。そして、15年度以降は、特別長期資金貸付の実績があるのみで、普通長期資金貸付、短期資金貸付等は行われていない。
 上記の特別長期資金(以下「長期資金」という。)の貸付金額は、各協会の前年度末の保証債務残高、当年度の保証承諾計画額に応じて比例配分するなどして算定されている。また、その貸付条件は、貸付期間1年以内、貸付利率は定期預金金利の2分の1などとされている。

ウ 融資事業の収支状況等

 9年度以降の貴公庫の信用保険等業務勘定における融資事業の収支、融資基金等の状況は表1のとおりとなっている。

表1 融資事業の収支等の状況
(単位:百万円)
年度(末)
損失
利益
当期利益金
(△損失金)
C=B-A
損失処理後融資基金残高
A
経常費用
特別損失
B
経常収益
特別利益
9
738
738
5,766
5,761
5
5,028
747,700
10
744
743
1
4,168
4,157
10
3,423
747,700
11
729
729
2,151
2,151
1,422
747,700
12
693
693
1,219
1,219
526
747,700
13
693
693
1,493
1,493
800
747,700
14
674
674
278
278
△395
747,304
15
610
610
85
85
△524
746,779
16
483
481
2
65
65
0
△418
673,662
17
501
501
0
66
64
2
△435
673,227
18
204
204
0
696
696
491
673,227
注(1)
 平成9年度から13年度及び18年度の当期利益金は信用保険業務の損失処理に使われたため融資基金残高は増加しない。
注(2)
 平成16年度に産業投資特別会計からの出資金72,698百万円を返還している。
注(3)
 経常費用の主な内訳は人件費等の事務費である。

 融資事業の収支は、14年度から17年度までの間は、ゼロ金利政策の影響などのため、協会から受け取る貸付金利息等の運用益が減少したことから、融資事業の収支は各年度赤字となり、その損失処理のために融資基金から計17億余円が取り崩された。

(2) 株式会社日本政策金融公庫法の成立

 貴公庫は、19年5月の株式会社日本政策金融公庫法(平成19年法律第57号。以下「新公庫法」という。)の成立を受け、20年10月の株式会社日本政策金融公庫(以下「新公庫」という。)の成立の時において解散することとなっている。そして、融資事業は、新公庫法において新公庫の業務として規定され、新公庫においても相当額の資金が確保されて、協会に対する貸付けが行われることが見込まれている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、貴公庫本店において、協会への貸付けの状況等について、経済性、有効性等の観点から、融資事業は保証債務の額の増大、特定の政策目的を推進するための保証の促進、協会の保証基盤の強化等に資するものとなっているか、融資事業の経済的な業務運営のための検討は十分なものとなっているかなどに着眼し、貸付額決定の書類等により会計実地検査を行った。また、25協会(注1) の各本部において、保証債務の状況及び公庫資金の預託の状況を事業報告書、預託帳簿等の書類により調査するとともに、各協会に貸し付けられた公庫資金の預託先である金融機関のうち16機関から、保証付融資を促進するという融資事業の効果を、聞き取りを行うなどして調査した。

 25協会  北海道、宮城県、山形県、茨城県、群馬県、東京、神奈川県、山梨県、長野県、静岡県、愛知県、岐阜県、岐阜市、三重県、福井県、京都、大阪府中小企業、兵庫県、鳥取県、島根県、広島県、福岡県、佐賀県、大分県、宮崎県各信用保証協会


(検査の結果)

(1) 融資事業の効果

 貴公庫では、融資事業の効果として、保証債務額(保証承諾額及び保証債務残高)の増大、政策的保証の推進、協会の保証基盤の強化等があるとしている。
 そこで、長期資金の金融機関への預託状況と預託先金融機関における保証付融資の状況を比較したり、預託先である金融機関の業態別の預貸率(注2) の推移を調査したり、各協会の16年度以降の保証債務額等の推移及び増減理由を分析したり、協会の財務状況を分析したりするなどして、上記の効果を検証した。

 預貸率  預金量に対する貸出金の割合であり、式で示すと「預貸率=貸出金÷(預金+譲渡性預金+債券)」となる。


ア 預託先金融機関の保証付融資等の状況

(ア) 預託先金融機関の保証債務残高

 貴公庫が各協会に発した通ちょう「中小企業金融公庫長期資金貸付金の預託について」(平成13年13中信融第8号)では、長期資金は、適正な保証債務の額の増大に資するために金融機関に預託するものと規定されている。そして、同通ちょうに基づいて、各協会が作成している中小企業金融公庫資金預託要領(以下「預託要領」という。)では、金融機関の保証債務残高等を勘案して金融機関ごとの預託額を決定することとなっている。
 そこで、協会に貸し付けられた長期資金の金融機関への預託額と保証債務残高のそれぞれについて、金融機関の業態別の構成割合をみたところ、表2のとおり、9年度末においては、預託額と保証債務残高の構成割合はほぼ均衡していたが、18年度末においては、都市銀行、政府系金融機関は預託額の構成割合が保証債務残高の構成割合よりも相当大きくなっている一方で、第二地方銀行、信用金庫及び信用組合については、これが逆になっている。特に都市銀行と第二地方銀行では、18年度末の保証債務残高の構成割合は約14%とおおむね等しいが、預託額構成割合は都市銀行が24.0%、第二地方銀行が10.9%となっているなど、預託額と保証債務残高の構成割合にかい離が生じている。

表2  預託額及び保証債務残高の金融機関業態別構成割合の比較
(単位:億円、%)
区分
9年度末
18年度末
預託額
保証債務残高
預託額
保証債務残高
金額
構成割合
金額
構成割合
金額
構成割合
金額
構成割合
都市銀行
1,611
27.1
101,483
34.3
1,110
24.0
43,616
14.9
政府系金融機関
106
1.8
3,157
1.1
167
3.6
2,726
0.9
地方銀行
2,156
36.3
92,208
31.2
1,781
38.5
107,279
36.7
第二地方銀行(a)
835
14.1
37,614
12.7
506
10.9
41,497
14.2
信用金庫(b)
1,095
18.4
54,845
18.6
961
20.8
88,498
30.2
信用組合(c)
136
2.3
6,220
2.1
50
1.1
8,766
3.0
小計(a)+(b)+(c)
2,068
34.8
98,680
33.4
1,518
32.8
138,762
47.4
その他
0
0.0
58
0.0
50
1.1
274
0.1
5,943
100.0
295,588
100.0
4,629
100.0
292,661
100.0

 これは、ペイオフ解禁などに伴い、元本1000万円とその利息を超える部分は預金保険により保護されなくなり、各協会が預託先金融機関の選定に際し、金融機関の安全性や預託金利の高さなどを考慮していることから、都市銀行、地方銀行、政府系金融機関である商工組合中央金庫への預託額が相対的に多くなっていることによるものと思料される。

<事例>

 A協会においては、平成18年度末の保証債務残高の構成比が、都市銀行41.8%、地方銀行8.3%、第二地方銀行4.0%、信用金庫41.2%、信用組合3.3%、政府系金融機関1.4%であるのに対し、長期資金の預託先金融機関は都市銀行3行及び商工組合中央金庫のみとなっていた。
 これは、A協会が、前記ペイオフに係るリスク対応の必要性から、より安全な運用を確保するため、金融機関格付けも参考にして、預託先金融機関を選定したことによるものである。

 以上のことから、近年、長期資金の金融機関への預託と保証債務額の増大との間に十分な関連性は認められない状況となってきている。

(イ) 預託先金融機関の預貸率

 預託先である金融機関の業態別の預貸率の9年度末以降の推移は図2 のとおりとなっており、いずれの業態においても、預貸率は下降しており、特に、都市銀行、信用金庫及び信用組合においてこの傾向は著しいものとなっている。

図2 預託先金融機関の預貸率の推移

図2預託先金融機関の預貸率の推移

 

 この要因は、一般に、大企業の資金調達手段が直接金融に移ったり、金融機関が国債の大量発行の受け皿となったりするなど、預金量の増加に比して、貸出量の増加がそれほど大きくないことなどによるとされている。したがって、このような状況においては、貴公庫の長期資金が金融機関に預託されても、保証付融資の増大、政策保証の促進という効果は従前に比べて期待できないものと思料される。
 このような状況の下、協会の中には、預託要領において、預貸率が著しく劣る金融機関を預託先から除外する旨を規定しているものも見受けられた。

イ 各協会における保証債務額の推移及び増減理由

 融資基金の各協会への貸付状況をみたところ、16年度までは、すべての協会が公庫から貸付けを受け入れていたが、近年の低金利のため金利収入が少なく公庫資金を受け入れるメリットが薄れたことなどから、17、18両年度には、それぞれ7協会が借入れを行っていない。
 そこで、17、18両年度とも借入れを行っていない6協会(注3) (以下「非借入協会」という。) と両年度とも借入れを行っている44協会(以下「借入協会」という。)とで16年度以降の保証債務額を比較したところ、表3のとおり、保証承諾額について、借入協会より非借入協会の方がその増加率が高くなっていたり、保証債務残高について、借入協会は減少傾向となっている一方で、非借入協会は増加していたりしている。

 6協会  北海道、新潟県、三重県、石川県、滋賀県、高知県各信用保証協会


表3 借入協会と非借入協会における保証承諾額及び保証債務残高の推移
(単位:百万円、%)
区分
16年度(末)
17年度(末)
18年度(末)
金額
金額
16年度比
金額
16年度比
保証承諾額
借入協会
11,176,870
11,062,433
99.0
11,558,707
103.4
非借入協会
1,234,507
1,242,477
100.6
1,398,915
113.3
52協会
13,162,929
12,980,235
98.6
13,659,133
103.8
保証債務残高
借入協会
25,446,666
24,559,256
96.5
24,866,283
97.7
非借入協会
2,541,999
2,607,312
102.6
2,745,541
108.0
52協会
29,743,347
28,796,430
96.8
29,266,105
98.4

 上記のような状況となっている理由について、保証承諾額及び保証債務残高の両方が増加した非借入協会であるB協会は、中小企業者が利用しやすいように資金需要の多い年末、年度末に合わせて事業資金を円滑に供給できるように保証料率を低く設定するなどの取組を協会独自に行ったことを挙げている。また、保証承諾額及び保証債務残高の両方が減少した借入協会であるC協会は、10年度から12年度にかけて実施された金融安定化特別保証(以下「特別保証」という。)の既往残高の範囲内で借換えができる保証制度が積極的に活用され管内中小企業者の資金繰りが改善したこと、金融機関との提携保証の利用が一巡したことなどを挙げている。
 なお、上記のB協会及びC協会における保証承諾額及び保証債務残高の推移は、表4のとおりである。

表4 B協会とC協会における保証承諾額及び保証債務残高の推移
(単位:百万円、%)
区分
16年度(末)
17年度(末)
18年度(末)
金額
金額
16年度比
金額
16年度比
保証承諾額
B協会
417,062
503,630
120.8
586,635
140.7
C協会
307,355
266,203
86.6
258,242
84.0
保証債務残高
B協会
691,207
797,991
115.4
896,564
129.7
C協会
599,355
573,947
95.8
576,789
96.2

 また、長期資金は、経営安定関連保証等の政策保証の促進、新規保証の促進、回収促進等、特定の政策目的の推進のために協会に貸し付けられるもので、その種類別の貸付残高は16年度末以降で表5のとおりとなっている。

表5 長期資金(特別長期資金)の種類別貸付残高
(単位:億円)
種類
貸付金残高
16年度末
17年度末
18年度末
政策保証促進
2380
2681
2518
 
経営安定関連保証促進
1850
1480
1183
無担保保証促進
300
400
創業等関連保証等促進(16年度は新創業等保証促進)
230
250
285
売掛債権担保保証促進
300
650
650
新規保証促進
533
200
200
特別基盤強化
106
106
106
回収促進
1113
1113
1223
災害等
105
15
11
その他
484
647
569
4722
4763
4629
(注)
 網掛けは、以下、分析の対象とした貸付けである。


 主な貸付種別ごとに、貴公庫が協会への当該資金の配分の基礎とする保証債務額等の実績値を借入協会と非借入協会との間で比較しても、表6のとおり、一部の保証等において、借入協会が非借入協会に比べて保証債務額等を伸ばしているものがあるものの、ほとんどの保証等において、借入協会と非借入協会では大きな差はなく、逆に非借入協会の方が保証債務額等を伸ばしていたものも見受けられた。

表6 借入協会と非借入協会における長期資金の配分の基礎とする保証債務額等の実績値の推移
(単位:百万円、%)
種類
長期資金の配分の基礎とする保証債務額等
区分
16年度(末)
17年度(末)
18年度(末)
金額
金額
16年度比
金額
16年度比
経営安定関連保証促進
経営安定関連保証
保証承諾額
借入協会
1,853,047
1,349,158
72.8
1,312,603
70.8
非借入協会
229,333
148,835
64.9
122,948
53.6
52協会
2,143,485
1,533,366
71.5
1,458,191
68.0
保証債務残高
借入協会
5,911,982
5,127,110
86.7
4,770,011
80.7
非借入協会
634,391
582,045
91.7
527,113
83.1
52協会
6,837,941
5,936,597
86.8
5,480,028
80.1
無担保保証促進
無担保保険引受額
借入協会
7,322,428
7,284,893
99.5
8,119,277
110.9
非借入協会
852,334
880,960
103.4
1,066,738
125.2
52協会
8,665,721
8,651,992
99.8
9,696,513
111.9
創業等関連保証等促進
新事業開拓保険
保険引受額
借入協会
1,061
275
25.9
288
27.1
非借入協会
235
104
44.3
0.0
52協会
2,229
579
26.0
328
14.7
付保残高
借入協会
11,480
8,256
71.9
6,100
53.1
非借入協会
2,794
2,153
77.1
1,498
53.6
52協会
20,901
15,506
74.2
11,348
54.3
創業等関連保証等
保証承諾額
借入協会
60,674
65,702
108.3
95,790
157.9
非借入協会
6,003
7,769
129.4
7,445
124.0
52協会
72,472
79,959
110.3
110,710
152.8
保証債務残高
借入協会
140,928
162,815
115.5
208,556
148.0
非借入協会
15,711
19,393
123.4
22,015
140.1
52協会
181,464
211,978
116.8
259,537
143.0
売掛債権担保保証促進
売掛債権担保保険
保険引受額
借入協会
62,318
73,300
117.6
57,694
92.6
非借入協会
8,077
10,410
128.9
7,345
90.9
52協会
74,031
86,821
117.3
66,686
90.1
付保残高
借入協会
42,084
43,768
104.0
37,890
90.0
非借入協会
6,610
7,634
115.5
6,829
103.3
52協会
52,439
54,480
103.9
46,951
89.5
新規保証促進
企業浸透度(%)
借入協会
38.2
38.9
101.8
37.8
98.9
非借入協会
31.1
32.4
104.3
32.6
104.9
47協会
37.5
38.2
102.0
37.3
99.5
新規保証承諾額
借入協会
547,083
551,142
100.7
765,122
139.9
非借入協会
55,256
60,564
109.6
84,142
152.3
52協会
623,737
631,662
101.3
874,185
140.2
回収促進
回収納付額
借入協会
196,489
182,803
93.0
164,218
83.6
非借入協会
13,735
14,091
102.6
12,827
93.4
52協会
219,007
204,888
93.6
183,925
84.0
無担保保険回収納付額
借入協会
62,546
62,863
100.5
63,225
101.1
非借入協会
5,733
5,818
101.5
5,769
100.6
52協会
71,356
71,772
100.6
71,597
100.3
(注)
 企業浸透度は、都道府県単位の統計となるため、横浜市、川崎市、名古屋市、岐阜市 、大阪市各信用保証協会の計数は含まれない。


 これらの中で、借入協会のうち、表7のとおり経営安定関連保証の保証債務額が増加したD協会と減少したE協会について、その理由を調査したところ、保証債務額が増加したD協会は、表8のとおり、保証の要件の一つである経済産業大臣の指定(注4) を受けた金融機関の数が管内で増加傾向で推移していたのに対して、保証債務額が減少したE 協会では同金融機関の数が減少傾向で推移していた。特に、E協会では、17、18両年度の保証承諾額が16年度比で大きく減少しているが、これは、E協会管内で保証付融資が最も多い金融機関が、17年7月から18年12月までの間、経済産業大臣の指定を受けていなかったことが影響している。

 経済産業大臣の指定  経営安定関連保証に当たり、経営合理化に伴う金融取引の調整を行っている金融機関であることの指定。指定された金融機関と金融取引のある中小企業者は、同保証の対象となる。


表7 D協会とE協会における経営安定関連保証の保証承諾額及び保証債務残高の推移
(単位:百万円、%)
区分
16年度(末)
17年度(末)
18年度(末)
金額
金額
16年度比
金額
16年度比
保証承諾額
D協会
95,842
109,770
114.5
114,516
119.5
E協会
23,611
8,467
35.9
13,784
58.4
保証債務残高
D協会
236,863
266,949
112.7
293,692
124.0
E協会
45,744
39,972
87.4
41,122
89.9

表8 D協会及びE協会管内に本店又は本部のある金融機関のうち経済産業大臣の指定を受けた金融機関数
(単位:機関)
区分
16年上期
16年下期
17年上期
17年下期
18年上期
18年下期
19年上期
D協会
7
10
10
10
9
8
7
E協会
7
4
3
3
3
4
4
(注)
 上期は1月から6月、下期は7月から12月である。


 これらのことから、保証債務額の増減は、中小企業者の資金需要、協会独自の施策等保証の推進に対する取組姿勢、管内の金融機関の経営状況等の各協会管内の経済情勢等によるものが大きいと認められる。

ウ 協会の財務状況

 貴公庫では、協会における公庫資金の純運用益(預託利息−公庫資金借入利息)は、保証増大や経済環境の変化など不測の事態に対処し、協会の保証基盤を強化するとともに、保証料率の引下げなど保証条件の改善に資する効果があるとしている。

(ア) 協会の収支の状況

 9年度以降の全国52協会の合算した収支の推移は、表9のとおりとなっている。10年度から12年度までの間に実施された特別保証に係る代位弁済額が増えるなどしたため、13、14両年度は当期収支差額が赤字となったが、15年度以降は黒字に回復し、全体として協会の収支は良好である中で、協会における公庫資金の純運用益の経常収支差額に占める割合は、12年度以降1%に満たず、わずかなものとなっている。

表9 52協会合算の収支状況の推移
(単位:億円)
年度
経常収入
経常支出
経常収支差額
経常外収入
H
経常外支出
I
経常外収支差額
J=H-I
金融安定化特別基金等取崩額
K
当期収支差額
L=E+J+K
A
公庫資金の預け金利息
B
C
公庫資金の支払利息
D
E=A-C
公庫資金の純運用益
F=B-D
公庫資金の借入による純運用益の経常収支差額に占める割合
G=F/E
9
3,005
34
1,802
7
1,202
27
2.3%
7,423
8,141
△718
484
10
3,276
27
1,927
6
1,348
21
1.6%
8,851
10,595
△1,743
819
424
11
3,859
22
2,286
4
1,572
17
1.1%
10,251
11,504
△1,252
71
391
12
3,754
15
2,261
3
1,493
11
0.8%
12,927
14,397
△1,470
220
243
13
3,521
9
2,189
2
1,331
7
0.5%
14,261
15,845
△1,583
188
△63
14
3,234
3
2,081
1
1,153
1
0.2%
14,443
16,148
△1,704
372
△179
15
3,256
1
2,147
0
1,108
1
0.1%
12,981
14,409
△1,428
345
25
16
3,353
1
2,247
0
1,105
1
0.1%
10,932
11,992
△1,060
293
338
17
3,464
1
2,320
0
1,143
1
0.1%
9,606
10,345
△739
121
526
18
3,671
8
2,418
2
1,252
6
0.5%
9,159
9,885
△726
61
587
(注)
 平成18年度の当期収支差額587億余円の内訳は、48協会の黒字が598億余円で、4協会の赤字が10億余円である。


(イ) 協会の基本財産の状況

 9年度以降の52協会の合算した基本財産の推移は、表10のとおりとなっている。

表10 52協会合算の基本財産の状況の推移
(単位:億円、倍)
年度末
基本財産A
保証債務残高
B
基本財産倍率
B/A
 
基金
金融安定化特別基金
基金準備金
9
10,548
2,828
7,719
295,588
28.0
10
12,424
3,367
1,180
7,876
419,916
33.8
11
13,803
3,759
2,039
8,003
430,191
31.2
12
14,067
4,130
1,831
8,104
414,597
29.5
13
14,002
4,232
1,675
8,093
370,119
26.4
14
13,670
4,202
1,306
8,161
331,884
24.3
15
13,445
4,229
964
8,251
311,022
23.1
16
13,437
4,290
678
8,468
297,433
22.1
17
13,637
4,317
560
8,758
287,964
21.1
18
13,948
4,360
505
9,083
292,661
21.0

 10、11両年度に、特別保証の実施のため、金融安定化特別基金が設けられ基本財産は大きく増えたが、特別保証により生じた欠損金の処理のため、同基金が取り崩されたことから、13年度から16年度にかけて基本財産も減少した。しかし、その後の収支改善により、17年度以降、基本財産は増加に転じている。
 保証債務残高の基本財産に対する割合である基本財産倍率は、10、11両年度は、特別保証の実施のため30倍を超えたが、その後は保証債務残高が減少したため、年々低下し続け、18年度は21.0倍となっている。各協会は、定款で、保証債務残高の最高限度額を基本財産の35倍から60倍(52協会平均で52.4倍)と定めており、現在の保証債務残高の水準に対する基本財産は充実していると認められる。
 上記のとおり、協会の収支状況及び基本財産の状況は、一部の協会を除いて充実したものとなっていることから、融資事業により更に協会の保証基盤を強化する必要性は低下してきているものと認められる。

(2) 融資事業の協会への貸付利率

 貴公庫は、長期資金の貸付けに当たり協会から利息を徴収しており、協会への長期資金の貸付利率を、預入金額300万円未満の定期預金(預入期間1年)の利率と預入金額300万円以上1000万円未満の定期預金(同)の利率の平均利率の2分の1に相当する利率とすることとしている。これは、原則として、貴公庫への支払利息と協会の純運用益をおおむね等しくなるようにしているためである。
 定期預金の利率については、上記2区分のほか、預入金額1000万円以上の区分があり、預入金額が多い区分ほど利率は高くなっている。
 そして、貴公庫が貸付利率を預入金額の少ない2区分の平均利率によっているのは、5年に貸付利率を改定する際に各協会の4年度末の預託状況を調査したところ、協会では、原則として各金融機関の店舗ごとに預託していたことから、表11のとおり、預入金額が1000万円未満の定期預金による預託が62.5%を占めていたことによる。
 しかし、その後、協会では、金融機関の本店や地域を統括する支店への一括預託が増えたことなどから、預入金額が1000万円未満の定期預金による預託の割合が3.2%に減少し、代わりに預入金額1000万円以上の定期預金による預託が多くなり、その割合は18年度末で80.5%に達している。そして、この間の協会における公庫資金の預託による受取利息及び貴公庫への支払利息の推移をみると、6年度以降、協会の純運用益は、貴公庫への支払利息の1.4倍から3.9倍と、貴公庫への支払利息を大幅に上回っている状態が続いている。
 よって、貴公庫の協会への貸付利率については、協会が行う金融機関への預託等の実態とかい離していると認められる。

表11 協会における公庫資金の預託による利息の推移
(単位:百万円、倍、%)

表11協会における公庫資金の預託による利息の推移(単位:百万円、倍、%)

 

(改善を必要とする事態)

 貴公庫は、信用保証協会に対して行う融資事業について、保証債務残高等に応じて各協会への貸付額を決める方法を採っている。しかし、各協会の預託先金融機関別の預託額と保証債務残高の構成割合にはかい離が生じていて、長期資金の金融機関への預託と保証債務額の増大とに十分な関連性が認められない状況となってきている。また、保証債務の額の増大及び政策的保証の促進は、各協会における独自の施策など保証の推進に対する取組姿勢、管内の経済情勢等によるところが大きいなど、各協会の保証債務残高等を基礎とした現行の貸付方法は融資事業の目的からみると十分な効果が期待できるものとはいえない状況となっている。
 そして、協会の保証基盤については、協会の収支及び基本財産の状況が、一部の協会を除いて、充実したものとなっていることから、融資事業により更にその基盤を強化する必要性は少ないものと認められる。
 また、協会への貸付利率は、預託の実態が変化したにもかかわらず、5年度当時の預託の実態に合わせた方法を継続し、低い水準のままで見直しが行われていない。
 したがって、貴公庫において、上記の事態を踏まえて、融資事業の適切な運営、管理を図るための方策を講ずる要があると認められる。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、貴公庫において、融資事業の保証債務額の増大、政策的保証の推進等の効果について適切な分析に基づく評価を行っていなかったり、協会への貸付利率について金融機関への預託等の実態に合わせた見直しを行っていなかったりしたことなどによると認められる。

3 本院が表示する意見

 貴公庫の融資事業は、国からの出資を財源とする融資基金から協会に対し、その保証債務額を増大するために必要な原資として資金貸付けを行っているものである。
 ついては、貴公庫において、融資事業に国から多額の出資が行われていることにかんがみ、融資事業の運営、管理が適切に行われ、その効果が十分発現されるよう、次のとおり意見を表示する。
ア 公庫資金の預託先であり保証付融資を行う金融機関の意見を参酌するなどして、融資事業の状況を分析、評価する。
 そして、これに基づき、協会への貸付規模、貸付方法について、各協会の保証債務残高等を基礎とする現行の方式等を見直し、各協会における保証の推進に対する取組姿勢、信用補完制度の受益者である中小企業者に対する預託先金融機関の保証付融資の状況等を十分に勘案して行う方式とするなど、協会への貸付けの在り方について検討する。
イ 協会への貸付利率については、協会が行う金融機関への預託等の実態を踏まえ、金利を見直す。